コロナ禍で子どもも大人も行動が制限されることもあり、友人や親戚、地域など人とのつながりが希薄になりがちです。
茨城県鹿嶋市にあるNPO法人「ファースト ペンギン ネットワーク」では、人とのつながりを大切に、世代を超えてさまざまな活動をしています。
今回は「ファースト ペンギン ネットワーク」代表理事の宇野 則子さんに活動内容についてお話を伺いました。
茨城県にお住いの方、子どもに遊ぶ機会をお探しの方は、ぜひご覧ください。
人との「つながり」を大切にするNPO団体
ー本日はよろしくお願いします。まず、「ファースト ペンギン ネットワーク」の概要と活動内容について教えてください。
宇野 則子さん(以下、宇野):ファースト ペンギン ネットワークは、人と人をつなぐ、人と企業をつなぐ、人と地域をつなぐということで、あらゆる世代をつないでいきたいという想いから始めました。活動は多岐にわたっていますが、大きな核は心と身体の健康です。
心の健康、脳の健康ということで幼児教育をはじめとして、子どもから大人の方まで健康でいられるためのさまざまな活動をおこなっています。
小学生に関していえば、健康で家族の環境に恵まれ、いろいろな校外活動をしている子どもたちがいますが、親の仕事など家庭の事情で土日も引きこもって自宅から出られない、横のつながりも結べない、学童や児童クラブで放課後も友だちと自由に遊ぶことさえない、放課後グラウンドで自由にルールを守って遊ぶこともできない、という子もいます。
そんな子どもたちに気軽に参加できる地域や学年を超えて参加できる場として「スポーツ鬼ごっこ」の場を提供しています。
「ペンギン鬼ごっこクラブ」と称して、幼児から一般の方の世代間交流もしながら、不定期ですが月に2回、日曜日に開催しています。
事前に「4月は第1日曜日と第3日曜に開催です」といったように開催日を固定していません。なぜかというと、サポートできるスタッフの都合や学校行事情報を可能な限り把握して、コロナ禍状況も鑑みながら約2か月前に開催日を決定しています。
ただ、時間と場所は毎回同じです。鹿嶋市のはまなす公園、長い滑り台がある公園なのですが、ここで開催しています。おひとり500円(含保険代)で参加ができ、申し込みは専用のフォームからしていただけます。
スポーツ鬼ごっこは世界共通のルールがあります。競技者の安全を第一に考えたシンプルな基本的ルールです。「お宝」を獲るためにどうするかはすべて子どもたちが考えて話し合います。
チームは幼児さんから小学校低学年、小学校高学年など学年も男女数もバラバラで、はじめて参加する子には基本のルールを教えたら、あとは試合を重ねるごとに休憩時間にどうしたらいいか相談する作戦タイムが盛り上がってくるんです。そのチームの中でリーダーシップをとって指示をする子。自分がやりたいことを訴える子。うまくいかなくてしょんぼりしている仲間を励ます子。「はじめまして」で遠慮していた子たちがキラキラ目が輝いて真剣そのものです。
応援しているおうちの方々は一切口出ししません。勝っても負けてもどうするか考える、ということを子どもたちがやっています。親御さんは大きく温かな声援と拍手を送ります。おうちの方で観戦していて一緒にやりたくなった方はどうぞいつでも参戦してくださいというスタンスで活動しています。
鬼ごっこをしている場所が公園なので、終わったらご家族やお友達とお弁当広げてピクニックのようにしています。テントを持ってくることもできるんですよ。
子どもたちはお弁当を食べたら完成当時は日本一長かった滑り台で遊んだりしていますね。駐車場では第3日曜日に有志の方々がミニ朝市を開いているので、なるべくその日に合わせて鬼ごっこクラブを開催したりと、地域のイベントも考慮して活動しています。
―「ペンギン鬼ごっこ」に参加されているお子さんや保護者の方の反応や感想はいかがですか?
