新型コロナウイルスの影響によって小学校で導入された“オンライン授業”。
感染拡大防止に伴う休校期間中なども継続して学習機会が提供されるため、保護者や子どもの心配が軽減されたという声がある一方で、さまざまな現状や意見も耳にするようになりました。
そこで、今回は小学生の保護者500人を対象に「オンライン授業について」のアンケート調査を実施。見えてきたのは、子どもの勉強環境を整えるために四苦八苦している保護者の姿でした。
約7割の保護者がオンライン授業に満足!
始めに子どものオンライン授業を見たことがある保護者へ、どの程度オンライン授業に満足しているのか聞いてみました。
全体では約7割の保護者が「満足」(15.8%)「ある程度満足している」(56.8%)と回答。
低学年(小学1、2年生)から中学年(小学3、4年生)、高学年(小学5、6年生)にかけて「少し不満」「不満」の割合が少しずつ高くなっていきました。
では、オンライン授業のどのような点に小学生の保護者は満足し、また不満を感じているのでしょうか。アンケートからその現状を探ります。
低学年の保護者、約3人に1人がオンライン授業を頻繁に見る
まずは、保護者が子どものオンライン授業を見る頻度とその理由について調査しました。
全体として最も多かったのは、31%で「ときどき見ている」でした。
学年ごとに見てみると、低学年は「毎回見ている」が19.5%、「ほぼ見ている」が14.6%の計34.1%で、約3人に1人の保護者が子どものオンライン授業を頻繁に見ていることが分かりました。学年が上がるごとに頻繁に見ている保護者は少なくなります。
では、保護者はどのような理由で子どものオンライン授業を見ているのでしょうか。
オンライン授業を見る保護者の約7割が「気になるから」(58.7%)、「不安だから」(15.9%)オンライン授業を見ていることが分かりました。
具体的にどのような点を保護者は不安に思い、気になっているのでしょうか。
全学年を通して、最も多かったのは「授業に集中しているかどうか」(31.3%)、次いで「パソコンやタブレットが使えているか」(20.1%)でした。
特に低学年はパソコンの使い方が分からず、「使い方について何度も呼ばれた」(小学1年生の保護者)という体験談や、「授業でもう少しパソコンの使い方やインターネットとの繋ぎ方を教えてから持ち帰ってきてほしい」(小学2年生保護者)と望む声もあり、授業を受けている子どもから目が離せない保護者が多いようです。
また、低学年に比べて中学年、高学年の保護者は「授業内容そのもの」や、「教員の指導力」など、子どもではなく授業を気にかけて見ていることが分かりました。
中学年から勉強が少しずつ難しくなってくるほか、中学進学や中学受験を前にする保護者にとっては、気になるポイントなのでしょう。
「積極的だった」「話しをよく聞いていた」意外な一面を発見!
では、実際にオンライン授業を受ける子どもの様子を見て、保護者はどのような印象を受けたのでしょうか。子どもはオンライン授業に集中しているかどうか尋ねてみました。
計7割以上の保護者が、子どもはオンライン授業に「とてもよく集中している」(16.4%)、「集中している」(61.0%)と感じていました。
また、オンライン授業を見て子どもの“意外な一面”に気づいた保護者も多かったようです。
一方で子どもがオンライン授業に「あまり集中していない」(21.0%)「集中していない」(1.6%)と答えた保護者に、子どもは集中せずに何に気を取られていたのか尋ねると、「ぼーっとしていた」や「オンライン上で、子ども同士で変な顔をしたりして遊んでいた」などという声が多く寄せられました。
中には、「画面に映らないところで漫画を読んでいた」(小学3年生の保護者)や「zoomのバーチャル背景を変えたり、顔をデコったりして遊んでいた」(小学4年生の保護者)といった子どもの姿を目撃した人も。
家庭で見せる姿とは違う“子どもの 意外な一面”が見られるのもまた、オンライン授業ならではの良さなのかも知れません。
「仕事を休んで子どもの授業を手伝った」オンライン授業で困ったことは?
