夏休みの宿題の定番
「読書感想文」 は 、小学校や中学校、高校でも出されることがあります。
中には、
「本を読むことや文章を書くこと自体得意ではない」
「どんな本を選べばよいか分からない」
「書き出しや構成が分からない」
「原稿用紙5枚分(2,000字)も何を書けばよいか分からない」
など、読書感想文に対する苦手意識や悩みを持つ人も多いでしょう。
小学生のお子さまへの教え方を悩んでいる親御さんや、中学生や高校生で書き方の手順やコツが分からず時間がかかる人もいるのではないでしょうか。
この記事では、東大への合格経験を持つ「東大自習室」代表の内田 悠斗さんに監修いただき、読書感想文を書く手順や構成のテンプレート、コツなどを詳しく紹介。
本の選び方やメモの取り方とあわせて、小中高生が意識したいポイントなどもそれぞれ解説します。
記事の内容に沿って取り組むことで、読書感想文をもっと簡単に、すらすら書けるようになりましょう!
読書感想文の決まりや文字数は?
読書感想文は、その名の通り読んだ本の感想を文章にまとめる課題のことです。
パターンは主に下記の2つに分かれます。
文字数は指定されている場合もありますが、ない場合は下記の「青少年読書感想文全国コンクール」の文字数を目安にしてみましょう。
学年 | 本文の文字数目安 |
---|---|
小学校低学年(1、2年生) | 800字以内 |
小学校中学年(3、4年生) | 1,200字以内 |
小学校高学年(5、6年生) | 1,200字以内 |
中学生 | 2,000字以内 |
高校生 | 2,000字以内 |
このほか学校によって決まりがある場合もあるため、取り組む前にまずしっかりと確認しておきましょう。
読書感想文が宿題に出される理由は?
年次が上がるにつれて多くなる文字数に苦手意識を持つ人も少なくありません。
では、なぜ読書感想文が宿題に出されるのでしょうか。
学校では、読書感想文の宿題をとおしてさまざまなことが期待されています。
上記のような習慣や力を身につけられるように、というのが読書感想文が宿題に出される理由です。
本を読まない人にとって、読書感想文の宿題は本を読むきっかけとなります。
そして、本からさまざまな知識を得て多様な考え方に触れることは、ほかの物事を考えるときにも役立ちます。
また、本を読むことによって身につく感受性や想像力は、周囲との人間関係を良好に保つために必要な力です。
読解力や文章力、表現力は、受験時や就職時など、大学生や社会人になったときにも大きな強みとなることでしょう。
このように、読書感想文をとおして身につく力は将来の自分のためにもなります。
「読書感想文をやる理由が分からない」という人は、前述した内容を意識して取り組んでみてください。
「目的は分かっても、本を読むことや文章を書くことが苦手」という人は、これから解説する内容をもとに、ポイントを参考にしてみてくださいね。
読書感想文の構成テンプレート
まずは、読書感想文の構成テンプレートを知っておきましょう。
ここでは、下記の内容をもとに構成テンプレートを紹介します。
・それぞれの段落で書く内容
・意識するポイント
・全体が2,000字の場合の目安の分量
(400字詰めの原稿用紙で書く場合)
読書感想文に限らず、文章を書くときは
「序論(はじめ)・本論(なか)・結論(おわり)」が基本です。
先に構成を把握しておくことで、本を読むときやメモを取るときのポイントをつかみやすくなりますよ。
おおまかな構成を把握したら、さっそく読書感想文を書く手順に沿って取り組みましょう。
次の章では、具体的な手順やポイントを解説します。
読書感想文を書く手順
ではさっそく、読書感想文を書くときの基本的な手順を紹介します。先述したテンプレートを知ったうえで進めていくと、読む時のポイントも分かりやすくなるでしょう。
流れは下記のとおりです。
それぞれの手順において意識するポイントを解説するので、ぜひ参考にしながら読書感想文を書いてみてください。
読書感想文を書く手順①本を選ぶ
本を選ぶときには、図書館で実際に探すかインターネットで検索するなどして、下記のような選び方を意識してみましょう。
読書感想文を書くには、まず本選びが大切です。
自分が興味を持てる本は、課題で指定されているジャンル内であればどんなものでも大丈夫。無理して難しい内容のものを選ぶのではなく、楽しく読める本を見つけてみてください。
また、主人公の境遇や心情、行動などに「共感できる本」であれば、自分にあてはめた場合の想像もしやすく、感想も考えやすくなるのでおすすめです。
親御さんが小学生のお子さまに本を選ばせてあげるときは、上記の内容にあてはまる本からいくつか選択肢を用意してあげると、スムーズに決めることができるでしょう。
読書感想文を書く手順②本を読みながらメモを取る
本を選んだら、さっそく読み始めます。
ただ何となく読み進めてしまうと、いざ読書感想文を書くときに
「何を書けばよいのかわからない」
「書き出し・書き終わり方がわからない」
といった状態になってしまいます。
そこで、本の内容を整理するためにメモを取りながら本を読みましょう。
メモを取るポイントは下記のとおりです。
それぞれの項目で何を意識してメモを取ればよいのか、詳しくみていきましょう!
