岡山県を中心に20年以上、心理カウンセラーとして悩みの解決のお手伝いをされている山本康世さん。
相談に来られる母子の苦しみを見て、さまざまな事情で身を寄せる必要がある貧困母子のために立ち上げたのがNPO法人「オリーブの家」。
母子の心のケアはもちろんのこと、DV・虐待・貧困のひとり親家庭の保護活動もおこなっています。
今回は、同団体の主な活動のうち、保護シェルターとカウンセリングについてお話を伺いました。
悩みを抱えているお子さん、女性の方はぜひご一読ください。
長期滞在が可能な保護シェルター
―本日はよろしくお願いします。早速ですが「保護シェルター」の活動内容について教えてください。
山本 康世さん(以下、山本):私たちの活動には3つの柱があって、そのなかのひとつが「保護シェルター」の活動です。特徴的なのは、長期滞在が可能だということです。
民間のシェルターでも行政のシェルターでも、短期の保護ということで2週間という枠がありますが、私たちが運営するシェルターでは期限を決めていないんです。
というのも、2週間でDV被害者や貧困家庭の次の行先や社会自立というのは、なかなか解決できないからです。ですので、その点を踏まえて私たちは長期滞在可能にしています。
シェルターを利用された方の滞在日数は、平均で2~3ヵ月ほどですが、長い方ですと半年、短い方ですと1週間で出られる方もいます。
保護シェルターは岡山県内にあり、約9部屋で稼働しています。基本的に空くことはなく、長期ということもありますので、県外からも来られたりしますね。
シェルターの利用料金は、一応1泊1部屋1,000円をいただき、水道光熱費は別途となります。お支払いできない方もいますので、その場合は相談の上、病気などで働けないということであれば、生活保護の申請を一緒におこなっています。
極力生活保護を受けずに、自立して親子で暮らしていけるよう、社会自立を目指した支援活動を信条としていますので、保護シェルターを利用された98%ぐらいの方が自立をされ、新しい生活を送られています。
2%ぐらいの方は、ご病気が見つかって入院をされたり、ご実家に戻られたりしますので、そのサポートもおこなっています。
―シェルター内での生活はどのような感じでしょうか?
山本:私たちはできるだけ母子が普通の生活が送れるよう心がけていますので、お金の管理はご自身でおこなっていただいていますし、お友達や助けてくれるご家族がいるのであれば、報告など毎日していただいています。
通信環境や連絡手段が整っていない場合は、私たちが用意した携帯電話をお貸しして、それで連絡を取られています。テレビやインターネットも使えますが、加害者との接触があるわけではまったくないので、そこは安心していただいていますね。
シェルターと聞くと、格子がついていて怖いところというイメージがあると思いますが、いつ来られてもいいように、お布団やキッチン用品、調味料、食品、全部揃っているんです。
一軒まるごと購入した新築もあるので、普通の家やアパートと変わらない、かなり綺麗なシェルターだと思います。
ちなみにシェルターには「シェアハウス型」と「アパートメント型」がありまして、アパートメント型については県外からも利用しやすいよう倉敷市に設置しています。
新型コロナウイルスの影響で自粛が長引いたことで、DVが明るみに出て我慢できず駆け込まれる方が非常に増えました。
シェルターの部屋数が足りなくなったときには、県外にある正会員(サポート会員)さんなどのお部屋をシェアしていただいて対応しています。
また、お子さんの学習支援については、私たちの団体スタッフが勉強をみたり、地元の学習支援をメインに活動する団体さんについていただてサポートしています。
貧困のご家庭でひとり親だと、なかなか学習支援が難しいというのもあり、そこは我々の課題でもあるのですが、これから助成金をとって、より支援ができるようやっていこうと思っているところです。
対面相談や電話相談でのカウンセリング
―カウンセリングについても詳しくお聞かせください。
