近年増加する「廃校」の実態をご存じでしょうか。
少子化で児童が減り、地域の学校が合併することで廃校が進む現実…
そこで文部科学省は、そんな廃校の問題をどうにかしなくてはいけないと、廃校を活用するプロジェクトに動き出しました。
今回は、廃校活用プロジェクトの参加など、現代社会が抱えているさまざまな問題に取り組むNPO法人「ユニグラウンド」会長理事の石村 日里さんと、理事長の村上 直人さんにお話を伺いました。
子どもの通っている学校が廃校になってしまいそうで悩んでいる保護者の方、お住いの地域の廃校問題をどうにかしたいとお考えの方は、ぜひご一読ください。
ユニグラウンドも参加!文部科学省推進の「廃校活用プロジェクト」とは
ー本日はよろしくお願いいたします。まず、NPO法人「ユニグラウンド」が参加する、文部科学省推進の「廃校活用プロジェクト」について教えてください。
石村 日里さん(以下、石村):「廃校活用プロジェクト」は、近年、少子社会で児童が減り、地域の学校が合併されることで廃校になる問題から、政府がなにか有効活用できないだろうかと考え始まった活動です。
しかし、プロジェクトが始まってから何年も経ちますが、実際に本当の意味で有効活用できている事例というのが意外と少ないんですね。
たとえば、学校の建物自体を商業的に活用したり、いろいろな企業や団体が名乗りを上げてさまざまな形で活用したりしていますが、商業ベースで活用したとしてもなかなか上手くいかず、難しいのが現状です。
村上 直人さん(以下、村上):もともと当団体で2015年にユニグラウンドフォーラムという、市民参加型のネットミーティングをしていて、廃校活用プロジェクトは、ちょうど2016年から取り組んでいます。
たとえば、家庭のなかで起こっている孤食や貧困など、社会全体として解決しなければならない問題がありますよね。そういった社会問題の根源は家庭にあると考え、地域全体で取り組んでいこうとなりました。
今となれば当たり前におこなわれていますが、当時はそういった取り組みが浸透していなかったので、地域の人を包括して廃校の小学校を中心にしたプロジェクトを考えたんですよ。
当団体は、全国規模で活動していて、各自が大家族型コミュニティの形成を目指し、地域住民と関わりながら廃校プロジェクトを各所で進めている段階です。
地域の幅広い世代を繋げる“大家族型コミュニティ”を目指す
ー大家族型コミュニティの形成を目指すプロジェクトについて詳しくお聞かせください。
石村:廃校の活用方法として政府に提案させていただいているのが、大家族型コミュニティになります。
大家族型コミュニティは、小学校のなかに幼稚園や託児所、お年寄りの方が通うデイサービスなどを全部入れてしまおうというもの。
廃校を活用するだけではなく、たくさん余っている学校の教室を別な形で使うことで、小学生は同じ学校に通い続けることができ、廃校にせずに済むのではないかと考えたんです。
幼児から高齢者に至るまで、同じ敷地内で一緒に時間を過ごす。もちろん教室は別ですが、同じ空間に多世代がいることで、お互いによい影響があるのではと考えました。
お年寄りにとっても、同世代だけではなく、小さな子どもたちが校庭で遊んでいる姿を目にする環境というのはいいですよね。
ー実際にその取り組みがおこなわれているところはありますか?
石村:当団体ではありませんが、実際に幼稚園や、小学校から中学校、それにデイサービスも同じ敷地内に入っている学校が東京のほうにはあるようです。
当団体も取り組んではいるのですが、同じ敷地にいろいろな年代の方が出入りすることに対しての懸念など、セキュリティの問題でスムーズにいかない現状があります。
しかし今ようやく、授業がない土日に、学校や体育館を市民に開放して生涯学習教室を実施しています。
ほかには、学校のなかに子ども食堂を設置したいという声も出ていて。
それも条例によってなかなか難しいのですが、少しずつ実現できるのではないかと考えています。
特に今、コロナの問題で児童が学校に行けない時期もあり、共働きしている家庭は子どもがひとりで家にいるケースも多かったですからね。
子ども食堂など情報の交換・交流会を毎月オンライン上で実施
ー今後、開催予定のイベントなどあれば教えてください。
石村:以前は、子ども食堂交流会などをオフラインで開催していましたが、現在はFacebook上でのグループページで情報交換や、交流をしています。
たとえば、どのようにしたら子ども食堂を始めることができるかだったり、あるいは子ども食堂をすでにやっている方が開催告知をしたり、食料不足と食品ロスの情報交換をして助け合ったりしているんですね。
そういった情報交流会を1ヶ月に1回か2回開催しています。
オフラインの交流会だと、大阪市内で近隣の限られた人だけの開催がメインでしたが、オンラインによって約1000名ぐらいの方が参加できているんですよ。
さまざまな課題解決のため住民一丸となって声を上げよう!
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
石村:廃校プロジェクトの話でいうと、やはり保護者の方は廃校にしたくないという意見が多いんですね。
そこでぜひ学校に投げかけてほしいのが、当団体が提唱しているような、幼稚園や託児所、デイサービスを合わせたコミュニティづくり。さらに、もし食堂がある小学校であれば、夕方と夜に子ども食堂として場所を貸していただきたいということです。
校長先生も学校の先生も、廃校にしたくないという思いはあっても、行政指導などがあるとどうすることもできません。しかし
、住民や保護者から意見がたくさん集まれば廃校せずに有効活用もできるのではないかと思っています。
廃校になりそうでも、実際に廃校の決定に至らずに何年も経ってるケースが多くて、そういう地域がきっと全国にもたくさんあると思うんです。
もし廃校になりそうで悩んでいる保護者の方がいたら、ぜひ一度、当団体の廃校プロジェクトを参考にして一緒に声を上げていただけませんか。
それと、子どもたちが登下校する朝と夕方の時間帯に、“見守り隊”という通学路に住民が立っている活動をご存じでしょうか。
あらゆる地域でこの活動はおこなわれていますが、近年の高齢化で、立っているのが20年目の住民の方もいて、70、80歳の方がもう交代してほしい、立っているのが大変、といった現状があるんですね。
私も60歳になるのですが、それでも若い人が来てくれたっていわれるほど。
私もPTAの方にこの現状を投げかけているのですが、ぜひみなさんも参加できればご協力いただきたいです。
村上:こういった当団体の活動に興味がある方は、ホームページから連絡いただければ、我々のメンバーがいない地域であっても、オンラインなどでいろいろとご相談、ご協力できることはたくさんありますので、ぜひご連絡ください。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:NPO法人 ユニグラウンド