「サシバの里自然学校」を取材!自然のなかでの遊びを通して農的暮らしを学ぶ講座の内容とは

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昭和に生まれた子どもたちは、自然が身近にあり、川遊びや虫捕りなど、さまざまな遊びを自然のなかでおこなっていました。

それに比べて平成・令和生まれの子どもたちは、たとえ自然豊かな土地に住んでいても、デジタルツールの普及により、自然と触れあう機会が少なくなってきました。

そこで今回は、栃木県の東部、市貝町(いちかいまち)にある「サシバの里自然学校」校長の遠藤 隼さんに、活動内容や自然体験についてお話を伺いました。

子どもに自然体験をさせたい方、栃木県周辺にお住いの方はぜひご覧ください。

  1. 自然のなかで遊びを通して興味を深める
  2. 夏休みにはキャンプのイベントも開催
  3. 子どもの頃の自然体験が将来の地球環境維持につながる

自然のなかで遊びを通して興味を深める

「サシバの里自然学校」生きもの塾の様子

ー本日はよろしくお願いします。まず「サシバの里自然学校」の概要について教えてください。

遠藤 隼さん(以下、遠藤):我々の団体名にある「サシバ」とはタカの仲間、つまり鳥の名前のことです。ここ市貝町は、サシバをシンボルとして町おこしをおこなっています。

サシバは里山周辺で繁殖するタカでして、餌となるカエルやヘビが生息する田んぼが必要です。

ですから、サシバが暮らしやすい田んぼや里山を維持していこうというのが、私たちの活動のベースにあります。

そのためにもこの土地の魅力を理解してもらおうと、おもに子ども向けの体験イベントを実施しています。

体験イベントのなかでもメインとして取り組んでいるのが、小学生向けの「子ども生きもの塾」です。このイベントでは、里山にいる生きものを探したり、観察したり、捕まえたりします。

イベントを開催する目的についてですが、その根底には「生きものが好きな子どもを増やしたい」という、私たちの願いがあります。

そのために「子ども生きもの塾」のイベントを通して、生きものの魅力に触れてもらっています。

ー実際にに参加した子どもや保護者の方からは、どういった反応がありますか?

遠藤:参加する子どもは基本的に生きものが好きな子が多いのですが、そのなかには普段から生きものに触れている子もいれば、知識はあるけれど本物は見たことがないという子もいます。

後者の場合は特に、図鑑でしか見たことがないような生きものとの、リアルな出会いに喜んでいる子が多いですね

保護者の方も、自分の子どもがほかの子と触れあうことで、より意欲的になっている姿を見て嬉しそうにされています。

少し話が変わりますが、小学校1〜2年生くらいまでは生きものが好きな子どもが多いのですが、6年生くらいになると、その人数が減っていきます。

子どもが段々と、生きものから離れていくんですね。その背景には、自分の友だちに生きもの好きな人がいなくなっていくという、ひとつの要因があると思っています。

そういった意味でも「ここに来れば自分と同じものに興味がある人がたくさんいる」「自分の好きなことを認めてくれる場所がある」ということが、重要になってくるんです

ここで育った子どもたちが高校生や大学生になって、少しずつ専門性を高めていって、将来本物の博士になるなんて素晴らしいことだと思います。

私たちの活動は、長い目で見ると、国の財産である博士を育てることにもつながっているのかなと感じています。

ー「子ども生きもの塾」のほかには、どのような体験イベントがありますか?

遠藤:サシバの田んぼで農的暮らし講座」では、田植えから稲刈りまでを親子で一緒に体験してもらいます。

毎日食べている米がどのように作られるのかを知る“食育”としての側面もありますが、やはり大切なのは、田んぼが生きものの住む場所として重要な場所だと知ってもらうことですね。

先ほど、サシバが生きるためにはカエルやヘビが生息している田んぼが必要だとお話ししました。ですが近頃は、そのような田んぼが減っています。

原因はいくつもあるのでしょうが、農薬の使用もそのひとつとされていますね。そういったこともあり、無農薬栽培や自然にやさしい農法を用いた農業体験を通して、環境の保全について興味をもってもらおうと取り組んでいます。

「サシバの田んぼで農的暮らし講座」は年4回開催されますが、いずれもキャンセル待ちになるほど好評をいただいています。

実際にご参加いただいた方のなかには、「お米ができるまでのプロセスを体験しながら理解できてよかった」とおっしゃる方もいました。

というのも、イベントで使う道具はあえて古いものを用意しておりまして、たとえば収穫の時期には「足踏み脱穀機」で脱穀の作業をおこないます。

脱穀とは収穫した稲から米だけを取る作業なのですが、現代ではコンバインを使うのが普通です。

イベントのなかでは足踏み脱穀機とコンバインを実際に見比べて、それぞれどういう仕組みなのか、どの部分に関連性があるのかなどを学んでいただきますので、そういった体験も喜ばれますね。

イベント自体は“農業”というほど本格的な作業ではなく、“農”を通した遊びや学びに重点を置いています。

ですからあえて“農的”と呼んでいるんですね。いろいろな遊びをからめて、楽しみながら体験してもらっています。

夏休みにはキャンプのイベントも開催

「サシバの里自然学校」農的暮らし講座の様子

ー今後、開催予定のイベントはありますか?

遠藤:大きなイベントは、夏休みの期間に集中しています。

先ほどお話しした「子ども生きもの塾」「サシバの田んぼで農的暮らし講座」に加えて、「生きものキャンプ」「夏の野遊び学校」「リバーアドベンチャーキャンプ」などを開催する予定です。

キャンプは秋以降にも予定していますので、興味がある方はぜひご参加ください。

現時点でキャンセル待ちの状態となっているイベントもあるため、気になるイベントがありましたら、お問い合わせいただければと思います。

子どもの頃の自然体験が将来の地球環境維持につながる

「サシバの里自然学校」どろんこ綱引きの様子

ー最後に、読者へ向けてメッセージをお願いします。

遠藤:私たち「サシバの里自然学校」の母体は、「NPO法人 オオタカ保護基金」という自然保護を目的とした団体です。

サシバに限らず、生きものが暮らしやすい里山づくりを目指しているわけですが、そのためには体験がとても重要になってくるんです。

私自身がそうだったんですが、子どもの頃に自然での体験をすることによって、自然に対する興味や関心が深まるわけですね。本を読む以上に。

そして自然が好きな人たちというのは、やはり大人になってからも、自分の子どもたちに自然の魅力を伝えていきたいという気持ちが湧くと思います。

子どもの頃の原体験が将来的に環境保全につながっていくので、小さいうちから体験してもらうことが、長い目で見ると地球環境維持につながっていくのかなと考えています。

自然保護というのは、結局のところ理屈ではありません。

子どもの頃に見ていた風景とか、風の匂い、川遊びや泥遊びなども含めて、自然に対して懐かしさを覚える人たちが「残していきたい」と感じるのではないでしょうか。

親から子へ、子からまたその次の世代へ、想いや体験を伝える人たちが増えることこそが、将来の地球環境の維持につながるのだと私たちは信じています。

ですから、ぜひ子どものうちから自然に触れる体験をしてもらえればと思います。

ー本日は貴重なお話をありがとうございました!

■取材協力:NPO法人オオタカ保護基金 サシバの里自然学校