宇野:参加に制限は設けておりませんので、50キロほど離れた千葉県成田市から親子で参加される方もいます。スポーツ鬼ごっこというのは、普通はクラブ化されていてそこに入らないとできないのですが、フリーで参加できるということで、他県から参加される方もいらっしゃいます。
はじめて会った人と「こんにちは」から話ができたことで、じゃあ自分たちがどうしたらいいか、考えながら進んでいきます。見ていて感動しますよ。
いつの間にかチームができていて、休憩時間はみんなで円陣組んで、「次は誰が守りに行く?」「こう守ってよ」ってリーダーシップを発揮する子もいます。また「みんなで声を出していこう」とか「私はこれをやりたいから、これをさせてほしい」と、積極的に発言する子もいます。
その中で、軽度の発達障害のお子さんがいたんですね。いつも来てくれるんですがなかなか積極的に動き回ることができずにいました。あるとき、ぽそっと私に「私もお宝獲りたい」とはっきり自分から初めて意思を発したんです。彼女ができるように私が少しの時間一緒に動いて「こう言ってごらん」「こうしたらどう?」とサポートしたら、勇気をだしてトライできたんです。そしたら私はすぐにその場から離れて拍手を送りました。
見守っていたお母さんが「こういう場であの子は変わっていきます」とおっしゃってくださいました。
一番鬼ごっこをやりたいのは私たちスタッフなので(笑)、子どもたちの活動が終わったら、「私たちと鬼ごっこしてくれる人!」って募集すると対戦チームになってくれます。子どもたちは大人との真剣勝負が楽しいんだそうです。一緒に鬼ごっこをしてくれるんですが、子どもたちには敵いません。真剣にやっても幼児にやられます。
とある附属中学校の先生が自分のお子さんを連れて来られたときは、「学校教育にすごくいいですね」とおっしゃって、「これ学校でやってくれませんか」というのでお手伝いさせていただいたんです。
実施後のアンケートで、「学年を超えて縦横でまとまったら、先輩とはじめて話ができた」「今まで話ができなかった子と話ができた」といった声があり、生徒たちに大変好評でした。
子どもたちの自主性に任せて、単純なことだけど、ひとつのことを目的に子どもたちが考えて実行する、その達成感というのはすごくあったなと思いました。
「ペンギン鬼ごっこクラブ」やサイクリングイベントを開催予定
―今後、開催予定のイベントなどありましたらご紹介ください。
宇野:「ペンギン鬼ごっこクラブ」は4月には再開予定ですので、毎月予定表で告知していきます。
それから「ハッピーペンギンライド」という地元の旬なポイントを巡るサイクリングイベントを年4回開催予定です。
地域の魅力、鹿嶋の歴史的な場所をご案内してご説明するのが目的となっています。地元のスポットや食べ処を案内して、それをSNS等で発信することで地域の発展にも繋げる取り組みですが、この春のライドイベントで14回目を迎えます。
3月はさくらライド、6月は水郷潮来のあやめ祭りで嫁入り舟があるんですけれど、そこに合わせて開催します。それから秋に2回、史跡や豊かな自然を巡ります。東国の三社巡りは最近人気が高くパワースポットでも有名な鹿島神宮と西の一の鳥居、息栖神社、香取神宮等も巡ります。
歩いては回りきれない距離、車で回っては味わえない湖畔の澄んだ空気等、自転車だから感じ取れるこの地域の魅力あるポイントを回っていきます。サイクリングを通じて健康増進をして、仲間ができますので、つくばや成田からサイクリング好きの方が来てくださっています。
開催日は随時公式サイトで発表しますので、最新の情報はこちらからチェックしてください。
新たな出会いや発見の場として活動してきたい
―最後に、読者に向けてメッセージをお願いいたします。
宇野:人は誰かとつながって、そこに生きがいとかやりがいとか自分存在の意義そのものを見つけられると思うんです。お母さんは我が子を授かりつながったからお母さんになれる。結婚してパートナーとつながったから妻になれる。親がつながって生を受けたから子どもになれる。
社会は人とのつながりが大前提になりますが、コロナ禍の現在、そこがなかなか上手くいかなくなってきていますよね。多くの方と何か共通のつながりをもって、仲間と出会える場をつくりたい。そういう想いで活動しているのがここファーストペンギンネットワークです。
ただそこの裏に、社会問題や、子どもたちの心身の発達の問題、お母さん方の経済や健康の問題、高齢者の認知症や孤立・孤独などの問題、それぞれが抱える深い問題があります。そういった問題ともつなげて、市民団体はじめ、私たち考える人が、民間が、個人が一緒になれば、大きなことができると思っています。
「何かできないかな」「これ問題だな」と思える方が集って、その方たちが自分ができるところでつながって支え合い、お役に立てる場をつなげていこうというのがファーストペンギンネットワークの「つなぐ」です。
ですから、私たちの活動をきっかけに何か新しい出会いがあるかもしれませんし、何か思いもよらない新しい発見、新しい宝を見つけることがあるかもしれません。ご興味を持たれた方は、ぜひ私たちの活動にご参加いただけると幸いです。
―本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:NPO法人 ファースト ペンギン ネットワーク