数学II の「微分・積分」は、それまで学習してきた四則演算や指数などとはまた違った計算で、極限や微分・積分をきっかけに数学で挫折してしまう高校生も少なくないのではないでしょうか。
そこでこの記事では、「数学II で微分・積分を学習し始めたばかりの人」「これから微分・積分を学習する予定の人」に向け、微分や積分がどういうものであるかを説明していきます。
なんとなくこの分野に苦手意識を抱いていたり、新しい記号のオンパレードで混乱したりしていても、この記事を読めば理解できることでしょう。
- 微分・積分とは?
- 微分とは「瞬間の速度」のこと
- 積分は「これまでの積み重ね」のこと
- そもそも、微分積分って何に使うの?
- 高校で習う微分積分の公式一覧
- 微分の公式一覧
- 積分の公式一覧
- 練習問題で微分・積分の理解を深めよう
- 微分の練習問題①:定義にしたがって微分係数を求める
- 微分の練習問題②:定義にしたがって導関数を求める
- 微分の練習問題③:公式を使って導関数を求める
- 微分の練習問題④:接線の方程式を求める
- 微分の発展問題①:指定した点を通る接線を求める
- 微分の発展問題②:覚えておくと便利な公式
- 積分の練習問題①:不定積分を求める
- 積分の練習問題②:定積分を求める
- 積分の練習問題③:偶関数・奇関数の積分
- 積分の練習問題④:もっともシンプルな面積計算
- 積分の発展問題①:積分を含む関数方程式
- 積分の発展問題②:覚えておくと便利な公式
- まとめ
微分・積分とは?
微分や積分は、しばしば距離や速度・速さ(※)を例として説明されます。
簡単にいうと、瞬間の速度を求めるのが「微分」、変わり続ける位置変化の積み重ね、つまり距離を追うのが「積分」ということ。
身近で理解しやすい例なので、今回はまず距離・速度を具体例として出し、そののちに高校数学における微分・積分の定義についてご紹介します。
※「速度」は向きを持つ量であるのに対し、「速さ」はその大きさを示す量として、速度と区別して使用されます。ただし、ここでは「速度」で統一し、厳密な使い分けをしないこととします。(そもそも以下の例では一次元で反転しない動きを考えるので、使い分けを意識せずともあまり問題ありません。)
微分とは「瞬間の速度」のこと
たとえば、自動車で A 地点から B 地点に移動することを考えましょう。この道のりは 300 km です。
実際に車を運転してみた結果、A 地点を出発した 6 時間後に B 地点に到着したものとします。
このとき、この車はどれくらいの速度で走行していたでしょうか?
もっともシンプルに考えるならば、6 時間で 300 km 走ったわけですから 300 km ÷ 6 時間 = 50 km/時。つまり時速 50 km となります。
小学校の算数のテストであれば、このように答えておけば問題ないかもしれません。
しかし、現実的にはずっと時速 50 km で走行していたわけではありません。
高速道路でスイスイ進むこともあれば、赤信号で停止することもあるでしょう。
車にはスピードメーターがあって、その車の速度がすぐわかるようになっています。
そこで表示されている速度は、アクセルやブレーキを踏むとすぐに変化しますし、その瞬間の速度であるといえます。
この「瞬間の速度」を求めるのが、微分という操作です。
ここまでで、「微分」がなんとなくどういうことなのかは理解できたのではないでしょうか。
でも、微分が具体的にどういう操作なのかはまだ述べていません。 そこで次は、具体的に微分とはどういうものかをご紹介します。
ここに、関数 f(x) のグラフがあります。定義域は十分広いものとしましょう。
以下の操作はどんな関数に対してもできるわけではありませんが、とりあえず上のような「なめらかでキレイな」関数を想定することにします。
さて、このグラフ上の点 A(a、f(a))、および B(b、f(b)) を考えます。
ここで a、b は実数ですが、特に a ≠ b であるとしましょう。これら 2 点を結ぶ直線は次の図のようになります。
※以下 a < b の場合を図示しますが、 a > b の場合の図は各自で描いてみましょう。
ここで、直線 AB の傾きを考えます。これは a、b にも依存し、当然 f(x) にも依存します。傾きを a、b、f(x) で表すと以下のようになります。
この値を、x の値が a から b まで変化するときの関数 f(x) の平均変化率といいます。
