夫婦共働きやシングルペアレントの家庭では、親が仕事をしている間、子どもがどのように過ごすか?大きな課題となります。家でひとり待たせるのは、なにかと不安なもの。
今回は、茨城県笠間市で学童保育を展開しているNPO法人「キズナベース」代表の森谷 未来さんに、活動内容や団体の考え方などを伺いました。
笠間市周辺にお住まいで子育てに悩みをもっている方、学童保育や習い事をお探しの方は、ぜひご覧ください。
三間や地域とのつながりを大切にした学童保育
ー本日はよろしくお願いします。まず「キズナベース」がどのような団体なのか、概要を教えてください。
森谷 未来さん(以下、森谷):「キズナベース」は、2016年に学童保育の職員が設立したNPO法人です。「キズナベース」という名称には、「“絆”を育む“基地”を作ろう!」という意味が込められています。
学童は、放課後や長期休みなどに共働き家庭やシングルペアレントなどのお子さんを保育する場所です。
そして「放課後」や「夏休み」などの長期休みは、「三間(さんま)」と呼ばれる、仲間、空間、時間の土壌の中で喜怒哀楽を共にし、学び、心を成長させる貴重な時間です。
最近は、その三間と共に、社会教育の機会だった地域行事や子供会などの活動が縮小傾向となり、ゲームや動画サイトなどが子どもの主な時間の過ごし方になっていることに危機感を持っています。
そんな中で、三間や地域とのつながりを大切にしながら共働き世帯等の子育て支援で社会を支え、保育で子どもたちを支え、そして子どもたちを未来へつなぐ。
私たちはそんな学童保育に大きな可能性を感じ、誇りを持って日々の活動に取り組んでいます。
ー学童保育についても詳しくお聞かせください。
森谷:現在、茨城県笠間市で民設の学童「キズナバ」と、公設の学童の運営を受託し、2カ所の学童クラブで、約240名のお子さんをお預かりしています。
たくさんの子どもたちのエネルギーが生まれる学童では、異学年交流やさまざまな経歴を持つスタッフと関わりながら、双方の学童が連携して活動しています。
具体的な活動・年間行事の一例として、まず子どもたちが主体となっておこなうレクリエーションやサークル活動があります。
これは自主性をともなった活動により、人とのつながりをつくることを目的としたものです。楽しみながら取り組んでもらえるように、クラブ内のポイント(トークン)を導入するなど独自に発展させたプログラムを保育の中で実施しています。
また、「個」の興味を応援しつつ、「皆で」取り組む課題も用意しています。協力することの中で喜びを感じる経験は、今の子どもたちには重要な意味を持つのではないでしょうか。
先輩の活動に憧れ、自分自身もさまざまなことに取り組む姿勢は、代々子どもたちに受け継がれています。
それから年に数回、キャンプも実施しています。学童の子どもたち150人以上が参加する「サマーキャンプ」、6年生が企画する「卒業キャンプ」、学童クラブに入所していない子どもでも参加できる「交流キャンプ」などです。
子どもたちそれぞれが役割分担し、野外炊飯で作るカレーライス、防災、スポーツ、工作、信頼関係を構築するアクティビティーなど、さまざまな体験を友達と助け合いながらおこない、自らの責任感や感謝の気持ちを持って友情を深めます。
また、宿泊ではお家の方からの手紙をサプライズで用意し、なかに愛情のこもったメッセージに涙するお子さんもいました。
キャンプのあとは子どもたちの様子が大きく変わるので、それだけ意義のあるイベントだと思っています。
これらのほかにも、射的や焼きそばなどの模擬店で賑わう「サマーフェス」、「チームマッチ」などたくさんの行事があります。
私たちの学童クラブでは、「協力・自主性型+アウトプット」の活動を主としています。そうすると、「個」の支援はどうなのか?と聞かれることがあります。
実はグループやチームがうまくいくには、個々の力が生きることが大事になります。たとえば野外炊飯で、低学年はかたい物が包丁で切れないので、高学年が担当し、低学年は柔らかい野菜を切る、皮をむく。「僕は料理に自信がないから、火起こし担当!」とかですね。
自分の力が人のためになる“やりがい”と、誰かが支えてくれる“感謝と信頼”の中で学童の行事や日常生活が成り立っていることに、子どもたち自らが感じ、気づいてもらえたら嬉しいです。
ー実際に学童クラブを利用している方からは、どのような反応がありますか?
森谷:保護者アンケートでは、「安心して働けます」といったコメントを多くいただきます。
ほかには「七草粥が食わず嫌いだったのに、学童で自分たちで作って食べたら、美味しかったようです」といったエピソードも。経験によって考え方、感じ方が変わるきっかけになることもあるのですね。
子どもたちからは、新入生向け動画配信で中・高学年の先輩にインタビューすると素敵なメッセージを贈ってくれました。
「学童はいろいろな経験ができるし、いろいろな人がいるから楽しい!でも、なかには性格があわない人がいたり、先生に叱られることもある。
でも、それも大事。さっき僕たちもケンカしたけど、仲直りした。そうやって僕たちはもっと仲良くなっていくのだと思う。新一年生、一緒に頑張ろう!」
私たちが今の子どもたちに感じてほしい、大切にしてほしいメッセージがギュッと詰まっていて、それを子どもたち自身の口から聞けたことに感激しました。
ボランティアサポートや地域体験を募集中
ー今後、開催予定のイベントなどはありますか?
森谷:コロナ禍ということもあり、近ごろは行事を縮小していました。ですが今後は、状況を見ながら再開していきたいと思っています。
そのためのボランティアサポートの人員や、子どもたちが取り組める地域体験(田植えや職業体験など)を募集中です。
また、入所希望者のなかには、定員により入所できなかったお子さんもたくさんいます。子どもたちへの居場所作りのための活動資金のご寄付も募っております。
私たちとしてもできるだけ多くの子どもと家庭を支えられるようにと、学童クラブ「キズナバ」と連携した習い事の事業を始めました。
習い事は学童の入所にかかわらず受講することができ、いただいた月謝の一部は学童クラブの運営資金になります。
現在、ピアノ・英語・マジック(手品)のレッスン生を募集しています。価格設定を抑えていますので、ご興味がある方はぜひお問い合わせください。
ボランティアへの参加が子どもの成長につながる
ー最後に、読者へ向けてメッセージをお願いします。
森谷:子どもたちには、ぜひ心と身体を動かす体験をさせてあげてください。その中で、自分が好きになれることを見つけ、課題や解決法を考え、そして実践する経験がとても大切です。
子どもが課題を抱えると親も不安になって、口や手を出したくなりますが、少し待ってあげることも大切です。
問題は、“どこで体験させるか”です。習い事や教育プログラムの一環として参加させるのもいいのですが、ボランティアに参加するのもおすすめです。
日本ではボランティアというと奉仕のイメージがありますが、地域の課題を見つけて解決する能力と、その行動力が有料のサービスにはない大きな価値を生み出すことに目が向けられていません。
子どもだけでなく、親子で取り組むことができれば、さらによい経験になるはずです。
地域社会の課題を解決するためのサービスや商品の開発など、将来の仕事に直結しますし、「自分にできること」を増やし、社会を支え、支えられているという実感が、子どもたちが幸せに生きるための宝物になります。
ぜひ一歩、踏み出すことから始めてみませんか?
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:NPO法人 キズナベース