NPO法人「BLUE FOR JAPAN」を取材!児童養護施設で暮らす子どもたちへ向けた支援活動とは?

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「あなたの将来の夢はなんですか?」と小学校で聞いたら、子どもたちからきっと多くの職業があがるでしょう。

ところが、児童養護施設で暮らす子どもたちというのは、ある理由から職業の選択肢が少ない傾向にあると言います。

今回は児童養護施設で暮らす子どもたちを支援するNPO法人「BLUE FOR JAPAN」代表理事の牛山大さんと、8歳から18歳まで児童養護施設で暮らし、現在はモデルとしても活動する田中れいかさんにお話を伺いました。

児童養護施設で暮らす子どもたちがどのような生活を送っているのか気になる方、また社会福祉に興味のある方はぜひご一読ください。

  1. 東日本大震災で被災した子どもたちを支援
  2. 子どもの“教育”と“就労”を支援
  3. 子どもたちにいろいろな職業を知って欲しい
  4. 児童養護施設で暮らす子ども=可哀そうではない

東日本大震災で被災した子どもたちを支援

BLUE FOR JAPAN

ー本日はよろしくお願いいたします。まず、「BLUE FOR JAPAN」の活動についてお聞かせください。

牛山 大さん(以下、牛山):NPO法人「BLUE FOR JAPAN」は、2011年の東日本大震災で被害に遭った児童養護施設を支援するために立ち上げた団体です。

震災後に友人たちと支援に行った東北で、あることに気がつきました。

たとえば、老人ホームに入居されている高齢者は家族が迎えに来たり、病院や老人関係の医療センターから支援がありました。

ところが、児童養護施設で暮らす子どもたちの大半は、家族や親戚が迎えに来てくれることはありません。

僕たちが行った児童養護施設は福島県浜通りの避難区域のわずか外にあって、放射能汚染の不安から地域の多くの人たちが親戚の家などに避難をしているような状況でした。

そのような状況下でも、児童養護施設の子どもたちは行く場所がありませんから、そこに留まるしかなかったんですね。

可哀そうですよね。

ところが、児童養護施設の子どもをメディアが取り上げようとすると、顔を写さないようにモザイクをかけたり、後ろ姿だったりするのでリアリズムがありません。

そうすると、メディアも顔にモザイクをかけることなくインタビューに答えてくれる、一般の人や子どものところへインタビューに行ってしまいます。

結局、避難区域に隣接した児童養護施設にはメディアが行きません。そして報道されないとみんな彼らの存在を知りませんから、支援も行き届きません。

そのことに友人が気がついて、福島県の児童養護施設を支援をはじめることにしたんです。

国連のブルーを見習い、また子どもたちには将来、青い空と青い海を夢見て欲しいので、団体名はブルーをテーマカラーとした「BLUE FOR TOHOKU」です。

はじめは児童養護施設から要望を聞いて物品の支援と、子どもたちが思いっきり遊ぶことができるイベントの運営を中心におこなっていました。

そこから活動の幅を広げて、2018年には名前を「BULE FOR JAPAN」へ。現在は全国の児童養護施設を対象に“教育”と“就労”を支援しています。

子どもの“教育”と“就労”を支援

BLUE FOR JAPAN

ー教育と就労支援について詳しく教えてください。

牛山:児童養護施設出身の子どもたちは、高卒という最終学歴が多いです。

社会にでてから、学歴コンプレックスや、自分の境遇に由来するトラウマをもったコミュニケーション障がいの児童も少なくありません。

そういった場合でも、一つの才能としてプログラミングができるだけで、地方でも一人篭っていても、リモートでお金を稼げる時代です。

IT教育は施設が不得意とする分野であり、私たちの活動ではIT教育のお手伝いは重要な部分です。

パソコンを寄付してくれる企業は意外とありますが、活用が難しいのが施設の現状です。

施設ではネット環境のセキュリティなどが技術的に難しく、また児童が一人でパソコン使うのにはハードルが高いようです。

家庭の環境にあるような自由で安全なパソコン環境を、ソフト面でお手伝いするのが重要だと考えています。

パソコンを寄付するだけではなく、子どもたちと先生方に活用からセキュリティ対策までお手伝いしています。

現在、ボーダレスジャパン様の子会社のピープルポート様と社会活動の意義も含めて一緒に活動しています。

ー田中さんご自身のこと、また BLUE FOR JAPANとの繋がりを教えてください。

田中 れいかさん(以下、田中):
私は家庭の事情から8歳で児童養護施設に入所しまして、18歳まで施設で過ごしました。

施設を出たあとは、奨学金を借りて短大に進学して保育士資格と幼稚園教諭免許を取得したんですよ。

でも、中学生のころにファッション雑誌で、同じ年の子が可愛くてキラキラしている姿を見て以来、モデルになることが夢でした。

お金を理由に、夢をかなえられないと思っていたこともありますが、ミスコンで準グランプリを受賞した経験から、「誰でも好きな自分になれる」というメッセージを発信しています。

団体とのご縁は2018年に開催されたBLUE FOR JAPANのチャリティーイベントでゲストとして、イベントの参加者に向けてお話する機会をいただいたことです。ご縁としてはそこからですね。

