ロボットや人工知能(AI)が進化した未来が囁かれている昨今。今後、世界はどのように変わっていくのでしょうか。
このように世の中が変わってきた背景もあり、最近は子ども向けのプログラミング教室が大変人気なようです。
今回は、子ども向けのプログラミング教室を運営する「有限会社サムクリエーション」専務取締役の野澤 斉史さんにお話を伺いました。
これからの社会で生きていくため、さまざまな人材の育成にも活用できるプログラミングの魅力を、ぜひご覧ください。
誰でも受講しやすい「子ども向けプログラミング教室」とは
ー本日はよろしくお願いします。まず初めに、「有限会社サムクリエーション」が運営する、子ども向けのプログラミング教室についてお聞かせください。
野澤 斉史さん(以下、野澤):よろしくお願いします。弊社の子ども向けプログラミング教室は、実際に受講されるお子さんが楽しくゲームなどをつくりながら学び、全課程を終えるころにはプログラミングの基礎能力がしっかりつく授業を目指しています。
弊社では、現在音楽教室や、そろばん教室、ロボット教室など、さまざまな教室を運営しておりますが、新たな教室を開講する際には、まず「なんのために?」「どんな人材の育成を目指すのか?」を考えるんです。
営利企業なので、当然会社としてのメリット、利益も大事ですが、それ以上に考えるべき点として、習いにくる生徒、さらにはその家族、地域社会ひいては日本・国際社会に対してどのような影響を与え、どのようなメリットがあるのかを考えますね。
たとえばロボット教室であれば、理科の成績がよくなった、物事を多角的に観察する習慣がついた、などといった目に見えるメリットもあり、さらに将来的に数学や工学・物理学などのトップレベルの人材の輩出、産業界への貢献までイメージします。
そして、5年ほど前、プログラミング教室の開講で決めた目標としては、誰でも受講できるようにすること、誰でも達成できるようにすること、構造を理解できるようにすること、の3つでした。
1つ目の、誰でも受講できるようにすることとは、今でいうSDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」の考え方に近いのかな、と思います。
当時は、教育分野で注目されていた、ロボットと絡めたプログラミングの授業をおこなっている会社が非常に多かったんですよ。
もちろん質は保証されていますが、問題としては、ロボットのキットであったり、専用タブレットの用意で費用がかかるため受講するハードルが上がってしまったり…。それでもやりたい、という保護者の方も多くいますが、受講したいすべての人が受講出来るかというとやはりなかなか難しいという状況でした。
それならば、誰でも受講しやすい環境を用意しようと考え、“受講しやすい価格で、事前に準備するものもなし、そして質の高いもの”という第1の目標を設定しました。
2つ目の、誰でも達成できるようにすること、これはみなさんもそうだと思いますが、 自分には到底できる気がしなくて、ゴールへの道筋が見えないものってつまらないんですよ。
苦しい過程を全員楽しめるのであればよいのですが、なかなかそういう訳にもいかない。であれば、簡単過ぎないもので、少し工夫をして考えることを楽しみながら、最終的に全員ゴールにたどり着けるものをつくらないといけません。
お子さんの大事な時期に初めて触れるプログラミングなので、ここで嫌いにならないように、プログラミングの楽しさを感じてもらえるものをつくらなければいけないと思い、これが2つ目の目標になりました。
最後3つ目の、構造の理解ですが、プログラミング教室で学ぶプログラミング言語の入門~基礎部分は、特にビジュアルプログラミングという、いろいろな機能を持ったブロックを組み合わせてプログラミングをおこないます。
ブロックとは、たとえば、このブロックに触ったら音を出せ、このブロックに触ったときに自分がリンゴを3個以上持っていたら右に、3個未満だったら左に曲がる、といった指示です。
一般的に実際に仕事で使うものや、高校や大学で習うプログラムは、英語で一定の文法に沿ったもので、ブロックではありません。
しかし、ビジュアルプログラミングを経ているので、見た目がブロックから言語に変わっただけで、なかの構造は同じ。したがって、言語のプログラミングを恐れることはないのです。
右に曲がるのか、左に曲がるのかが、ブロックから「if else」に変わっただけだよ、と生徒に伝え、将来役立つ指導を達成させなくてはいけないと考え、3つ目の目標として定めました。
弊社は大手のネットワークを持っているわけでもなく、習い事を地域で運営している比較的小さな会社です。
