ただでさえ心身ともに疲れる出産、育児。核家族が一般的になった現代、なおかつコロナ禍の影響もあり、どうしようもない孤立感を抱える子育て世帯は少なくないといいます。
今回は、那須塩原市ファミリーサポートセンターの運営委託をはじめ、産前・産後の子育て支援に力を入れる「子育てほっとねっと」理事長の西田 由記子さんにお話を伺いました。
具体的な悩みだけでなく、漠然とした不安を抱える保護者の方も、ぜひご一読ください。
子育てサロンから訪問型子育て支援など、幅広い活動が特徴的
ー本日はよろしくお願いします。はじめに、 NPO法人「子育てほっとねっと」がどのような団体なのか教えてください。
西田 由記子さん(以下、西田):私たちは地域の人の手による子育て支援および、世代を超えた子育てネットワークづくりを目指し、那須塩原市を中心に活動している団体です。
もともと市内で子育て支援活動をしていたこともあり、平成23年に「那須塩原ファミリーサポートセンター」ができる際に、運営をぜひ自分たちの手でやってみたいと思いました。
そこで運営委託を目指すべく、さまざまな子育て支援の活動をしていたメンバーが集まって「子育てほっとねっと」として改めて団体を立ち上げたのが平成23年5月のこと。
そして、平成23年9月からファミリーサポートセンターがスタートしました。
ファミリーサポートセンターでは、那須塩原市在住・在勤の0歳から中学校卒業までのお子さんを持つ世帯を対象とした子育て支援をおこなっています。
たとえばお子さんを一時的に預かってほしいとか、あるいは保育施設などへの送迎を手伝ってほしいとか、子育てに関するさまざまなニーズにお応えします。
また、そのような子育て世帯と、「子育ての手伝いができる」地域の方を結びつける役目も持つのがファミリーサポートセンターです。
お手伝いいただいている方には若い方もいれば、もうリタイアされている方で「久しぶりに子どもと関わってみたい」という方もいらっしゃいます。
そういうふうに本当に幅広い世代の方たちで、一緒に何かをするチャンスを当団体ではどんどん創出していきたいと思っています。
そのほかには、お子さんやそのご家族同士がふれあえる「つどいの広場」の運営や、集団託児、家庭訪問型の子育て支援など、活動内容は本当にさまざまですね。
というのも、実際に活動をしていると、「もっとこんな子育て支援があったらいいな」と思うものがたくさん出てくるんです。
「待っているだけではなく出向いていく支援も必要なんじゃないかな」とか、「小学校に入るまでじゃなくてその後もずっと交流を続けられる方法はないかな」とか…。
それを一つひとつ活動の一貫として取り入れていった結果、今の「子育てほっとねっと」があるんですね。
団体発足からこの10年間は、自分たちが始めた活動をただひたすらがんばってやっていくといった状態でしたね…。
次のステップとして、昨年度からは団体全体で毎年ひとつのテーマを決めて、テーマを意識した活動に取り組むことにしました。
昨年度は、「多胎児」を持つ家庭への支援に対する理解を深めることをテーマとして活動。
今年度は、赤ちゃんが「産まれる前からの切れ目のない支援」「妊娠中から地域とつながれるようにする」ための支援をテーマにしました。
このコロナ禍において、出産前後に必要な手助けが受けづらくなっていると思うんです。仲間との縁が切れてしまったり、家族もなかなか手助けしづらかったりなど…。
それに、赤ちゃんが産まれてからは心身ともに忙しい日々が続くものだから、支援につながるまでに時間がかかってしまうことも多いんですね。
だからこそ、赤ちゃんが産まれる前から「こういう支援があるんだよ」「こういう交流の場があるんだよ」と知ってもらいたいんです。
あらかじめ知っていれば、必要だと思ったときにもっとすぐつながれるのではないかなと思うので。
ですので、つどいの広場であれば、これまでは出産後のご家庭を対象にしていましたが、これからはプレパパやプレママにも来てもらえるように情報発信に力を入れています。
訪問型子育て支援に関しても、産前からの支援ができるように、今年度からは新たに研修をおこないます。
今後はさらに子育て支援の存在を知ってもらうために、当事者の声を含めたパンフレットを作って配布するというようなこともやっていきたいですね。
あと、コロナがもう少し落ち着いて、大勢の方をお呼びできるようになれば、「産前産後支援についてのシンポジウム」を開催したいと考えています。
毎月第3土曜日は交流の場を開催
ー今後開催予定のイベントや告知があれば、教えてください。
西田:毎月第3土曜日の10時から12時までに「交流の場」を開催しています。
もともとは子ども食堂としておこなっていましたが、昨今はコロナの影響で食事を共にすることは難しくなってしまったんですよね。
そこで、食堂としてではなく、交流の場として去年の10月から再スタートした形です。
こちらもこれまでは出産後の方が中心に来てくださっていたんですが、今後はプレパパやプレママも来やすいようなイベントを増やしたいですね。
助産師さんを囲んでの座談会なども考えています。
産前から切れ目なくにつながれる“手厚い子育て支援”を目指して
ー最後に読者の方に向けて、メッセージをお願いします。
西田:いろいろな人とつながることで見えてくるものはたくさんあります。
ですので、大変なときはひとりで抱え込まないでください。周囲に「助けて」と、ぜひ言ってください。
私たちはそういった声に耳をどんどん傾けていきたいと思っています。また、私たち以外にもSOSを聞き届けてくれる人はいると思います。
ぜひ、最初の一歩を踏み出してください。
そして、その一歩が踏み出せた人は隣の誰かをひとり誘って、またひとり…というように子育て支援の輪を広げていってもらえれば嬉しいですね。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:NPO法人「子育てほっとねっと」