家族が抱える問題は家庭によって異なりますが、一人で抱えていると心身ともに負担が大きくなり、家庭内にひずみを起こしてしまうかもしれません。
長崎県佐世保市に本拠地があるNPO法人「ちいきのなかま」は、パパやママ、そして子どもが孤立しないように家庭全体をサポートし、子育て支援をおこなっている団体です。
今回は、「ちいきのなかま」の理事・山﨑 翠(やまさき みどり)さんにお話を伺いました。
子育て支援や家族支援で育児がしやすい社会を目指す
ー本日はよろしくお願いします。
まずは「ちいきのなかま」の設立の経緯や概要を教えてください。
山﨑 翠さん(以下、山﨑):NPO法人「ちいきのなかま」を設立したきっかけは、理事長である守永(もりなが)の育児経験にあると聞いています。
今から30年ほど昔の話になりますが、当時は今以上に育児のサポート制度が整っておらず、守永自身も大変苦労したと口にしていました。
当時、子育てのしづらさを感じていたのは守永だけではなく、周りの多くの女性が感じていたようです。
子育てのしづらさは社会の問題であると捉えていた守永は、約9年間のボランティアを経て、平成20年にさまざまな支援現場に携わったあと、NPO法人「ちいきのなかま」を立ち上げました。
現在は主に以下の4つの事業を展開しています。
山﨑:最初は子育て支援者向けに、産前産後についての勉強会という形でスタートしました。
平成30年に全日本社会貢献機構(現:一般社団法人パチンコ・パチスロ社会貢献機構)からご支援をいただき、1年を通じて「みんなの実家プロジェクト」を実施。
このプロジェクトでは、子育て支援の見本市のようなイベントを開催したり、実家のように集まって子育て世帯を支援する「みんなの実家モントブレア」を開設したりしました。
ほかにも、家事のサポートや子どもの見守り、出産を控えている方への両親学級など、ママの心身の支えとなるような事業を展開しています。
バリアフリーの心を育む「おもちゃ図書館」
ー子育て支援事業に含まれる「おもちゃ図書館」について詳しく教えていただけますか?
山﨑:「おもちゃ図書館」は、親子やボランティアスタッフが一緒にたくさんのおもちゃのなかから遊べるところが特徴です。
当団体以外にも、おもちゃ図書館を全国展開している団体はあります。
どのような子どもも参加できて、子どもたちはボランティアスタッフの方からこれまで知らなかったおもちゃの遊び方を教えてもらえます。
わたしたち「ちいきのなかま」では、おもちゃ図書館を通じて、子どもたちのバリアフリー精神の育成を目指しています。
おもちゃを紹介してくれるボランティアスタッフのなかには、発達障害をお持ちの方もいらっしゃいますが、このように教わる側も教える側も、多様な人が参加できるような体制を整えています。
ー家族支援事業のひとつ「きょうだい支援」についても教えてください。
山﨑:「きょうだい支援」は、病児や障がい児をきょうだいに持つ子どもを対象にしたメンタルケアが中心です。
そういった子どものなかには、きょうだいのお世話に追われている両親に気を遣って、なかなか本音を言えていないという子が少なくありません。
そのような子たちが少しでも楽しい気持ちになれるようなイベント、また両親向けにはきょうだい児の問題を知っていただくための学習会を実施しています。
子どもも大人もリアルで楽しめるイベントが盛りだくさん
ー今後、開催予定のイベントはありますか?
山﨑:新型コロナウイルス感染対策を意識しながら、この秋以降もさまざまなイベントに取り組んでいく予定です。
ファミリーサポート事業では、サポーターの養成講座やママ向けの交流会しています。
リトミックなどママと子どもが一緒に参加できるイベントが好評です。
ママ主体のイベントでは必ず託児室を設けていますので、いつも一人で育児をしているママも安心してご参加いただけます。
子どもたちにとって、楽しませてくれる大人の存在はとても大切ですが、昨今のコロナ禍で子どもたちは大人と関わる機会がさらに減少しています。
自分に向き合ってくれる、両親以外の存在を知ることが、子どもにとってよい経験になるのではないでしょうか。
これからも「ちいきのなかま」は、オンラインではなくオフラインのイベントを主体として、リアルな体験の提供を重要視していきますので、ぜひご参加ください。
家族をサポートして子どもが安心して成長できる環境を
ー今後の展望についても教えてください。
山﨑:「ちいきのなかま」の活動を継続しながら、「子育て世代の生の声」を大切にして、向き合っていきたいと考えています。
子どもたちにとって安心できる家族は絶対に必要な存在ですが、家族の生活で起きる問題やトラブルは決して少なくありません。
家庭の問題に悩まされている家族をサポートし、安心して子どもが成長できるような環境を一緒に作っていきたいですね。
同時にこの事業に携わっていただいている方々への感謝も忘れず、つながりを大切にしていきたいと考えています。
ー最後に読者へ向けてメッセージをお願いします。
山﨑:「家族」という小さな社会は、子どもたちが人生で初めて出会う社会でもあります。
子どもたちが素晴らしいと思える社会に出会えるように、まずはパパやママが子育てをハッピーと感じられる環境づくりに努めていきたいと思っています。
そのためには、周囲の人たちのと理解や協力が欠かせません。
「ちいきのなかま」は現在、さまざまな方からのご協力をいただいたうえで、運営をしています。
子育ての支援が必要と感じている方は、ぜひ私たちのような団体が存在することを知っていただき、さまざまなサポートをご活用ください。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:NPO法人 ちいきのなかま