BLUE FOR JAPANでの活動のひとつとして、私自身がいた施設へパソコンを届けにいくこともしました。

今度、寄贈したあとの取り組みとして、施設で暮らす中高生向けにパソコンの使い方のレクチャー会します。私はそこでお手伝いをしに行く予定です。

子どもたちにいろいろな職業を知って欲しい

BLUE FOR JAPAN

ー「おしごと探検隊」について教えてください。

牛山:日本は成熟した社会で一応先進国ですよね。ただ、豊かさとはなんだろうっと聞いたときに、お金と答えてしまうと限界がないですし、それで本当に豊かになるのか疑問に感じるんです。

豊かさを別の言葉で表現すると、「選択肢があること」だと思うんですよ。

児童養護施設の子どもたちは、職業選択にしてもその選択肢が少なくなっています。

そうであれば、仕事の可能性を見せてあげたいと、以前からさまざまな職種の人たちと子どもたちを交流させていました。

ところが、最近はコロナ禍で入所している子どもの免疫力が低下しているケースも少なくなく、政府の方針として外部との接触を禁じてしまいました。

ボランティアしたくてもできません。

そこで今までやっていた仕事の紹介を映像化し、「おしごと探検隊」としてホームページに掲載することにしました。

田中:職業の選択肢というのは、施設にいる・いないに関わらず、親御さんや周りの環境の影響を受けていると私は思います。

たとえば、私が生活していた児童養護施設では毎日施設職員がいて大人と触れ合う時間は多いですが、周りにいる大人は福祉職、児童指導員、保育士、社会福祉士、たまに学校の先生といった感じで、なんとなく同じ道を志す子どもが多いように感じました。

このようなことから、児童養護施設で暮らしている子どもというのは、「職業選択の幅が限られている環境」だと話す施設職員さんもいます。

おしごと探検隊」では、子どもたちにいろいろな職業があることを伝えたくて動画を作成していて、私はナレーションを担当しています。

児童養護施設で暮らす子どもたちへ向けとはしていますが、一般の子どもたちにも使えるコンテンツですので、ぜひ親子で見ていただけたら嬉しいです。

BLUE FOR JAPAN
選択肢があるということは、豊かさでもあるんですね!

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お近くで塾をお探しの方は、ぜひ活用してみてください!

児童養護施設で暮らす子ども=可哀そうではない

ー読者へ向けてのメッセージをお願いいたします。

牛山:
世の中はジグソーパズルのようです。社会にはいろいろな形のピースがあり、たとえ時間かかっても1ピースでも疎かにしないように活動しています。

この記事を読んでくれている小中学生は、もしかしたらびっくりするかもしれませんが、親がいない家庭があり、親と一緒に暮らすことができない子ども達がまだまだ大勢います。

みなさんの学校や近所にも、苦労して生活しているお友だちがいるかもしれません。

そういう子どもたちが差別を受けるのではなく、普通に一緒に楽しい毎日を過ごせるようにするのが、成熟した日本のあるべき姿だと思っています。

今すぐに活動は難しいかもしれませんが、認識して、目を向けるのも、大切な一歩だと思っています。

田中:
児童養護施設というのはなかなか見えにくいし、分かりにくいし、共感しにくい分野だと思っています。

なかなか難しいところはありますが、「可哀そう」という一言で片づけられてしまうのは違うと感じています。

児童養護施設で暮らしている子どもと、一般の人が想像する児童養護施設には少なからずギャップがあるんじゃないかなと思うんですね。

12月6日に私自身が児童養護施設に入る前から出た後、そして現在に至るまでを綴った本『児童養護施設という私の「おうち」』を出版しました。 

施設に暮らす子どもたちの現状、データ、習いごとはできるの?お小遣いはいくらなの?といった皆さんからよくいただく質問に答えるようなコラムも掲載しています。もしよかったらお手に取ってみてください。

それから、日々さまざまなバックグラウンドをもつ子どもたちの対応をしている児童養護施設の先生たちは、本当に頼もしい存在です。

一般の人向けに子育て相談を受け付けている施設もあります。

実際に私がいた施設では、施設の一部を地域の方向けに開放して、子育て広場を開催していました。

そういうふうに皆さんの子育てを応援してくれる存在があるので、少しでも困っている方はぜひ利用してもらいたいと思います。

ー本日は大変貴重なお話をありがとうございました。


取材協力:BLUE FOR JAPAN

島田 佳代子
この記事を執筆した執筆者
島田 佳代子

テラコヤプラス by Ameba 執筆者

幼少期よりピアノ、水泳、硬筆、英会話などを習う。中学受験をして英語教育に力を入れる中高一貫の女子校へ進学。その後、都内の短大を経てイギリスへ留学。マンチェスター市内のカレッジで観光・旅行学を学びながら、執筆活動を開始し、スポーツ、旅行、ビジネス、教育など幅広い分野で執筆経験がある。2021年9月から「テラコヤプラス by Ameba」にてライターとして従事し、保護者やお子さまに興味をもっていただける記事づくりを目指しています。