子どもの頃の林間学校や野外教育活動の思い出が、今でも心に強く残っている人は多いのではないでしょうか。
校外活動の場所として選ばれることが多い「少年自然の家」は、子どもたちの豊かな心と体を育む、社会教育施設としての役割を担っています。
今回は、「四日市市 少年自然の家」で所長を務める磯部 淳(いそべ じゅん)さんから、施設の運営方針から企画の内容、また今後の展望までを伺いました。
コロナ禍でキャンプが注目されているなか、野外活動を計画している方はぜひご一読ください。
青少年の成長を促す野外体験活動施設
-本日はよろしくお願いいたします。まずは設立の経緯や概要について教えてください。
磯部 淳さん(以下、磯部):「四日市市 少年自然の家」は、 元々は四日市市の社会教育施設のひとつとして、1987年に設立された施設です。
基本的には、林間学校というかたちで、小学校5年生と中学校1年生の青少年育成に携わっています。集団での宿泊活動や野外活動を通じた、絆や協調性の養成が第一の目的です。
三重県内から訪れる人がやはり多いですが、最近は隣接する愛知や京都・大阪のスポーツクラブやボーイスカウトなど、さまざまな団体が来てくれています。
施設については、「本館・分館」は宿泊施設となっており、「キャンプ場」ではデイキャンプもできますし、テントを張って宿泊することも可能です。
「ふれあいの森」はキャンプ場に併設していて、自然観察などさまざまな体験ができるようになっています。
また、「大門池」という調整池があり、そこではカヤック体験などを楽しめます。
-活動内容について教えてください。
磯部:学校関係の利用者は、課外活動として「キャンプファイヤー」や「キャンプ体験」を選択することが多いですね。
基本的に1団体につき8名以上での利用枠を定めていて、施設からの指導役は基本的につかず、「里山体験」など一部のプログラムを除いては引率の大人の方が子供達に説明して、実施する方針をとっています。
ですので、十分に下見をしていただいてから、当日参加するプログラムを決めてもらっているんです。
社会教育施設という立ち位置上、「学びの場所」を提供できるように努めています。
晴れでも雨でも楽しめる豊富な体験プログラム
-屋内でおこなう体験プログラムについても教えてください。
磯部:創作活動のプログラムをおこなっており、「伊勢型紙」は着物の型になる三重県の伝統工芸として昔から有名で、子ども達にも体験してもらいたいと思って始めました。
この「伊勢型紙」については、打合せの段階で説明書きを配布し、理解していただいてから体験してもらっています。
他にも「焼き杉」や「マイスプーン作り」、森の枝や木の実を使う創作活動もありますね。
室内でろうそくを使う「キャンドルファイヤー」は、 雨天でキャンプファイヤーができない夜の憩いの場として催しています。
「四日市市少年自然の家」は利用時には申請が必要のため、打合せの段階で申請書を書いてもらい、他の団体さんとかち合わないように共有事項をお伝えしながら引率者と話し合い、安全面も考慮したうえで最終的な内容を決定しています。
コロナ禍でも楽しめる主催事業を積極的に開催
-開催予定のイベントについても詳しく教えてください。
磯部:イベントについては、年間何十個もの企画を実施しています。
コロナ禍の現在、中止になってしまったものもありますが、8月には毎年「サマーキャンプ」をおこなっていますよ。
家族で一緒に体験できるキャンプやものづくり体験、子どもだけで参加してもらうキャンプも用意しています。
また、密対策で調理実習NGとしている学校、学生さんには、災害時の食育体験を案内することもあります。
学校教育において災害教育は必要なものですので、有意義なものになるように提案していますね。
イベント内容については、毎年の年度終わりに職員全員が意見を出し合いながら決定し、講師を呼ぶ事業もありますが、基本的には職員がメインとなって、応募準備から片付けまでを担っています。
子どもたちがワクワクできる施設を目指して
-今後の展望について教えてください。
磯部:コロナ禍で閉鎖的な状況が続きますが、「四日市市 少年自然の家」では、子どもたちがワクワクできる空間を提供したいという気持ちが一番にあります。
また、トライ&エラーではありませんが、たとえ失敗しても、それが成功に導くためのものであればそれで良いということを、滞在中に学んでいただきたいですね。
そして、いろいろな年代の子が集まる集団生活のなかで、一致団結して何かを成し遂げながら、コミュニケーション能力を高められる場所をつくり続けていきたいと思っています。
今は世間的に安心・安全できる環境空間の提供が求められているので、これからも変わらず守っていきたいですね。
-最後に読者へ向けてメッセージをお願いします。
磯部:「四日市市 少年自然の家」は、設立から35年が経過していますが、ちょうど今、子どもの頃に訪れた方がパパやママになって、自分たちの子どもを連れてきてくれているんですよ。
この循環がずっと続くように、施設を維持していきたいなと考えています。
大人になって訪れた時に懐かしさを感じつつ、「安心できるから、あそこに子どもを預けて体験させよう」と思われるような施設づくりに努めていきます。
イベントに関しても、職員一同さまざまな工夫をして、子どもたちにワクワクを提供できるようなプログラムを考えており、最近では、「SDGs」を意識した里山体験を企画しています。
予約はネットでも申し込み可能ですので、ぜひ参加していただけるとうれしいです。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:四日市市 少年自然の家