障がいを持つ子どもたちは何かを学ぶのに時間がかかり、社会に出てから職業に定着するのがなかなか難しいといいます。
こうした課題を解決すべく、「NPO法人つなぐ」では、0歳から18歳の障がいを持つ子どもを支援し、未来が明るく楽しいものになるよう支援しています。
今回は、副理事長の桐淵 良美さんにお話を伺いました。
保護者の方はもちろん、子どもたちを支援する活動をしたいと考えている方もぜひご覧ください。
ゆっくり長い時間をかけて未来へつなげる
ー本日はよろしくお願いいたします。まずは「NPO法人つなぐ」の概要と活動内容について教えてください。
桐淵 良美さん(以下、桐淵):「NPO法人つなぐ」は、平成26年10月にスタートし、障がいのある方々への支援をおこなっている団体です。
当法人では、児童発達支援と放課後等デイサービスの全5事業所運営しておりますが、今回は、子ども向けには「ちゃいるどえっぐ上小塙」と「元総社すくーる2」という事業所のお話をさせて頂きますね。
「ちゃいるどえっぐ上小塙」は、まだ新しく令和元年に群馬県高崎市上小塙町でスタートし、0歳から6歳の発達支援を必要とする子どもが通う、当法人の中では3番目に出来た児童発達支援事業所です。
この年齢の子どもたちは、集団生活に入る前の準備期間に当たるため、ちゃいるどえっぐ上小塙に通うことで少しでも不安なく次のステップに飛び立てるよう、ゆっくり学んでもらうことを目的としています。
具体的には1歳半からの早期療育、幼稚園や保育園に向けての身辺自立、苦手なことをゆっくりと学べる個別療育や集団療育が主な活動です。
「ちゃいるどえっぐ上小塙」の特徴は、元はワンフロアだった空間を5つの部屋に分け、活動ごとに使い分けている点です。
それぞれの部屋を仕切られた空間にすることで、1日預かりの子どもと入れ替えに、幼稚園や保育園に通っている子どもを午後から預かることも可能になりました。
仕切られているとはいっても、部屋の間は子どもでものぞける高さのガラスで仕切られていますので、友達が一緒の部屋にいなくても様子が確認でき、不安な気持ちを軽減することができる環境になっています。
ー「元総社すくーる2」についても教えてください。
桐淵:「元総社すくーる2」は群馬県前橋市元総社町にある施設で、6歳から18歳のお子様への支援をおこなっている放課後等デイサービスです。
染色体異常のあるお子様、身体的に小さいお子様、医療ケアが必要なお子様、知的障がいや情緒障がいを持っているお子様、LD障がいを持っているお子様など、幅広い特性のある子ども同士を関わらせることで、人への思いやりや自分とは違う特性を持った人を受け入れる優しい心を育てることも目的としています。
また、人の手助けをすることなどを通して自分自身の達成感や存在感を味わってもらい、自己肯定感を高められるよう関わりながら支援しています。
「元総社すくーる2」の特徴は、「のびのびチーム」、「ぐんぐんチーム」、「未来チーム」と成長段階を分けて支援をおこなっていることです。
「のびのびチーム」は基本となる土台作りのための基礎づくりの支援をおこない、「ぐんぐんチーム」では自身の感情のコントロールの仕方を学ぶ事や自分の事だけを考えるのではなく「人のため」に何かをしてあげる事で自身の必要性や居場所を見つける事ができ自信につながり人を思う優しい気持ちを学ぶ事なども目的としています。
そして「未来チーム」では就労への土台作りや基礎作りができるような環境設定を目指しており、他の事業所のお手伝いや製作活動、個別職業体験等も出来る様関わっているんです。
発達につまずきがある子ども達ですと様々な事柄を学ぶ事や環境に慣れる事に何倍も時間や準備が必要になるお子様が多いと思います。18歳で卒業してからもお仕事に慣れるまでに時間がかかる方も多いと思います。
ですから、この放デイの時期から少しずつ一つの作業に集中する時間を延ばす練習や、あまりやりたくない作業でも指示を受け行うなど、無理せず楽しみながら少しずつ行う事で、就労への土台を作れるよう様な支援もおこなっています。
ー子どもと関わる際はどんなことを意識していますか?
桐淵:NPO法人つなぐの子どもと関わる際の理念は「行動を正さず意識を正す」です。
子どもがやってはいけないことをしたとしても頭ごなしにそのことを否定するのではなく、なぜそのような行動を取ってしまったのかを一緒に考え理解してあげることが重要だと考えています。
また、積極的に褒めることも大事です。小さなことであってもいっぱい褒めてあげることで子供達は自分をわかってくれていると感じ、心を開いてくれ指示も入りやすくなり、自己肯定感も高くなるのではと思っています。
保護者だけでなく先生も成長にびっくり
ー保護者の方からの感想や反応について教えてください。
桐淵:
幼稚園や保育園と併用して子どもが通っている保護者様からは、通所してから言葉が出始めたり、落ち着きが出てきたり集団活動に参加出来る様になってきた、子供と関わりやすくなったなどという感想をいただいています。
また、保護者だけではなく幼稚園や保育園の先生も、今までは座っていられなかった子どもが支援を受けてから2~3ヶ月で座れるようになったり指示を聞いてくれる様になったり驚いていたという嬉しいお話もありました。
幼稚園や保育園にはこちらから訪問させていただき、子どもの特性に合わせた関わり方等も一緒に話し合うなど担当者会議等も行ったりしています。
あとは、3ヶ月に1度、写真入りでの活動の様子というものをお渡ししており、これも好評です。
写真入りで個別療育や集団療育等の活動内容や子供の事業所での様子を親御様や関係機関などに分かりやすくお伝えするのに役立っていると感じています。
ーNPO法人つなぐの活動をより深く知るためのイベントはありますか。
桐淵: 実は今まさに発達支援のコミュニティハウスを準備しており、施設に預ける前の保護者や、子どもについて不安があるけど、どこにも相談ができない保護者様等が気軽に来ていただくことができる場所を始めたところです。
また、運動会やクリスマス会、夏祭りなど親子で参加できるイベントなどは各事業所で行っております。
障がいがある兄弟姉妹を持っている子ども達等が、障害に対して偏見を持たず他の障がいがあるお子様達と触れ合いながら一緒に過ごすのが当たり前になる環境提供や、障害について一緒に学べる様な活動もしていきたいと考えています。
保護者も障がいを持つ子どもを支援したい方も気軽に相談を
ー最後に読者の方へメッセージをお願いします。
桐淵:この活動のきっかけは、私の双子の子どもがダウン症で産まれたことでした。
自身の経験からも、障がいのある子どもを持つ保護者のみなさんの気持ちを理解し心に寄り添うことができると思いますので、障がいのある子どもの将来に不安がある保護者の方は、相談だけでも良いのでぜひご連絡ください。
保護者のみなさんと、子ども一人ひとりの個性を大事にしながら、何が社会に出るのに必要なのかについてゆっくり一緒に考えたいと思っています。
また、私たちの事業所だけでなく、全国で子どものことを本当に考えて活動している事業所が増えることが私の願いです。
ただ単に障がいがあるから見てあげようという気持ちではなく、預けていただくからにはその子が本当に良い成長をするためにきちんとした関わりや療育を提供してあげることが重要だと感じているのですが、まだまだ日本にはそのような事業所が十分とはいえません。
自らそのような活動に対し熱い思いがある方も、ぜひご連絡ください。私たちの事業所の見学やこれまでの体験を伝えることを含め、ご協力させていただきたいですね。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■ 取材協力:NPO法人つなぐ