子どもの学習状況などを心配してオンライン授業を見る保護者がいる一方で、“集中して取り組んでいる”子どもの姿を見て胸を撫で下ろした方も多いことが分かりましたが、その“集中できる環境”を作るのには保護者の力も欠かせません。
続いては、保護者自身がオンライン授業で困っていることについて聞いてみました。
6割以上の保護者が子どものオンライン授業で困っていることがありました。
最も困っていることは「授業中の生活音の配慮」(38.9%)、次に仕事との両立(19.7%)、そして「学習スペースの確保」(18.7%)でした。
アンケートに寄せられた具体的な悩みをご紹介します。
授業中の生活音の配慮 |
---|
・「下の子が産まれたばかりだったので、泣き声が大きくならないよう、気をつかっていた」(小学4年生の保護者) ・「掃除機や洗濯機など大きな音が出る物は、オンライン授業が始まる前や休み時間などに行うように気を使います」(小学2年生の保護者) ・「授業中は音に気を使ったので疲れた。もし子どもからパソコントラブルで助けてと言われたらすぐやらなければならないので、買い物にも行けなかった」(小学1年生の保護者) |
仕事との両立 |
---|
・「仕事を休んでオンライン授業が出来るか確認する必要があった」(小学5年生の保護者) ・「共働きですが、子どもたちだけが家にいてオンライン授業ができるわけない。結局仕事を休むことになるのは、夫でなく私だけになり職場に迷惑もかかった」(小学3年生の保護者) ・「急に学校閉鎖になったが、子ども一人だけ家にいさせる訳はにいかず、妻と交互に休みをとりました」(小学3年生の保護者) |
学習スペースの確保 |
---|
・「主人もリモートワーク、下の子もオンライン授業になったときに音がかぶらないように場所を確保するのが難しかったです」(小学4年生の保護者) ・「背景が設定できず部屋の様子が写ってしまうので、何もない壁の前に無理やりセッティングするのが大変」(小学6年生の保護者) ・「子ども2人が同じ部屋でオンラインをすると音が反響するらしく、『兄弟のいる子は離れて勉強してください』と先生に注意されるが誰が部屋を出ていくかで揉めて困る」(小学4年生の保護者) |
高学年は意見が真っ二つ…今後もオンライン授業を望む?
オンライン授業のさまざまな面が見えてきたところで、保護者に今後もオンライン授業を望むかどうか聞いてみました。
全体としては「望む」(11.6%)「どちらかと言えば望む」(47.6%)の計59.2%の保護者が、今後もオンライン授業を望んでいることが分かりました。
また、学年別で比べてみると学年が上がるにつれてオンライン授業を望む割合が低くなり、高学年にいたっては望む保護者と望まない保護者の差はわずか5.4%でほぼ半々という結果でした。
その理由として、残り少ない小学校生活での思い出作りを心配するほか、勉強が複雑化する高学年は「勉強が分からなくても質問ができない」ことが今後もオンライン授業を望むかどうかのネックになっているようです。
また、オンライン授業の良い点、改善点の上位5つは以下のようになりました。
オンライン授業の良い点 | オンライン授業の改善点 |
---|---|
自宅で時間を持て余すことがない 22.5% | 授業以外のことに目が行きやすい 22.2% |
勉強の遅れがない 19.9% | 授業を理解しているかどうか分からない 19.5% |
デジタル機器に強くなる 12.3% | 体を動かす機会が少ない 18.0% |
子どもの普段の学校生活がわかる 11.9% | 保護者のサポートが必要 11.2% |
登下校時の危険がない 10.8% | 時間のメリハリが付きにくい 10.7% |
「自宅で時間を持て余すことがない」(22.5%)と「勉強の遅れがない」(19.9%)が、保護者が考えるオンライン授業の主な良い点でした。
コロナ禍で休校となり保護者が懸念していた子どもの自宅での過ごし方や勉強の遅れは、オンライン授業によってある一定程度解消されたと考えられます。
しかし、オンライン授業の改善点で「授業以外のことに目が行きやすい」(22.2%)「授業を理解しているかどうか分からない」(19.5%)が上位に来ることを考えると、「一時的なもの」としては歓迎されているものの、これが「ICT教育」として継続的に活用され、定着していくには時間がかかりそうです。
「下着姿が…」「マイクオンに気づかずに…」オンライン授業のハプニング
最後に子どものオンライン授業中に起きた、目撃したハプニングについて聞いてみました。
特にカメラのオンオフを確認せずに子どもを怒ってしまった話しや、子どもが何かを食べながら授業を受けていたなんて話は定番ハプニングのようで多く寄せられました。
体験談をもとに次回オンライン授業がある際は、子どもの様子をこっそり見てみると新しい発見があるかも!?
まとめ
約7割の小学生の保護者が、子どものオンライン授業に満足しており、子どももオンライン授業に順応して集中して取り組んでいるようです。
しかし、その“集中して勉強に取り組める環境”を作るために、生活音の配慮や仕事との両立など、保護者がさまざまな悩みを抱えている現状も浮き彫りに。
そして今後もオンライン授業の継続を望むか望まないかを尋ねたところ、約半々という結果になったことなどから、保護者が満足しているのはあくまで「コロナ禍の対応としてのオンライン授業」であり、オンライン授業そのものの良さではないことが分かりました。