近年、SDGsに積極的に取り組む自治体や企業が増えていますが、「SDGsとはなにか」「どんな活動のことなのか」など、わからない方も多いのではないでしょうか。
2015年に開催された国連サミットで、世界中で注目されている貧困や環境問題などの社会課題を解決するために「2030年までに達成すべき17の目標」が定められました。
それが、「SDGs(Sustainable Development Goals)=持続可能な開発目標」です。
そんなSDGsを普及させるために、熊本県熊本市で活動をおこなっている団体がNPO法人「SDGs Association熊本」です。
今回は、NPO法人「SDGs Association熊本」の代表理事を務める神田 みゆき(かんだ みゆき)さんに、団体の活動内容や今後の展望について詳しくお話を伺いました。
SDGsについて興味や関心のある方は、ぜひご覧ください。
震災をきっかけに生まれたNPO法人「SDGs Association熊本」
―本日はよろしくお願いいたします。まず、NPO法人「SDGs Association熊本」とはどのような団体なのでしょうか?
神田 みゆきさん(以下、神田):私たちは、熊本市でSDGsを多くの方に知っていただくための活動や若者たちが活躍できる場所の提供など、SDGsをキーワードに人と人をつなぐ活動をしている団体です。
SDGs(持続可能な開発目標)とは、「Sustainable Development Goals」の略称で、さまざまな社会課題を解決するために世界中で取り組むべき活動として国連サミットで定められた“2030年までに達成すべき17の目標”のことなんです。
私たちは持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています。
出典:国際連合広報センター
―「SDGs Association熊本」の設立経緯について教えてください。
神田:設立のきっかけは、2016年に起きた熊本地震です。
震災が起きた当時、私は育児休暇中だったのですが、熊本地震が起こる直前に立ち上げた「なないろネットワーク熊本」でボランティアを募ったり、ボランティアのコーディネートをしたりしながら被災地の支援活動をおこなっていました。
そのような活動をおこなっていくうちに、さまざまな取り組みをおこなっている方々との繋がりができたんです。
たとえば、「健康に関する問題」への取り組みをしている人や「子ども食堂」を運営している人など、出会った人の活動内容は多岐にわたります。
そのときに、せっかく出会った人たちとの繋がりを無駄にしたくないと思いました。
そこで、さまざまな活動をしている人たち同士を繋ぐいいキーワードがないかと探していたときに、SDGsのことを知りました。
SDGsをキーワードにして、“人と人をつなぎたい”という思いで活動していると、さらに多くの人と繋がることができたんです。
そして、私の思いに賛同してくれた人たちと一緒に立ち上げたのがNPO法人「SDGs Association熊本」です。
講演やカードゲームを通してSDGsを普及
―活動では具体的にどのようなことをしているのでしょうか?
神田:私たちが学校に出向いてSDGsに関する講演をおこなったり、誰でも参加できる「カードゲームの体験会」や「SDGs達成のための学びの場づくり」などを実施したりしています。
ただ、 新型コロナウイルスの影響で、最近は実際に集まる活動がなかなかできていないのが現状です。
また、私は社会教育主事として公民館に勤務しているのですが、公民館でもSDGsを市民の方に知ってもらうための活動や、子どもたちが参加できるオンラインイベントの企画などをおこなっています。
―「カードゲームの体験会」とは、どのようなことを実施しているのでしょうか?
