インターネットが普及しSNSなど人との繋がりもデジタル化して、人とのリアルな交流が減ってしまったと感じている人はいませんか?
すべての人が笑顔で暮らせたらいいですよね。
今回はさいたま市で活動するNPO法人「ReMind」代表理事の河合 麻美さんにお話を伺いました。
悩みがあるけれど近くに相談する場所がないとお困りの方、ぜひご一読ください。
横の繋がりをつくりたい
―本日はよろしくお願いいたします。まず、「ReMind」についてお聞かせください。
河合 麻美さん(以下、河合):ReMindは「みんなちがってみんないい」 包含社会をつくることをミッションに活動している団体です。
私は、さいたま赤十字病院のリハビリテーション科に理学療法士として25年勤務していたのですが、そのとき臨床の現場で感じていた“もやもや”を解消するためにReMindを立ち上げました。
“もやもや”はたくさんありました。
たとえば、勤務していた病院には救急車で搬送されてくる方が多くいましたが、患者さんのお話を聞くと孤独に子育てされている方、孤独に生活をされている方がたくさんいました。
なかには子育てを苦に、自殺を図った方もいます。
現代社会はIT社会で、人に会わなくても情報を得ることができます。
そうすると、なかなか人との繋がりをもてない人がいるんですね。退院後も社会との繋がりが少なく、孤独に過ごしている方々がいました。
病院で働きながら気がついたのが、こういった「医療と地域の見えない壁」の存在。
また医療が整形外科、内科など縦割りで、行政も子ども、障がい者、高齢者と縦割り。なかなか“横の繋がり”がないことも気になっていました。
最後は乳がんの病棟の担当になっていましたが、乳房の形がわからなくなってしまうぐらいの状態になって病院に運ばれてくる方もいました。
50歳前後の方たちですが、なぜもっと早く病院へ来なかったのか聞くと、子育てが忙しくてとか、介護が忙しくてと、自分の健康を一番後回しにしてしまっているんです。
私自身3回目の出産が双子で育児の壁にぶつかり、誰かと話をしたいと「リハビリママ&パパの会」を立ち上げました。
現在全国に850名の仲間がいるのですが、会員向けにアンケートをおこなったところ、育児と仕事の両立は難しいと回答する方が97%もいたんです。
少子化といいますが、これでは子どもが増えるわけがありませんよね。
そこで自分の子育てや理学療法士としての経験を活かし、仕事をしながらでも子育てしやすい社会となるよう「ReMind」を立ち上げました。
育児も仕事も介護も、地域みんなで支え合えるような「包含社会」を目指して活動しています。
団体名は私たちが大切にしている「リハビリテーション精神Rehabilitation Mind」の略で、英語の「思い出す・気づかせる(Remind)」という意味も込めました。
ReMindを介して障がいがある方も、障がいを負う前はこんなものが好きだったとか、楽しかったとか。
高齢者もそうですし、母親たちも子育てに追われて自分を見つめる機会がなかなか少なくなっていると思うので、自分自身のことを考えられる機会をつくりたいと思っています。
誰も取り残されない社会を目指して
ーReMindの活動内容について、詳しく教えてください。
河合:私たちは子ども・障がい者・高齢者・働く人をターゲットに。その誰もが取り残されないように活動しています。
現在活動をはじめて3年目ですが、子どもと母親向けの支援としては、「母子のトータルサポートの本音会議」と「緊急虐待予防会議」「虐待予防セミナー」をおこないました。
コロナ禍で自宅から出ることができずDVや性被害に遭う女性が増加したというニュースを聞き、いてもたってもいられなくなり、銀座にある対馬ルリ子女性ライフクリニック院長の対馬ルリ子先生、一般社団法人ママリングスの看護師 落合さんと一緒に、「女性の心と身体のオンライン相談室」を開催しました。
高齢者向けの活動としては「みんなの夢ハウスさん」というところで「町の保健室」。ReMindメンバーがそれぞれ講師役となって半年間活動しました。
リハビリ専門職や医療職専門で働く人向けには「専門職の働き方支援」として、キャリアデザインやワーク・ライフ・バランスセミナーをおこなっています。
障がい者向けは、まずは知っていただきたいという想いから、設立記念のときも障がい者の団体の方にシンポジストとして来ていただいたんですよ。
みんなが取り残されない社会をつくるにはどうしたらいいか、YouTubeチャンネルで話をしてもらったこともあります。
現在、「誰も取り残さない社会をつくりたい」という思いに共感して集まってくれた105名のReMindメンバーと一緒に、社会課題を解決するための取り組みをおこなっていきます。
全国どこからでも参加可能オンライン相談会
ー今後開催予定のイベントがあれば、教えてください。
河合:浦和にあるコミュニティサロン「みんなの夢ハウス」さんでおこなっている「町の保健室」は、また2022年2月から開催予定です。
今後は要望があれば他の場所でも開催していきたいと思っています。
また病院に行かなくても地域で誰か医療職に相談できる場所をつくれたらと思い、7月から毎月第3土曜日に「オンライン健康居酒屋」を開催しています。
先日は脳卒中をテーマにおこないましたが、当事者、ケアラー、医療職などさまざまな立場の方が参加し、普段話せないことを話したり、参加者同士の繋がりもできていました。
今はオンラインが主流なので、お近くに相談できる場所や人がいないからと、ReMindの相談会に参加される方も増えていますね。
2022年2月は更年期障害、3月は認知症をテーマに当事者も医療者も含めていろいろな人たちが話せる場所を提供していこうと思っています。
興味のある方はぜひホームページをご覧ください。
社会全体で子育てをサポート
―最後に読者へ向けてのメッセージをお願いいたします。
河合:今の世のなか、子育てが親だけに偏っていますよね。
たとえば、子どもが事件を起こしたというニュースでも、母親の躾はどうだったのか、教育はどうだったのかと親、とくに母親にすごく子育てを任せていると感じます。
ところが、実際には家だけが子どもの安心できる場とも限らないんですね。
親だけで子育てしない方が、子どもたちも幅広い視野が得られますし、保護者自身の心の余裕も生まれるでしょう。周りの人へ相談ができると思うんです。
親がすべてを抱えることなく、子どもの居場所がいろいろなところにあって、いろいろな手があって、いろいろな目があって。
ぜひ社会で支え合って、子育てをしていきましょう。
オンラインだけではなく、大宮と小伝馬町の二拠点でリアルな居場所をつくっていきたいので、ぜひそちらにも参加してもらえたら嬉しいです。
―本日は貴重なお話をありがとうございました。
取材協力:ReMind