「CS in English」とは?Seattle IT Japanese Professionals・Kids Code Club・NPO法人くまもとLRネットの代表にインタビュー!

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小・中学校でのプログラミング教育が必修化され、日本ではプログラミング教育が注目されていますが、ITの本場であるアメリカでは、プログラミングを含めた問題解決のために、コンピューター活用全般を扱う学問「コンピューターサイエンス」(=CS)教育の重要性が高まっています。

今回は、コンピューターサイエンスを英語で教えるプロジェクト「CS in Englishを運営する3団体、「Seattle IT Japanese Professionals」「Kids Code Club」「NPO法人くまもとLRネット」の代表の方にお話を伺いました。

子どもにコンピューターサイエンスを学ばせたい方、子どもが英語に触れる機会を増やしたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

  1. 「CS in English」を運営する3団体の活動内容とは?
  2. コンピューターサイエンスの基礎を英語で学べる
  3. 英語の本を読む「ブッククラブ」を開催予定
  4. 英語ができなくても大歓迎!失敗を笑う人は誰もいない

「CS in English」を運営する3団体の活動内容とは?

子どもたちがポーズを取っている画像

ー本日はよろしくお願いします。まずは「Seattle IT Japanese Professionals」について教えてください。


President Kenji Imasakiさん(以下、
Kenji):今から約10年前、シリコンバレーでIT関連の日本語コミュニティの活動をしている「JTPA」というNPO法人の代表にお会いし刺激を受けたのをきっかけに、私は「シアトルでもJTPAのように社会貢献活動をできないか?」と模索するようになりました。

そんなとき、たまたまJTPAの中心メンバーの方がシアトルに転勤されたので、彼と一緒にITを生かした社会貢献をおこなう団体を立ち上げたんです。

シアトルには、Microsoft、Amazon、Google、Nintendo USなどの数多くのIT企業が存在しており、開発者、技術者などの日本人が多く、そのコミュニティに貢献できないかと思っておりました。

いろいろと活動をしましたが、最終的には次世代を育てるうえではCS(コンピューターサイエンス)教育が大事と考え、それを当団体のメインプロジェクトにしています

Seattle IT Japanese Professionals」(以下、SIJP)としてNPO法人になったのは、5年前くらいですね。

子どもがプログラミングしている様子

ー続いては「Kids Code Club」について教えてください。


代表理事 石川 麻衣子さん(以下、石川):「Kids Code Club」は、家庭環境にかかわらずすべての子どもたちがプログラミングを学べる社会にするために、学習環境づくりをおこなっている団体です。

私自身、今でこそweb開発の仕事をしていますが、経済的な事情から大学を中退し、独学でIT技術を学んだという原体験があります。

特に「経済的な事情で好きなことを学べない」ということをなくしたいので、参加費を無料にしたり、パソコンの苦手な保護者の方向けにLINE相談を受け付けたりと、子どもたちに教育を届けるための活動をしています。

当団体では、2016年からプログラミング体験イベントをおこなっていたのですが、 Kenjiさんからお声がけいただき、2018年に「CS in English」の活動をスタートさせました。

「CS in English」のほかにも私たちが提供しているのは「放課後プログラミングクラブ」という“教えないプログラミングスクール”です。週2回、バーチャル会場で開催しています。

そのほかは、ゲームやアニメーションのプログラミングレシピの提供もしていて、こちらの利用者数は14万人くらいです。

現在は、子どもたちが自己学習する場をつくり、そこで日頃からプログラミングを楽しめるような機会を提供し、本格的な知識についてはCS in Englishでしっかりと講師から学んでもらう、というかけあわせの活動をしているところです。

みんなでzoomしている画像

ー「NPO法人くまもとLRネット」についても教えてください。


理事・事務局長 村嶋 亮一さん(以下、村嶋):「NPO法人くまもとLRネット」は2006年から活動している団体で、ICT(情報通信技術)を活用した学びや交流の場の提供をおこなっています。

学びや交流の場とは、具体的には、eラーニングやオンライン学習などと呼ばれる、ICTを活用した効果的で効率的な学びや交流の場を生涯学習でも利用することを提唱し続けています。

また当団体は、2016年の熊本地震や2020年の熊本豪雨の復興支援活動もしています。 地震で大きな被害を受けた熊本市や益城町、熊本豪雨の被災地である人吉市や球磨村などで、パソコン提供やインターネット環境整備をおこないました。

「CS in English」では、熊本・福岡・シアトルをオンラインでつなぎ、子どもたち向けの効果的な学習環境を提供しようと、私たちのテクノロジーを使いながらKenjiさんたちと協力して取り組みを進めています。

