障がいがあるため、友だちとコミュニケーションを取ることや、集団生活が苦手な子どもがいます。
しかし、はじめから障がいがあるからできないと決めつけるのではなく、少しでもできるように寄り添った療育をおこなうことが重要です。
今回は埼玉県久喜市で活動するNPO法人「誠会」理事の岩下 華子さんと、児童発達支援管理責任者の髙木 幸恵さんにお話を伺いました。
児童福祉に興味のある方はぜひご一読ください。
家庭と連携することが大事
―本日はよろしくお願いいたします。まず、「誠会」の活動について教えてください。
髙木幸恵さん(以下、髙木):私たちは主に、「児童発達支援」をおこなっています。
「身辺自立」「集団生活能力の獲得」というふたつの目標を立てて支援をおこなっています。
「身辺自立」では、身の回りのことが自分でできるようになること。
「集団生活能力の獲得」では、みんなと一緒に集団活動をおこなえることが目標です。
誠会にはいろいろな障がいをもつ子どもが通っていて、障がいの程度も異なりますから、その子どもにあった目標を設定することが大切。
そうやって、すべての子どもが、少しずつでもできることを増やしていけるような支援を目指しています。
ただ、子どもたちが事業所で過ごすのは、1日のうち6時間程度です。
子どもが成長するには、ご家庭との連携がとても重要になってきます。
そのため、事業所で取り組んでいる内容を保護者にもお伝えして、家庭でもできる限り同じやり方で取り組んでもらうんです。
当然、子どもと長く過ごす保護者が、事業所と同じ方法でやっても上手くいかないことがあります。
そこで私たちは、できる限り保護者の話を聞いて、寄り添い、ときには「一緒にがんばりましょう」と励ましているんです。
なかには、子どもの“できない”ばかりに注目して、不安でどうしたらいいかわからないという方も少なくありません。
だから、私たちは子どもができるようになったことは、どんなに小さなことでも共有して、一緒に喜びを分かち合っています。
はじめから、「うちの子どもにはできない」と決めつけるのではなく、できるようになることを信じて、日々諦めないで関わっていくことが大切です。
個人差はありますが、必ず成長が見られることを実感してほしいと思いながら日々療育を進めています。
私たちの事業所を利用される方の大半は、普通の幼稚園や保育園にも通っています。
療育を受けながらも、幼稚園や保育園での集団生活を経験させたいという保護者は多いですね。
そのため、園での子どもの目標を達成できるように、園の先生方とも連携しながら支援をおこなっています。
子どもたちが実際に通う幼稚園や保育園に伺って、園での子どもの様子を観察することもありますね。
岩下華子さん(以下、岩下):放課後等デイサービスの利用者は、特別支援学校に通学されている子どもも、普通小学校の支援学級に通学されている子どももいます。
普通小学校に通う子どもの場合、学年が上がるにつれて、障がいの特性によるコミュニケーションの課題が増えてしまう傾向にあります。
それで、友だちとトラブルになってしまったり、或いは疎外感を感じたりするような出来事が増えて、悩む保護者が多いですね。
そうした保護者の相談に乗りながら、子どもの長所や成長を一緒に見守るのが私たちの役割だと考えています。
子どもたちにとっては、放課後等デイサービスが学校や家庭以外の居心地のよい居場所になるように。
子ども同士がお互いのよいところを伝えあい、認めあえるような場所でありたいです。
多職種のスタッフが多数在籍
―採用されているスタッフの方について教えてください。
岩下:法人の代表者が特別支援学校の教諭資格を持っていることを筆頭に、有資格者の職員が非常に多いです。
社会福祉士、保育士、作業療法士、介護福祉士、精神保健福祉士、看護師、公認心理師など、多職種のスタッフがいます。
今年で4年目になりますが、埼玉県立大学からIPWという多職種連携の実践現場として、実習生の受け入れをおこなっています。
また、実習生受け入れの際には職員が特別講師を務めさせていただくこともあるんですよ。
2022年4月より社会福祉法人へ移行
―今後開催予定のイベントなど告知があれば教えてください。
髙木:センター内のイベントにはなりますが、12月には「クリスマス会」1月には「豆まき」3月の卒園前にはみんなで「遠足」へ行きます。
今回はコロナの影響で、どこまでできるかわかりませんが、例年、1年間の集大成ということで3月に発表会を開催しているんですよ。
劇や合唱のほかに、ひとつのテーマで1年かけてつくった制作物を披露します。
岩下:発表会は地域の方も参加できるように、毎年公民館でおこなっているんです。
髙木:ご家族だけでなく、近隣の方や、通っている幼稚園の先生などが見に来てくれますね。
岩下:法人としては、来年4月に大きなイベントを控えています。
NPO法人とは別に、「社会福祉法人」としても活動することになりました。
児童発達支援センターは来年度より、社会福祉法人へ移行します。これにより、公益的な事業を組織的に提供できるようにステップアップしていきます。
決してひとりで抱え込まないこと
ー最後に読者に向けてのメッセージをお願いします。
岩下:私も髙木も母親なので、保護者の方が子育てに悩む気持ちというのは、すごくよくわかります。
でも、支えてくれる人は大勢います。
ぜひ、ひとりで悩まず、勇気を出して地域にある私たちのような施設でもよいですし、病院や行政、学校でもよいので周囲に相談してほしいと思います。
子どもというのは「社会の未来であり宝」だと思っています。
それは障がいがあってもなくても変わりません。
読者の方には、地域の子どもに対して多様性を認めて、温かい眼差しをもって見守っていただきたいと思います。
髙木:私は実際に現場で子どもたちと接していますが、子どもたちよりも母親のケアが必要だと感じることが増えています。
その要因として、障がいの悩みを相談できないことがあるではないでしょうか。
ひとりで悩み、落ち込んで、ご自身を「産んだ私が悪い」と追い込んでしまうケースも非常に多くなっています。
助けを必要とすることは、決して恥ずかしいことではありません。
どうか私たちを頼っていただき、一緒に子どもたちの成長を見守っていただけたらと思います。
ー本日は大変貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:誠会