昔は、地域全体での子育てが当たり前の時代があったかもしれません。
しかし、昭和から平成、令和と時代が進むにつれ、子どもに関わる大人の減少など、子どもを取り巻く環境は大きく変化したのではないでしょうか。
そのようななか、地域で子どもたちを見守り、育てるための活動をおこなっている団体が、「しげまさ子ども食堂―げんき広場―」です。
今回は、「しげまさ子ども食堂―げんき広場―」を運営する首藤 文江(しゅとう ふみえ)さんに、活動内容について伺いしました。
子どものサポート事業に興味のある方は、ぜひご覧ください。
困りを抱えた子どもをサポートするため設立
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本日はよろしくお願いします。まず、NPO法人「しげまさ子ども食堂ーげんき広場ー」の設立経緯について教えてください。
首藤 文江さん(以下、首藤):NPO法人「しげまさ子ども食堂ーげんき広場ー」は、私自身の子育てを通じて、子どもを取り巻く環境への課題意識が生まれたことから始まりました。
当たり前なのですが、私は子育て中に自分の子どもや周りの子どもたちを通して、よくも悪くも
「子どもたちが何かに挑戦しようとするとき、育った家庭で身についた生活習慣や学習習慣が大きく影響している」ことを感じていました。
その結果、自分の力ではどうにもならない困りを抱えた子どもの存在が近くにいることに気づいたのです。
そんな私が、子どもに食事を提供する「子ども食堂」というかたちでサポート活動を開始したのは、テレビ番組を通して、豊島区の子ども食堂の存在を知ったことがきっかけです。
「これなら自分たちでもできるかもしれない」と思い立ち、夫と2人で子ども食堂を開くことを決意し、豊島区の子ども食堂を運営する栗林 知絵子さんにお話を伺うなどして、準備を進めていきました。
ただ、0から新しい活動を立ち上げるのは本当に大変で、思い立ってから実際に子ども食堂を開始するまでには、1年もの時間がかかってしまいました。
私も夫も、ほかに仕事やボランティアをやっていて準備に割ける時間が限られていたのと、同じ想いで活動に関わってもらえる人を集めることが、想像以上に難しかったからです。
最終的には、栗林さんの助言をもとに、子ども食堂立ち上げ前のキックオフミーティングをおこなったことで、活動を支えてくれるサポーターとつながることができました。
そこから、「しげまさ子ども食堂ーげんき広場ー」の活動をスタートしたのです。
子どもたちに無料の食事や遊び場を提供
ー「しげまさ子ども食堂ーげんき広場ー」の活動内容について教えてください。
首藤:「しげまさ子ども食堂ーげんき広場ー」 では、“地域の子どもを、地域で見守り育てる”をコンセプトとして、子どもたちの未来や成長を応援すべく、近隣に住む有志の大人たちがサポートしながら、 子どもたちに食事や学習、遊びの支援事業をおこなっています。
事業は大きく分けて4つあります。
1つ目は、子どもたちに無料で食事を提供する「子ども食堂事業」。
「子ども食堂」は、毎月第2・第4土曜日の15時~19時に開催しています。
子ども食堂は、「子どもが一人でもご飯を食べに来られる場所」です。
参加する子どもたちにとって、「みんなで食事をすることが楽しい」と感じてもらえることを心がけています。
ただ、現在は“コロナ禍”により、皆で集まって食事をすることができないため「子ども食堂」をやむなく休止していますが、代わりに子どもたちにお弁当を配布する活動をおこなっています。
2つ目は、「無料学習支援事業」です。
「無料学習支援事業」では、近所の市立三重中学校に通う生徒を対象として毎週水曜日と金曜日に、大学生や地域サポーターが勉強のサポートをおこなっているんですよ。
水曜日は17時~20時、金曜日は18時~20時まで実施し、水曜日は夕食も提供します。
3つ目は、「げんき広場事業」です。
「げんき広場事業」は、基本的には子ども食堂の開催日に実施しており、閉校した県立三重農業高校の農場跡地を利用して、さまざまな遊びができるプレーパークを開催していますね。
「無料学習支援事業」と「げんき広場事業」は、子どもたちの「学びたい」「何とかしたい」「やってみたい」という想いを大切にすくい上げ、学びや遊びのサポートをすることを目標とします。
学力について悩みがある子どものお手伝いをしたり、さまざまな遊びの経験をしてもらうのはもちろんのこと、子どもたちと地域の大人が“知ってる関係”になることを大切にしています。
4つ目は、子どもたちが、自分の想いを相手に表現する経験ができる場として企画した「地域がHOKORI『ひろがるこどもプロジェクト』事業」です。
事業設立後の3年間は、大分県の“NPO協働モデル創出事業”として実施し、現在は豊後大野市の協力を得ながら開催しています。
自分自身で“変わりたい”と思っている子どもに、演劇とダンスを織り交ぜた舞台パフォーマンスとプレゼンテーションに挑戦する機会をつくりました。
このプロジェクトでは、県立三重総合高校の演劇部の先生が舞台パフォーマンスの指導を担当しており、
非営利団体「TED×Kumamoto」の代表を務めている方が、プレゼンテーションの指導を担当しているんですよ。
子どもたちにとっては、優れたスキルを持つ大人と出会い、いろいろなことを学び取る貴重な機会にもなると考えています。
今後も「学習支援」と「生活支援」に力を入れたい
ー今後の展望についてお聞かせください。
首藤:今後も子どもたちと一緒に活動をしながら必要なサポートを考え続けていきたいと思っています。
“コロナ禍”で子ども食堂が開催できなくなり、地域のつながりをつくることが難しくなっています。そこで、少し前から週2回のお弁当づくりと配達の事業を始めました。
ただお弁当をつくるのではなく、お弁当を介して各家庭とコミュニケーションを取るために実施しています。
また、これまでの活動によって、学習支援と生活支援が本当に大切だと痛感しています。
私は始めに、自分の生まれ育った家庭で教わったことや学んだことが、子どもたちの人生に大きく影響してしまうのではとお話ししましたが、世の中には多くの価値観や生き方、選択肢があります。
そのような世界の広さに気づいてもらうためにも、地域社会で多様な世代の人たちとかかわる経験が必要だと思っています。
学習や生活の支援は、今後さらに真剣に取り組んでいきたいと考えています。
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
首藤 :日本全体で人口が減少し、子どもの人数はさらに減少しています。
大分県の大人が一人ひとりの大分県の子どものことを真剣に考え、気にかけることで、どの子も取りこぼすことなく応援ができるはずです。
そこで、大人の皆さんには、身近に暮らす子どもたちを見守ってもらいたい。直接の知り合いでなくても、毎朝見かける子どもが今日も笑っているか、いつもと様子が違うんじゃないかな、と想像してもらうことで
地域社会が少しずつ変わっていくのではないでしょうか。
地域の子どもたちや大人たちがお互いに、自然と声をかけ合えるような地域や社会をつくっていけたらと思っています。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■ 取材協力:NPO法人「しげまさ子ども食堂ーげんき広場ー」