さまざまな理由から学校に行きたくない、行くことができない子どもがいます。
文部科学省の調査によると新型コロナの影響で児童生徒の不登校は過去最多となっています。不登校は決して他人事ではありません。
心が壊れそうなときは、「学校に行かない」という選択肢があることも知ってほしいと思います。
今回は福岡県福岡市で不登校の子どもたちに居場所を提供する「NPO法人 ギフテッド」代表の久保山 博子さんにお話を伺いました。
学校に行かないという選択肢
―本日はよろしくお願いいたします。まずは、「フリースクール・ギフテッド」の活動についてお聞かせください。
久保山 博子さん(以下、久保山):私の息子が小学校3年生のときに不登校になって、それで不登校の子どもを持つ保護者と学びあう場をつくったんです。
そのなかで、学校に行くことができない子どものための居場所が必要だと気がつきました。不登校になったからといって、子どもは教育を受ける権利を放棄したわけではありませんからね。
学校に行くことができないことで生じる生活リズム、学習意欲、体力、社会性といった問題を改善できる場所が必要だと感じたんです。
そこで、保護者が自宅を開放する形でスタートしたのが「フリースクール・ギフテッド」のそもそもの始まりです。
“ギフテッド”は才能に秀でた天才児に対して使われる言葉ですが、この地球上では誰もがたったひとりのギフト=贈り物であること、大事な命だと伝えたくて、ギフテッドとしました。
現在は中学生のみ受け入れています。
一日の流れとしては、午前中は学習をする時間。午後は調理実習、畑で野菜の栽培、体育館で運動など、いろいろな活動をおこなっています。
グループ学習やディスカッションをすることもあって、自分のことを分析してトリセツをつくることもあるんですよ。
毎月2回ほど、「ボランティア活動」もおこなっています。
私たちの活動は利用者には極力、経済的負担がかからないようにしていて、福岡県からの補助金、保護者からの会費や寄付、支援してくださっているサポーターのお陰で活動ができています。
なので、そのお返しとして自分たちができる社会貢献活動として、障がい児の入所施設での清掃活動や使用済切手の整理、地域の清掃やゴミ拾いをしているんです。
在籍する学校と協議の上、フリースクール・ギフテッドでの活動参加日数を、学校の出席日数に加算することも可能になっています。
外部の方との交流を大事に
―フリースクール・ギフテッドの活動に興味を持った人ができることがあれば教えてください。
久保山:コミュニケーションや社会性の改善という点でも、外部の方との触れあいは大切です。たとえば、子どもが畑で作業をするときには、畑の知識がある地域の方が無償で教えに来てくださっているんですよ。
不登校児の支援をしている高校の先生が特別授業をおこなってくれたこともあります。
いつも支援してくださっているサポーターの方と一緒に芋ほりをして交流を図ったり。
交流はどなたでも歓迎です。私たちの活動に参加していただいても構わないですし、逆に何かご一緒させていただけることがあれば、提案していただけると嬉しいです。
サポーターに関しては年間1口1万円から資金の支援をお願いしています。
毎月“支援方法を学ぶ会”を開催
―今後開催予定のイベントがあれば教えてください。
久保山:子どもだけではなく、保護者の方の支援活動もおこなっていて、月に1回はスクール利用者の保護者の方と面談をしています。
スクール利用者以外ですと、毎月第1土曜日の10時から12時まで、主に小学生と中学生の保護者を対象とした「支援方法を学ぶ会」を開催しています。この会では支援方法の提案や情報をお伝えし、希望する方には個人面談も実施可能です。
13年間不登校になる子どもたちと関わってきましたが、中学生以降に不登校になった子どもでも、じつは小学生のときにすでにSOSを出していたケースも珍しくありません。小学生のときの支援のあり方は大事だと感じています。
会員対象のイベントにはなりますが、事前に連絡をいただければ、初回の見学は会員以外の方でも参加可能です。気になる方はぜひお越しください。
子どものSOSを見逃さない
―最後に読者の方へのメッセージをお願いいたします。
久保山:フリースクール・ギフテッドでは、子どもを中心に保護者、私たち支援者、そして学校の先生と協力し合いながら、子どもが望むようであれば学校復帰も支援しています。
中学で戻れるかもしれませんし、高校からになるかもしれません。それがいつの時点になるかはわかりませんが、再び社会(学校)参加できるよう支援することが私たちの役目。
不登校になる子どもは、繊細さと優しさを併せ持っている子どもが多いと感じます。「親の心子知らず」と言いますが、私は逆に「子の心親知らず」だなって思っているんです。
子どもって優しいので、「親に心配を掛けたくない」「迷惑を掛けたくない」とか「お母さんが悲しい顔をするのがイヤだから言わない」そんなことを考えて辛い気持ちを表さない場合もあります。
なので、どうか日頃から子どものことをいろいろな角度から見て、コミュニケーションを取ってください。
そして、どんなことがあっても家の人はジャッジをせず、丸ごと受け止めて、そのうえでしっかり話し合いを重ねることこそが重要だと考えています。
フリースクール・ギフテッドのスタッフは、我が子の不登校を経験した当事者なので、行き渋りや、不登校の子どもを持つ保護者の方の大変さや辛さもよくわかります。
学校に行かれない原因は、学校という環境下で、何かしら心の問題が起きているということなのです。
その大半が人間関係によるものですが、学校に行かれないことは決して悪いことではありません。
むしろ、「自分を守る」という意味においては、「一時避難」が大切なのではないでしょうか。
子どもが「学校へ行きたくない」と発信することは、すごく勇気がいること。
一番身近で信頼している親に勇気を出してSOSを出したのに、受け止めてもらえなかったら子どもはどう思うでしょうか。まずはSOSを受け止めてあげてください。
こういう活動をしていると、「学校に行きたくない」と行き渋る子どもを叩いたり、引きずったり、親子で泣きながら学校へ行こうとするという話を聞くんですね。
私たちも当事者だったので、お気持ちは良く分かりますが、それでは親子関係も悪化していまい、子どもは心を閉ざしてしまいます。どうしたらいいかわからないときは、親子で抱え込まないで、どうぞ早い段階で相談に来てください。
ー本日は大変貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:ギフテッド