夫婦で共働きの家庭や、1人で子育てをしている方にとって、“子どもの学校が終わったあとの時間”は不安材料のひとつと考える方も少ないでしょう。
今回は、群馬県前橋市にある保育施設「光の子クラブ」の施設長である田中 智子さんにインタビュー。
「働くお父さんやお母さんを応援する」ために運営しているというこの施設では、一体どのような保育がおこなわれているのでしょうか。
群馬県内で子育てをしている方、そして子育てのヒントを得たい方は、ぜひご覧ください。
園にいながら、好きな習い事に取り組める場所
ー本日はよろしくお願いします。まず、「光の子クラブ」の概要について教えてください。
田中:私たち「光の子クラブ」は、「カナンプレイス」というNPO法人を母体としたキリスト教保育主体の学童保育です。
基本的に365日営業しておりまして、働くお父さんやお母さんを応援するという目的のもとに活動をしております。
小学校1年生~6年生までの子どもを対象に、「みんなが兄弟のように過ごせる場所になったらいいな」という思いで活動しているところです。
活動の内容としてはよくある学童保育と共通する部分も多いのですが、目立った特色としては、この場所で習い事に参加できることがあります。
習い事には保護者の方による送迎がつきものですが、夫婦共働きだとそれもなかなか難しいですよね。
それなら子どもたちが学校帰りにここへ来て、そのまま習い事ができたらいいのではないかということになりました。
現在おこなっているのは、イギリス人の先生によるネイティブの英語スクール、ピアノの先生に教わるピアノ教室、プロのトロンボーン奏者に教わるトランペット教室、そしてドラム教室。
さらに週に1回の乗馬教室、あとは甲子園出場経験のあるコーチが教える、リズムトレーニング教室というものを取り入れています。
選択する習い事によって細かな事情は異なりますが、決まった曜日に毎週参加するかたちではなく、子どもたちがやる気になった時に参加をするというスタイルを大切にしています。
半強制的な状態で習い事に取り組むより、やはり自発的に取り組んでもらったほうが、伸び幅が大きいと思うんです。
習い事の先生にも、それに同意していただいており、習い事によって参加をした分だけ費用をいただく形式で進めています。
地元の特色を活かした農業体験でお金の流れを学ぶ
田中:習い事とは別の話ですが、「光の子クラブ」がある群馬県前橋市広域には、乾燥芋農家が多いんです。乾燥芋というのは、要するに干し芋のことですね。
その乾燥芋農家の方からの協力を得て、子どもたちに農業体験をさせています。
子どもたちも農家の方を「師匠」なんて呼んだりしながら、芋を植えたり、収穫したり、蒸して乾燥させたりと、とても楽しんでいます。
そして乾燥芋が完成したら、毎年法人で開催しているバザーイベントの中で商品として子どもたち自身が販売するんです。
実際に生産者となって、消費者に届けて、乾燥芋と引き換えにもらったお金を自分たちの活動資金として使う。
この一連の活動を、学童保育のなかに組み入れました。
開始してから2年が経ちますが、子どもたちにとって貴重な経験となりますので、行事のなかでも重点的に取り組んでいます。
ー普段の活動について、保護者の方からはどのような反応がありますか?
田中:「子どもの人見知りがなくなった」というお話は、お母さんたちからよく聞きます。
施設のなかの人だけでなく、外部の人とのつながりをもてるのが、よい影響をもたらしているのかもしれません。
英語の習い事に関しても、先生は日本語を一切話さないので、どうにか自分でコミュニケーションをはからないと何も進まないんです。
「それならそれで、やるしかない」といった感じで、自然とコミュニケーション能力が身につくというのもあるでしょうね。
それから、「今日はスポーツ教室があるから学童に行きたい」ですとか、「今日は乗馬クラブの日だから学童に行きたい」というように、「子どもが自分から行きたがるようになった」というお話もいただいております。
仕事があるからどうしても学童保育に子どもを預けなければならない保護者の方にとっても、子どもに我慢をさせているという意識がなくなったと話す方も多いですね。
夏休みには軽井沢でキャンプのイベントも
ー今後開催予定のイベントについて教えてください。
田中:大きな行事があるのは、学校が夏休みに入る8月ですね。
「軽井沢フェローシップバイブルキャンプ」というキャンプ場で、子どもたちが親と離れて過ごすイベントがあります。2泊3日のキャンプです。
先ほどお話しした農業の活動も、毎年おこなっています。その年に何を作るかについては、子どもたちが会議のなかで決めています。
あとは今年2022年の行事でいうと、7月に「カナンマルシェ」というイベントもありますね。
市内で活躍されているキッチンカーですとか、植物性のドーナツ屋さんですとか、ヴィーガンおやつのお店など、沢山の出展者さんにご協力いただきながら毎年開催しています。
また、見学は随時受付中ですので、希望される場合は、ホームページ内のフォームやお電話にてお気軽にお問い合わせください。
“種まき”で子どもの可能性を広げたい
ー最後に、入園を検討している読者の方へメッセージをお願いします。
田中:私たち「光の子クラブ」ができたきっかけとして、働くお父さん・お母さんであったり、シングルのご家庭だったりと、そういった方々の助けになりたいという願いがあります。
それで365日、夜9時30分まで子どもをお預かりできる体制を整えました。それが学童保育としての活動の始まりです。
設立から現在まで活動の内容が少しずつ変わったり、賛同する方々によるサポートが充実してきたり、この場所を卒園した子どもがアルバイトとして戻ってきたりと、本当にさまざまな変化がありました。
なかには送迎の手伝いをしたいと、自ら声をかけてくれる方もいらっしゃいます。
「光の子クラブ」は、これまで関わってきた、たくさんの方々の気持ちでここまで大きくなった施設なんです。
ですから私たちも、これまで助けてもらった恩を、できるだけ多くの子どもたちにお返ししたいと考えています。
そのために私たちができることは、種まきだと思うんです。
子どもたちに新たな気づきや興味を抱かせるような、さまざまな種をまいてあげること。
その種をどう育てるかは子どもたちの気持ちにもよりますし、私たち以上に子どもたちと近い場所にいる、お父さん・お母さんにも左右されます。
それを考えると学童保育の先生というのは対面する時間も短く教育機関でもなければ家庭でもない、なんとも微妙な立場ですが、それでも私たちしかできない種まきがあると思っています。
この場所でおこなう習い事もそうですし、農業体験などの年間行事もそうです。なるべく多くの体験を、子どもたちに提供したいと考えています。
それを子どもたち一人ひとりが、「自分にはこういうものがあっている」とか、「こういうことにも挑戦していいんだ」などと感じ、自らの可能性を広げていく。
そのお手伝いをさせていただければと思います。ぜひお気軽に、お声がけください。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:NPO法人カナンプレイス