子どもにとってさまざまな大人と関わったり、いろいろな場所を訪れたりすることは視野を広げるのに有効ですが、コロナ禍の現在、なかなかそのような機会がありません。
そんななかで、子ども自ら新聞の企画を立てて取材をおこない、記事を書いているのが「つづきジュニア編集局」と「MMジュニア編集局」です。
地域を取材する新聞作りを通して視野が広がり、文章力やメモを取る力、質問力やプレゼン力も身に付くといいます。
今回はそんな2つのジュニア編集局を運営するNPO法人「ミニシティ・プラス」事務局長の岩室 晶子さんに活動についてお話を伺いました。
ジュニア記者の活動に興味のある方は、ぜひご一読ください。
子ども自ら企画・取材して記事を作成する
ー本日はよろしくお願いします。まずは「つづきジュニア編集局」の概要について教えてください。
岩室 晶子さん(以下、岩室):「つづきジュニア編集局」は、公募で集まりジュニア記者になった子どもたちが、子どもならではの目線と力をフルに活かして地域の魅力を取材し記事を書き、発信するという活動です。
この活動は横浜開港150周年、都筑区制15周年の節目に当たる平成21年に何か子どもたちが地域に関われる事業がないか、という話があり、メディアを作りませんか?と提案したことから始まりました。
補助金や広告の掲載料、協賛金をいただきながら「つづきジュニアタイムズ」という新聞を発行しています。
ジュニア記者は小学校4年生から高校生までを対象にしています。今は小学生が中心ですが、中学生、高校生も参加しています。活動を続けたいという子どもが多く、活動を継続していたら、一時はジュニア記者の人数が70人くらいになりました。
ただ、70人もいると編集会議の場所も工夫が必要で、当初から協働していた大学の広い教室を借りるなどもして、形を変えながら13年続いています。
ー子どもたちは活動のなかで、どのようなことをしますか?
岩室:具体的な活動としては、まず5月に最初の編集会議をおこない、取材先や大枠のテーマを決めます。
動物が好きだからペットショップや動物園に取材に行きたいという子もいれば、いろいろな会社の裏側を見たいから、実際に会社に行きたいという子もいて、子どもたちが挙げるテーマは本当に多種多様です。
それらのアイデアを聞いた上で実現可能なものを大人たちが調整してアポイントを取ります。取材活動は相手の都合に合わせる必要があるため、夏休みになることもあれば秋になることもあります。
取材の予定が決まったら子どもたちに募集をかけます。さすがに大人数で行くことはできない場合も多く、施設ごとに人数制限もあるため、ときには抽選になることもあります。
取材を終えたら記事を書き、それをまとめて施設や企業の方に確認いただき、ホームページにアップしていく形です。
年に1回、それらの記事を全部まとめる形で1年間の集大成となる新聞「つづきジュニアタイムズ」を作り、区内すべての公立の小中学校に配っています。
都筑区内には25,000人ほど児童、生徒がいるので、新聞を学級人数分の35枚ずつに分けて束ね、発送するのですが、大変な作業にも関わらず子どもたちは発送作業も手伝い、楽しんでやってくれています。
配布した新聞には来年度の記者募集についても書かれていますので、それを見てまたジュニア記者をやりたい子どもが来る、というような流れができていますね。
取材記事だけでなく、たとえば都筑区内のロケ地やフォトジェニックポイント、都筑区7不思議といったオリジナルの特集記事も作っています。
ほかにも、図書館の方たちを含め大人や大学生などを交えて、図書館の方たちとおすすめの本を競い合う「ビブリオバトル」というイベントをおこなったこともあります。子どもはしっかり練習してきているのと、プレゼンが非常に上手いので、だいたい子どもが勝ちますね。
また、大学のメディア科の学生と一緒にYouTubeでニュースを読むというイベントもやりました。
ー「MMジュニア編集局」についても教えてください。
岩室:「MMジュニア編集局」は、みなとみらいを中心に子ども目線で地域の情報を伝えるメディア活動です。
みなとみらいのエリアマネージメント事業で子どもと一緒にできる活動を募集していたため、メディア活動を提案して始まりました。
みなとみらいには企業や観光スポットなどさまざまな魅力がありますが、それを子ども目線で紹介しようという試みです。
こちらのジュニアタイムズの配布先は、近隣の3つの小学校、みなとみらいの公共施設、商業施設などに置いてもらっています。またマンションの自治会にお願いして、タワーマンションにも配布させてもらっています。
みなとみらいの記者は、まだスタートしてまもなく、コロナ禍もあって最近はなかなか子どもが集まりにくい状況です。
人数が少ない分、子ども一人ひとりに担当を割り振ることができるというメリットはありますが、もう少しジュニア記者の数を増やしたいですね。
ー活動しているお子さんたちにどのような変化がありますか?