コンピューターサイエンスの基礎を英語で学べる

ケンジさんが子どもたちに二進法を教えている画像

ー「CS in English」を立ち上げた経緯などお聞かせください。


Kenjiもともと私はSIJPで、シアトルに住むバイリンガルの子どもたちに、日本語を学ぶために日本語でコンピューターサイエンスを教えていました。ところが子どもたちは普段英語を使っているので、うまく理解できずに混乱していました。

振り返れば私自身も、コンピューターサイエンスを日本語で学んでいたために、シアトルへの大学院留学ですごく苦労した経験があります。

英会話はある程度できても専門用語は全然ダメで、授業で教授が何を言っているのかわかりませんでした。さみしい思いもしましたね。

子どもたちにはそんな体験をしてほしくないので、「コンピューターサイエンスは日本語ではなく英語で学ぶ必要がある」と感じました。

このような経緯から、英語でコンピューターサイエンスを教えるプロジェクトとして、「CS in English」がかたちになっていきました

ー「CS in English」ではどのような授業をおこなわれていますか?


Kenji2か月に1回くらいのペースで、Zoomを使ってインターネット上でライブの授業をおこなっています。

授業テーマは、2進法やループ、インターネットの仕組みなどコンピューターサイエンスの基礎です。

本場のエンジニアから英語で学ぶ」がコンセプトなので、授業では難しい英語も使います。

子どもたちは苦労していますが、できるだけ楽しく学べるように、クイズ大会やアプリを使ったアクティビティなど遊びの要素を取り入れていますね。

また、英語力のレベル別にサポートを工夫しています。

たとえば、英語を話せる人にはネイティブのアメリカのエンジニアをつけたり、「英語はダメだけどコンピューターはわかる」という人にはバイリンガルの人がついて日本語で説明したり、できるだけ最初に英語で説明して、わからない部分だけ日本語でフォローするイメージです。

このためにZoomのブレークアウトルームを活用しています。先日の条件文の授業では21個のブレークアウトルームをつくりました。

みんなでzoomしている画像

石川:あとは、アルゴリズムも教えていますね。


Kenjiそうですね。アルゴリズムとは「手順」のことです。

たとえばカレーをつくるのに、ごはんを用意してジャガイモを切ってとか、そういう手順がありますよね。それと似たように、問題解決の手順のことをアルゴリズムと呼びます。

アルゴリズムをわかっていないと、どこかで壁にぶつかってしまい、コンピューターのプログラミングやコーディングができません。

ソフトウェアの仕事をしている人は、みんなアルゴリズムを理解していて、それほど大事なことなんです。

本当は大学でやるような難しい授業なんですが、なんとか子どもたちにわかるように代表的なアルゴリズムを「クリスマスツリーの飾りをどうやって片付けるか?」「トランプのカードを早く並べ替えるには?」など遊びの要素を入れながら教えています。

石川:日本の大学生が習うレベルの内容を英語で教えているので、やっていることはすごく難しいんですよ。100%理解するのは大人でも難しいくらいなので、子どもたちはなおさらでしょう。

だから「CS in English」は、普通のスクールのように、授業内容を知識として身につけてもらうことを目的としていません。

それよりも、難しいことにチャレンジする楽しさや、世界とつながるグローバルな楽しさを体験して、思い出に残してもらうことを大事にしています。

3年前の立ち上げ当時、「CS in English」で提供しているような世界とつながる機会は、日本にほとんど存在しませんでした。

だからこそ、オンラインで海外の子どもや先生とつながって遊び、「物理的な距離は克服できる」と感じてもらうことをずっと重視してきたんです。

オンラインが当たり前になってきた今でも、海外の人から何かを教えてもらう場はなかなかないので、貴重な機会を提供できていると思っています。

英語の本を読む「ブッククラブ」を開催予定

Zoomに映った子どもたちが本を掲げている画像

ー今後、「CS in English」で開催予定のイベントがあれば教えてください。


Kenji本年度は、世界中で使われているコンピューターサイエンスの教材(code.org)を使って、コンピューターのコーディングの基本を教えています。最初は「ループ(繰り返し)」から始まり、「コンディショナル(条件文)」「ファンクション(関数)」などを学びます。

授業をできるだけ面白くするため、現在現役エンジニアの方と協力してコースデザインをしているところです。「CS in English」として4年間やってきたことを取り入れつつ、独自性のある内容にしたいと考えています。

