円周角の定理の後に学習するのが「円周角の定理の逆」。
「逆」というワードがあるだけに、法則自体は円周角の定理を逆の視点から捉えたものなので、それほど複雑ではありません。
しかし、この分野で苦手意識を抱きやすいのは、法則を活用した証明問題が出題されやすいためです。
この記事では、円周角の定理の逆について説明した後に、豊富な証明問題を用意・解説しています。
中学生向け・高校生向けに分けてご紹介しますので、ぜひ一緒に解いてみましょう。
円周角の定理の逆とは?
「円周角の定理の逆」を解説する前に、「円周角の定理」とは何だったか覚えていますか?
円周角の定理とは、「円=円の中で円周角が等しい」ことを証明する定理で、円周角の定理の逆とは、「円の中で円周角が等しい=円」という定理です。
「円周角の定理の逆」は、「円周角の定理」を理解していることが前提です。
もし忘れてしまったという人がいたら、以下の「円周角の定理」に関する記事を読んで思い出してみてくださいね!
では、まずは円周角の定理を簡単に復習しておきましょう。
円周角の定理は、「1つの弧に対する円周角の大きさは一定である」というものでしたね。
今回学習する「円周角の定理の逆」は、「角度が等しいときにその2つの角をつくる4点がひとつの円周上にある」という法則です。
図を見ながら詳しく解説していきましょう。
以下の図において、4点A・B・C・Dがあります。
円周角の定理の逆では、「点C・Dが同じ側にあって、∠ACB=∠ADBならば4点A・B・C・Dはひとつの円周上にある」ということになります。
ここまで「円周角の定理の逆」について説明してきましたが、はたして本当に成り立つのでしょうか?
ここでは、円周角の定理の逆が成り立つことを証明するため、円周上の点A・Bと、その2点によってできる円周角∠ACBとなる点をC、∠APBとなる点をPとします。
点Pの位置による∠APBとの大きさを比較してみましょう。
点Pが円の外側にある場合
APと円周の交点をQとします。
このとき、∠AQBは△QBPの外角ですね。
外角の定理より、三角形のひとつの外角はその隣にない2つの内角の和に等しくなります。
よって、∠AQB=∠APB+∠PBQ…(1)
また、円周角の定理より、∠AQB=∠ACB…(2)
(1)(2)より、∠ACB=∠APB+∠PBQ
ここで、∠APBと∠ACBはどちらのほうが大きいか考えてみましょう。
右辺に∠PBQが入っているので、これを除いた関係式にすると、
∠ACB>∠APBとなります。
よって、点Pが円の外側にある場合、∠APBは∠ACBより小さいことがわかります。
点Pが円周上にある場合
図のように、点Pが円周上にある場合には円周角の定理が成り立ちます。
弧ABに対する円周角は等しくなるので、∠ACB=∠APBとなります。
点Pが円周の内側にある場合
APをP側を延長したとき、円周との交点をQとします。
このとき、∠APBは△PBQの外角なので、∠APB=∠AQB+∠QBP…(1)
また、円周角の定理より∠AQB=∠ACB…(2)
(1)(2)より、∠APB=∠ACB+∠QBP
ここで、∠APBと∠ACBはどちらのほうが大きいが考えてみましょう。
右辺に∠QBPが入っているので、これを除くと∠APB>∠ACBとなります。
よって、点Pが円の内側にある場合、∠APBは∠ACBより大きいことがわかります。
【中学生向け・高校入試対策】円周角の定理の逆の証明問題|練習から応用まで
ここからは実際に証明問題を解いて出題パターンや解答のしかたを身につけていきましょう。
練習問題①
練習問題①を解くヒント
練習問題①の解答
仮定より、∠EBC=90°なので∠EBCは直径の円周角となり、ECは円の中心を通る。
したがって、∠EDC=90°
∠ABF=∠FDA=90°