岩室:「つづきジュニア編集局」「MMジュニア編集局」で記事を書くことによって、文章を書く力が身に付きます。
元新聞記者の方に文章の書き方を教えてもらったり、書いた文章を添削してもらったりなどの講座もおこなっています。
取材のときはメモを取る必要がありますが、しっかりと要点をまとめないと良い記事が書けないので、取材を通して授業のノートの取り方が変わったと言われることもあります。
また、質問する力やプレゼンをする力も身に付くということで、保護者の方が参加させたいと思われて、来られることも多いです。
そのため、子どもにジュニア編集局に入った動機を聞くと、「親に言われたから来た」という子どももいます。ただ、活動をしていくうちに記者が面白くなって、楽しんで活動し、次年度も自分の意思で活動を続けている子どもが多いですね。
取材のときに大人なら行けないようなところに行けるのも子どもにとっては大きな経験だと思います。
たとえば映画館の裏側とか、企業のデータセンターとか、普通なら入ることすらできないところでも、子どもたちに体験してもらえるなら協力するという企業さんも多く、ジュニア記者の取材ということで入れてもらえるので、非常に貴重な経験になっています。
来年「こどもメディアシンポジウム」を開催予定
ージュニア記者の募集はされているのでしょうか。
岩室:はい、ジュニア記者の募集はおこなっています。特にMMジュニア編集局は現在記者の数が少ないので、興味を持った方はぜひ積極的に応募してほしいですね。
新型コロナウイルスの感染が心配という保護者の方もいるかもしれませんが、取材自体はZoomなどリモートでおこなうこともありますし、企業や施設に伺うときはしっかり感染対策をおこなっています。
このご時世、こういう機会でもないと子どもの活動範囲が狭まってしまいます。子どもの視野を広げることにもつながりますので、少しでも興味があればお問い合わせをお待ちしています。
ー今後のイベントなどあれば教えてください。
岩室:来年の1月か2月に「こどもメディアシンポジウム」を開催する予定です。
毎回少しずつ企画が違うのですが、前回は朝日新聞や読売新聞といった本当のメディアの方に来てもらい、子どもたちに記者会見の場を設けて、インタビューをしてもらう企画をおこないました。
また、ほかの地域で子どもメディア活動をやっているところとZoomで交流するなど、さまざまな企画を考えています。
一般の方も参加していただけますので、詳細は公式サイトをご覧ください。
MMジュニア記者を募集中!
ー最後に読者の方へメッセージをお願いします。
岩室:取材を通してまちのことを知ることは楽しいですし、子どもたちにとっては勉強になります。実際、私たちは活動を通して成長した子どもを何人も見てきました。
現在、MMジュニア記者を募集中ですので、興味を持った方は、こちらからぜひ応募してください。
また、新聞を置く場所も募集中です。実際に手に取って読んでいただければ、子どもならではの視点に新たな発見もあるかと思います。
こちらから新聞をお送りしますので、店舗や施設などに置いていただける場合は、ぜひご連絡ください。
―本日は貴重なお話をありがとうございました。
■ 取材協力:「つづきジュニア編集局」 「MMジュニア編集局」