a≦x≦b の範囲における f(x) のグラフはもちろん直線 AB (ピンク色) ではありません。単に両端の点を線で結んだだけですから。しかし、この直線 AB に意味を見出すことはできます。
a≦x≦b という範囲で、y 座標 (つまり f(x)) の値は f(b)-f(a) だけ増加しているわけですが、もし x 座標の増加に対して y 座標の増加が一定ペースだとしたら、まさに直線 AB (というよりは、線分AB) のようなグラフになりますよね。
これは、先程紹介した「平均の速度」の考え方と同じです。
ちょうど横軸 ( x 座標) が時刻に、縦軸 ( y 座標、f(x)) がその時刻での位置に対応しています。
だから先ほどの (f(b) - f(a)) / (b-a) は平均変化率と呼ばれているのです。
今回は y 座標、つまり f(x) の値が増加した場合を図にしましたが、途中で y 座標 がずっと上がり続ける必要はありません。
したがって、平均変化率の値は負になることもあればちょうど 0 になることもあります。
先ほどの図は、イメージしやすいように「おとなしい」ケースだけ考えているのでご注意ください。
さて、平均変化率についてご紹介しましたが、今度はその応用です。点 A の位置はそのままにして、点 B を点 A に近づけてみましょう。
このとき、直線 AB はどのように動くでしょうか。
今回の場合、直線 AB は上の図で「ピンク色→橙色→黄色→黄緑色」のように動いていきます。これはきっと想像しやすいはずです。
問題はここから。緑色の直線の時点で点 B は点 A にだいぶ近いですが、もっと近づけるとどうなるでしょうか。
たとえば、点 A と点 B の x 座標の差を半分にしたときの直線 AB を描き、次はさらに x 座標の差を半分にし、次はまた半分にし、…という操作を考えます。
どのような直線「になるか」とは聞いておらず、どのような直線「に近づくか」という質問であることに注意しましょう。
微分や積分のもととなる「極限」の概念を理解するためには、この区別が重要です(これをすんなりイメージできれば、これから微分・積分や 数学III の学習でも有利になるでしょう)。
実は、点 B を点 A に近づけると直線 AB は「点 A における y = f(x) のグラフの接線」(上図の青色の直線)に近づきます。初学者でこれをイメージできた人はすごいです。
ちなみに、「そもそも接線とは何なのか」というのは難しい問題です。
今回のように直線を少しずつ変化させ、それが近づいていく直線を接線と定義することもあります(その場合、「直線 AB が接線に近づく」というのは、循環的な表現になってしまいますね)。
さて、「限りなく近づく先」は点 A におけるグラフの接線だったわけですが、この接線の傾きを α とすると、この α は a の関数になっています(点 A の x 座標 a を決めれば、その点における接線の傾きがただ1つに決まるためです)。
そこでこの関数、つまり接線の傾きを表す関数を f'(x) と書くことにしましょう( f'(x) を関数 f(x) の導関数といいます)。このとき f'(a) = α であり、また以下が成り立ちます。
f'(a) は、関数 f(x) の x=a における微分係数といいます。
ちなみに、関数 y = f(x) の導関数の表し方は、f'(x) のほかにも以下のような記号が用いられるので、これらも併せて知っておきましょう。
ある関数の微分係数や導関数を求めることを「微分する」といいます。(ここでようやく「微分」という語が出てきましたね。)
なお、本来であれば「何で微分するのか」を明記します。たとえば「 f(x) を x で微分すると」という具合です。
ただし、何で微分するのかが明らかな場合については、これを省略することがあります(この記事においても同様)。
※「lim」について
この分野を初めて学習する場合、lim というものを⾒たことがないかもしれません。そこで、⼀旦 lim についての説明もしておきます。
関数 g(x) において、x が p とは異なる値をとりつつ限りなく p に近づくとき、それが大きい方からであっても小さい方からであっても g(x) はある値 β に近づくとします。
このとき、x → p のとき g(x) の極限値は β であるといい、以下のように書きます。
したがって、先ほどの数式は…