神田:SDGsのカードゲームは何種類かあります。「2030SDGs」「SDGs de 地方創生」「SDGsアウトサイドイン」などです。
今回は、「2030 SDGs」についてご紹介します。
「2030 SDGs」は、現在から2030年までのSDGsの道のりを体験できるゲームで、与えられたお金と時間を使ってプロジェクトを進行し、目標達成を目指すシミュレーションゲームです。
世界中で何十万人もの人が「2030 SDGs」を体験しており、カードゲームを楽しみながらSDGsを理解することができます。
SDGsを知らない人に、おすすめのカードゲームなんです。
コロナ禍なので大きなイベントは実施できないですが、依頼のあった学校などにお邪魔して「カードゲームの体験会」を実施する活動は、現在もおこなっています。
―「SDGs達成のための学びの場づくり」についても、詳しく教えてください。
神田:まだ準備段階ですが、オンラインと実際のボランティア活動を組み合わせて、未来を担う若者を育てる「未来型スクール」を展開したいと考えています。
「未来型スクール」では、社会課題を自ら解決できるような力をつけていくための講座や、SDGsとはなにかを伝えられる「学生ファシリテーター」や「アンバサダー」などを養成することができたらといいなと考えています。
まずSDGsの基本的なことは動画で勉強してもらう予定ですが、動画だけではわからないこともあるかもしれません。
そこで、実際にボランティア活動やワークショップに参加してもらい、動画講座とボランティアの両方に参加すれば、「学生ファシリテーター」に認定する仕組みです。
実際のボランティア活動では、ボランティアに参加する学生にボランティアパスポートを発行し、活動に応じてスタンプがもらえるスタンプラリーのようなシステムを考えています。
最終的に「SDGsの17の目標をコンプリートするとゴールにたどり着く」ことを目標にすれば、子どもたちも率先してボランティアに参加してくれるのではないでしょうか。
そして、「学生ファシリテーター」がSDGsとは何かを語る際に、自分自身の活動体験を交えて話ができるようになるといいですよね。
―「未来型スクール」に参加する子どもには、対象年齢などはあるのでしょうか?
神田:対象年齢は特に設けていません。私は小学生からでもいいと思っています。
ただ、自分の意思でボランティアに参加し、SDGsが何かを理解したうえで人に伝えることができる子どもが対象なので、自分の意志で「参加したい」と言葉にできる方に参加してほしいと思います。
熊本市は世界で1,000番目のフェアトレードシティ
―「SDGs Association熊本」が開催しているイベントについて教えてください。
神田:「SDGsシンポジウム」というイベントを、これまでに2回開催しました。
イベントでは、熊本でSDGs達成のために活動している17人の方を講師として招き、自身がおこなっている取り組みについてそれぞれ3分ずつ話をしていただきました。
「SDGsシンポジウム」の開催には2つの意図があり、1つめは熊本でSDGsための活動をしている人がいることを知ってもらうこと、2つめはイベントに集まった人同士の繋がりをつくることです。
イベントに参加した学生のなかには、講演を聞いて「あの人の活動に参加したい!」と言って、ボランティアに積極的に参加するようになった学生もいますね。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大にともなって、困っている子どもたちのために活動をされている「子ども食堂」へ、クラウドファンディングで資金調達をしてお届けしたり、人吉市の水害の際にはオンラインでできる支援を積極的におこなったりしました。
理事がそれぞれにやっている活動も様々な分野に及びます。理事の活動にもぜひご注目いただければと思います。
―今後予定しているイベントがあれば教えてください。
神田:実は、熊本市がアジア初、世界で1,000番目のフェアトレードシティに認定されて今年で10周年になります。
そこで、2021年9月11日に「SDGs×フェアトレード」というオンラインイベントを開催予定です。
「フェアトレードとはなにか」「SDGsとどのように繋がっているのか」などを学べる講座を企画しています。
「SDGs×フェアトレード」は、Zoomで開催予定のオンラインイベントなので、どなたでも参加可能です。
また、熊本市は2013年に国連の水管理部門で最優秀賞を受賞しており、来年4月には水サミットが開催される予定です。「SDGs×水」をテーマとしたイベントも、1月開催予定の「熊本エデュケーションウィーク」のなかで実施予定です。
教育のなかでSDGsが重要な位置付けになる
―今後の展望についてお聞かせください。
神田:自分の言葉でSDGsや世界の課題について語れる学生を育てていきたいと思っています。
そのために、「学生ファシリテーター」の養成講座が必要だと思いますので、現在企画して準備を進めている最中です。
―最後に、読者にメッセージがあればお願いします。
神田:文部科学省の学習指導要領には、SDGsや持続可能な社会の作り手を育てるというキーワードが出てきています。
それほどSDGsは教育のなかで重要なものと位置づけされているんです。
今後は、社会課題へ関心をもっている若者たちが社会から求められる傾向にあり、大学入試や就職試験ではボランティア実績や社会課題に対する考えを問われることがあるでしょう。
そのため、まずはSDGsが何かをしっかり理解しておくことが大切になると思います。
SDGsについて知りたいという方や、SDGsの知識を活かして行動したいと考えている方を、私たちは応援していきたいです。
子どもから大人まで、みんなで楽しく社会課題を解決していく仕組みを作りたいと思っているので、ぜひ興味があればオンラインイベントなどをのぞいてみてください。
―本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:NPO法人 SDGs Association熊本