大阪市淀川区加島のコミュニティかしま内に事務所を構えるNPO法人「スイスイ・すていしょん」は、人権と教育の営みを通して、水平な社会づくりを推進する取り組みをおこなっています。
具体的にどのような活動をしているのか、スイスイ・すていしょんのみなさんにお話を伺いました(写真左から、西岡 徳実さん・丸山 敏夫さん・大木 静雄さん・前村 静香さん・西岡 嘉裕さん)。
加島近隣にお住まいの方、人権教育や地域コミュニティについて考えてみたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
活動の3本柱は地域交流・人権教育・地域教育の推進
ー本日はよろしくお願いします。まず「スイスイ・すていしょん」はどのような団体なのか教えてください。
丸山 敏夫さん(以下、丸山):「スイスイ・すていしょん」は人権問題に関わっていく組織として、2004年につくられたNPO法人です。
現在は「人権・教育のまちづくりネットワーク事業」「人権教育推進事業」「地域教育推進事業」の3つの柱で活動しています。
スイスイ・すていしょんの「スイスイ」は水平のアメンボ、「すていしょん」は誰でも休憩できる居場所という意味を込めているんですよ。
また、学校の先生や地域の福祉を巻き込んだ取り組みも、私たちの活動のひとつで、たとえば人権教育のまちづくりネットワークとしては、企業や学校の先生に対し講演やフィールドワークを開いています。
地域教育推進としては、田植え・稲刈りなど、お子さんと保護者の方を対象にした活動をおこなっています。
田植え・稲刈りは、滋賀県のJA東びわこのご協力でおこなっています。
そこではただ作業するだけでなく、地元の方々との交流の席も設けているんです。
子どもたちに食文化を教えたり、農業に携わる方々の苦労を知ってもらったりするのが狙いで、この活動はもう20年以上は続けていますね。
そのほか取り組みの中心となっているのは、子ども食堂の事業です。
以前は住宅の集会場を利用して、食堂としてごはんを提供していましたが、コロナ禍の今はお弁当を子どもたちに持って帰ってもらっています。
子ども食堂は月1回の開催で、地元の子どもたちの居場所になってはいるのですが、一方で保護者の方との関係づくりが今後の課題です。
子ども食堂を通じていろいろな家庭とつながり、配慮が必要なところに手を差し伸べられるようにしていきたいですね。
ー人権教育推進事業についても教えてください。
丸山:私と大木は大阪市内の学校で教員をしていて、ずっと人権教育に取り組んできました。
学校で過ごしてきた私たちの経験上、子どもたちから差別的な言動が出てくるのであれば、それは親世代やその上の世代から植え付けられたものなんですよね。
1995年ごろに在籍していた学校での出来事が、今でも印象に残っています。
その学校の北側に線路が通っていたのですが、子どもたちは大人の方々から「あの線路を超えた向こう側に行くな」と言われていたんです。
部落差別のほかにも、現代ならコロナ患者や医療従事者の方、外国の方に対する差別意識など、人権問題はかたちを変えて出てくるでしょう。
そのため学校や地域の取り組みのなかで、「人を傷つける差別は間違っている」と発信していくのが大事だと考えています。
大木 静雄さん(以下、大木):子どもたちのなかには、もともと偏見なんてないんですよ。
親や親戚などの身近なところ、あとはインターネットを通じて入ってきた情報によって、偏見が醸成されるんです。
そこで私たちは子ども食堂や学習会などの際にチラシを渡して周知し、子どもたちに対する人権教育の発信をおこなっています。
丸山:上映会で人権問題について考える映画を流すこともあります。以前の上映会では、映画を一生懸命見てくれて、いい感想を書いてくださった親子がいました。
あとは地元の学校の先生方に「人権教育をしっかりやってください」という発信もしています。
自然体験、子ども食堂、学習会を企画中
ー今後開催予定のイベントについて教えてください。
西岡 嘉裕さん(以下、西岡嘉):このコロナ禍ではっきりと日程をお伝えできないのですが、まずは、例年5月に田植えをおこなっているので、今年も人数を絞って開催しようと調整しています。それに稲刈りや、味覚狩りといった「自然体験」。
「学習会」では、バルーンアート体験、織物体験、パソコン体験を企画中です。
先日は、大阪市のクラフトパークからスタッフの方に来ていただき、箸づくりをしましたよ。
