「NPO法人 もりメイト倶楽部Hiroshima」は、森林を守る活動をしながらその大切さを人々に伝えている団体です。
大人はもちろん子どもたちも参加できる、森や自然について学べるさまざまな体験や学習の機会を提供しています。
森林や環境を守ることの重要性は、多くの人が知っているようで深くは知らないもの。
そこで今回は「NPO法人 もりメイト倶楽部Hiroshima」理事長の山本 恵由美さんから、同団体の活動内容や、環境について考えることの大切さを伺いました。
親子で森林について学びたくなる興味深い内容なので、ぜひご一読ください。
森林について学び技術を磨くボランティア団体
ー本日はよろしくお願いします。まず、「NPO法人 もりメイト倶楽部Hiroshima」がどのような団体なのかお聞かせください。
山本 恵由美さん(以下、山本):「NPO法人 もりメイト倶楽部Hiroshima」は「森は私たちの宝もの 未来へ残したい、伝えたい」をコンセプトに、「森林づくり 私にできることから」をモットーに取り組んでいる森林ボランティア団体です。
1996年に広島市の農林整備課により実施された「森林ボランティアリーダー養成講座」の第1期生が集まって立ち上げました。
同講座には私を含む30名が参加しており、植林や草刈り、枝打ち、間伐といった林業全般について1年間基本を勉強しました。
そこで卒業生のみんなに声をかけて、「新しく団体を立ち上げて森林についてもっと勉強し、腕を磨きましょう」と、1997年に前身となる団体を立ち上げ、2013年に法人を取得していまの形となりました。現在は約150名の会員が在籍しています。
森を守り、活かしながら親と子が共に学べる活動
ー「NPO法人 もりメイト倶楽部Hiroshima」がおこなっている活動について詳しくお聞かせください。
山本:当団体では市民の森づくり運動の先駆的役割を果たすべく、多岐にわたる活動を展開しています。
メインとなるのは、実際に山に入り森林再生と自然保護を図りながら、高いレベルの林業技術の習得を目指す活動ですね。
当初は一か所の山を借りて活動していたのですが、現在は地域の森を守る団体を応援することを主眼にした取り組みを、月に1回の定例会「地域貢献プロジェクト」として進行中です。
やはり住民や団体の高齢化もあって技術的な面で大変期待をしていただいています。
私たちはその要請に応じて、地域の方々と連携し一緒に手入れをおこなっており、時には行政とも協働。
会報誌でメンバーを募り、いつも約30名が地域に貢献できることを喜びにして、楽しく活動をしていますね。
当団体は全5班の班編成体制を持ち、各班長が担当地域と打合せをして、要望に沿った施業計画を立てて班ごとに特色ある取り組みをおこなっています。
ーそのほかに、様々なニーズに合わせ、バラエティー豊かな活動を行っているそうですね。
山本:定例会に加えて「出前間伐」「里山」「クラフト」「環境教育研究」という4つの部会活動があります。
「出前間伐」は戦後植林され、人手不足により手入れの行き届かない人工林を整備します。森林所有者からの依頼や、公的機関の森林の整備を担当する部隊です。
「里山部会」は昔ながらの里山文化を体現しながら、雑木林の手入れなどをおこなう事業です。薪を割って炭焼き料理をしたり、しいたけの菌打ちをしたりもします。
また人工林や竹林、雑木林の整備活動で出た「材料」を活かしているのが「クラフト部会」です。
山の木を切って出た材は通常山にそのまま置いて帰ることがほとんどです。でも私たちはそれを資源として有効利用することが大事だと考えており、山から木を運搬し、製材機を使っての製材や乾燥までおこなっています。
こうしてできた材料は、イベントなどで子どもたちのクラフト製作などに使われ、森の重要性を伝えるひとつのツールとして活かされているんですよ。
森林の多面的機能を伝える人材育成を目的とする「環境教育研究部会」は、親子で一緒に森林環境について学べる事業です。
当団体ではさまざまな学習や体験を通して、子どもたちに森の重要性や現状、守っていくことの大切さを学ぶ「木育」を推進する教育事業を2003年より続けています。
「環境教育研究部会」は、教育事業をより発展させるために発足しました。そして「こども森林ボランティア養成講座 もりメイトキッズ」事業を創設し、森林環境や木材を活かしたワークショップなどを開催していますね。
そのほかにも希少生物を守る活動というものがあります。
希少生物とはすなわち絶滅が危惧される生物のことです。たとえば国内では広島県の一部にしかいなくなってしまった「ヒョウモンモドキ」や宮島の「ミヤジマトンボ」などが挙げられます。
それらの希少生物を保護したり、学校や自治体、企業といった事業へ講師を派遣して希少生物の現状を伝えたりするのも私たちの活動のひとつです。
未来へ向けて環境を保全・保護できる人材に
ー子どもたちが貴団体の活動に参加すると、どのような学びがあるのでしょうか?
