学童保育というと、保護者が日中家にいない児童を放課後あずかってくれるところ、というイメージです。
しかし、そんなひとつの形におさまらない、多様な支援や活動を提供している場所があります。
今回は、NPO法人「コロンブスアカデミー」理事長の渡辺 克美さんと、同団体が運営する学童保育所「放課後ドラマぽにょ+(プラス)」責任者の金森 桂仙さんにお話を伺いました。
横浜市磯子区で学童保育をお探しの方、課題を抱える児童へのサポートを必要としている方、子どもに学校以外の居場所を見つけたいと思っている保護者の方は、ぜひご一読ください。
学校(教育)でもなく、家庭(しつけ)でもない、第3の育ちの場
ー本日はよろしくお願いします。まず「放課後ドラマぽにょ+」の事業内容についてお聞かせください。
渡辺 克美さん(以下、渡辺):横浜市磯子区にある「放課後ドラマぽにょ+」は、若者支援団体「K2インターナショナルグループ」に属するNPO法人「コロンブスアカデミー」が運営する学童保育所です。
「コロンブスアカデミー」では「途切れのない支援」を理念に、子育て支援事業などを展開しており、「放課後ドラマぽにょ+」(以下、ぽにょ)は、2009年に横浜市からの受託事業として立ち上げ、2015年からNPO法人の自主事業になりました。
学校(教育)でもなく、家庭(しつけ)でもない、第3の育ちの場、それが「放課後ドラマぽにょ+」です。
金森 桂仙さん(以下、金森):学童保育の対象は小学生ですが、未就学の兄弟児をあずかることもありますし、本人やご家庭の希望もあって小学校卒業後も利用を継続される場合もあります。
一般的な学童保育とは異なり、共働きやシングルペアレントの家庭でなくても、活動理念に共感してくださる方であれば、どなたでも登録可能です。
ただし定員もあるため、療育の対象となる子や個別支援級に通う子など、特にサポートを必要としている児童や家庭を、優先的に受け入れています。
登録者のなかには、周囲に頼れる人がおらず、ぽにょを利用するためにわざわざ近くに引っ越してきた方もいます。
利用日時は月〜土曜日の7〜20時まで、延長保育は21時までです。
ぽにょの周辺には、当グループで若者支援をおこなっている共同生活寮があり、スタッフも常駐しているので、要望に応じて夜間や休日などの時間外に対応することも可能です。
渡辺:東日本大震災時には、学童に来ていたお子さんたちの宿泊対応などもおこなっていました。
私たちは、本当に困っている人をサポートする、何かあったときには頼っていただける存在でありたいと思っており、可能な限り柔軟な対応をしています。
また、登録児童の保護者たちにも、「PPA」(ぽにょペアレンツアクションメンバー)として、できる範囲で参加いただくなど、協力しあえる“お互い様”の関係を築いています。
金森:保護者とのつながりとしては、「ぽにょ+オンライン」という独自の連絡ツールを活用しているのも特徴です。
児童が登所すると保護者に通知が届く仕組みもあり、安心してご利用いただけると思います。
ー料金や登録までの流れについて教えてください。
金森:年間登録料と月額保育料は以下のとおりです。月間利用のほか、都度保育料をお支払いいただく一時保育もあります。
そのほかの詳細は、当所ホームページの保育内容・料金ページをご覧ください。
年間登録料 | 初年度 33,000円 |
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2年目 22,000円 | |
3年目 11,000円 | |
月額保育料 | 月〜金 22,000円 |
月〜土 25,000円 |
※年間登録料・月額保険料とも兄弟割引あり
※あずかり時間は13:00〜20:00
※時間外・延長保育、給食費は別途
金森:登録希望者には必ず、毎年11月に実施する入会説明会にご参加いただいています。というのも、ぽにょでは年度途中の登録を受けつけていないからです。
説明会では、これまでの活動やイベントの様子がよくわかる動画をご覧いただき、その後に面談や書類選考をおこなったうえで、受け入れが決定します。