円周角の定理の逆より、点B、Dが同じ側にあり、∠ABF=∠FDAが成り立つので、4点A、D、F、Bは同一円周上にある。
練習問題②
練習問題②を解くヒント
練習問題②の解答
△ABEにおいて、内角と外角の関係より∠ BAE=105°-35°=70°
2点A・Dは直線BCについて同じ側にあり、∠ BAC=∠BDCであるから、4点A、B、C、Dは同じ円周上にある。
応用問題①
応用問題①を解くヒント
応用問題①の解答
△ABCにおいて、L、Mはそれぞれ辺AB、BCの中点であるから、LM//AC
よって、∠LMB=∠ACB…(1)
同様に△ABDにおいて、L、Mはそれぞれ辺AB、ADの中点であるから∠ANL=∠ADB…(2)
ここで、∠ACBと∠ADBはともに弧ABに対する円周角であるから、∠ACB=∠ADB…(3)
(1)(2)(3)より、∠LMB=∠ANL
すなわち、∠PMQ=∠PNQ
2点M、Nは直線PQに関して同じ側にあるから、4点M、N、P、Qは1つの円周上にある。
【高校生向け・大学入試対策】円周角の定理の逆の証明問題|練習から応用まで
円周角の定理の逆は高校数学の平面図形の分野でも扱います。
証明問題をマスターするには、実際に手を動かして証明を書いてみることが大切なので、ぜひ一緒に問題を解いてみてください!
練習問題①
練習問題①を解くヒント
練習問題①の解答
△ABEと△ADCにおいて、AB=AD、AE=AC
また、∠BAE=∠BAC+∠CAE=∠BAC+60°…(1)
∠DAC=∠DAB+∠BAC=60°+∠BAC…(2)
(1)(2)より、∠BAE=∠DAC
2組の辺とその間の角がそれぞれ等しいから、△ABE≡△ADC…(3)
(3)より、∠ABP=∠ADP
ここで、2点B、Dは直線APに対して同じ側にある。
よって、円周角の定理の逆より、4点A、D、B、Pは同一円周上にある。
練習問題②
練習問題②の解答
いくつか証明の方法はありますが、ここでは相似条件を用いて証明していきます。
△AEFと△DEBにおいて、 ∠AEFと∠DEBは対頂角となるので、∠AEF=∠DEB…(1)
仮定より、∠EAF=EDB=90°…(2)
(1)(2)より2つの角が等しいので、△AEF∽△DEB
よって、∠EFA=∠EBD
2点B、Fは線分ADに対して同じ側にあるため、円周角の定理の逆により、4点A、F、B、Dは同一円周上にある。
応用問題
応用問題を解くヒント
応用問題の解答
∠PB‘A=∠PC‘A=90°であるから、円周角の定理の逆により、四角形PAC‘B‘は円に内接する。
よって、∠PAB+∠PB‘C‘=∠PAC‘+∠C‘B‘P=180°…(1)
∠CA‘P=∠PB‘C=90°であるから、四角形A‘PB‘Cは円に内接する。
よって円周角の定理より、∠A‘B‘P=∠A‘CP=180°-∠BCP
したがって、∠BCP+∠A‘B‘P=180°…(2)
(1)(2)より、∠PAB+∠BCP+∠A‘B‘P+∠PB‘C‘=360°である。
以上のことより、
Pが△ABCの外接円の周上にある
⇔∠PAB+∠BCP=180°
⇔∠A‘B‘P+PB‘C‘=180°
⇔A‘、B‘、C‘が同一線上にある
が成り立つ。
まとめ
「円周角の定理の逆」は、円周角の定理がわかっていれば何となく理解できる法則です。
それなのに証明問題になると急に難しく感じるのは、「見えない円」を探さなければならないためです。
苦手意識を抱きやすい証明問題ですが、マスターするコツは、とにかくいろいろな問題を繰り返し解いていくこと!
何度も自分の手で書いて学習することで、問題の解き方や証明のプロセスがパッと頭に浮かぶようになります。
本記事では練習問題を豊富に記載していますので、ぜひ根気よく取り組んでみてくださいね。