山本:日本は国土の約7割が森林ですが、みなさんそれについての関心が低いのが現状なんです。
森林は有用な木材をつくってくれるだけではなく、二酸化炭素を吸収して温暖化を防止してくれる。災害の防止にも役立つなど、本当にたくさんの恩恵を私たちにもたらしてくれているんですね。
森は人類にとって宝物ともいえる存在なのですが、そのことを私を含めほとんどの日本人は知らないまま過ごしているんです。
ですから、子どもたちには幼いうちから私たちが森から受けている恩恵をしっかりと伝え、関心を高めてもらうことが大切でしょう。
たとえば私たちが呼吸をし、電力を使いながら快適な生活を送るためには80年生くらいの太い木が約400本も必要だと言われています。
そうやってもの言わず助けてくれている森に対して、できることはもっとたくさんあると思うんですよね。私たちはそれを行動にできる人材をつくりたいと思っています。
私たちの展開する森林環境教育により、子どもたちが未来へ向けて環境を保全・保護できる人に育ってくれるとうれしいですね。
幼いうちから自然にふれて学ぶ体験を
ー今後の展望について教えてください。
山本:私たちの活動は、多くのボランティアを受け入れることで社会に大きく寄与していると思っています。
老若男女が参加できるボランティアのステージと、森づくりのきっかけをつくっていくことは、私たちのひとつのミッションとしています。
ひとつの活動に対して募集をかけるとたいてい30人ほどが集まります。これまでも多くの方にご参加いただいていますが、やはり森林に関心のない方にはまだまだ届いていないのが現状です。
今後はその間口をもっと広げるべく、幅広い分野や世代の人が参加したくなるような面白い企画や発信をどんどんしていきたいですね。
また当団体では学校や自治体、企業といった事業にも講師を派遣し、森林の実態や重要性を伝えたり技術体験を提供したりしています。
そのため、そこで学んだことをアウトプットできる、森林に関する確かな技術をもった人材を育成する仕組みづくりも急いで進めているところです。
それがひいては人を森に呼び込むことに繋がりますし、私たちはそれをサポートできるプランナー団体でありたいと思っています。
ボランティアステージの提供と人材育成との2本立ての活動により、体験者が外へ出て森づくりを啓発していく…そういった流れが確立されるのが理想ですね。
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
山本:学習には学校教育だけではなく、充実した社会生活を送るための教育や、人としていろいろなことを考えるための教育があります。
私たちは子どもの学習に、学校での勉強と並行して、人間を支えてくれている自然に関する学習もたくさん組み込んでいただきたいと思うんです。
人間と自然は切っても切り離せず、やはり自然が豊かでないと私たちも社会生活を健全に送ることはできません。
森だけではなく自然全体に思いを馳せていただくと、そこにはたくさんの学びがあります。自然のなかにある「生きる力」にふれることは、幅広い視野や思考力を身につけるきっかけにもなるんです。
ですから保護者のみなさんには、子どもたちにバーチャルではなく実際に森や自然のなかに入る機会をたくさん与えていただきたいですね。
幼いうちからキャンプなどの自然体験をたくさんすることは、子どもたちをより素敵な人材に育ててくれます。
私たちも魅力的な学習の提供に努めますので、ぜひご家庭でも自然を学ぶ機会を積極的につくってみてください。
ー本日は興味深いお話をありがとうございました。
■取材協力:NPO法人 もりメイト倶楽部Hiroshima