もし、家族が急に学校や仕事に行かなくなって、自室から出なくなり外出もしない日々が続いたら。家族として何ができるのでしょうか。
本人に一番近い存在である家族だからこそ、「どうしたらいいのかわからない」「どのような場所に相談したらいいかわからない」など、心配し悩んでしまうと思います。
NPO法人「青少年交流・自立・支援センターCROSS(クロス)」は、広島県広島市を拠点に、ひきこもりがちな青少年とその家族等にその立場に立つ支援活動をおこなっています。
今回は、NPO法人「青少年交流・自立・支援センターCROSS」代表の齋藤 圭子(さいとう けいこ)さんに、具体的な活動内容や支援についてお話をお伺いしました。
NPO法人「青少年交流・自立・支援センターCROSS」概要と設立経緯
―本日はよろしくお願いいたします。まずは、「NPO法人青少年交流・自立・支援センターCROSS」の概要について教えてください。
齋藤 圭子さん(以下、齋藤):NPO法人「青少年交流・自立・支援センターCROSS」の活動は、ひきこもりがちな青少年とその家族への支援です。
現在継続の主な事業は「フリースペースくろす」と「広島ひきこもり相談支援センター(西部センター)」と「地域活動支援センターCross Road」です。
設立のきっかけは、私の子どもが中学1年生のときに不登校になったことでした。その経験から、家から安心して出ていける場所の必要を感じて、居場所活動を始めました。
私たちの団体では、「家族以外の人と半年以上リアルの交流がない状態」のことを“ひきこもり”と考えています。
そのため、家族以外の人との交流を安心してもてるように、日中の活動の場を提供できるように努めています。
家から一歩出ていける居場所の提供「フリースペースくろす」
ー「フリースペースくろす」について教えてください。
斎藤:「フリースペースくろす」は対人不安があっても、スポーツ等をツールとして自然に交流を計れるようなプログラムやグループワーク、ひとりで本を読んでいてもいい場所を用意するなど、ニーズに合うように工夫しています。
スポーツではバトミントンやキャッチボールなどの軽スポーツを少人数で楽しんだり、毎週日曜日、太田川河川敷でサッカー部が活動しています。
グループワークでは心理職のコーディネーターが参加者の様子を見ながら安心して参加できるように心がけています。
利用者は16歳以上30歳以下としていますが、必要なら相談もできます。
ひきこもりで悩みを抱える家族や本人のための相談「広島ひきこもり相談支援センター(西部センター)」
「広島ひきこもり相談支援センター(西部センター)」は概ね18歳以上のひきこもりに関する相談を、電話やメール相談、来所、必要に応じて訪問で対応しています。
令和2年度は電話相談が1289件、来所相談が1516件ありましたが、保護者の方からの相談がほとんどでした。
たとえば、保護者からの相談では「親はどういったふうに子どもに声をかけていいかわからない」「本人はこれからどうしたらいいのでしょうか」など、親の対応方法や子どもの将来に関することが多いです。また、8050問題に伴い「親が亡くなった後にどうなるんだろう」といった相談も増えています。
支援センターの対応としては、まず、ゆっくり今までの話を聞かせていただき、担当者を決めて継続相談になる場合もありますが、ほかの専門機関をご紹介する場合もあります。
家族や本人の来所が難しいときは、親せきや同じ職場の方などの相談でも対応します。
ひきこもり相談の次の場所として日中活動提供 地域活動支援センター「Cross Road」
“交流だけは負担なので何か作業をしていた方が落ち着く”という人が多いので作業は常に用意しています。
軽作業ではサンプルを台紙に貼ったり、車の部品の検品等があります。他に屋内清掃、お寺清掃、ポスティング等があり、内容に応じて賃金が支払われます。制作活動としては木工やアクセサリー、ジオラマ制作があり参加者は楽しみながらおこなっています。
不安な方はまず、一人部屋での作業もできるようになっています。
午前2時間午後2時間の作業が用意されていますが、本人の気持ちや体調に合わせて調整することも可能です。また、希望者にはお昼が100円で用意されます。
誰かと一緒に作業をおこなうことで“自分以外の人と一緒にいる空間に慣れてもらう”ための環境を作ること、また“生活リズムを整えること”がCross Roadの役割です。
生きづらさを抱えた方たちの交流の場「きちゃった当事者会」
ひきこもりの家族を抱える家族のための「KHJ広島もみじの会」
ー定期的に開催しているイベントなどはあるのでしょうか?
当団体の連携団体を紹介します。「きちゃった当事者会」は生きづらさを抱えた方のための当事者会を月に1回開いています。
また、「KHJ広島もみじの会」はひきこもりの家族を抱えた方のための集まりで、月に一度月例会が開かれ、会員には毎月、郵送で情報が届きます。
月に1度の集まりが心のよりどころになっている方もあります。
開催日や場所が知りたい方は広島ひきこもり相談支援センター(西部センター)でもお答えできますのでご連絡ください。
ひきこもりの人たちの居場所になる
ー今後の展望などがあればお聞かせください。
齋藤:私たちは現在までその時々に必要なものをつくってきています。
今後も、ひきこもりの人たちを支援していくなかで必要なものをつくっていきたいという思いは変わりません。
今後としては、家から安心して一歩踏み出していける場の選択肢を、より拡大したいと思っています。
不登校やひきこもりがちな方も気軽に立ち寄れるカフェのような物とか…そこに気が向けば立ち寄ったり、ちょっとアルバイトできたり…
学校や職場や家庭以外にも居場所はあると感じてもらえればうれしいです。
ーどのような方に足を運んでほしいですか?
齋藤:ひとりで悩んでいると堂々巡りになりがちなので、悩んで動けないでいる方に考えているより、まず具体的に動いてみて欲しいですね。
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
齋藤:「自分は本当にこれでいいのか」「もう自分はダメなんじゃないか」と。自分が何者なのかわからず悩んでしまうことも多いと思います。私はいろんな人がいていいと思っています。そして、人それぞれさまざまな生き方があっていい、そういう自分らしい生き方を応援したいと思います。
不登校やひきこもりの悩みや不安があればお話を聞かせていただき、一緒に何ができるかを考えていきましょう。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!