1.本の紹介
読書感想文は、その本をまったく知らない人が読むことを前提として書くものなので、書き出しは本の紹介から始めます。
下記の3つの要素を意識してメモを取りましょう。
本を読む前の印象を書いておくと、読み終わった時の印象の変化を比べることができ、書き終わりをまとめるときに役立ちます。
2.本を読んで心を動かされたこと
読書感想文ではここがもっとも重要な項目です。 自分の心を動かすきっかけとなった場面を2~3個挙げ、より具体的に丁寧に書くことを意識していきましょう。
気になった部分に付箋を貼って後から見返せるようにし、登場人物のセリフや本の表現を引用して書くのもおすすめです。
そして、なぜそう感じたのかという理由をセットにして、読み手の理解を深めたり納得させたりできるよう意識しましょう。
3.本を読んだ後の感想・意見
読書感想文の最後のまとめとして、本を読んだ後の感想や意見を書いていきます。
これらを書いたうえで、「この読書体験を活かし、これからは~したい。」のように今後の自分の生活に引き寄せて文章を締めるときれいにまとまります。
例文)
本を読む前はこう思っていたが、〇〇と△△の姿をみてこういう考えに変わった。こういう新たな視点を持つことができた。今後このように活かしていきたい。
上記のように、一貫した流れのある文章は、読み手に伝わりやすく印象に残ります。
読書感想文を書く手順③メモの内容をテンプレートにあてはめる
構成テンプレートで紹介したように、文章を書くときは「序論(はじめ)・本論(なか)・結論(おわり)」が基本。
メモのポイントを抑えておけば、あとはその内容を構成テンプレートにあてはめるだけです。
あまり難しく考えず、本を読みながらメモしてきたことをそのまま文章にすれば、自然と筋の通った内容になりますよ!
下記では構成を意識した例文を紹介します。
例文)
理由(書き出し):
私がこの本を選んだ理由は、主人公の〇〇の経験が自分と重なり共感できたからです。
あらすじ・要約:
主人公〇〇が△△と出会い、□□を経験して成長していく物語です。
例文)
・一番印象に残ったシーンは、主人公の〇〇が△△と出会って一緒に困難を乗り越えたシーンです。
・△△の「~」というセリフが心に響き、自分も頑張ろうと思えました。
・もし自分だったら□□のような行動をとっていたと思います。
例文)
・この本を読んで〇〇を学びました。
・本を読む前は△△だと思っていましたが、読んでいくうちに××に気づきました。
・今後の生活にも〇〇を活かしていきたいです。
「感想」というふわっとした言葉だと、書き出しや内容に迷ってしまいますが、テンプレートを知ったうえでポイントをメモしておけば、スムーズに書き進められるようになります。
読書感想文を書く手順④原稿用紙に清書する
構成と内容が固まったら、実際に原稿用紙に清書していきます。
原稿用紙の使い方や注意する点は下記のとおりです。
小さな「っ」「ゅ」「ゃ」が行頭にくると少し読みにくいですが、行頭に書いてもよいとされています。気になる人は、前行の最後のマスか欄外に書いても大丈夫。
上記の5つに注意して作成すると、より完成度の高い読書感想文ができあがります。覚えておきましょう!
