学校での授業中に友だちはできているのに、自分だけできなかったこと。逆に、自分にとっては簡単なことなのに、みんなが難しいと言っていることはありませんか?
人それぞれ得意なものや不得意なものは違うので、それは当然かもしれません。
「遊びを学び」に「学びを楽しく!」をコンセプトに、子ども一人ひとりの特性に合った学習方法を提供する「アソマナフリースクール」代表の太田樹男さんにお話を伺いました。
野外体験やフリースクールの活動に興味がある方は、ぜひご一読ください。
遊びを通じて“非認知スキル”を高める
―本日はよろしくお願いいたします。まず、「アソマナフリースクール」の「アソび(運動)」ついて教えてください。
太田樹男さん(以下、太田):アソマナフリースクールの前身は、日本で初めての身体障がい者向けダイビングスクールです。
活動のなかで身体的な障がいや、発達が気になる子どもたちが自然と触れ合い、いろいろなことを学んで欲しいと立ち上げたのが、今も続く「勇気と希望の教室」という野外体験プロジェクトになります。
こうした設立の経緯からも、私たちは「アソび(運動)」の部分を大事に考えているんですね。
「非認知スキル」という言葉を聞いたことがあるかと思います。これは学校のテストのように数値では測定できないもので、自分の意見を伝える力だったり、ディスカッションができたり、忍耐力がつくといったスキルのことです。
私たちは子どもが成長していくうえで、「非認知スキル」が大切だと考えます。
この非認知スキルは、遊びを通じて身につけていくことが一番重要だというエビデンスがあるんです。
そこでアソマナでは太陽が出ているときには、外に出て陽を浴びるといった単純なことから、理学療法士が監修した脳機能にいい体の動かし方を実践しています。
カードゲームやじゃんけんなどの遊びも、ただ無意味にやるのではなく、非認知能力を高めるのに効果的だとされる「ワーキングメモリ」(作業記憶・作動記憶)を鍛えられるような形でおこなっているんですよ。
こうやって日々子どもたちは“遊び” を通じて、自然と非認知スキルを高めていきます。
子どもの学びを“科学的”にサポート
ー「マナび(勉強)」についても詳しく教えてください。
太田:私たちの野外活動に参加していた子どもの保護者から、学習面での支援を要望する声をいただき「フリースクール」がスタートしました。
アソマナではみんなで同じプリントをやったり、問題集を解いたりするわけではありません。
私たちは“子どもの発達科学研究所”の資格を有しており、最新の「脳科学」に基づいた「マナび(勉強)」のサポートをおこなっています。
子どもたちは一人ひとり、発達の問題もあって得意不得意に凸凹があります。たとえば、目からの情報が得意な子ども、耳からの情報が得意な子ども、体を動かした方がいい子どもがいます。
これを神経言語プログラム(NLP)では、視覚(Visual)、聴覚(Auditory)、体感覚(Kinesthetic)の3つに分類して「VAKモデル」と呼びます。
まずは子どもたちの特性をしっかりと見極めて、VAKに分けるんですね。
そのうえで、それぞれに適した教材を使って学習支援をおこないます。
子どもの発達科学研究所監修の、発達障がいのある子どもたちに有効なICT教材「すらら」も活用しているんですよ。
もちろん足りない部分に関しては、先生たちがカードやプリントで補いながら、独自の支援をおこなっています。
また、無学年方式で学年関係なく学力に応じた学びができることも私たちの特徴でしょう。
もうひとつの特徴として、学習面はもちろん、心理的なことや生活の支援を含めたトータル的なサポートをおこなう専属コーチがいます。
コーチは子どもの小さな努力を見逃しませから、勉強が苦手だった子どもこそ、楽しく勉強することができるようになります。そして、学びから自己肯定感を高めることができるようになっていきますよ。
子どもを大きく成長させる野外体験
―今後開催予定のイベントがあれば教えてください。
太田:現在は子どもの発表の場でもある12月の「クリスマスパーティー」に向けて、準備をしているところです。
春には与論島で1週間ほどの「短期山村留学体験」を予定しています。子どもたちは地元の人たちと触れ合い、自然のなかで遊ぶことで多くのことを学ぶでしょう。
7月には私たちの課外活動のなかで一番大きな「アソマナプロジェクト 勇気と希望の教室」があります。特別支援学校等に通う子どもと、フリースクールに通う子どもが一緒に参加して遊ぶことで、お互いの特性や多様性を認め合う機会となります。
この教室で初めてダイビングを体験した子どもが、「初めてみる海の中はどきどきだったけどとっても気持ちよくて勇気がわきました!」と話してくれましたよ。
それ以外にもキャンプや登山などがありますが、基本的には小学生から高校生まで年齢関係なく一緒に活動します。
そうやって一緒に活動をして、毎回設定した目標をクリアしていくことは大きな学びにつながるはずです。
大切なのは子どもの気持ち
―最後に読者へ向けてメッセージをお願いいたします。
太田:子どもから「学校に行かない」「学校に行きたくない」というサインが出たときには、まずそのことを受け止めてください。
これは体が痛いといっていること同じで、心が痛いと子どもがSOSを出しているんですね。
昔は学校に行かないことが甘えだとかずるいとか。そんなふうに言われてしまうことがありました。
そうではなくて、子どもは本当に素直ですし、耐えて耐えてやっとSOSを出しています。
そこで無理に行かせることは、逆に不登校を長期化させてしまうでしょう。もっと酷い状況になる可能性もあります。
子どもがSOSを発したらとにかく否定をしないで、よく話を聞いてあげてください。
この段階ではまだ話せないかもしれませんが、SOSを出しているときに原因を追究しても解決しません。
原因ではなく、今子どもがどういった状況にあるのかを考えて欲しいのです。
少し落ち着いて話ができるようになったり、子どもがようやく外へ出ようとしたら、それが次の段階だと思ってください。
だからもし自宅に引きこもってしまっても、次の段階に進むための時間なので待ってあげて欲しいんです。
保護者は子どもの現状をしっかりと受け止めてあげられる気持ちを持ってあげてください。
そうはいっても、子どもが学校に行かないと言ったら保護者は焦るでしょうし、とても悩まれる思います。その保護者の気持ちもわかります。
ですので、私たちはまずは保護者に対するカウンセリング、相談会や勉強会といった支援をおこなっています。
保護者の方にご理解いただき、子どもがようやく前に進みたい思ったときに、フリースクールのことを考えてもらえたらと思っています。
カウンセリングはオンラインでも対応しておりますので、気になる方は公式ホームページをご覧いただけると幸いです。
―本日は貴重なお話をありがとうございました。
取材協力:アソマナフリースクール