「子どもが学習に困っている」「子どもの特性に合ったプログラムを受けさせたい」など、発達に凹凸がある子どもの教育について悩んでいませんか。
子どもに生活スキルを身につけさせたいなら、一人ひとりの特性に合わせたプログラムを実施しているところがおすすめです。
今回は、山口県防府市にある「認定特定非営利活動法人 やまぐち発達臨床支援センター」の理事長を務める川間 弘子(かわま ひろこ)さんに、施設の活動や理念について伺いました。
山口県で通える施設が気になる方や、子どもの発達支援について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
年齢や障がいの程度に関係なく、誰もがずっと通える施設
ー本日はよろしくお願いいたします。まずは、「認定特定非営利活動法人 やまぐち発達臨床支援センター」の概要を教えてください。
川間 弘子さん(以下、川間):「認定特定非営利活動法人 やまぐち発達臨床支援センター」は、年齢や障がいの程度にかかわらず、学習に困っている子どもたちなどが通える施設です。
年齢制限や卒業は設けていないので、小さい子どもが大人になってもずっと見守り続けられるのが特徴といえますね。
現在は0歳から60代までの方が通われていて、「何歳でも、障がいがあってもなくてもどうぞ」という施設を作りたいと思っています。
ーどういった経緯で設立されたのでしょうか?
川間:私はもともと東京に住んでいたのですが、主人の転勤に伴って山口に移住してきました。
移住後は、東京での教員の経験を活かして働いていたんですね。
そのときに、障がいを持った子どものお母さんから「学習支援をおこなって欲しい」という要望をいただきました。
このことがきっかけとなり、1995年3月から5人の子どもに向けて、周南市のお子さんのご自宅や社会福祉センターを拠点にして月に1回の学習支援を始めました。
次第に口コミで広がっていき、2000年にNPO法人の認証を受けて現在地に移転しています。
認定NPO法人となった現在では220名の子どもたちや個人会員が在籍していて、私以外では10名の職員が学習指導をおこなっています。
一人ひとりの特性に合わせたプログラムを実施
ー「認定特定非営利活動法人 やまぐち発達臨床支援センター」でおこなわれている活動や理念について教えてください。
川間:個別の支援としては、学習指導・運動指導・摂食指導・相談・検査をおこなっています。
これらは、一人ひとりの特性に応じたプログラムを設定して、学習指導しています。
具体的な内容は、1人50分の個別の学習指導、運動面で困難を抱えている方の身体の訓練、食事に困難を抱えた方への摂食指導、ソーシャルスキルトレーニングの場として、幼児期、小学校低学年の子ども達の小集団での指導など。
また、私が教員であり言語聴覚士でもあるので、食べることが困難な方に食事の指導もおこなっているんですよ。
さらに、保護者向けのプログラムとして、相談事業というかたちでメールや来所での相談も実施。
当センターでは、学習課題を設定するために、実態把握として行動観察のみでなく、市販の検査を取り入れています。
また、発達段階を把握したいというご要望に対しては、臨床心理士による検査もおこなっています。
保護者の方に同席していただきながら、本来の力が発揮されやすいよう環境に配慮しながらおこない、検査後に分析したものをお渡ししています。
活動理念としては、従来の学校には厚い壁があって横のつながりを持つことがすごく難しかったため、「縦につなぎたい、横で手をつなぎたい」という思いがあります。
また、子どもに対しては、否定的な言葉や命令、禁止の言葉を言わないようにしています。
もし子どもが学習につまずいてできなかった場合は、子どものせいではなく、きちんと教えられなかった指導者の責任だからです。
ーここでの指導方法を、世の中に広げるための活動もおこなわれていると伺いました。具体的に教えてください。
川間:世の中で、学習に困っているお子さんや、教え方に困っている先生方、お母さん方は多いんですよね。
そこで、私たちの指導法を伝えるために、会場とオンラインを使ったハイブリッド型で、春と夏にセミナーをおこなっています。
このセミナーの特徴は、一方的な講義型でなく演習型のセミナーということ。
画面を通じて教材を使いながら、子どもが目の前にいる感覚で教えています。
また、NPOとは別の活動になりますが、4年前から「虹とおひさま」というホームページで、オリジナル教材を販売しています。
たとえば、月に2回ほどのオンラインセミナーをテーマ別におこなったり、定額制で動画見放題だったりというものです。
当センターに来所できない、全国の困っている方たちをフォローしていきたいと思っています。
自分の力を信じられる子どもになって欲しい
ー子どもに学んで欲しいことや、身につけて欲しいことはありますか?
川間:当センターに最初に来た子どもは、これまでよくわからない状態で強制的に勉強をやらされていたので、すごく苦しんでいる子が多いんですよね。
ここでは、文字の読み書きや文章の理解など、少しずつ積み重ねてできることを増やして、自信をつけていきます。
子どもには、もっと自信をつけて自分の力を信じて欲しいと思っています。
ー保護者の方に対しては、どのような支援をおこなっているのでしょうか?
川間:これまでの25年間、保護者の方には子どものそばで記録を取ってもらっています。
同席して記録を取りながら私たちの教え方を知り、子どもの「できた」という小さな気づきを一緒に感じて欲しいです。
小さな「できた」の芽を持つことによって、今まで苦しかった子育てや、周りの子どもと比較してできないことに対する悩みというのが少しずつ改善されていくんですよね。
そうすれば子育ても楽しくなるし、保護者の方も心に豊かさを持って子どもに接することができるようになります。
また、経験豊富な保護者の方々によって、下の学年の保護者の方をフォローしていく体制も整っています。
保護者の方には、自信を持って子どもと向き合って欲しいという思いです。
子どもたちがずっと笑顔でいられるような活動を
ー今後の展望について教えてください。
川間:当センターは、これまでの積み重ねによって今があります。これからも少しずつ積み重ねながら、新たに出てきた課題に対応していきたいと思っています。
去年は会場でのセミナーができなくなりましたが、これまで躊躇していたオンラインやオンデマンドを始めることができました。
これからも、社会情勢によってさまざまな課題が出てくるでしょう。
核となる理念を持ちながらも、社会の変化に柔軟に対応しながら、「困難な状況の中でも、理念がブレることなく、実現できるか」という発想で取り組んでいきます。
今までやってきている「子どもたちが笑顔になる」というスタンスを変えないで、どうすればそれを守り抜けるかを尽力していきたいです。
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
川間:私が月1回出演しているラジオでもお伝えしていますが、保護者の方はひとりで悩まないでください。
子どもに異変があった場合やちょっとおかしいと感じた場合、「しばらく様子を見てみよう」と思われるかもしれません。
しかし、大人が様子を見ていても子どもは変わりません。
もし何か気づいたときには、当センターやほかの専門家の方に相談して、今の状況を変えていって欲しいと思いますね。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:やまぐち発達臨床支援センター