何らかの理由で我が子が不登校になってしまったら、その先の進路に対して不安に感じてしまう保護者の方もいるでしょう。
不登校だった子どもたちが、自分のペースでやりたいことにチャレンジし、夢をつかめるようにサポートしているのが、三幸学園グループ運営の「東京未来大学みらいフリースクール」です。
今回は、「東京未来大学みらいフリースクール」教員の久保 知可子さんに、どのような活動をおこない、子どもたちをサポートしてきたかについて伺いました。
不登校でお悩みを抱えていたり、子どもの将来が不安な保護者の方は、ぜひご一読ください。
無理なく通える2つのコースを用意
ー本日はよろしくお願いします。まず「東京未来大学みらいフリースクール」はどのようなスクールなのでしょうか?
久保 知可子さん(以下、久保):東京未来大学みらいフリースクールは、通信制の高校や専門学校、大学・短期大学を展開する「三幸学園グループ」が運営するフリースクールで、小学校4年生から中学3年生までの子どもたちが在籍しています。
こちらから「これはダメ、あれをしなさい」と強制するのではなく、まずは生徒がやりたいことを自分で考え、それを尊重してサポートしていく指導をおこなっていますね。
当スクールには時間割があり、国語、算数・数学、英語、体育といった科目や、ゲームを楽しみながら他人との関わり合いを促していく「ゲームコミュニケーション」の授業などを用意しています。
また、常時複数人のスタッフが子どもたちを見守っているため、いつでも安心してお過ごしいただけますよ。
ー2つのコース「1DAYコース」「スタンダードコース」の特徴について教えてください。
久保:不登校のお子さんにとって、当スクールに来ることは大変勇気のいる「大きな一歩」ではないでしょうか。
そのため、小さいステップからスタートできる週1日の「1DAYコース」と、しっかりと通いたい方のための週5日の「スタンダードコース」を設けています。
「1DAYコース」に慣れてきたら、「スタンダードコース」に変更して通う日数を増やすこともできます。
「スタンダードコース」を選択したからといって、“毎日通わないといけない“というわけではなく、“5日間通える日がある”という考え方なので、自分のペースで毎日通う人もいれば、2日来たら1日休む生徒もいますよ。
なかには、スクールでの生活を通して元気になり、「学校へ戻ってみよう」と思う生徒もいます。ただ、完全に戻り切れるか不安に思う方も多いので、そのようなときには、学費がかからずに籍を残しておける休学制度を利用して、当スクールとのつながりを残しておくこともできます。
また、当スクールでは、毎日10時から15時まで授業を実施していますが、「遅刻をしたらダメ」ということもなく、「自分のペースで好きな時間に来ても大丈夫」とお伝えしているんです。
大体、11時くらいから人が集まり始めることが多いですね。無理なく通っていただくことが一番だと思っています。
ゲームを通して仲間意識が芽生える
ー週に2回「ゲームコミュニケーション」の科目を設けていますが、内容について教えてください。
久保:子どもたちは、やはりゲームがとても好きなんですよね。
ゲームが子どもたち同士をつなげるツールになることを願い、今年からゲームを科目として設けることとなりました。
「ゲームコミュニケーション」の時間は、ボードゲームやカードゲームなど、相手とコミュニケーションが取れるような内容のゲームを実施します。
最近では、“人狼ゲーム”が人気で、15名ほどの大きな円になって楽しむこともあります。
もちろんゲームは強制参加ではなく、苦手な生徒は見学だけでもいいですし、不安なら2人で一緒に参加するペアでの参加もOKにして、参加へのハードルを下げています。
ー「ゲームコミュニケーション」は、全学年が一緒におこなっているのでしょうか?
久保:そうですね。当スクールでは名札に学年をあえて入れていないので、趣味や波長が合う子同士が友だちになっているケースが多く見られます。
そのため、小学生と中学生のペアでゲームをする生徒もいますよ。
ー「ゲームコミュニケーション」を新設したことで、子どもたちに変化はありましたか?
久保:はい。子どもたちのなかには、自分から輪に入っていくことが苦手な子もいます。
しかし、みんなで「一緒にゲームをやろうよ」と誘うと、今まで1人で過ごすことが多かった子も、少しずつ参加できるようになり、みんなとの距離を縮めることができるということもあるのです。
また、体験入学に来てくれたお子さんも、ゲームならすんなりとみんなの輪のなかに入ることができて、打ち解けやすいようです。ゲームを通して、初対面の相手でも名前を覚えやすくなっているようですね。
ちなみに、「ゲームコミュニケーション」の際にも、複数人のスタッフが教室で生徒たちを見守っているため、問題が起こる前に対応することが可能なんですよ。
ゲームは、一人ひとりの個性や性格が出るため、何かトラブルになりそうな場面があれば、その都度生徒たちと話をするようにしています。
ゲームコミュニケーションを始めたことで、私たちからしても、生徒の性格がとてもわかりやすくなったことはよかったですね。
将来の夢につながる職業体験が充実
ーグループ校との交流はあるのでしょうか?