そのため、通常であれば同じ理念を持ったグループへの参加や、既存の教材をアレンジして開講まで漕ぎ着けるわけですが、今回は弊社のパソコン教室でプログラミングができる人材がいたため、テキストと授業内容を自社開発しようという流れになったんです。
手間は掛かるものの、自社開発するメリットとしては、開発に関わった人間が直接授業に関わることで、現場と開発が直結している点。問題や疑問などが上がった際に、テキストや進行の仕方を常にブラッシュアップしていけることです。
こうしたことは、子どもたちの理解においても、テキストや授業のレベル向上においても、非常に強みであると自認しています。
また、現在では、弊社のプログラミング用テキストを採択される教室や、教育に使いたいというNPO団体なども増えており、こういった点からも、弊社のプログラミング教育の質が認められているのではないかと考えております。
楽しいプログラム!対象年齢とレベルに合わせたコースを用意
ープログラミング教室のコースについて、詳しく教えてください。
野澤:コースは大きく分けて4つあります。
まず低学年コースは、小学1年生~が対象で、パソコンとプログラミングを体感的に理解してもらうことに主眼を置いているんですね。
入門用につくられたビジュアルプログラムで、自分で描いた絵を泳がせたり、迷路をつくってキャラクターを歩かせたりなどして、自分の指示したとおりにモノが動作する、というプログラミングの基本について理解してもらいます。
基本コース1年目は、小学3年生~が対象。マサチューセッツ工科大学(MIT)で子どものプログラミング教育用につくられたScratch(スクラッチ)というビジュアルプログラムを使って学びます。
2ヶ月でひとつのゲームが完成するようになっていて、各ゲーム製作にて、正負の数・座標・条件分岐・画面のスクロールなど、プログラミングに必要なテーマを学ぶことができます。
基本コース2年目は、Scratch応用と、Minecraft(マインクラフト)(※)基礎です。
Scratchの応用として、配列や、全体の流れを意識した少し難しいプログラミングにチャレンジするんですよ。
また、Scratchの応用が終わると、Minecraftを使ってScratch同様のビジュアルプログラミングにチャレンジします。
応用コース、基本コース修了者は、Minecraftを使ったビジュアルプログラミングに加え、本格的な文字ベースのプログラミングでの制御を学び、ネットや、スマホアプリのプログラミングで使われるjava scriptを使った内容になっていますね。
プログラムの内容としては、「ぐるぐるすごろく」といった、Scratchで一番最初につくる大きなゲームプログラムがあります。
すごろくゲームをつくって、キャラクターを動かす流れで、座標とプラスマイナスの数字について、回転・角度の考え方、キャラクターの表示順などを理解します。
ほかには、「音で遊ぼう」があり、これは音が出る鍵盤と、リズムゲームをプログラムでつくるというもの。
音声ファイルの呼び出しと、ボタンとの連携、音量制御、録音など、音声に関する操作や、外部ファイルとの連携について学ぶことができます。
(※)Minecraftは、マルクス・ペルソンとMojang Studiosの社員が開発したサンドボックスビデオゲーム。日本では、マイクラと略称されている。
プログラミングでの学びから“将来的に役立つ強い力”を
ー最後に読者の方へ一言メッセージをお願いします。
野澤:基本的に、お問い合わせいただければ、体験できる機会をお取りしています。
体験会は、簡単なゲームのプログラムが完成するような内容です。
まずは、プログラムに触れてみて楽しいな、と実際に習うお子さんに感じてほしいと考えています。
これからお子さんたちが育って生きていく社会は、AIやロボットなど、人間以外のものが人間社会を支える一部になるという、今まで誰も見たことのない社会が確実視されていますが、実はそのベースになっているのは、人間がつくったプログラムなわけです。
そのような世の中の流れで、これからの社会で生きていくための選択肢の候補としても、社会構造の理解のための学びとしても、プログラミングはほぼ間違いなく有用なものとなるでしょう。
今後、高校や大学でも、情報関連科目の必修が決まっていて、もちろんそのための準備でもお役に立つので、そういった観点からでも、ぜひ選択肢のひとつとして加えていただければ、と思います。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:有限会社サムクリエーション