山本:対面相談、電話相談などさまざまな形でカウンセリングをおこなっていまして、対面相談は毎月1回10時~16時まで、津山市の男女共同参画内にあるお部屋を使って、「DV・虐待・ハラスメント救済 心のカウンセリングルーム」という名前でおこなっています。
親子で来られる方も結構多く、DVや虐待についてのご相談のほか、加害者の方も来られますので、それをどうしていこうかというご相談、シェルターへの保護など窓口的なご紹介などもしています。
対面相談はシェルター内でもおこなっておりまして、小さいお子さんだと箱庭療法をしたり、アセスメントでお母さんの今の状況を把握したりなど、さまざまですね。
そのアセスメントによって病気などの見立てができて、精神科医との連携で精神科医をご紹介するパターンもあります。カウンセリングをおこなうことで、ご病気の発見などにもつながっているんじゃないかと思います。
電話相談は、心理士を含む3人の専門の相談員が毎日10時~17時までおこなっています。いろいろお話を聞きながら、その電話でカウンセリングをおこなったり、メールでカウンセリングをおこったりしています。
だいたい年間で300人以上の方が利用されていまして、児童相談所と変わらないぐらいの件数になっている状態です。
どんな些細な悩みでも結構ですので、こちらからご相談いただければと思います。
寄付や募金などさまざまな形でのご支援を
―「オリーブの家」の活動を応援したい場合は、どのような方法があるのでしょうか?
山本:お振り込みによるご寄付や、ソフトバンクのスマホやPCから簡単に寄付ができる「つながる募金」など、応援していただける方のご都合のよい方法でご支援いただけたらと思います。
私たちの団体のホームページにご支援の方法を紹介していますので、ぜひそちらをご覧ください。
この度、代表の私が、社会をよりよくするために活動する女性リーダーに光をあて敬意を表する賞「チャンピオン・オブ・チェンジ日本大賞2021(英語名称:Champion of Change Japan Award;略称CCJA)」へ、25名のリーダーの1人として選出され、11月4日にスピーチをさせていただきました。
同賞のイベントで活動内容をスピーチしていますので、ご興味のある方はぜひご覧いただければと思います。
山本:そして11月25日現在、「チャンピオン・オブ・チェンジ 日本大賞2021」のファイナリスト7人に選ばれましたことをご報告させていただきます。
DV被害等に悩む貧困女性を支える寄付のキャンペーンも始まりますので、ぜひご支援いただけますと幸いです。
ー最後に、読者へ向けてメッセージをお願いします。
山本:児童クラブさんなどに、DV・虐待など家庭環境の問題によって学習にどのように影響が出ているか?という1,000人規模のアンケートを取ったのですが、500人ほどの親御さんたちがお子さんの学習について非常に悩まれていました。
家庭環境が安心できるものでないと、学習に非常に遅れが出たり、経済的な格差でお子さんの学習が影響されてしまっているということが判明しました。
私たちも独自で学習支援のサポートをしていこうと思っていますが、今の親御さんたちは夫婦共働きの方が多く、なかには仕事が忙しくてお子さんの学習面をしっかり見れていないと感じる方もいると思います。
ですが、お子さんの学習支援と共に心のケアにも気を配っていただけたらと思います。お子さんの心が安定すれば、学習の意欲が湧いてくるというのは、調査結果でも出ています。
学習意欲を出させてあげるためにも、ぜひお子さんの気持ちに寄り添ってあげたり、もしそれが難しければ、そういう団体やNPOに子育て支援をどんどんお願いしていただけたらと思います。
お子さん自身が未来が楽しみになれば、自ずとやる気が出てくると思いますので、親御さんは、将来、こんな楽しいことができるよ、こういうことを勉強していけば将来こういうものになれるよ、という具体的なお話をしてあげてください。
親御さんがしんどければ、いろいろなところに支援を求めていくという姿勢が大事かと思いますので、ぜひ親子だけで解決しようとせず、外部の支援も利用していただけたらと思います。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:NPO法人 オリーブの家