東大生が教える!読書感想文の書き方のコツ
ここからは、実際に読書感想文を書く際におすすめのコツについて、東大への合格経験を持つ内田さんに解説していただきました。
ポイントを確認して、よりスムーズに充実した内容の読書感想文を書くことを意識してみましょう。
1.いきなり書き出さない(骨格を決めてから書く)
これまで、いろいろと読書感想文のコツを解説しましたが、いきなり原稿用紙に書き出すのは避けましょう。
思いついたことをつらつらと書いていると、構成まとまらず、話がとんでわかりにくい文章になってしまいます。
下記、4つのステップで書いてみましょう。
このようにして書くと、びっくりするくらいすっきりして読みやすい文章になります。
2.理由を深堀りして書く
自分の考えや感想を書くときには、必ず理由とセットで書くようにしましょう。
「感動した」「共感できなかった」だけではなく、「どこが感動したのか、なぜ感動したのか」「どこが共感できなかったのか、なぜ共感できなかったのか」をなるべく具体的に読者に伝わるように書いたほうがよいです。
小学生のお子さまに教えるときは、「なんでそう思ったのかな?」など、質問をしながら進めてあげるとよいでしょう。
3.自分だったらどうするかを書く
意見や感想は、「自分だったらどのように考えてどのように行動するか」という視点で書いてみると、とても書きやすくなります。
なぜなら、人のことより自分のことのほうが熱量を込めて書きやすいからです。
結論は、「登場人物と同じ行動・違う行動をするだろう」どちらでもOK!先述のとおり、なぜそう考えるのかの理由もセットで書きましょう。
理由と同様、お子さまに教えるときには「〇〇ちゃんならどうするかな?」などと質問をしてあげるのがおすすめです。
4.必ず読み返して修正する
読書感想文に限った話ではないですが、何かを提出するときは最後に必ず確認が必要です。
書いている途中では気づかなかったけれど、修正すべき点が必ず見つかるはず。たとえば下記のようなポイントを意識して修正しましょう。
小学生のお子さまと確認するときは、先述した原稿用紙の基本的な使い方などとあわせて、一緒にひとつずつ確認してあげましょう。
中学生や高校生など、自分一人で書いた場合には、家族や友人など自分以外の誰かに読んでもらうのも効果的。自分では気づかないような視点を与えてくれる場合がありますよ。
次の章からは、これまで説明した手順やコツを含めて、年次ごとに意識したいポイントを説明します。
【小学生】読書感想文の書き方のポイント
小学校低学年では、本を読むことや読書感想文を書くこと自体が重要視されます。
おおまかな構成に沿って、その本を読んで感じたことや考えたことを素直に言葉にできるとよいでしょう。
親御さんがお子さまに教えるときには、これまで紹介した手順に沿って「どう思う?」「なぜ?」と問いかけることで、サポートしてあげてください。
小学校高学年になったら、なぜそう考えたのかという理由を書いたうえで、重要な部分はもう少し広げて書くのがおすすめです。
そのときに「たとえば」や「もしも」という接続語を使うのもよいでしょう。
「たとえば」を使って、自分の体験や身近に起こった出来事など、具体例を挙げて具体化することで、説得力のある文章になります。
「もしも」を使って仮説を立てるときは、「もしも自分が主人公の立場だったら」「自分に身近に同じことが起こったら」などのように想像の世界をつくることでより感情を込めやすくなります。
【中学生】読書感想文の書き方のポイント
小学校高学年と同様、「なぜ」などの理由を具体的に書くことは重要です。
自分の意見や感想を分かりやすく表現したうえで、なぜそう考えるのかが読み手に伝わるよう意識してみてください。
またその際、具体例の追加とあわせて比喩や慣用句を用いることで、同じ内容でもレベルを上げることができます。
よりオリジナリティのある文章に仕上げたいときには、作者の気持ちにも目を向けてみましょう。
作者の思いに対する自分の意見も書きつつ、何か今後の自分の生活に活かせることはないか、ということを考えてまとめるのがおすすめです。
【高校生】読書感想文の書き方のポイント
高校生になったら、基準となる文字数も2,000字程度と増え、さらに高いレベルが求められるようになります。
小学生・中学生で挙げたポイントとあわせて、主題や論点を意識した論理的な説明を心がけましょう。
自分の考えや今後に活かしたいことなどを、自分の経験談などと関連付けてより具体的に述べるのがポイントです。
一通り書いた後は、筋の通った文章になっているか、伝えたいことが伝わりやすい文章になっているか、構成テンプレートなどを参考にして見直してみましょう。
またその際、最近のニュースや社会問題などと関連付けて説明すると、より説得力のある意見を述べることができるので、ぜひ取り入れてみてください。
まとめ
読書感想文に苦手意識を抱く人は多いですが、基本的な手順や構成、コツを知って取り組むことで、すらすらと書くことができるようになります。
本を読みながらメモを取ったら、その内容を構成テンプレートにあてはめて、それぞれの要素にあった内容を書き足していくだけです。
書き方が分かったら、周りと差をつけるポイントを意識して、読書感想文のコンクールなどに応募してみるのもおすすめです。
文章の質も大切ですが、まずは評価を恐れず、読書や作文を楽しみながら進めてみてくださいね!
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内田 悠斗(うちだ ゆうと)
オンライン個別指導塾「東大自習室」代表。学生時代は、塾に通わずに東京大学 理科一類に現役合格する。家庭教師としての経験を、勉強・受験情報ブログ「東大生の頭の中」で世の中に発信。その後、教育の地域間格差を無くすため「東大自習室」を立ち上げる。
Twitter:@toudaikateikyou
Instagram:@toudai_study
Youtubeチャンネル:『東大生の頭の中』
https://www.youtube.com/channel/UCCnr_Esp8RxQTiRYY8U7rQQ
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