そろばんといえば、昔の計算機、または昔の習い事というイメージを待たれる方が多いでしょうか。
今回は、イメージトレーニング エアそろばんを導入している「そろばん教室 宙★SORA」代表取締役の大塚 雅之さんにお話を伺いました。
そろばんは単なる計算道具でなく、子どもの持っている能力を引き出す魔法の道具。
そろばんで身につくさまざまな力や、将来役立つ精神面の育成など、そろばんの魅力をぜひご覧ください。
計算力だけではない!失敗から這い上がる力を育てるそろばん授業
ー本日はよろしくお願いします。まず初めに、イメージトレーニング「エアそろばん」について教えてください。
大塚 雅之さん(以下、大塚):「そろばん教室 宙★SORA」は、イメージトレーニング「エアそろばん」を導入したそろばん学習を通して、右脳と左脳をバランスよく育てています。
一般的なそろばんは、そろばんの珠を弾きますよね。
エアそろばんは、頭のなかでそろばんの珠をイメージしながら暗算をする学習法です。
また、当そろばん教室では、全国280室以上展開している、いしど式そろばんを導入しています。
ー幼児・小学生から「そろばん」を学ぶメリットについてお聞かせください。
大塚:もともとそろばんは計算道具で、お店などでお釣りの勘定に活用されていましたが、今の世の中、レジや電卓で十分で、わざわざそろばんを持ち運ぶ人はいないと思います。
そういったなかで私たちは、そろばんを教育の教材や、教具として捉えていて、そろばんをやることによってさまざまなメリットが副次的に出てくると考えているんです。
いしど式の特徴としては、そろばんで得られる計算力に加えて、集中力、記憶力などの基礎能力の強化、やりきる力、粘り強さなど、学力テストでは計れない非認知能力を高めるためのメソッドが盛り込まれていることではないでしょうか。
たとえば、そろばんで数字を足す際の咄嗟の判断力や、決められた時間内で問題を解いていく忍耐力、そして想像力と記憶力も身につきます。
幼児期には、まだ数字という概念がないので、数字の2と3でどちらが大きいかという判断ができません。しかし、そろばん玉の2つと3つどちらが多いかは小さな子どもでもわかりますよね。
数字の2と3は、あくまでも数字の記号であって、そろばん玉は量。これは視覚で捉えていることになります。
そして、視覚で捉えたそろばん玉は、イメージとして右脳で一瞬で処理され、右脳は、イメージカを司る脳、また天才脳といわれています。
一説によると、2+3=5など論理的思考の左脳より、画像をイメージ処理する右脳のほうが1000倍ほど能力が高く、処理能力があるといわれているんですよ。
ところが、学校教育では右脳を育成するカリキュラムが音楽や美術のみしかない。そこで、そういった能力を引き出し、大人になったときに役立つことを育ませ、可能性を引き出してあげたいと思い、このそろばん授業を考えました。
また、計算が得意になるよりも、エアそろばんなどで頭の脳を活性化することが重要だと捉えています。
ですから、2と3を合わせて5になるのは分からない年長さんでも、そろばん玉で「これとこれを動かすと5になるから答えは5」というのは理解できるので、幼児期である年長さんからできるメソッドになっています。
一方、高学年になると暗算能力が身に付いてくるので、そろばんは受験にも役立ちますが、一番重要なのは、めげない心、チャレンジする心が養われる点だと思うんです。
検定試験を繰り返して、小学生から試験に挑む力だったり、不合格になったときにそこから這い上がる力だったり、こういった力が重要だと考えています。
そろばんは単なる計算力だけではなく、これから大人になって生きていくために必要な心の持ち方や、基礎の力をつくるのに最適です。
“めげない心”がやはり一番重要かなと思っているので、わざと競争させるんですよ。最近の学校では、なるべく順位をつけないようにしていますが、競わせることは、子どもにとって重要なファクターになると考えているので、私たちはあえて競争させます。
近年、保護者の方はケガをさせないように先回りして危険を排除してしまっている傾向がありますが、転んだときにそこから這い上がる力は、普段きちんと心が折れる体験もしていないと育めないのかなとは思いますね。
そういう意味でもそろばんはうってつけで、あえて失敗して、失敗から這い上がる力を育て、そこから這い上がるときにコーチや先生がサポートしてあげられたらいいなと思っています。
たくさんのイベントを開催予定!人気のそろばん妖怪総選挙も
ー今後、開催予定のイベントなどあれば教えてください。
大塚:4月に、千葉の白井そろばん博物館で「春のそろばんフェスティバル」をおこないます。
あと5月には、「関東オープン珠算選手権大会」や、年2回開催している「そろばんコンクール」があります。
7月には、「そろばんコンクール決勝大会」、「そろばん妖怪総選挙」がありますね。
そろばん妖怪総選挙は、毎月教室内のイベントで貰える、妖怪カードのキャラクターを生徒が考えるコンテストです。
イベントで成績がよければ、5ポイント、10ポイント、100ポイントなど、ポイントがついているさまざまなキャラクターの妖怪カードを子どもに配っているんです。
このキャラクターは毎年募集して、子どもたちに絵を描いてもらっています。
優秀賞になると、実際にそれが商品化されるので、自分のキャラクターができたことで子どもたちも喜んでいますね。
また景品交換もあって、カードのポイントを貯めるとグッズが貰えるため、学習意欲の向上にも繋がっています。
子どもの能力を引き出す魔法の道具“そろばん”を広めていきたい
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
大塚:私がそろばん教室を始める際、周りから「なんで今更そろばん教室なのですか?」「生徒は集まるんですか?」といわれました。
確かにそろばんは、もう忘れ去られたイメージがあるかもしれません。しかし、日本の江戸時代に発展させた和算という日本の和の算術は、世界でも稀な存在だったらしく、そろばんはそれからずっと引き継がれているものです。
そろばんは単なる計算道具でなくて、子どもの持っている能力を引き出す魔法の道具だと、みなさんにもっと知っていただきたいなと思っています。
私もそうですが、自分の子どもはこの程度かなと勝手に判断してしまいがち。隠し持った才能をただ単に引き出せていないだけなのかな、とよく感じます。
私自身、子どものときにやっておけばよかったなと悔やんでいるもののナンバーワンがそろばんであり、大人になって初めてそろばんのよさを知りました。
こういったそろばんの魅力や、理解を広めていきたいですね。
また授業では、挨拶や礼儀、躾をしっかりおこなっています。
まず、教室に入ったときの靴の脱ぎ方、トイレでのスリッパの揃え方、自分が使ったあとにドアをきちんと閉めるなど、意外とやりっぱなしの子どもが多いので、しっかり叱ります。
子どもというのは、大人や親を常に見ていて、見ていないところでは悪さをしているものなので、きちんと自ら考えて、自ら学ぶ姿勢、それをつくるために躾は必要であり、そういった面でも指導をおこなっていきたいと考えています。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:そろばん教室 宙★SORA