それから、今年実施した「ブッククラブ(読書会)」が面白かったので、「CS in English」の授業と組みあわせてみたいですね。

「ブッククラブ」は、Zoomでつないで、本を子どもたちに読んでもらって、感想を話しあったり、クイズをしたりするんです。

今年の前半は「Girls who code」という本を英語でみんなで読みました。

石川:「CS in English」は、プログラミングを学ぶだけでなく、英語を使う機会にもなっているんですよね。

そのため私たちは、英語を使ってみんなで話したりチャレンジしたりする機会を、いろいろな方法で提供したいと考えています。

そのひとつの取り組みとして、みんなで英語の本を読む「ブッククラブ」を今年も開催したいですね。  

次回は、11月7日に、英語で学ぶコンピュータ・サイエンス(CS in English)「Functions / 関数」のオンライン授業をおこなう予定です。

イベントのお知らせは、随時公式ホームページで告知しているので、ご覧ください。

ー現役エンジニアの方も活動に関わっているのですね。


Kenjiはい。GoogleやAmazon、Microsoftの現役エンジニアが授業にボランティアとして参加しています

ブッククラブをやったときも、シアトルのバイリンガルの女性エンジニアに参加してもらいました。

子どもたちが「私もあんなふうになりたい!」と感じられるよう、彼らにはロールモデルになってほしいと願っています。

だから授業ではただ教えるだけではなくて、エンジニアの自己紹介や質問タイムも設けているんですよ。

ゼッケンを羽織った子どもたちが並んでいる様子

ーイベントを企画する際、意識していることはありますか?


Kenji以前「小学校の英語のクラスでは、英語を話せる子がネイティブの発音をするとみんなから笑われる」という話を聞いたことがあって、悲しい気持ちになりました。

だから英語を話す機会をたくさんつくって、英語を話せる子どもが輝ける場を提供したいとも考えています。

実際の授業でも英語で自由に発言してもらっています。チャットをみるのも楽しいですよ。

村嶋:私は「自主的に学習する力」を子どもたちに身につけてもらえる活動を目指しています。

もともと「CS in English」は年に5、6回、単発的なイベントとして学習活動をしてきましたが、もっと継続的に日常から勉強してもらえるような活動をするのが理想です。

そのためには、たとえば読書のような、みんなで集まらなくても「自分だけでできる学習活動」と組みあわせていくのがいいと思っています。

そういう意味では、ブッククラブの活動が今後の「CS in English」にいい影響を与えてくれるのではと期待していますね。

自分で学習したことをみんなの前で発表するなど、「CS in English」のメリットである「グループでの学習活動」にもうまくつなげていきたいです。

英語ができなくても大歓迎!失敗を笑う人は誰もいない

プログラミングの画面

ー今後の展望について教えてください。


Kenjiまずは今年5回あるイベントをやりきります。新しい本を取り入れつつブッククラブも並行して、シアトルと熊本・福岡をつなげていきたいです。

現在は無理ですが、将来的にはCS in Englishに参加している子どもたちをシアトルに連れていきたいんですけどね。CS in English」の子どもたちに、シアトルでいろいろな体験をしてもらうのが私の夢です。

石川:私はCS in English」を英語を苦手に感じている人がチャレンジできる場所にしていきたいです。

最近は学校でも英語の時間が増えていて、英語の習い事も普及しつつありますが、英語が苦手な人はまだまだたくさんいると感じています。

もちろん英語の得意な人がチャレンジしにきてくれるのは、すごく嬉しいです。

それに加えて「今は英語に自信がない」「英語が苦手」という子どもたちにも、「CS in English」に来てもらって刺激を受けてほしいので、最初の入口をできるだけ低くしていきたいと考えています。

村嶋:ライブだけでなく、ブッククラブのようなオンデマンドと組みあわせた新しい学習体験を提供できたらいいなと思います。

それからKenjiさんと同じで、将来はシアトルに子どもたちを連れていきたいですね。

また石川さんがおっしゃったように、「CS in English」の入口を低くして、いろいろな子どもたちに「ロールモデルから学ぶ体験」をしてほしいと願っています。

プログラミングの画面

ー最後に読者の方へ一言メッセージをお願いします。


Kenjiみなさんには日本独自の教材ではなく、世界で使われている教材でコンピューターサイエンスを英語で学んでほしいです。

また「CS in English」の授業でなくてもいいので、世界での活躍に向けて、できるだけ英語で学んでもらいたいですね。

ビジョンが広がるので、アメリカで就職したり日本で世界を相手にする仕事をしたりと道が開けます。

石川:保護者の方から「うちの子はまだ全然英語ができないんだけど、参加していいんですか?」と質問をいただくのですが、大歓迎です!

「CS in English」には失敗を笑うような人は誰もいませんし、挑戦を歓迎する空気があります。

いろいろな子ども、いろいろな家庭を受け入れる空気、多様性を認める文化があるので、どんな方でも気兼ねなく来て挑戦していただけたら嬉しいです。

村嶋:「CS in English」の活動は、熊本・福岡だけでなく全国、全世界に広がりつつあります。この活動に共感される団体や個人の方がいらっしゃれば、ぜひ参加していただきたいです。

私は普段、熊本で活動しています。私たちの熊本での活動を支援してくださる方、ボランティアの方も募集中です。ご興味のある方は、ぜひご連絡ください!

ー本日は貴重なお話をありがとうございました!


■取材協力:
NPO法人くまもとLRネット
Seattle IT Japanese Professionals
Kids Code Club