小さなお子さんをもつ保護者の方のなかには、知的な遅れはないけれど、お子さんの言葉の遅れが気になる方、視覚認知能力が気になる方もいるのではないでしょうか。
茨城県つくば市にあるNPO法人「つくば児童発達支援センター」では、未就学児を対象に言語聴覚士が専門的な指導をおこなう支援教室を運営しています。
そこで今回は「つくば児童発達支援センター」理事長の石田 恵美さんと副理事長の森 悦子さんに、つくば児童発達支援教室での取り組み内容についてお話を伺いました。
お子さんのことで悩まれている方、つくば市で未就学児の発達支援教室をお探しの方は、ぜひご一読ください。
経験豊富な言語聴覚士がおこなう児童発達支援
ー本日はよろしくお願いします。はじめに、NPO法人「つくば児童発達支援センター」がどのような団体なのか教えてください。
石田 恵美さん(以下、石田):「つくば児童発達支援センター」は、特定非営利活動法人として知的な遅れのない発達障害のお子さんを対象に活動しています。
市がおこなっている療育施設には知的な遅れがないと入れないことが多いので、そこから外れるようなお子さん、どちらかというと社会的な面が弱いお子さんを中心にお受けしようということで立ち上げました。
私自身は言語聴覚士・公認心理師・臨床発達心理士・教員免許の資格を持っています。かつて筑波メディカルセンター病院に勤務していました。病院の先輩の森との間で発達障害をもつお子さんの支援について話が上がり、長年、特別支援教育をおこなっていた人たちも加わってスタートしたという経緯があります。
現在は、言語聴覚士(ST)が5人と非常勤ST2人の合計7人のSTと、特別支援教育の先生4人とでそれぞれお子さんに指導しています。STのなかには言語聴覚士養成大学で教員をしていた者もおります。また、療育経験のある保育士も配置し、保護者さまの悩みに寄り添うように心がけています。
こういった児童発達支援や放課後デイサービスはいろいろなところにありますが、私たちはあくまで病院と同じ療育のかたちでやっております。
保護者も満足する専門的な指導(トレーニング)
ー運営されている「つくば児童発達支援教室」について詳しく教えてください。
石田:つくば児童発達支援教室で対象となるのは、知的な遅れのない1歳から6歳までの発達に偏りのあるお子さんです。療育をしている第1教室は、年末年始のお休みを除いて毎日やっています。
以前働いていた病院は土曜日が休みだったのですが、働いている保護者さまから「土曜日もやってほしい!」とたくさんお声をいただいたことから、土日も指導をおこなうことにしました。
料金は、個別サポートがないお子さんだと1,540円、個別サポートが必要なお子さんだと、要はちょっと子育てがしにくいタイプのお子さんという感じなのですが、その場合は1,656円になります。
ここの制度は児童福祉法で成り立っていますので、年少さん、年中さん、年長さんは園の料金が無料になるように、この施設も無料なんです。
小さいお子さんだとお金がかかる場合もあるのですが、国の決まりで所得に応じて上限額が決まってきます。1歳2歳で来るお子さんは、保護者さまがお若いことが多いため、上限額が4,600円のご家庭がほとんどです。4,600円が上限のご家庭では、他の施設を含め、どんなにたくさん通っても4,600円までしかかかりません。
また、幼稚園のお兄ちゃんお姉ちゃんがいて、ここに来ている子が2番目や3番目のお子さんの場合、2番目だと半額、3番目だと無料という制度があり、これは所得に関係なく、すべてのご家庭で利用できます。
教室では1回40分の時間をとって、お子さんを指導をさせていただいています。その後、保護者さまに何か悩みがあればお話をするというスタイルをとっています。
残り時間だけでは足りないときは、遠慮なくおっしゃってくださいと伝えていますので、保護者さまだけ改めて来ていただいての相談もおこなっています。
ー教室では具体的にどのような指導をされていますか?
石田:発音が悪いお子さんには発音の練習を、吃音があるお子さんにはリラックスして「なんでもお話しできるよ」というような練習をしたり、言葉がゆっくりなお子さんにはカードなどの道具を使って言葉の意味や概念を教えながら、表現力をつけるための練習をしています。
また、集団生活が苦手な場合は、ソーシャルスキルの練習をおこなっています。
遊びではないんだけれど、なるべく楽しく、お子さんのいいところをちょっとずつでも見つけて、褒めながら伸ばしていく、というやり方をとっています。
年に一度、保護者の方に必ずアンケートを取らせていただいているのですが、概ねみなさん満足されています。「こんなに専門的なところはほかにない」とお褒めの言葉を頂戴することもあります。
教室の規模を拡大して見学や研修などもしていきたい
ー今後、開催予定のイベントなどありましたらご紹介ください。
石田:コロナ以前だと「父母の会」を開催していたのですが、コロナ禍で今はちょっと大勢が参加するイベントは控えております。
近々、少し広いところに引っ越す予定ですので、発達支援教室での活動に加え、後進を育てていくことを目的に、学生さんなどに見学や研修、実習などをしていこうかと計画中です。
今、支援教室に来られているお子さんもちょっと広いところに行きますので、伸び伸びと過ごせるかなと思いますし、長く療育をやってきた保育士さんがたくさんいるので、それぞれのスキルが活かせるような取り組みを考えています。
ー最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いします。
石田:3歳児健診とか1歳半健診で、保健師さんや心理士さんに「お子さんには障害があります」「発達が遅れています」というようなことを言われた保護者さま方はショックを受けます。そして子どものことがすごく心配になります。
また、そういった健診で気づかれないような場合でも、保護者さまは「うちの子は他の子たちと違うんじゃないか」とモヤモヤを抱えます。保健師さんから「大丈夫よ」と言われながら心配されている方もいます。
少しでも心配ごとがあったら、どうぞ私たちのところにご相談ください。
それから、当センターの副理事長でベテランSTの森からもご挨拶をさせていただきます。ちなみに森は、ここでの指導のほかに、後進を育てる森塾も運営しています。
森 悦子さん:私が主催している森塾は、STさんたちを対象に、保護者さま対応やお子さんの計画の立て方、療育の仕方を相談する場所として、月に1回集まっていただいて、検査結果や療育結果をみんなでディスカッションしています。
若い人を育てるという意味でも、このやり方が一番いいのかなというふうに思っておりますし、先に始めた者としての使命だと思っております。
それから当教室主催で、年に1回、大六先生(元筑波大学教授、現放送大学教授、心理学専門の先生)をお招きして勉強会を開催させていただいています。これはSTなどを対象におこなっています。興味を持たれたSTさんはぜひご参加ください。
療育で一番大切なことは、お子さんに“生きていく力”をつけることです。力ってやっぱり大事で、いわゆる言語能力一辺倒というよりは、場面に合わせた言葉を適切に使うとか、人とコミュニケーションをうまくとれるとか、そういう力が伸びてくれたらいいなと思って指導しています。
お子さんのことで悩まれている親御さん、言語療法のスキルを磨きたいSTの方は、ぜひ当センターまでお問い合わせください。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:NPO法人つくば児童発達支援センター