お買い得だったから、子どもが好きだからとついつい買いすぎて、気がついたときには賞味期限が切れていた…そんな経験がある人は多いのではないでしょうか。
消費者庁が発表したデータによると、日本の食品ロス量は年間600万トンにも及び、一方で、厚生労働省が実施した調査によると、現在、日本では7人に1人の子どもが貧困状態にあるといいます。
「相対的貧困をなくしたい」「食品ロスを削減したい」と活動するNPO法人「フードバンク日向」理事長の長友 慎治さんにお話を伺いました。
もったいないと思いながら食品を廃棄した経験がある方、支援を受けたいけれどその方法が分からないという方は、ぜひご一読ください。
きっかけは近所の人に支えられた過去の体験
ー本日はよろしくお願いします。まず「フードバンク日向」の設立経緯と活動内容について教えてください。
長友 慎治さん(以下、長友):「フードバンク日向」は前理事長 堀アトムの志「生活困窮家庭を救う」に共感したメンバーによって設立されました。
堀の母、千鶴さんはシングルマザーとして5人の子どもを育てました。それは簡単なことではなく、地域の人にもだいぶ助けられたようです。
それで、堀親子はいつか地域の人へ恩返しをしたいという気持ちを持っていたんですね。
千鶴さんは、2017年にカフェ「kakure cafe NICO」をオープンし、「子ども食堂」として、子どもに食事を提供していました。
ところが、活動を続けるなかで、カフェへ来ることができない子どもたちが存在することに気がつきました。
そこでカフェへ足を運べない、食べるものに困っている人や子どもへ食事を届けたいと、堀アトムが中心になって「フードバンク日向」を立ち上げました。
私たちは、皆さまから善意でお寄せいただいた食品を、必要なところへお届けする活動をおこなっています。
フードバンク日向がサポートする活動には、「学習支援事業」と「子ども支援事業」もありますよ。
子どもに「居場所」を提供する
ー「学習支援事業」と「子ども支援事業」について教えてください。
長友:「学習支援事業」は子ども食堂にご飯を食べに来た子どもに、勉強を教える活動です。勉強場所として子ども食堂などを開放しています。
子どもが自主学習をするだけではなく、私たちの活動の趣旨に賛同してくれた高校や、塾の先生がボランティアで勉強を教えてくださいます。
「子ども支援事業」は、何らかの理由で学校へ行きたくない、行くことができない子どもが集まれる「居場所」の提供。
この半年ほどは新型コロナウイルスの影響もあって、子ども食堂自体を閉めているところがほとんどでした。
これまではカフェや食堂の外で弁当を配布するテイクアウト形式で、なんとか食事の提供はおこなえていた状況でしたが、ようやく各地の子ども食堂などで学習支援も再開できそうです。
子育て世代が中心に活動
ー「フードバンク」に興味をもった人が協力できる活動があれば教えてください。
長友:ご協力いただきたいことは大きく分けて4つあります。1つ目は「食品の寄付」。ご家庭にある常温で保存ができる食品がありましたら、ぜひお寄せください。
2つ目は「フードドライブ拠点」。ご近所の方の分もまとめて集めていただく活動です。拠点があると、物資が集まりやすくなります。
3つ目は「会員」になって、個人、法人の方に団体の志を共有いただくこと。個人の会費は3000円からあります。
4つ目は「ボランティア」として、皆さんから寄せられた食品の賞味期限のチェックや、箱詰めする作業をお願いしています。
「フードバンク」という活動は、日本各地で広がってきていますが、まだまだ家の近くにはない方のほうが多いでしょう。
遠方から協力したいという方は、郵送での物資の受付もおこなっていますよ。
お互いさまの気持ちで気軽に取り組んでほしい
ー今後の展望についてお聞かせください。
長友:フードバンク日向で活動しているメンバー8人の平均年齢は45歳くらい。ほかのフードバンクを運営している団体からすれば、若い、働き盛りの人間が中核です。
全員、別に仕事があって、フードバンク日向での活動はすべてボランティア。団体を立ち上げてからも、十分に活動時間が取れたとはいえません。
しかし、私たちが活動することで、同じ子育て世代の人へ問題意識の共有や、共感をしていただけるはずです。
ひとりでも多くの方が「フードバンク」と「子ども食堂」という活動を知って、利用する側でも、サポートする側でも参加してくださったら嬉しいです。
私たちの基本理念である「ペイフォワード(誰かの善意を私たちがかわりに届ける)」の取り組みがもっと、もっと自然発生的に横に広がれば、食べるものに困る人が減り、フードロス削減にも繋がっていくでしょう。
ー最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。
長友:私たちは決して仰々しく、大したことをやっているつもりはありません。
だれか必要な人へ届けられたら、お互いが助かるな。お互いさまだよねといった気持ちで、気軽にできるものだと思っています。
30年前の日本というのは、食べるものに困っている家庭があると、近所の人が「我が家で食べていけば?」と声をかけてくれる、そんな時代だったんですよね。
かつての日本がそうだったように、ぜひ、「お互いさま」という気軽な気持ちで、負担にならない範囲で、身近なところから支援に取り組んでいただければ。
皆さんのその行為で、どこかで助けてほしい、困っているという声を上げられない人が救われるはずです。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:フードバンク日向