なお、上の式で b と a の差を h とする(つまり、b=a+h とする)と、以下のようになります。
これが上の式と同じであることは、各自で確認しましょう。
※重要※
極限(lim)の「意味」(厳密な定式化は大学数学でやるので、ここではあえて意味と表現します)を述べました。
「限りなく近づく値」が存在することを当たり前のように仮定していましたが、いつもその「限りなく近づく値」が存在するとは限りません。
そもそも以下の極限が存在しないことには、微分係数は存在しないのです。
この極限が存在しない状況というのは、初見だとイメージしにくいかもしれません。これについてはのちほど練習問題で扱います。
上の説明で「それがどういう近づき方であっても」と述べていますが、それがヒントです。
数学II の微分分野では、こうした極限の存在しない、つまり微分できない関数も時折登場します。
しかし、大抵の場合多項式という「おとなしい」関数ばかり扱うので、「微分できて当然だ」と思いがちです。
でも、微分できない関数も無数にあることを忘れないようにしましょう。
積分は「これまでの積み重ね」のこと
今度は、「積分」についてご紹介していきます。積分とは、位置変化の積み重ね(距離)を求めること。
「ある瞬間にどのくらい位置が変化したか」ということがわかれば、特定の時間内に走行した距離を求められます。
では、先ほどの速度の例を用いることにしましょう。
自動車は、累計の走行距離が表示されるようになっています。これを計算するためには、どのような計算をすればよいでしょうか。
たとえば、時速 50 km で 3 時間走行したのち、時速 80 km で 4 時間走行したのなら、走行距離は 50 km / h × 3 h + 80 km / h × 4 h = 470 km となります。
そのあと時速 20 km で 2 時間走行したのなら、さらに 20 km / h × 2 h = 40 km を足して 510 km、という具合に、その時々の移動距離を足し算していけば累計走行距離を計算することができそうです。
この計算を図形的に表現することを考えましょう。次の図は、ある自動車の走行速度を時刻ごとに示したものです。( v-t グラフなどと呼ばれます。)
グラフの一部だけ表示していると思ってください。
このグラフを見れば、ある時刻 t での自動車の速度がわかるようになっています。
さて、この自動車が時刻 t = a から t = b までの間に走行した距離を求めたい、としましょう。
ここで a、b は a < b なる実数です(微分のときもそうでしたが、実は a < b である必要はありません。ただ、ここではわかりやすさのために大小関係を与えています)。
先ほどの計算方法のように、各時刻の走行距離を少しずつ足していく方法を採用すると、時刻 t = a から t = b までの走行距離は次図の長方形の面積の合計になります。
しかし、今回のグラフのように速度が刻一刻と変化する場合、ある程度の時間幅で区切って(時間)×(速度)を計算して和を取ったとしても、やや不正確になってしまいます。
長方形の幅をどんどん細かくしていくと、やがて長方形の面積和は、下図のように y = f(t) のグラフと直線 t = a、t = b、および t 軸で囲まれた部分の面積(橙色部分)に近づいていくと考えられます。
この面積がまさに時刻 t = a から t = b までの走行距離なのです。
この面積は関数 f(t) と a、b の値を与えることにより確定しますが、積分を用いることでこれを計算できます。
いきなりその理由を説明する前に、積分が具体的にどう定式化されるのかを説明する必要があります。
ある関数 F(x) があり、これの導関数(先ほど登場しました)が f(x) となります。
つまりすべての x に対し…
が成り立つとき ( F'(x) = f(x) であるとき)、F(x) を f(x) の原始関数または不定積分といい、以下のように書きます。
ここで、C は積分定数と呼ばれる定数。∫ は積分の記号で、インテグラルと呼びます。
実際、G(x) = F(x) + C とすると…
となり、G(x) の導関数は f(x) であるため、G(x) も f(x) の原始関数(不定積分)です。
また、不定積分だけでなく定積分というものもあります。
やはり F(x) を f(x) の原始関数としましょう(つまり、F'(x) = f(x) としましょう)。
