障がい者の自立を支援するNPO法人「アイ・ネットワークくまもと」を取材!共生社会の実現を目指して

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障がいがある人もない人も、あらゆる人が孤立も排除もされずに支え合える社会が実現できたら…。

NPO法人「アイ・ネットワークくまもと」は、熊本県で障がい者の社会的・経済的自立を支援し、パソコン教室の運営などを通して誰もが輝く地域社会をつくることを目標に活動しています。

これは誰も置き去りにしない世界を目指すSDGsの取り組みといえるのではないでしょうか。

今回は、NPO法人「アイ・ネットワークくまもと」代表理事の三角 泰史さんにお話を伺いました。

  1. 障がい者の「働きたい」に応えるNPO法人
  2. 障がい者の自立を支援し地域に還元
  3. パソコンとプログラミングが学べる「ジュニアコース」
  4. あらゆる人が孤立しない共生社会の実現を目指して

障がい者の「働きたい」に応えるNPO法人

「アイ・ネットワークくまもと」スタッフ

ー本日はよろしくお願いします。まずはNPO法人「アイ・ネットワークくまもと」がどういう団体なのか教えてください。


三角 泰史さん(以下、三角):「アイ・ネットワークくまもと」は、パソコンなど就労に必要なスキルの習得を通して、障がい者の社会的・経済的自立をサポートするために活動しているNPO法人です。

勤務していた会社が倒産したとき、新しいことをするなら社会貢献できる仕事をしたいと考えたことがきっかけです。

私も視覚に障がいがあって、仕事や生活面でいろいろな人に応援をしてもらった経験があります。同じようにハンディや障がいがある人の自立を支援したいと、 平成14年に IT やパソコンに強い仲間と一緒にNPOを立ち上げました。

たくさんの人に参加してもらえるようNPOという組織形態をとり、障がい者一人ひとりがそれぞれの才能を発揮し、「個」が生き生きと輝くような地域社会になったらいいなという想いで活動しています。

設立当初は、県からの委託で障がい者の自宅にパソコンボランティアを派遣する ITサポートセンターの運営や、ハローワークの職業訓練として、障がいのある人にパソコンの技能訓練をおこなっていました。

ただ、3ヶ月の職業訓練だけでは就職できたとしてもほとんどの人が、「会社の中で自分が受け入れられない」「周りとうまくいかない」といった理由で半年以内で辞めてしまい、NPOの設立趣意である社会的・経済的自立にはつながりませんでした。

このままではダメだと思い、平成26年から「就労移行支援」と「就労継続支援A型」という障がい福祉サービスに取り組み始めました。

障がい者の自立を支援し地域に還元

「アイ・ネットワークくまもと」就労移行支援

ー先ほど挙がった2つの活動について詳しく教えてください。


三角:最初に始めたのが、障がい者の一般企業での継続した就労を支援する就労移行支援」です。2年間という期限はありますが、3ヶ月の職業訓練に比べると、より専門的で質の高い就労技能の習得ができます。

また、パソコンや簿記などの技能訓練に加え、離職の原因となる周囲との接し方やグループでの仕事の仕方など、社会性を身につける訓練にも力を入れています。

もちろん企業見学や実習などの就職活動支援や就職後のケアとしての定着支援も大事な活動です。

これにより、6~7割の人が一般企業に継続就労できるようになりましたが、障がいの程度や特性によっては、いきなり一般企業で働くのは難しく、できれば誰かの支援のもとで働きたい、と希望する障がい者の方がたくさんおられるのが実情です。

このようなニーズに対応し、福祉的就労の場を提供し、次のステップとして一般就労を目指すためのサービスが「就労継続支援A型」になります。

当時のA型事業所は、軽作業や農業、クリーニングなどの仕事が主流で、パソコンを使う事務的な仕事は非常に少なかったんです。そこで、パソコンスキルを活かせる仕事がないのなら、自分たちで作ろうということになりました。就労移行支援の訓練で身につけたパソコンスキルを地域に還元するアイ・ネットワークくまもとの就労継続支援A型事業所の立上げです。

その頃、スマートフォンやタブレットが家庭にかなり広がってきていたので、パソコン・スマホ・タブレット教室を事業の主体にして、このA型事業所をスタートしました。頭文字をとった「パスタ」という店名も、障がいのある利用者さんたちが考えてくれたんですよ。

「パスタ」の教室には、マンツーマンで地域の方の習いたいニーズに合わせて応えていく「カジュアルコース」、社会人や学生がマイクロソフトオフィスなどの資格取得を目指す「ビジネスコース」、そして子ども向けの「ジュニアコース」の3つがあります。