公式サイトで入会説明会の情報を発信していますので、ご登録を検討される場合はそちらをご覧ください。
習いごとのほか各種イベントに参加できる
ーぽにょでは、ほかの学童保育にはない活動もたくさんされているそうですね。
金森:学童にいながら習いごとに通えるのもぽにょの大きな特長です。
習いごとには、英会話やピアノ教室、ロボットプログラミング教室、卓球クラブがあり、子どもたちは好きなものに参加できます。発表会もあるんですよ。
また、ぽにょでは児童が新しいことに体験する機会を大切にしていますので、体験イベントもいろいろ企画しています。
ジャガイモやサツマイモの収穫体験や、当グループが運営しているパン屋での仕事体験、海外拠点のあるオーストラリアやニュージーランドでのプチ留学も実施しています。
山・海遊びや地域の人との交流を楽しめる「虫キャンプ」では、これまで奄美大島や沖縄、福島、石巻などに行きました。
女子児童からのリクエストで、ヘアセットやネイル体験でおめかしをして、東京の原宿へショッピングにも行きましたね。
一般的な学童保育所だと、小学4年生くらいで退所するケースが多いのですが、ぽにょでは、小学6年生まで在籍する児童が多いのも特徴です。
こういった習いごとやイベントなど、一般的な学童にはない楽しみがあるのも理由のひとつだと思います。それから、手づくりの給食やおやつも喜ばれていますね。
渡辺:毎月、誰かをさまざまなテーマのMVPとして表彰する「ゴールデンぽにょ大賞」もぽにょならではの活動ですね。
子どもを褒める、いいところを見つける。そして子どもが得意だったり、好きなことが伸ばせて活躍できるよう、スタッフ全員が子どもたちに目を配っていますし、すべての子どもたちに活躍できる場を提供しています。
特性の異なる児童が個性を伸ばしあえる、「学校(教育)でも家庭(しつけ)でもない第3の育ちの場」、それがぽにょのあり方なんです。
ー今後はどのようなイベントを予定されていますか?
金森:コロナ禍以来イベントの機会が減っていたのですが、ずっと中止になっていたものも復活できればと思っています。
最終的には周辺の小学校や団体の動き次第での判断になるのですが、人気の「虫キャンプ」や、みんなが集まれる大きなイベントを、夏休みの開催に向けて計画中です。
イベントや入会説明会・体験の最新情報は、ホームページで随時公開しますので、興味のある方はぜひチェックしてください。
人とつながり、多様性を認め合える学校以外の場を
ー最後に、読者へ向けてメッセージをお願いします。
金森:私たちは「おもしろい子(個)を育てる」を、ひとつの理念としています。
当グループで担っているのは、集団行動が苦手だったり個性が強かったり、課題や問題を抱えていたりする、いわゆるグレーゾーンにいる子どもや若者たちです。
ですからぽにょでは、多様性を認め合う価値観が子どもにも大人にも必要となります。
また、私たちは学童保育という立ち位置から、学校や団体、専門職の方々とも連携して、子どもたちに必要なサポートをつなげたいと考えています。そこには、保護者のみなさんの理解と協力が大きな助けとなります。
私たちの理念や想いに共感してくださる方は、ぜひみんなで一緒に子育てをしていきましょう。
渡辺:子どもにとって、学齢期をどう過ごし、どれだけ多様な大人と関わるかは、その先の人生に大きく影響してくるものです。この時期がいかに大切なものかということをみなさんに知っていただきたいです。
学齢期に楽しい経験をたくさんした子どもは、簡単に不登校や引きこもりにはなりません。もしそうなったとしても、相談できる場所があれば、心強さを感じることでしょう。
私たちは、さまざまな若者支援に取り組むなかで、「こういう学童があれば子どもたちが不登校や引きこもりにならずに済んだのに」と思う場所を形にしています。
そういった学童は、ぽにょだけでなく全国にたくさんあると思うんですよね。
学校が楽しくない、行くのが嫌だと思っている子にも、「家や学校以外にも選択肢はあるし、人とつながれる場所はたくさんあるんだよ」いうことを知ってもらいたいです。
ー本日は興味深いお話をありがとうございました。