「学校へいけなくなってしまった」「ひきこもりになってしまった」そのとき、本人や保護者はこう思うでしょう。
「これからどうすればいいんだろう?」
そんな不登校・ひきこもりの方に、未来への道しるべを示してくれるのがNPO法人「くまもと学習支援ネットワーク」。
同団体が運営しているフリースクールでは、学習支援を中心に、しっかりとした進路サポートをおこなっています。
今回は、NPO法人「くまもと学習支援ネットワーク」教室長の石本 圭佑さんにお話を伺いました。
学校へ行きたくても行けない。家から出られない。これからの進路が不安。そんな方はぜひご一読ください。
不登校の子どもたちのために立ち上がった支援団体
ー本日はよろしくお願いします。まず、NPO法人「くまもと学習支援ネットワーク」設立に至った経緯を教えてください。
石本さん(以下、石本):「くまもと学習支援ネットワーク」を設立する前は、熊本県内の各地でさまざまな団体がフリースクールを運営していました。
しかし当時は、フリースクールに通うことで出席扱いとして認めてもらうことは難しい状況だったんですね。
そこで今から約20年ほど前に、県や市と協力して出席扱いと認定されるように動きました。
より多くの不登校生徒を支援できるよう、さまざまなフリースクールが集まって、今のくまもと学習支援ネットワークを設立したのが始まりです。
学習を中心としたフリースクール「青山教室」
ーNPO法人「くまもと学習支援ネットワーク」でおこなっているフリースクール「青山教室」の活動について詳しくお聞かせください。
石本:「青山教室」は、学習指導、職場体験や学校見学、進路相談などをおこなうフリースクールです。学校に行けない子どもが教室に来て勉強をしたりそのほかさまざまな活動をしたりしていますね。
基本的には、月・火・木・金の週4回、朝の10時~午後3時まで利用が可能です。
フリースクールは、施設によって活動内容がさまざまありますが、「青山教室」はいわゆる勉強が中心のフリースクール。
完全に1対1というわけではなく、基本的に少人数の生徒に先生が付き、わからないところを教えたり、一緒に勉強したりしています。
また、週に1回コミュニケーションの練習を兼ねてレクリエーション活動も実施しています。生徒と先生でボードゲームやトランプをしていますね。
ー多くの経験として野外活動などもされているとのことですが、具体的な活動についてお聞かせください。
石本:はい。不定期ではありますが、農業体験や林業体験など、教室の外で自然と触れ合うような活動をおこなっています。
この活動は、私たちと同じくNPOの活動をされている農家の方にご協力いただいているんです。
収穫した農作物をいただいたりして、生徒たちとともに楽しんでいますね。
ー「青山教室」では、進路相談などもおこなっているそうですね。
石本:主に中学生を対象とした高校の進路相談をおこなっています。
学校になかなか行けない子どもは、進路について相談できる場がなかなかありません。
高校の進路をどうするか悩んでいる子に対し、こちらから「こういった形の進路がありますよ」と提案させていただいています。
また、学校との連携のとり方、学校の先生との関わり方などもアドバイスさせていただいていますね。
保護者の方や生徒本人と話し合いながら、一緒に「これから」を考えています。
ーインターンシップなども参加できたりするのでしょうか?
石本:そうですね。さまざまな経験をすることは、生徒の進路を決めるうえで非常に大事なことだと思っています。
「青山教室」に通っている生徒は、コミュニケーションが苦手であったり自分に自信がなかったり、なかには病気や障害を持っている生徒もいるんです。
そういった事情のある子どもたちを受け入れていただいている提携の職場がいくつかあり、そこで職場体験をすることもあります。
たとえば「ケーキ屋さんで働いてみたい」「花屋さんで働いてみたい」など、もし生徒本人が要望すれば、私たちが直接会社の方に交渉をして職場体験をさせていただくこともありますよ!
スモールステップで支援するホームカウンセラー
ーでは、NPO法人「くまもと学習支援ネットワーク」のもうひとつの事業である「ホームカウンセラー(家庭訪問)」についても詳しくお聞かせください。
石本:家から出られない、引きこもりの子ども向けの支援として、わたしたち職員が自宅に訪問しサポートをおこなっています。
引きこもりの状態から脱し家を出られるように、また学校へ行きたいという希望があれば再び学校に行けるように支援をさせていただいていますね。
生徒の状況や保護者の方の希望などによって異なりますが、具体的には保護者の方や子どもに対するカウンセリングの実施。
また、最初の取っ掛かりとして、家庭教師のような形で学習支援をしながら子どもや保護者との信頼関係を築いていくなどということもしています。
まずは子どもや保護者の方と信頼関係を築く、信頼関係が築けたら次は外へ出るためにどうしたらよいかを考える。
このように、スモールステップを意識しながら、徐々に元気になっていずれは学校復帰ができるようサポートをおこなっていますね。
ーNPO法人「くまもと学習支援ネットワーク」では無料相談を受け付けているとのことですが、どのような相談が多いのでしょうか?
石本:一番多いのは、やはり「学校へいけなくなってしまった、今後どうしたらよいのか」という相談ですね。
「ずっと家に引きこもって外に出ない」「親とも話してくれない」などという相談もあります。
ーでは、無料相談ではどういったアドバイスや提案をされているのでしょうか?
石本:「くまもと学習支援ネットワーク」ではどのようなことでも相談が可能です。
迷っている、悩んでいることに応じての提案や進路についての提案などをさせていただいています。
簡単なところですと、保護者の方へ子どもの接し方に関するアドバイスも無料でおこなっています。
また、場合によってはほかのフリースクールや同じような支援をされているNPO団体、公的な機関などをお教えすることもあります。
ただ、無料相談は何回もご利用いただけるというわけではないので、継続的に相談したい、支援を受けたいということであれば「くまもと学習支援ネットワーク」に入会していただくのがよいかと思いますね。
不登校生への手厚い支援をより多くの子どもたちに
ー「くまもと学習支援ネットワーク」の今後の展望などについて教えてください。
石本:現在はありがたいことに生徒が増えてきており、教室が手狭になってしまっています。
ホームカウンセラーについても、先生の数が限られていて順番待ちをしていただいている状況なんです。
今後は、より多くの生徒を受け入れられるよう、施設を拡大し先生の数を増やしていきたいですね。
1人でも多くの方を支援できるような体制づくりができるとよいと思っています。
ーコロナウイルス流行の影響で、支援を希望されている方が増えているのでしょうか?
石本:実は昨年、熊本県の学校ではコロナウイルスの影響によりオンライン授業を実施しました。
そのときには「授業に参加できた」という生徒が多く、そのせいか当団体への問い合わせも例年より少なかったんです。
しかし、感染状況が落ち着いてくると対面の授業が再開し始め、やはり「どうしても学校に行けない」と急激に問い合わせの数が増えてきました。
やはりコロナウイルスの状況は、子どもたちにも強く影響しているようですね。
ーでは最後に、この記事を読んでいる方に向けてメッセージをお願いします。
石本:「学校へ行けない」、「家から出られない」、そんな子どもの悩みを持った保護者の方は数多くいると思います。
実際、熊本県では、フリースクールや訪問支援などをおこなっている場所が少ないというのが現状です。
ぜひ、「くまもと学習支援ネットワーク」を選択肢のひとつとして知っていただければ幸いです。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:NPO法人 くまもと学習支援ネットワーク