文部科学省の調査で、小中学校における不登校の子どもの数が2020年度に8年連続で増加したことが判明するなど、不登校やニート、引きこもりは大きな社会問題となっています。
そんな子どもたちを支援するために設立されたのがNPO法人「青少年自立支援の会」。単に子どもを自立させるだけでなくその先を見据えた活動をおこなっているのが特徴です。
今回は、「青少年自立支援の会」副理事長の阿相守彦さんと、カウンセラーの東雲さんに取り組み内容についてお話を伺いました。
子どもの不登校、引きこもりなどで悩んでいる方はぜひご覧ください。
カウンセリングなど4つのプログラムで子どもを支援
ー本日はよろしくお願いいたします。まずは「NPO法人 青少年自立支援の会」の概要について教えてください。
阿相 守彦さん(以下、阿相):「NPO法人 青少年自立支援の会」は、不登校、ニート、家に閉じこもっていたり引きこもっていたりする子どもたちを支援する団体です。
平成18年に設立し、東京都江戸川区の京成小岩駅前で就業支援施設を運営しています。
また、千葉県いすみ市にある施設では、自然が多くのびのびとした環境で共同生活を送りながら、農業体験などをおこなうことが可能です。
活動内容としては、大きく分けて4つのプログラムを実施しています。
1つ目は「訪問/来訪カウンセリング」です。これはニート、引きこもり、不登校、発達障がい者の自立支援・社会復帰の手助けを目的としており、ご自宅あるいは京成小岩駅前にあるカウンセリングルームでおこなっています。
青少年自立支援の会にはさまざまなカウンセラーが所属しており、状況や環境に合ったカウンセラーを選定することが可能です。
やはりカウンセラーも人間ですので、子どもと相性が合わないこともあります。青少年自立支援の会ならそれぞれの子どもに合ったカウンセラーを割り当てられます。
カウンセリングによって定期的あるいは長期的なカウンセリングをおこなうのか、また後述する就業体験や共同生活を併用するのかなどを決めていきます。
電話での相談は無料ですが、カウンセリング料金は最初の1時間が12,000円(税込)、その後は30分あたり3,500円(税込)の延長料金がかかります。また、訪問カウンセリングの場合は交通費の実費をいただきます。
2つ目は「就業支援プログラム」です。このプログラムは京成小岩駅南口の商店街にある「いすみ物産倶楽部」という、房総半島いすみ地方のアンテナショップを利用しておこなってます。
不登校やニートになった子どもは、自宅でも高卒資格を取ることはできますが、実社会で活躍するための経験ができません。このアンテナショップで働くことで自立して生活ができるための訓練をおこないます。
働き方に関しては、お子さん、親御さんと相談して決め、お給料もしっかり出ます。
3つ目は「共同生活プログラム」です。このプログラムでは千葉県いすみ市にある施設でおこないます。調理・炊事・洗濯といった日常生活に必要なスキルを学んだり、パソコンの使い方を習得したり、農業体験や就労体験をおこなったりすることが可能です。
生活リズムを整え、心身共に健康になることも社会復帰に向けて大切なことです。また、施設が自然に囲まれた静かな場所にありますので、世間と距離を置きながら自分のペースで過ごすことができ、自分を見つめ直す良い機会にもなります。
4つ目の「海外留学プログラム」は、日本で生きづらさを抱えている子どもたちに、留学体験をしてもらったり、語学力や国際感覚の向上を目指したりすることができます。
海外留学といっても、現地のホストファミリーに日本人の家庭を選ぶことができますので、まったく語学ができなくても安心です。また、落ち着いて学べる環境を重視していますので、留学先として大都市中心部は基本的に除外しています。
ー新型コロナウイルスの流行による活動への影響はありますか。
阿相:そうですね、残念ながら現在は新型コロナウイルスの影響で海外留学プログラムは実施できていません。
また、千葉県いすみ市の施設は一時的に閉じており、再開の目途が立っていない状況です。新型コロナウイルスの流行が落ち着き次第、活動を復活させたいですね。
毎週第3日曜日に京成小岩駅周辺でゴミ拾い活動中
ー実際にプログラムを受けたお子さんの反応や変化を教えてください。
阿相:全体的に自分の生きる道や居場所、目的といったものが見つけられる子どもが多いですね。
たとえば、就業支援プログラムを受けた子どもからは、大変だったけど店長が優しく指導してくれ、コミュニケーションがうまくなり少し自信がついたという声が寄せられました。
東雲さん(以下、東雲):海外留学プログラムを受けた子どものなかには、海外のほうが合っていると感じてそのまま海外の大学に進学した子どももいるんですよ。
また、留学から戻ってきたら、憑き物が落ちたかのように活動的になった子どももいます。日本という狭い社会だけがすべてではないとわかると楽になるのでしょう。
そうやってカウンセリングやプログラムを経て元気になった子どもたちが遊びに来てくれるのは、本当に嬉しいですね。
ー今後、開催予定のイベントなどありましたらご紹介ください。
東雲:毎週第3日曜日の朝8時から9時頃まで、京成小岩駅周辺のゴミ拾いをおこなっています。
当団体だけでなく、地元の方やほかの団体の方もいらっしゃって、ワイワイ賑やかに活動しています。
ゴミ拾いの活動が終わった後、私たちの団体から参加者に簡単な食事を提供しています。
そこで話をすることで新たなつながりができますので、ぜひ参加してみてください。
また、江戸川区や葛飾区といった周辺の区から講演会の要請が来ています。
新型コロナウイルスの流行が落ち着いてからになると思いますが、私たちの活動をより知ってもらう機会になると思いますので、ご期待いただけましたら幸いです。
一人で悩みを抱え込まず早めに相談を
ー最後に読者の方へメッセージをお願いします。
東雲:不登校、働けないニート、家に閉じこもっていたり引きこもっていたりする子どもを抱える保護者に伝えたいのは、絶対に一人で抱え込まないようにしてほしいということです。
青少年自立支援の会でなくても、どんな団体でも良いので、まずは相談してください。
また、家庭内、自分たちだけで抱えていると、時間とともにどんどん事態がねじれて複雑化し、気がついたらどうしようもないところまでいっていることが少なくありません。
悩めば悩むだけ時間がかかり、子どもも保護者も苦しい思いをしますので、早めに相談することが重要です。
私たちの団体をはじめ、相談だけなら無料というところが多いですので、迷わず「助けて」と相談してください。
阿相:自立することは大事ですが、自立すればすべてがうまくいくとは限りません。
私たちは、本人が失敗を含めた自分の経験から自信をつけることで、自己肯定感を高めることが大事だと考えています。
ただ、それはわかっていても人間のことなのでなかなかデータや理論通りにうまくはいかないのが現実ではないでしょうか。
私たちは、こちらから子どもに変化を押しつけるのではなく、子どもと一緒に自分の進みたい方向性を一緒に見つけてあげて、その方向を指し示してあげることがカウンセラーの仕事だと考えています。
1対1でしっかりと向き合うことができるのは我々団体の強みですし、それは行政や親同士の相談会では難しいことです。
この記事をきっかけに、一人でも多くの方が青少年自立支援の会に相談してくれることを願っています。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■ 取材協力:NPO法人 青少年自立支援の会