“コロナ禍”の今だからこそ、感染リスクが低いとされる自然のなかで子どもたちを遊ばせたいと考える方は多いものです。
しかし、都会に住む方にとっては自然が身近になく、「どこで遊ばせてよいかわからない」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
そこでおすすめしたいのが、NPO法人「環境保全教育研究所」が環境保全の一貫として取り組んでいる自然体験です。
今回は、「環境保全教育研究所」の代表理事を務める豊田 菜々子(とよた ななこ)さんに、具体的な活動内容を伺いました。
子どもを自然に触れさせたいと考える方は、ぜひご一読ください。
子どもと大人が互いに学びを得られる場
ー本日はよろしくお願いします。はじめに、 NPO法人「環境保全教育研究所」の設立経緯や概要について教えてください。
豊田 菜々子さん(以下、豊田):NPO法人「環境保全教育研究所」は、環境保全の意識を持つ人材育成を目的として、2010年に設立しました。
設立のきっかけとなったのは、私が大学生のときにボランティアとして参加した「2週間キャンプ」です。
2週間キャンプは、小学生を対象とした体験イベントで、そのサポートとして大学生や社会人も参加していました。
私はそのなかで、子どもたちが成長していく姿はもちろん、ボランティアスタッフたちも一緒に成長していく姿を見たのです。
子どもが大人から学ぶように、大人が子どもから学ぶこともありますよね。私が参加した2週間キャンプのように、「子どもと大人がお互いに学び合える自然体験の場が、長崎にもっとたくさんあるといいな」と思ったのです。
そして、「そんな場所をつくる仕事をしたい」という考えに至り、「環境保全教育研究所」を設立したんですね。
「環境保全教育研究所」の活動内容としては、里山保全をしながら、環境保全を学べる事業をメインにおこなっています。
山だけでなく、川や海での自然体験も用意しており、子どもから大人まで幅広い世代の人たちに参加してもらえるのが特徴です。
要望や季節に合わせた自然体験が可能
ー「環境保全教育研究所」の自然体験の内容について教えてください。
豊田:「環境保全教育研究所」では、参加者を募ったうえで「へんちくりん学校」という名称の自然体験をおこなっています。
「へんちくりん学校」では、里山を使った自然体験を実施していますが、内容は季節によって異なります。
たとえば、春ならタケノコ掘り、夏なら自分たちで切り出した竹を使った流しそうめん、秋ならデイキャンプで火起こし体験、冬なら門松づくりという感じですね。
参加者の多くは小学生ですが、保護者同伴の「親子クラス」であれば、2歳から参加が可能です。
それから、「自然体験の企画・運営事業」もおこなっています。
こちらは、塾や学童保育、放課後デイサービスや子ども会など、子どもたちが所属する団体からご依頼をいただくかたちで自然体験を提供しています。
子どもたちへの社会的な教育もかねて、自然のなかで自由に遊べるような企画を実施したいという声に応えて活動しています。
そのため、プログラム内容はご依頼をもとにこちらが企画するほか、一緒に考えることもあります。
過去のご依頼の例としては、たとえば「子どもたちが協力できる関係づくりがしたい」という要望や、「山のなかを自由に散策して、植物や動物に触れる活動をしたい」といったものがありましたね。
また、昨年は中学生のサッカーチームが来てくれました。
ご依頼の内容としては、「小学生のころはキャンプに行くなどの自然体験があったが、中学ではなかなか機会がないので設けたい」「目標達成ができるチームづくりのための“チームビルディング”の要素を取り入れた体験がしたい」というものでした。
そこで、まずは竹を使ってみんなでお皿づくりをすることから始め、さらにみんなでつくったカレーをそのお皿で食べる体験などを実施しました。
自然のサイクルが学べるイベントを予定
ー「環境保全教育研究所」で今後開催予定のイベントを教えてください。
豊田:今年は、“コロナ禍”ということを踏まえたイベントに取り組んでいます。
そのため、みんなで遊ぶというよりは、「自然について調査する」といった趣向の自然体験が多いですね。
10月以降の予定としては、水辺に住む生きものたちが生活できる池をつくり、観察できるイベントを開催しようと思っています。
私たちの地域の長崎県には、カスミサンショウウオやニホンヒキガエルなど、幼体のうちは水辺で生き、成体になると山で生きる生物が多くいます。
そういった生物の保全にもつながるといったかたちで、山整備や森林保全の大切さを学べるイベントを開催していきたいですね。
ー「環境保全教育研究所」の活動を応援したい場合は、どのような方法があるのでしょうか?
豊田:「環境保全教育研究所」では、“竹林整備スタッフ”と“自然体験スタッフ”のボランティアを募集しています。
どちらのスタッフも、自然に関するボランティアが初体験の方でも問題ありません。
“竹林整備スタッフ”については、道具の使い方はもちろん、「どうして整備や保全をしなくてはいけないのか」など、一から学べる環境づくりを大切にしています。
「自分たちが整備した場所が、子どもたちにとって楽しく安全に遊べる場所になっている」というつながりを実感することができますよ。
“自然体験スタッフ”についても、体験を通して子どももスタッフも一緒に学べることを大事にしているので、お気軽にご参加いただければと思います。
ー現在、どのくらいの人数がボランティアスタッフとして参加されているのでしょうか。
豊田:昨年は、“竹林整備スタッフ”は年間で約200人、“自然体験スタッフ”は年間で約100人の参加がありました。
これでも、昨年は“コロナ禍”の影響で少し減りましたが、何回もリピートで来てくださる方が多いですね。
夏休みや冬休み期間だと、高校生や大学生の参加者も多く見られます。
環境のために行動できる子どもを育成
ー今後の活動について、展望をお聞かせください。
豊田:自然体験に関しては、これまで山のなかでの体験が多かったため、今後は山以外で実施できる自然環境保全活動を増やしていきたいと考えています。
自然は、森も川も海もそれぞれつながりがあり、そのつながりによって生態系が成り立っているため、その学びを得られる活動を増やしていきたいですね。
そして、活動を通じて、まずは子どもたちに知らないことを知ってもらいたいです。知らなくては、「自分に何ができるのか」「何がしたいのか」といった意識も生まれてきません。
そのような意識を育み、環境保全のために行動できる子どもを、応援してくださる方々と一緒に育成していきたいと思っています。
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
豊田:私たちは、これからも子どもたちが楽しめる自然体験を多く実施していきたいと考えています。
しかしそれとともに、保護者の人たちや私たち自身も、子どもに戻った気持ちで一緒に楽しめる活動を目指しているんですよ。
お父さん、お母さんと一緒に全力で遊ぶことは、子どもにとってかけがえのない思い出になるだけでなく、多くの学びも得られるはずです。
子どもに対して「自然について興味をもってほしい」とお考えの方はもちろん、自然に興味がある大人の方も、ぜひご参加ください。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:NPO法人 環境保全教育研究所