世の中には、不登校やいじめ、障害など、さまざまな理由で学校にうまくなじめない子どもや、不安を抱えたまま成人し、生きづらさを感じている大人がいるのではないでしょうか。
「フリースクール英明塾」では、不登校などのお子さんのサポートや、大人の方に向けた“リカレント生涯教育“をおこなっています。
今回は、「フリースクール英明塾」代表の川合 雅久(かわい まさひさ)さんに、活動に対する思いを伺いました。
不登校のお子さんを持つ保護者の方や、「何かを学びたい」という気持ちを持つ方は、ぜひご一読ください。
子どもの持つ力を信じて、必要なときにサポートする
ー本日はよろしくお願いします。まず、「フリースクール英明塾」の設立の経緯について教えてください。
川合 雅久さん(以下、川合):1975年の「フリースクール英明塾」設立当初は、フリースクールではなく「英明塾」として、学習のサポートを中心におこなっていました。
その後、学校には行かないけれど塾には来てくれる子や、学校でのいじめに悩む子、障害のある子など、さまざまな子どもたちが増えたため、1991年に「フリースクール英明塾」となったのです。
「フリースクール英明塾」では、スクールに通う生徒への学習支援をおこなったり、自然体験活動などのイベントを実施しています。
ほかには、 不登校、登校拒否、いじめ、人間不信、人間関係が不得手、発達障がい(自閉症スペクトラム等)、情緒障害などの問題を抱えている方に向けた教育相談をおこなっていますね。
さらに、アウトリーチ(訪問支援相談)、カウンセリング、セラピー、ヒーリングのほか、通信制・単位制・定時制高校などの学習補助など、さまざまな支援に携わっているんですよ。
ー「フリースクール英明塾」の学習方針について教えてください。
川合:
「フリースクール英明塾」では、基本的に、子ども自身が自分の学習計画を立ててそれを達成できるように、長期的な展望に立った学習指導をおこなっています。
勉強は「させられるものではなく、自分からするもの」ですから、何をどのように学習していくかを、自ら考えられるようにサポートします。
また、子どもだけでなく、大人に向けての「リカレント生涯教育」もおこなっていますね。
たとえば、「字が読めない、書けない」ことを隠して生きている年配の方もいますが、そういった方に対して、読み書きを学べる学習の機会を用意しています。
「学びたい」という気持ちには、年齢や性別、職業などは一切関係ないため、「フリースクール英明塾」では、どのような方でも学習することが可能なのです。
「自然体験活動」を通して大きく変われる生徒も
ー国内外での「自然体験活動」もおこなっているとのことですが、活動内容についてお聞かせください。
川合:「フリースクール英明塾」には、障害をもった子どもや、いじめにあった子どもなど、さまざまな生徒が集まります。
そのような心に傷を抱えている生徒たちの傷を癒やすために始めたのが、「自然体験活動」ですね。
「自然体験活動」では、タイ王国やパプアニューギニアを訪れ、観光したり、現地の子どもたちとの異文化国際交流の機会を設けています。
メンタルトレーニングのひとつである“認知行動療法”のほか、癒しの効果を求めて、ドルフィンセラピーやホースセラピーなどの“アニマルセラピー”を取り入れた体験もおこなっているんですよ。
ー「自然体験活動」をすることで、子どもたちにどのような影響があるのでしょうか?
川合:
私の今までの体感としては、「自然体験活動」に参加した90%以上の子どもたちは、心が大きく成長しました。
「自然体験活動」では、1週間から10日ほど親元から離れて、海外での共同生活を体験してもらいます。
なかには、帰国後にご家族が驚いてしまうほど、大きな変化が現れた子どももいるんですよ。
また、家の中では普通に話せても、学校などでは言葉がつまってしまう“場面かん黙”の生徒がいたのですが、「自然体験活動」を経験することで、家庭の外でも流暢に話せるようになったこともありました。
本物の自然や生き物を間近に感じられる「自然体験活動」を通して、何かの活動にチャレンジしたいという気持ちが生まれ、自らわくわくした感情をつくり出せるようになり、最後は、自分から行動できるようになることが、自信につながると考えています。
それによって、これまでできなかったことでも、自然とできるようになるんですよ。
残念ながら現在は、“コロナ禍”の影響で海外での自然体験活動はおこなっていないのですが、近いうちに再開できたらうれしいです。
「メンタルカウンセリング」はどなたでも参加可能
ーこれから開催予定の相談会やセミナー、イベントなどについて教えてください。
川合: イベントとしては、通信制高校 サポート校などの合同相談会「学びリンク」のなかで、 不登校や学習面で不安のある人たちに向けて「メンタルカウンセリング」を定期的におこなっており、10月は10日・24日に開催予定です。
メンタルカウンセリングでは、「子どもは学校に行かなくてはいけない」「子どもに勉強をさせるのは、親の務め」という固まった考え方を柔軟に解きほぐし、子どもの生き方について相談に乗ることもあります。
保護者の方だけではなく、フリースクールを運営している先生など、年齢や職業に関係なくご相談が可能なので、ぜひお気軽にご来場ください。
生徒の心に残る活動を続けていきたい
ー今後の展望についてお聞かせください。
川合:「フリースクール英明塾」には、自ら進んで行動できるようになるために、飛び込んできてくれる人たちが集っています。
そのため、自分のやり方でやりたいことをやればよいですし、周りの人とは反対のことをしてもよいと思います。
多様な人がいて社会が成り立っているので、どんどん自分のやりたいことを実現してほしい。
そのためにも、今後もこれまで通り、生徒の心に残る活動を続けていきたいですね。
また、新しい知識を得たり、挑戦したりすることは非常に重要です。
これからも、世界情勢や歴史がどのようにつくられてきたかなどの、“好奇心を刺激する情報“を、生徒たちに向けてどんどん発信していこうと思います。
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
川合:「フリースクール英明塾」は現在、特別な場合を除いては、通塾生の募集は停止しています。
そのため、訪問支援や相談会、セミナーにて、不登校などで悩む方々のサポートができればと思っています。
公式ホームページにて、どなたでも参加が可能な相談会などの情報を掲載しているので、ぜひチェックしていただければ幸いです。
少しでも、不登校などで悩む人たちのお力になれればと思っています。
ー本日は興味深いお話をありがとうございました。
■取材協力:フリースクール英明塾