このとき、原始関数 F(x) に x = a と x = b を代入したものの差 F(b) - F(a) を関数 f(x) の x = a から x = b までの定積分といい、以下のように書きます。
また、さきの差 F(b) - F(a) を、以下のように書きます。
つまり、以下のようになるのです。
定積分の計算対象、F(x) の x に代入する値の範囲である「 a から b まで」を積分区間といい、x = a を積分の下端、x = b を積分の上端といいます。
では、この積分を用いて、先ほどの走行距離の話を解決しましょう。
時間tでの速度が f(t) で与えられているとき、t = a から t = b までの走行距離は上図の橙色部分の面積で表されます(これについては認めることとします)。
この面積を求めたかったのでした。
関数 f(t) がわかっているときに、この面積をどう求めるかを考えます。
つまり、手元にあるのは以下の3つ。
ここで、いきなり橙色部分の面積を求めるのではなく、ちょっと工夫します。
t = a をスタートにするのは変えずに、一般的な t までの面積を考えることにしましょう。
つまり、上図の橙色部分の面積を求めるということ。
t の値が変化すれば当然橙色部分の面積も変化しますし、t の値を定めれば面積も決まるため、この面積は t の関数であるといえます。
そこで、この面積、つまり t = a からある t までの面積を S(t) とします。
ここで、t 値が t + Δt までわずかに変化したとしましょう。
このとき、S(t) が ΔS だけ変化したとします。つまり、S(t+Δt) = S(t) + ΔS とします。
さて、この S(t) や Δt、ΔS の間にはどういう関係が成り立っているでしょうか。図を用いて考えるとわかるかもしれません。
図の濃い橙色部分が面積 S(t) の増加量、つまり ΔS です。
もちろん時刻 t 〜 t + Δt の間にも f(t) の値は変化しているのですが、Δt は微小量なので、この間の f(t) の値は一定であるとします(もちろん f(t) の変化が急な可能性もありますが、むしろそれが無視できる程度に Δt は小さい、と思ってください)。
このとき、橙色部分の面積は、縦 f(t)、横 Δt の長方形で近似する(大体の値を求める)ことができます。
つまり、ΔS = f(t) ・ Δt が成り立ちます(本当はイコールではないかもしれませんが、十分小さい Δt を考えることで、両辺は等しいとみなすことにしましょう)。
先ほどの式を変形すると、
以上の考察から、S'(t) = f(t) が成り立っていると考えられます。
S(t) を微分すると f(t) になるわけですから、S(t) は関数 f(t) の原始関数(不定積分)。
ということは、微分すると f(t) になるような関数を S(t) とすればいいのか!…と考えられます。
ただ、方針は誤っていませんが、それだけでは不十分。
これを解決する方法の一つが、S(a) を考えることです。S(t) は「aからtまでの面積」なので、S(a) は 0 になっているべきですね。
よって、関数 f(t) の原始関数として F(t) を見つけたとすると、ある定数 C を用いて S(t) = F(t) + C と書けるわけですが、S(a) = 0 より F(a) + C = 0、つまり C = -F(a) となります。
よって、S(t) = F(t) - F(a) であることがわかります( f(t) の原始関数の一つとして F(t) が見つかれば、それが何であったとしても、その F(t) を用いて S(t) = F(t) - F(a) と求められるわけです!)。
当初求めたかったのは上図の橙色部分の面積だったわけですが、これまでの結果よりこの面積は以下のようになります。
y = f(t) のグラフと x = a、x = b、および x 軸により囲まれる部分の面積は、f(t) の定積分で書けることがわかりました。
以上の考察は、f(t) が a ≦ x ≦ b において常に 0 以上であるときのものです。
世の中の関数のなかには、負の値をとるものも当然あり、その場合は符号付きの面積を考える必要があることに注意してください。
各瞬間の速度を記録しておけば、その関数を時間で積分することにより合計の走行距離を求めることができます。
そもそも、微分積分って何に使うの?
