岡山県で、地域に暮らす妊婦さんに、農薬・化学肥料不使用の野菜をプレゼントする活動をおこなっているNPO法人「こうのさと」。
安心安全な食を通じて、新しい命の誕生を祝福し、つながりや連帯感を実感できるまちづくりを目指し、さまざまな活動をしています。子どもたちが自然のなかで遊び学べるような取り組みもそのひとつ。
今回は、「こうのさと」代表の片岡 徹也さんに、畑での農薬・化学肥料不使用の野菜づくりや、古民家マルシェの活動についてお話を伺いました。
岡山県倉敷市で子どもと一緒に自然体験をしたい方、畑で野菜づくりをしたい方は、ぜひご一読ください。
妊婦さんにプレゼントする野菜をつくる「みんなで畑活」
ー本日はよろしくお願いします。早速ですが、「みんなで畑活」の活動内容を教えてください。
片岡 徹也さん(以下、片岡):私たちは、この地域に暮らす妊婦さんに農薬・化学肥料不使用の野菜を無償でプレゼントする取り組みをしているのですが、その野菜を耕作放棄地をお借りして作っているんです。
170平米ほどの土地で、夏はおくら・トマト・ナス・しし唐・人参・小松菜、最近は冬になってきたので葉物が多くなり、小松菜・春菊・人参・大根などを作っています。
農薬や化学肥料を使わない代わりに、お米のもみ殻や米ぬか、生えてくる草を乾燥させて土に吹き込むやり方で野菜を作っています。
第1、第3水曜日と第4土曜日に「みんなで畑活」というイベントをやっていまして、地域のお母さんたちが、お子さん連れでご参加され、一緒に畑仕事をしています。
子どもたちも一緒に畑仕事をやったり、3歳から5歳くらいの子たちは虫を捕まえて遊んだりして楽しく過ごしていますね。
ー野菜を育てて収穫する、子どもにとっても貴重な体験ですね。
片岡:種を蒔いたりとかをするのも楽しんでくれたりしていますし、やっぱり収穫が楽しいみたいですね。この前の夏は、おくらを切って収穫するのをみんながやりたがって、「大きいのが取れた!」と楽しんで収穫していましたね。
子どもにとって、野菜が育つ様子を実際に見て、この間自分が蒔いた種から芽が出て、こんなに小松菜が出ているんだ、育っているんだっていうのを身近に見れる機会というのは、食育にもなりますし、すごく大事なことだと思います。
ここに来る子どもたちは畑でのびのびとしていますよ。小さい子だと畝(うね)の上に乗ろうとしたり、飛び越えて失敗したりするので(笑)、そういうときは、そこは野菜が育つところだからこの上には乗らないでねっていう話をよくしています。
「みんなで畑活」には、子どもに自然体験をさせたい、野菜づくりをさせたい、という目的で来られる方も多いですね。普段の生活の中では、なかなか土に触れる機会がなく、コロナの影響でなかなか行く場所がないっていうのもあるそうなんですが。
緊急事態宣言中は公園などが閉められて、そうなると外で遊べない、遊ぶところがない、という状況なので、そういうときに畑に来てくれていた方もいらっしゃいました。
今ってパブリックなスペースとプライベートなスペースがあまりにも境界がはっきりしてしまっているので、境界線がないといいますか、あいまいな境界って大事だなと思っていまして、畑活を通じて、そういう日本的な文化も大事にしていきたいなと思っています。
「古民家マルシェ」で子育て中のお母さんもほっと一息
ー「古民家マルシェ」についても教えてください。
片岡:「古民家マルシェ」は、農薬・化学肥料不使用で30年以上自然培をされている農家の「石原農園」さんが主催されているイベントでして、毎月第1日曜日に古民家に地域のお店を呼んでマルシェをしているんです。
そこに私たちも共催という形で携わっています。マルシェには石原農園さんのお野菜や、岡山で食材にこだわって作っているお店やお菓子を作っているお店、ハンバーガーやジュースを作っているお店などが来ます。
マルシェに来られる方は、基本的に親子連れが多いですね。特に未就学のお子さんがいる親御さんが多い印象ですね。古民家ってお庭が広いので、5、6歳までのお子さんだったら、庭を走り回って遊べるんです。
車が古民家の敷地内に入ってこないので、お母さんたちも子どもが庭で友達と遊ぶのを安心してみていられるんです。お母さんたちがマルシェでお茶を飲んだり、居間でくつろいだりすることができる環境ですので、それを目的に来られる方が増えていますね。
石原農園さんも、お母さんたちがくつろげるイベントにしたいと仰っていて、そに共感して私たちもお手伝いしている感じです。
今、都市部に限らず倉敷や岡山でも開発が進んでいる部分があり、田んぼや畑などがどんどんマンションやアパートになっていて、自然のなかで遊べる環境が減ってきているように感じます。
やはり自然のなかで子どもたちがのびのびと遊べる環境は大事だと思っているので、できるだけそういう機会を増やしていきたいなと思っていますね。
新しく生まれる命をみんなで祝福できるまちを目指して
ー今後、開催予定のイベントなどあれば教えてください。
片岡:毎月第1・第3水曜日、第4土曜日は「みんなで畑活」を、毎月第1日曜日に「古民家マルシェ」を開催しています。これらのイベントは定期的に開催していますので、ぜひご参加いただければと思います。
私たちは設立して1年ほどですので、まだまだ多くの方に知られていない団体です。私たちの活動に賛同される方は、ぜひご支援いただければ嬉しいです。
取り組んでいる活動についても説明した、こちらのページからご寄付ができますので、ぜひ応援をお願いします。
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
片岡:私たちの団体は、「祝福されるまちをつくる」という想いをコンセプトに活動しています。
新しく生まれる命をみんなで祝福できるまちをつくるために、私たちは農薬・化学肥料不使用の自然栽培で野菜をつくり、宅配ボランティアの方に届けていただき、妊婦さんが食べて、赤ちゃんがお腹のなかで大きくなる。
生まれる前から、「あそこのお母さんの子どもだな」と、お腹の赤ちゃんと関わった人たちの間で緩やかな関係性が出来上がっていきます。
昔は家の近くのおじさん、おばさんと顔見知りで、毎日挨拶したり、あそこ家の子だな、孫だなってわかっていたと思いますが、今はそういうことがわかりづらく、人間関係も希薄になっているように感じます。
生まれる前から地域の人たちと緩やかな関係性が出来上がっていたら、生まれたときにもお祝いできるし、ちょっと大きくなったときに「あのお母さんの子どもだ」といった感じで人間関係が充実してくると思うんです。
そして出産した後に、妊婦さんだった人は、自分がもらったギフトを次世代に回していってもらえたら、そういう循環ができればいいなと思います。これは物質的なことではなく、やさしさというか思いやりですね。
私たちの活動と同じような取り組みをしたいという方が、4月から静岡で団体を立ち上げるという話があります。一人でも多くの方に賛同していただき、全国で同じ気持ちで活動する仲間が増えたらいいなと思っていますので、私たちの活動を少しでもいいな、面白い取り組みだなと思ったら、ぜひシェアしてください。
Facebookページもありますので、「いいね!」を押してシェアしていただけたらありがたいです。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:NPO法人こうのさと