久保:あります。その点が、当スクールの強みだと思っています。
当スクールでは、「飛鳥未来高等学校」という通信制のグループ校と連携しており、その学校の先生が、当スクールの生徒向けに高校の説明をしに来てくれます。
「飛鳥未来高等学校」には、当スクールの卒業生も数多く在籍しているので、そのつながりで高校生のイベントに呼んでもらい、ゲーム大会をすることもありますよ。
また、その他のグループ校である「東京スイーツ&カフェ専門学校」でパティシエ体験をしたり、
「ビューティーアート専門学校」でヘアメイクの職業体験をおこなったり、今年の4月に開校した「東京みらいAI&IT専門学校」でプログラミング体験をすることもありましたね。
三幸学園のグループには、さまざまな専門学校があるため、フリースクールにいながら多様な職業を知ることができるんですよ。
ー
「東京未来大学みらいフリースクール」では、どのような進路を選ぶ生徒が多いのでしょうか?
久保:7割ほどの生徒は、「飛鳥未来高等学校」に進学しています。
もちろん、進路を強制するような指導はおこなっていないため、行きたい学校がある場合はその進路を応援しますよ。
水、金曜日の放課後は、希望する中学生に向けて受験対策の授業をおこなっており、生徒の進路を全面的にサポートしています。
悩む子どもたちの居場所になりたい
ー2021年9月に新設した「六町(ろくちょう)クラス」は、現在スクールがある「綾瀬クラス」とどのような違いがあるのでしょうか?
久保:「綾瀬クラス」は、多くの人数が在籍しているため賑やかで楽しい場所ですが、大人数が苦手であったり、すでに輪のあるところに入っていくのが苦手な子どもたちもいます。
そのような子どもたちのために、「六町クラス」を設立しました。「六町クラス」は、“アットホームな雰囲気で少人数”であるところが、「綾瀬クラス」との違いなんですよ。
大人数のなかに入るのは苦手で、今まで当スクールの入学に踏み切れなかった方も、安心して来てくださいね。
ー今後、開催予定のイベントを教えてください。
久保:近いうちに、最高裁判所の見学に行く予定ですね。
東京未来大学みらいフリースクールには、「世の中探究」という授業があり、世の中の仕組みや生徒たちが気になるテーマを探っていく試みをしています。
以前、裁判員制度で裁判員を経験した当スクールのスタッフが、生徒たちにその体験を語ったときに、「もし見学ができるなら行ってみたいね」という話題になったことから実現に至ったんですよ。
また、毎年10月末には、保護者の方をお招きして文化祭をおこなっているのですが、今後は新型コロナウイルス対策をおこないながら安全にできる方法を子どもたちと考えています。
さらに10月は、三幸学園のほかのフリースクールと合同で「芸術コンクール」を開催する予定です。
イラスト、動画、写真など、さまざまな分野から作品を提出してもらい優秀な作品を選ぶので、生徒たちも毎年力を入れているコンクールなんですよ。
ーイベントや日々の活動を通して、どのようなスクールを目指しているのでしょうか?
久保:私たちは、不登校が右肩上がりでどんどん増加している世の中で「ひとりでも多くの子どもたちの居場所になりたい」という思いを持っています。
学校に行くことができないと、「自分はダメなんだ」と自信をなくしてしまうお子さんもいるでしょう。
しかしそのようなことは決してなくて、“学校という一つの場所”が合わなかっただけなのです。
私たちは、これからも悩む子どもたちの居場所になれたらと思っています。
また、保護者とのコミュニケーションも大切にしていきたいですね。
当スクールでは心理士による無料心理相談も可能で、保護者の方だけでも、お子さんだけでも、お2人揃ってもご案内しています。
さらに、当スクールは今年で創立6年になり、卒業した生徒たちが高校生や大学生になり、アルバイトというかたちで戻ってきてくれるのです。
卒業生の活躍を間近で見ることで、卒業生が子どもたちのロールモデルとなってくれたらうれしいですね。
そのためにも、卒業生とのつながりも大切にしていきたいです。
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
久保:
今年は、「中学校のかわりにフリースクールに完全に振り切って通わせます」という親御さんが複数人いました。
このように、最近は学びが多様化しているので、「学校だけが一つの道ではない」と強く感じています。
学校に行っていないからダメということは絶対になくて、その子のよい所は必ずあるので、その部分を、子どもが自分で認められるような居場所になりたいと思います。
人間は、ときに疲れてしまいます。そういうときは、なかなか先のことを考える余裕が生まれないものなんですよ。
心とからだを当スクールで充電して、次に向かえる活力を生んでくれたらうれしいですね。
そのため、自分らしくいられる場所を、当スクールに来て見つけていただけければと思います。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:東京未来大学みらいフリースクール