微分や積分は、これまでにない新しい種類の計算です。だからこそ、「こんな計算してどうなるの?」と思うかもしれません。
そこで、ここまで紹介してきた微分・積分がどういうところで登場するのかをご紹介します。
一番身近な例は、やはり先ほど登場した速度や距離関連でしょう。ここまでに登場した微分・積分を用いると、実は以下のことがいえます。
さらに、物理基礎で学習する速度の変化割合「加速度」に関しては、以下のこともいえるのです。
こうした時間による微分・積分は、高校物理を学ぶとより理解しやすくなることでしょう。
高校で習う微分積分の公式一覧
ここまで、微分・積分がどういうものか、そしてその役割などを説明してきました。
ここからは、数学II で学習する微分・積分の公式をご紹介します。
微分の公式一覧
まずは、微分の公式一覧からご紹介していきます。
関数 f(x) の x = a における微分係数 f'(a) の定義
どのような関数のどのような点においても、上の極限が存在するとは限らないことに注意してください。
たとえば f(x) = |x| の x = 0 における微分係数を求めようとすると…
という極限を考えることになりますが、これは h をプラスのほうから(小さくして) 0 に近づける場合と、マイナスの方から(大きくして) 0 に近づける場合で極限値が異なります。
したがって、関数 f(x) = |x| は x = 0 において微分不可能です。
関数 f(x) の導関数 f'(x) の定義
微分係数は各 x に対するものであったのに対し、f'(x) は x を与えたときに対応する微分係数を返す関数であることに注意してください。
定数関数の微分公式
a を定数とするとき、定数関数 f(x) = a の導関数を求めると…
このようになるため、f'(x) = 0 となります(この 0 は「たまたま 0 になった」ということでなく、「常に 0 という値をとる定数関数である」ということです)。
xⁿ の微分公式
n を正の整数とするとき、
「 ' 」は適切な変数についての微分を意味します。ここでは x についての微分ですね。
この微分公式が 数学II で最重要となるわけですが、これは次のように証明することができます。
xⁿ の微分公式の証明
まず n = 1 のとき、x の関数 x の導関数は以下のようになります。
確かに公式が成り立っています。
次に n が 2 以上のときを考えましょう。このとき、二項定理により以下の式が成り立ちます。
「 h の 2次以上の項」は、h に関して2次以上の( h²、h³、h⁴、…のみにより構成される) h の多項式なので、h² でくくって以下のように書くことができます。
ここで、P(h) は h の多項式です(一般的には「多項式である」という意味なので、たまたま P(h) が定数となることもあります。具体的には n = 1 のとき)。
したがって、以下のように書くことができます。
最右辺の極限を考えればよいのですが、 nxⁿ⁻¹ は h を含まないので(今動かしているのはあくまで h であり、x ではないことに注意してください)、h を動かしても変化しません。
また、P(h) は h の多項式であり、それに h をかけているため h → 0 の極限を考えるとP(h)・h は 0 に限りなく近づきます。
したがって、
このようになるため、(x ⁿ)' = nxⁿ⁻¹ であることが証明できました。
導関数の線型性
a、b を定数とするとき、以下が成り立ちます。
この性質は線型性といい、一見当たり前ですが、微分に関する種々の計算をおこなうにあたり常にベースとなる重要な性質です。
なお、線型性の特別な場合として、以下が成り立つこともあります。
導関数の線型性の大まかな証明
導関数の定義に従って計算を進めると以下のようになります。
そのため、先ほどの公式が示されます。
※上の証明では、関数の順序の入れ替えや「(和の極限)=(極限の和)」を利用していますが、この操作はいつもできるとは限りません。上の証明はあくまでイメージなので「大まかな」証明としています。
