いじめ、両親によるネグレクトなど、学校や家で居場所を見つけられない子どもの存在は現代の社会問題になっています。
なかには十分な食事や教育を与えられず、さらに孤独を深めていく子どもも少なくありません。
今回は、そのような子どもたちに救いの手を差し伸べているNPO法人「若者支援ひろば三愛」を取材。
代表を務める林 美江さんと、大学生ボランティアの中島 安さんに、子どもへのサポートや、居場所づくりについてお話を伺いました。
おふたりから聞く取り組みや考えからは、現代の子どもが抱えるさまざまな問題が見えてきます。
子どもたちの居場所づくりとしておこなう“学習支援と食事の提供”
ー本日はよろしくお願いします。まずは、NPO法人「若者支援ひろば三愛」の活動内容について教えてください。
林 美江さん(以下、林):「若者支援ひろば三愛」は、虐待、ネグレクトといった家庭の問題を抱えている子どもや、いじめなどで学校になじめない子どもに対して、学校と家庭以外の第三の居場所を提供しています。
主な取り組みは、居場所提供と学習支援のふたつで、生きにくさを感じている若者が社会で活躍できるように、スタッフ全員で子どもの成長をサポートしています。
たとえば、居場所提供として使用している交流スペースは、同年代同士でコミュニケーションを取れる空間になっているんです。
みんなでゲームをしたり、くつろいだりと、まるで自分の家のように過ごしてくれる子どもが多いですね。
また、居場所提供の一環である食事支援では、満足に食事をとれていない子どもに手づくりの食事を提供しています。
経済的な事情で十分な栄養をとれていない子どもはもちろん、ひとりで食事を済ませる、いわゆる「孤食」が習慣になっている子どもも対象です。
ここに来て、栄養バランスのとれた食事をみんなでとる楽しさを知ることが、問題解決への一歩と考えています。
役割分担することで“子どもの気持ちに寄り添った”最適なサポートを
ー学習支援の内容について、詳しく教えてください。
中島さん(以下、中島):学習支援の主な対象は、経済的な問題で塾へ通えない子どもや、不登校の子どもです。
学校の勉強の遅れが不登校の原因になることもあるため、ここで学習をして、少しずつ自信をつけてもらえたらと願っています。
林:ちなみに、食事提供や悩み相談は主に私が引き受け、学習支援は中島さんを中心とした大学生がおこなう、といった具合に役割を分担しているんですよ。
運営するなかで、子どもの悩みを聞く人と、勉強を教える人は分けたほうがよいという結論に至りました。
ただし遊ぶときにはもちろん私も入って、みんなで楽しむようにしています。
しかし、役割分担こそしていますが、居場所提供と学習支援の垣根はありません。
なぜなら、「家庭が貧しいと周りに知られたくないから、子ども食堂には行きたくない」という、複雑な子どもの心情を考え、
学習支援を前面に打ち出しているんです。
そうすることで、友だちには塾へ行っているといえますから。
このように、まずは子どもにとって居心地のよい環境をつくって食事を提供し、ある程度気持ちが落ち着いてきたら、学習支援へ移行するのが一般的な流れになっていますね。
ー就労支援についても教えていただけますか?
中島:現在、若者支援ひろば三愛には、中学生から20代前半までの学生が来てくれています。
中学生の多くは高校に進学しますが、高校を卒業したら大学進学、もしくは就職という生徒も少なくありません。
そのため、まずは中高生の学習サポートに専念して、進路の方向性を決められるようにしています。
就労支援といっても、直接就職活動をサポートするというより、就労につながる学習支援や進路相談が中心です。
林:私は具体的な進路指導をおこなうのではなく、就職するにあたっての相談や、個人のやりたいことと実際にできることのすり合わせなど、子どもの気持ちや考えを整理するお手伝いをします。
このふたつが乖離していると、社会に出てもなじめない可能性があるので、慎重に話を聞くようにしているんです。
期間限定でギフテッドの子ども向けイベントを実施中
ー今後、開催予定のイベントなどあれば教えてください。
林:以前はプログラミング教室のイベントを企画したこともありましたが、コロナ禍で直近は人が集まるイベントの開催が難しい状況です。
しかし現在は不定期ではありますが、期間限定でギフテッド(※)の子どもたちへの支援をおこなっています。
たとえば、少し年上のお兄さんやお姉さんが一緒に遊びつつ、高度な勉強を教えているんですね。
いわゆる非常に高い知能を持ちながらも、その特性ゆえに学校になじめない子どもの知的好奇心を満たす企画を中心におこなっています。
これからもこのようなイベントを定期的に開催していく予定です。
(※)ギフテッドとは、先天的に顕著に高い知性と共感的理解、倫理観、正義感、博愛精神のいずれかを持っている人のこと。
サポート体制を整えてより多くの子どもたちの支援を目指す!
ー今後の展望についてお聞かせください。
中島:現在は中学生以上を対象にしていますが、今後は貧困家庭の小学生も受け入れられるように、規模を拡大していきたいですね。
そのために、スタッフの増員も予定しています。
また、保育士資格を持った方などにお手伝いいただき、小学生以下の低年齢層のサポート体制も整えていきたいです。
林:今施設を利用している子どもたちが成長したときに、今度はその子自身が人を支えるような活動をしていってほしいですね。
人を支援したいと思えるような子どもが、若者支援ひろば三愛からひとりでも生まれることを願っています。
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
中島:私たちはボランティアとして活動をおこなっていますが、仲間のボランティアスタッフを見つけるのはそう簡単ではありません。
今の大学生は、奨学金を借り、バイトをしながら大学に通っている方が多く、ボランティアに時間を割くのは難しいんですよね。
しかし、子どもたちはやはり年齢が近いスタッフに強い安心感を覚えるため、大学生が参画できる体制をもっと整えたいと考えています。
それができれば、一番子どもたちのためになるのではないでしょうか。
林:私たちの活動を応援してくれる人こそいても、運営はなかなか厳しいのが現状です。
私たちの取り組みに目を向けていただき、活動を支援してくださる方がひとりでも増えるといいなと思っています。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:NPO法人 若者支援ひろば三愛