あとは8月にある“地蔵盆”という地域のイベントに、スイスイ・すていしょんも加わって、一緒に何かできないかと考えています。
地蔵盆は地域にあるお地蔵さんを着飾らせて、そこでかき氷をやったりお菓子を配ったりする、子どものお祭りのようなイベントなんですよ。
「子ども食堂」の活動は、今後も毎月やっていきます。
西岡 徳実さん(以下、西岡徳):「みかん狩りやハイキングをしたい」という声もあるので、時期をみて取り組みたいですね。
ひとり親家庭や多子世帯の場合、なかなか家族だけでは出かけにくいので、子ども食堂などでつながりのできた人たちが誘いあって参加できたらいいなと思います。
西岡嘉:1922年3月に結成された「全国水平社」という部落差別に抗う組織があるのですが、ここ加島でも1923年5月に「西大阪水平社」が結成されました。
来年は西大阪水平社100周年記念ということで、何か地域でイベントができたらいいなと考えています。
また私たちの事務所の名前は「コミュニティかしま」というのですが、5年ほど前にコミュニティかしま10周年記念イベントを開催しました。
コミュニティかしまには自治会の事務所もあります。
地域の事務所機能が集約された場所なので、周年記念イベントにこだわらず毎年コミュニティ祭りを開催できるようになったらいいなと思っています。
コミュニティ参加を通じ人間関係を築いてほしい
ー最後に読者の方へ一言メッセージをお願いします。
前村 静香さん:スイスイ・すていしょんが展開するさまざまな事業は、加島地域の子どもたちに向けたものが中心となっています。
地域の子どもたちが家庭環境に左右されず、豊かに成長できるように、そして未来のスイスイ・すていしょんスタッフ育成にもつながるようにしていきたいですね。
また、お近くにお住まいの保護者世代の方々から、ボランティアとして参画してくださる方が出てくるといいなと思っています。
大木:「部落差別について何も知りません」という方もいらっしゃいます。
しかし何も知らないからこそ、聞いた情報に影響されて差別する側に立ってしまう可能性があるのではないでしょうか。
差別する側に立たず、きっちり水平の立場でいるには、人権問題について知る努力が必要です。
私たちは差別に苦しんでいる子どもたちのために、これからもみなさんに知ってほしいことを訴えたり、イベントを開催したりしていきます。
丸山:私は今、識字日本語教室でコーディネーター活動をしています。
というのも、差別のために学校へ行けなかった方、日本で仕事を求めている外国の方など、地域の識字日本語教室に通われる方が増えてきているからです。
教育機会確保法ができてからは、一度義務教育を修了された方も、本人の希望があれば夜間中学校で学び直しができるようになりました。
今後は夜間中学校以外の学習の場として、そういった方々を受け入れる識字日本語教室をつくることが課題になるでしょう。
またSNSが浸透した現代、人と人との関係が希薄になっていくことに危機感を抱いています。
もっといろいろなところで直接顔をあわせて、お互いのつながりを強めるような地域づくりが必要です。
みなさんにはどんどんコミュニティに参加いただいて、悩みを相談できる人間関係をつくってほしいと思っています。
西岡徳:私も加島で子育てしていた時代があります。子育てや自治体のことを学びながら、地域の方々に支えられて子どもを大きくしてきました。
今の子育て世代の方々と子どもたちに対しても、近所のおっちゃん・おばちゃんのような感じで接してサポートできたらいいなと思っています。
西岡嘉:私もここの地域で生まれ育ちました。親を早くに亡くしたのですが、地域の温かさに育ててもらったと感じています。
私たちは地元のことを「村」と呼ぶんです。ところが今は地域のつながりが薄くなってしまって、その村のよさがさびれていっていると思えてなりません。
だからこそ地域の頼れるコミュニティとして、スイスイ・すていしょんの活動を続けていきたいですね。
今後はどれだけ青年層が私たちの活動を理解して参加してくれるかが、大きな課題になると思います。
また高齢者の居場所づくりの取り組みをコロナで2年ほど中止している状況なので、高齢者と子どもたちが交流できるような活動も考えていきたいです。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:スイスイ・すていしょん