積分の公式一覧
続いては、積分の公式一覧をご紹介していきます。
不定積分の定義
F'(x) = f(x) であるとき、F(x) を関数 f(x) の原始関数(不定積分)といいます。
また、f(x) の任意の原始関数(不定積分)は定数 C を用いて F(x) + C と書くことができ、これを以下のように書きます。
この定数 C は積分定数と呼ばれます(以下、この積分定数の説明は省略します。すなわち、以下の C はすべて積分定数です)。
xⁿ の不定積分
n を正の整数とするとき、以下のようになります。
不定積分の線型性
A、B を定数とするとき、以下のようになります。
先ほどの微分同様、不定積分にも線型性があります。当たり前に思うかもしれませんが、やはり重要です。
不定積分の線型性の大まかな証明
微分の線型性を前提とすると、以下のようになります。
不定積分の線型性の特別な場合として、以下が成り立ちます。
定積分の定義
関数 F(x) が f(x) の原始関数(不定積分)です。つまり…
が成り立ちます。
定積分の線型性
A、B を定数とするとき、以下が成り立ちます。
【定積分の線型性の大まかな証明】
F(x)、G(x) をそれぞれ関数 f(x)、g(x) の原始関数(不定積分)とします。
すなわち、F'(x) = f(x) かつ G'(x) = g(x) を仮定します。このとき微分の線型性よって以下のようになり、
導関数が Af(x) + Bg(x) であることから、AF(x) + BG(x) は関数 af(x) + bg(x) の原始関数(不定積分)です。
よって、以下のようになります。
一方、以下のようになるため、
以下であることが証明できました。
定積分の区間に関する諸性質
上記の内容を踏まえて、次の問題を証明してみましょう。
【問題①】
【証明】
以下、F(x) を f(x) の原始関数とします。
これにより、先ほどの式がしたがいます。
【問題②】
【証明】
より成り立ちます。
【問題③】
【証明】
より成り立ちます。
面積と定積分の関係
a、b を a < b なる実数とし、a ≦ x ≦ b で常に 0 ≦ f(x) であるとします。
このとき、y = f(x) のグラフと直線 x = a、x = b および x 軸によって囲まれる図形の面積は以下のようになります。
a ≦ x ≦ b で常に 0 ≧ g(x) であるとします。
このとき、y = g(x) のグラフと直線 x = a、x = b、および x 軸によって囲まれる図形の面積は以下のようになります。
「面積は積分で求められる」という話をしましたが、より正確にいうならば、積分で計算できるのは「符号付きの面積」です。
関数のグラフが x 軸よりも下にある間は、マイナスの面積が加算されていきます。
したがって、a ≦ x ≦ b の範囲で常に 0 ≧ g(x) となっている場合、積分全体にマイナスをつけることによって面積を表現することができます。
さらに、c を a と b の間にある数とします( a < c < b )。
たとえば、関数 h(x) が a ≦ x ≦ c において 0 ≧ h(x) であり、c ≦ x ≦ b において 0 ≦ h(x) であるとき、y = h(x) のグラフと直線 x = a、x = b、および x 軸で囲まれる部分は2つあり、それらの面積の合計は以下のようになります。
通常、「面積」と問われたらそれは符号なしの(すべてプラスでカウントする)広さのこと。
そのため、関数の値がマイナスになる区間についてはマイナスをつけ、関数の値がプラスである区間はそのままにして積分をし、それらを合計することになります。
y = h(x) のグラフと直線 x = a、x = b、および x 軸で囲まれる部分は2つありますが、上式の2項がそれぞれの面積と対応しています。
