「24時間365日休みなし」といわれる子育てでは、子どもの成長過程だとわかってはいても、夜になかなか寝てくれない、食が細くて食べてくれない、イヤイヤ期など、多くの「困った」が存在します。
近年では“ワンオペ育児”という言葉もあるように、周囲に頼る人がいなくて、ひとりで育児をしている人も増えています。
NPO法人「e子育てセンター」は、子育てに悩む親を応援し、安心して子育てができる地域づくりを目指して活動している団体です。
今回は、NPO法人「e子育てセンター」代表の森崎 智美(もりさき ともみ)さんに、団体の活動内容や今後の展望についてお話を伺いました。
子育てに悩んでいる方や不安を感じている方は、ぜひご一読ください。
安心して子育てができる地域づくりを目指す
―本日はよろしくお願いします。はじめに、NPO法人「e子育てセンター」の設立経緯についてお聞かせください。
森崎 智美さん(以下、森崎): 「e子育てセンター」は、2004年10月に任意団体として広島市安佐南区で活動を開始しました。
広島県だけではなく全国的な子育ての問題として、「核家族化が進み、子育てをしていても近くに頼れる人がいない状況」や「日常生活で子どもと関わることがないまま大人になり、そのまま子どもを出産し親になる人」が増えてきています。
今でこそ子育て支援が浸透してきて、補助金が出るなど、公的に支えてもらえる仕組みができていますが、当時の広島市には公的な支援の仕組みがありませんでした。
そのような状況で、お父さん・お母さんが安心して子育てができる地域づくりを目指すために、広島市で子育てを経験し地域で活動していた女性が集まり、任意団体として活動をはじめ、2011年にNPO法人化しました。
「ひろば事業」と「一時保育事業」で子育てを支える
ーNPO法人「e子育てセンター」活動内容について具体的に教えてください。
森崎:「e子育てセンター」は、「ひろば事業」や「一時保育事業」などの子育て支援をおこなっています。
「ひろば事業」は、もともと任意の活動として、オープンスペースを週に2回開催することから始まりました。概ね0歳~3歳以下の子どもや、未就園児の親子と妊婦さんを対象とした「みんなでコミュニケーションをとるための場所」ですね。
2011年にNPO法人として活動を開始したことで「ひろば事業」も大きくなり、現在は広島市公募型常設のオープンスペース「ひろばKUSU-KUSU」として、広島市安佐南区の2ヶ所で運営をしています。
一方、「一時保育事業」は2005年4月から実施しており、会員登録をすることで一時保育を利用することが可能です。
一時保育を利用する場合は、事前に申し込みをしてもらうことで、サポーターをコーディネートする仕組みになっています。急な家の用事や学校行事の対応、仕事の都合で子どものお迎えが間に合わないなど、さまざまな場面で利用可能です。
そのほかにも、子育て支援に興味がある方向けに「保育サポーター養成講座」を開催しており、受講した女性たちは地域の子育てを積極的に応援しています。
コロナ禍で増加する孤立する親子を減らしたい
ーコロナ禍での活動では、どのようなことをおこなっているのでしょうか?
森崎:新型コロナウイルスの影響で休業が続いたりと、活動がとても不定期になっています。
ただ、このような状況だからこそ、「どうやったら子育て世帯との関係性を繋いでいられるか」「なにを保護者は求めているか」などを探るため、ホームページを利用してアンケートを実施しました。
また、休業中は親子がひろばに来られない代わりに、私たちが地域の公園や町に行くなど、「地域めぐり」もおこないました。
たとえば、町で子ども連れの親子に声をかけてみたり、ひろばに来てくれていた親子を公園で見かけたら、こちらから話かけてみたりして、関係を切らさないようにしています。
そのほかにも、Zoomを使用したオンラインによる「朝の会」や「昼の会」を開催しています。会では、子どもに向けて画面の前で手遊びをしたり、お母さん同士で会話もできるので、お互いの顔が見えて声が聴けるという環境を大事にしています。
地域全体で子育て世帯を見守りたい
ー今後の展望をお聞かせください。
森崎:私たちは子育て支援を目的に活動していますが、子育ての主役はお父さんとお母さんです。
お父さんとお母さんたちが自信をもって楽しく子育てができるように、これからも支援活動を続けていきたいと思っています。
また、新型コロナウイルスの影響で人が集まるのが難しく、開催できていなかった「保育サポーター養成講座」も社会状況を見ながら実施していけたらと思っています。
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
森崎:私たちが子育て支援活動をおこなっていると、「子どもが好きなんですね」と言われることが多いです。もちろん、子どもと触れ合うことが好きで子育て支援の世界にいる人もいます。
ただ、そればかりではなく、「自分が子育てをしていたときに、多くの人に関わってもらったことで子育てができた」という人や、「子どもが特別に好きな訳ではないが、子育てに苦しんでいる親の気持ちが分かるから活動している」という人もいます。
子どもに直接関わっている人だけではなく「地域全体で子育てに関わっていくこと」、それが子育て支援なのだと思います。
もし関わり方がわからない場合などは、私たちの団体で賛助会員や寄付も募集していますので、ひとつの支援方法としてご検討いただけたら嬉しいです。公式サイトは随時更新しているので、興味がある方はぜひ公式サイトをご覧ください。
子育てに理解ある人だけが一生懸命に応援するのではなく、地域で暮らしている人がそれぞれの関わり方で、地域の子どもや子育て世代の親と関わっていけることが理想ですね。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:NPO法人 e子育てセンター