ジュニアコースは、2020年に小学校のカリキュラムにプログラミングが入ったことを受け、「ロボットプログラミング」の親子イベントを開催したところ、かなりの反響や要望が上がったので新たなコースとして加えました。

A型事業所ではそのほか、ネット販売やネットオークションの代行サービス、地域の企業と連携し、ホームページや印刷物の制作サービスなど、パソコンの技能を活かした仕事を、障がいのある利用者=スタッフさんと一緒に展開しています。

パソコンとプログラミングが学べる「ジュニアコース」

NPO法人「アイ・ネットワークくまもと」ジュニアコースの様子

ー子ども向けの「ジュニアコース」について詳しく教えてください。


三角:
「ジュニアコース」には、「子どもパソコン教室」と「ロボットプログラミング教室」があります。「子どもパソコン教室」では、年長から中学生までを対象に、少人数制で、タイピングから始めて社会生活や仕事で必要となるスキルとして、WordやExcelなどのソフトの操作や活用方法を学ぶことができます

まだアルファベットすら知らない子も多いので、大人になっても困らないよう、正しいタッチタイピングでローマ字入力ができるよう指導しています。

なかには1年生でパソコンを始めて、4年生になるとWordやExcelが使えるようになり、PowerPointで家族に発表する子もいるんですよ。子どもたちが興味を持って取り組めるよう、サンタさんへの手紙やカレンダーの作成など楽しいものからお小遣い帳や夏休みの研究発表など日常生活に役立つものまで、さまざまな題材を使用しているのもこの教室の大きな特徴です。

もう一つの「ロボットプログラミング教室」では、レゴ社の教材を使いブロックでロボットを組み立て、遊びながらプログラミングを学ぶことができます

プログラミングを通して、「なぜうまくいかないのか」「うまくいかなかったときに、どのようにやり直したらうまくいったのか」というように、「考える力」や「課題を解決する力」を育むことを一番大切にしているんです。

1つの正解を辿るにもプログラムの組み方は複数種類あります。「私はこうしたら良いと思う」という風に、それぞれの意見を出し合うことで子どもたちの発想が広がり、成長につながっていると思います。今はチームでコンテストに参加し、「熊本の未来」というテーマでプログラミングを工夫し、動画の撮影やパワーポイントでの発表の準備をしているところです。

また両方やってみたい子どものために「ミックスクラス」を新設しましたので、1週おきにパソコンとロボットプログラミングを交互に学ぶこともできますよ。

あらゆる人が孤立しない共生社会の実現を目指して

NPO法人「アイ・ネットワークくまもと」

ー今後の展望をお聞かせください。


三角: NPOを設立した当時は、よく「バリアフリー」という言葉が使われていました。でも、ただ壁を取り払っても、健常者と障がい者の働く場所や仕事が別では意味がないと思うんですよね。

いま、私たちがテーマにしているのは「ソーシャル・インクルージョン」という考えなんです。

あらゆる人が孤立したり、排除されたりせずにひとつの社会の構成員として一緒に包み込まれ、それぞれが支え合っていける社会。そんな社会を目指していきたい。

この考えは、いわゆるSDGsの持続可能な社会と同じだと思います。障がいの有無に関わらず、同じ空間の中で同じ仕事をしながら、それぞれの強みを生かして生活をしていく。これが実現できたら最高ですね。

そんな社会を実現するためにも、まずは一人でも多くの障がい者が一般企業の枠組みの中で継続して働けるように支援を続けていくことが重要と考えています。

それから、ICTの普及はもちろん、たとえば私たちの名刺は点字や指文字が入った「UD名刺」なんですが、そんなユニバーサルデザインの推進や、動きが悪くなったパソコンを手直しして使うリユース・リデュース(2R)のような活動をしていくことで、持続可能な共生社会の実現を目指していきたいです。


ー最後に、読者の方に一言メッセージをお願いします。


三角:私たちが運営する教室「バスタ」は、障がいの有無にかかわらず、垣根をなくし協力してサービスを提供しています。

小さい子どもから高齢者まで、地域に密着して一人ひとりにスポットライトを当てた、さまざまなプログラムをご用意しています。

教わる側も教える側も共に成長していける、そんな教室でありたいなと思っていますので、パソコン教室というよりも、地域の方が交流するカフェの感覚で、ぜひお気軽にお越しください

私たちの活動への参加や仕事の依頼もお待ちしています。


ー本日は貴重なお話をありがとうございました。


■取材協力:アイ・ネットワークくまもと

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