また、a ≦ x ≦ b において常に f(x) ≦ g(x) が成り立っているとき、2つのグラフ y = f(x)、y = g(x)、および x = a、x = b によって囲まれる図形の面積は以下のようになります。
練習問題で微分・積分の理解を深めよう
微分・積分について理解が進んできたところで、いくつか練習問題を解いて学んだことを定着させましょう。
微分の練習問題①:定義にしたがって微分係数を求める
微分の練習問題①:(1)の解答
微分の練習問題①:(2)の解答
微分の練習問題①:(3)の解答
微分の練習問題②:定義にしたがって導関数を求める
微分の練習問題②:(1)の解答
微分の練習問題②:(2)の解答
微分の練習問題②:(3)の解答
微分の練習問題③:公式を使って導関数を求める
微分の練習問題③:解答
微分公式 (xⁿ)' = nxⁿ⁻¹ ( n は正の整数)を用いると次のように計算できます。
(1) f'(x) = 8
(2) f'(x) = 2x+5
(3) f'(x) = 4x³+4
微分の練習問題④:接線の方程式を求める
微分の練習問題④:(1)の解答
y = x³ のとき
y' = 3x² であるため、接線の傾きは 3・3² = 27 となります。
点 (3,27) を通り傾き 27 の直線の方程式は y - 27 = 27(x-3) であり、これを整理すると y = 27x-54 となります。
微分の練習問題④:(2)の解答
接点の x 座標をtとし、f(x) = 3-4x-3x²+2x³ とします。
y = 3-4x-3x²+2x³ のとき f'(x) = -4-6x+6x² なので、接線の傾きは -4-6t+6t² となります。
したがって、以下のように求めることができます。
t = -1 のとき、f(-1) = 2 であるため、接線の方程式は y-2 = 8( x -(-1))。これを整理すると、y = 8x + 10 となります。
t = 2 のとき、f(2) = -1 であるため、接線の方程式は y-(-1) = 8(x-2)。これを整理すると y = 8x-17 となります。
以上により、答えは y = 8x+10、および y = 8x-17 になります。
微分の発展問題①:指定した点を通る接線を求める
微分の発展問題①:解答
f(x) = 2x-2 / 3x³ とします。また、接点の座標を ( t, f(t) ) とおく。f'(x) = 2-2x² であるため、接線の方程式は以下のようになります。
そしてこれが点(2,4)を通るとき、以下が成り立ち、
これを整理すると、以下を得ます。
t = 0 のときの接線の方程式は、先ほどの式に t = 0 を代入すれば求めることができ、y = 2x となります。
t = 3 のときの接線の方程式は、さきの式にt = 3 を代入すれば求めることができ、y = -16x+36 となります。
以上により、条件を満たす接線の方程式は y
= 2x と y = -16x + 36 ということになります。
なお、今回のグラフや接線を図示すると以下のようになります。
微分の発展問題②:覚えておくと便利な公式
微分の発展問題①:(1)の解答
a=3、b=1、n=4 の場合に相当するので、
f'(x) = 3・4・(3x+1)⁴⁻¹ = 12(3x+1)³ となります。
微分の発展問題①:(2)の解答
a=-5、b=2、n=2m の場合に相当するので、
f'(x) = -5・2m・(-5x+2)²ᵐ⁻¹ = -10m(-5x+2)²ᵐ⁻¹ となります。
興味がある人向け!この公式の証明
f(x) = (ax+b)ⁿ とすると、以下のようになります。
ここで、n ≧ 2 のとき、
であるため、以下のようになります。
よって、以下のように変形できます。
しかし、h → 0 の極限をとったときに残るのは h𝑙⁻¹ = h⁰ 。つまり、
𝑙 = 1 に対応する項のみ。
よって内側の括弧内は ₖC₁・xᵏ⁻¹ hℓ⁻¹ = k・xᵏ⁻¹ のみ考え、以下のように変形できます。
ここで、𝑙 = 𝑘−1 として 𝑘 を 𝑙 に置き換えると以下のようになります。
これにより、{(ax+b)ⁿ }' = an(ax+b)ⁿ⁻¹ であることが示されました。
積分の練習問題①:不定積分を求める
上記の積分公式を用いると、それぞれ次のように計算できます。
積分の練習問題①:(1)の解答
積分の練習問題①:(2)の解答
積分の練習問題①:(3)の解答
積分の練習問題②:定積分を求める
積分の練習問題②:(1)の解答
積分の練習問題②:(2)の解答
積分の練習問題②:(3)の解答
積分の練習問題②:(4)の解答
積分の練習問題③:偶関数・奇関数の積分
積分の練習問題③:(1)の解答
x⁴、x²、1 はすべて偶関数であるため、下記のようになります。
積分の練習問題③:(2)の解答
x⁵、x³、x は奇関数で x⁴、x²、1 は偶関数であるため、以下のようになります。
積分の練習問題④:もっともシンプルな面積計算
積分の練習問題④:解答
この場合、図の青色部分の面積を求めればよいです。
-1 ≦ x ≦ 3 において常に -x² + 4x +10 > 0 であるため、面積は以下のようになることがわかります。
積分の発展問題①:積分を含む関数方程式
積分の発展問題①:解答
以上のことから、f(x) = 3x²-x-2 だとわかります。
積分の発展問題②:覚えておくと便利な公式
積分の発展問題②:(1)の解答
積分の発展問題②:(2)の解答
興味がある人向け!この公式の証明
微分の練習問題の最後に登場した公式 {(ax+b)ⁿ }' = an(ax+b)ⁿ⁻¹ を用いれば、
の原始関数(不定積分)であることが簡単に証明できます。
まとめ
今回は微分・積分について解説をしました!
微分パートでは、接線の方程式を求める問題あたりまでを扱いました。しかし、数学II の微分はこれで終わりではありません。
たとえば微分を用いて関数の増減を調べたり、それを通じて方程式の解の個数を求めたりすることができます。
積分パートでは、シンプルな面積の計算問題まで扱いました。しかし、積分についてもこれで終わりではありません。
積分を含む方程式というのもあったり、積分に関する最大値・最小値問題もあったり、問題の発展性・バリエーションはさまざま。
微分・積分は、これまでに学習してきた四則演算や指数・対数の計算などと異なる、新しい演算です。
複雑な見た目の記号が多数登場することもあり、苦手意識を持っている人は多いのではないでしょうか?
この分野で大切なポイントは以下の4つです。
✔微分や積分の定義を理解すること
✔定義に従って微分をできるようにすること
✔微分・積分の図形的意味を理解すること
✔多項式の微分・積分公式を覚えること
まずこれらを意識して勉強することで、典型問題も解きやすくなることでしょう。
記事のなかの問題(発展問題以外)が一通り解けたら、教科書や問題集にある問題にもぜひチャレンジしてみてください。
この記事が、皆さんの微分・積分の学習の基礎形成に貢献できたなら幸いです。
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林 俊介(はやし しゅんすけ)
数学専門オンライン指導「マスゼミ」代表 / 大学入試数学YouTuber。2019年に東大理学部物理学科の卒業と同時にオンライン家庭教師「マスゼミ」をスタート。自身の強みである数学を専門とし、講師は全員現役の東大生が担当。YouTubeチャンネル「最難関の数学・物理 by 林俊介」では、日本最難関である東大・京大の数学入試問題を徹底解説。2021年にはチャンネル登録者が16,000人を突破している。
Twitter:林俊介@数学YouTube1.60万人
Youtubeチャンネル:『最難関の数学・物理 by 林俊介』
https://www.youtube.com/channel/UCuPoqYPg5dqY5oawpYYkR_w/videos
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