中学2年の理科で習う「化学変化」の分野では、アルファベットで表す「元素記号」を使った「化学式」について学習します。
しかし、初めて見る記号の数々に「いったい何を表しているの?」と苦手意識を抱いている人も多いのではないでしょうか?
化学式(かがくしき)とは、化学物質の成り立ちを原子の記号と数字で表した式のことです。
分子からなる物質を表した化学式を「分子式」と呼びます。
この分子式と化学式は、同じ言い回しとて利用される場合もあるので覚えて置きましょう。
そこで今回は、「化学式」について基礎からじっくり解説します。
覚えにくい元素記号の語呂合わせも紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
- 化学式とは?組成式と構造式についても解説
- 化学式の種類①組成式
- 化学式の種類②構造式
- まず化学式を構成する「元素記号」を覚えよう!
- 元素記号20個の覚え方!語呂合わせが◎
- 高校受験に役立つ!覚えておきたい化学式
- 原子2つが集まって気体になる分子
- 2種類の原子からなる分子
- 水中で電離する(=酸・塩基)分子
- 化学式一覧
- 実際に化学式の問題を解いてみよう!
- 例題①鉄と硫黄が化合してできる物質を化学式で書きなさい。
- 例題②マグネシウムを加熱したときにできる白い物質は何ですか?化学式で書きなさい。
- 化学式と化学反応式の違い
- 化学反応式の作り方
- ①係数を気にせずに化学反応式を書いてみる
- ②左右の原子の数をかぞえる
- ③化合物の係数をいじる
- ④単体の係数をいじる
- 化学反応式の問題を解いてみよう!
- 問題①水素を燃焼させて水を生成するときの化学変化を化学反応式で表しなさい。
- 問題②水素と窒素を化合させてアンモニアを生成するときの化学反応式を書きなさい。
- 化学式のまとめ
化学式とは?組成式と構造式についても解説
先述したとおり、化学式(かがくしき)とは、化学物質の成り立ちを原子の記号と数字で表した式のことです。
「原子の記号」は「元素記号」とも呼ばれ、酸素や水素などをアルファベットで表します。
定義だけ聞くと難しいように感じますが、普段の生活の中で当たり前のように存在している水や空気、金属なども化学式で表すことができるのです。
そしてこの化学式は、大きく分けて「組成式」と「構造式」の2種類に分類されます。
ここでは「化学式」の種類を押さえておきましょう。
化学式の種類①組成式
「組成式」とは、ある物質に含まれる元素の種類と数の比を表す式のことをいいます。
「化学式」は元素の種類と数を表す式ですので、「比」に注目した「組成式」とはまったく異なります。
化学式の種類②構造式
「構造式」とは、化合物の原子構造(結合の順序・結合の仕方・立体的な情報)を表した式のことをいいます。
ちなみに「化合物」は2種類以上の元素が結びついた物質のことです。
つまり「構造式」は、化合物がどのように結合しているのかを表した式ということになります。
分子式
「分子式」とは、分子を化学式で表したものです。
ここで「分子」について少し学びましょう。
「分子」とは、原子が結合してできた物質の最小単位を表しています。
たとえば、空気の中には「酸素」という成分が含まれていますよね。
酸素原子は「O」で表しますが、実際には「O」1つだけでは成り立たず、酸素原子が2つ結合した「O₂」という物質を最小単位としています。
この「O₂」を酸素分子の分子式といいます。
電子式
「電子式」とは、元素記号の周りに最も外側の電子だけを表した式のことをいいます。
ただ、これだけでは何をいっているのか分かりにくいですよね。
まずは原子の構造について知っておきましょう。
原子の中心には「原子核」があり、
原子核の周りを「電子」が回っています。
原子核の中には、プラスの電気を帯びた「陽子」と電気を帯びていない「中性子」があります。
「電子式」では、このマイナスの電気を帯びた電子のうち、原子の一番外側を回っている電子の数を表します。
「電子式」については高校の化学で詳しく学習しますので、中学では電子式をイメージできれば大丈夫ですよ。
まず化学式を構成する「元素記号」を覚えよう!
化学式では、酸素や水素、鉄などの元素は、それぞれ「O」「H」「Fe」というようにアルファベットで表記されます。
このアルファベットで表したものを「元素記号」といい、それぞれに「原子番号」が割り当てられています。
原子を原子番号の順に並べ、性質の類似した元素が縦に並ぶように配列した表が下に示した「周期表」です。
実に100個以上ある元素。「こんなに覚えるの?」と不安になる方もいるかもしれませんが、すべて覚える必要はありません。
中学では重要な元素記号20個を暗記しておきましょう。
(※1)参照元:理化学研究所
元素記号20個の覚え方!語呂合わせが◎
覚えておきたい元素記号20個は以下のとおりです。
「こんなにたくさん丸暗記は無理!」という方におすすめなのが、語呂合わせを用いた暗記法です。
20個の元素記号を覚えるために、おすすめの語呂合わせがこちら!
高校受験に役立つ!覚えておきたい化学式
先ほども少し触れましたが、化学式は物質を元素の記号を数で表したものです。
元素記号と同じく種類が多いので、暗記が苦手という方は重要な化学式だけを効率よく覚えておきましょう。
ここでは、高校入試でも出題されやすい重要な化学式を性質別に紹介していきます。
原子2つが集まって気体になる分子
1種類の原子だけでできている物質を「単体」といいます。
単体の場合、原子の記号は「元素記号」をそのまま用います。
気体か金属かによって分子になるときに必要な原子の数が異なる点を注意しましょう。
気体は原子記号の右下に原子の個数「2」を書くことで分子を表します。
「金属」は原子1個で分子になるので、元素記号をそのまま書き、数字はつけません。
「C(炭素)」と「S(硫黄)」は金属ではありませんが、原子1個で分子となる例外として覚えておきましょう。
2種類の原子からなる分子
2種類以上の原子が組み合わさってできる物質を「化合物」といいます。
化合物には、気体と気体から成る物質と、金属と気体から成る物質があります。
まずは呼び方が特殊な化合物を見ていきましょう。
H・N・O・Clだけを組み合わせてできる物質は、使われている原子と化合物になったときの呼び方がまったく異なります。
なかでも重要な物質が「H₂O(水)」と「NH₃(アンモニア)」です。
少し覚えにくいですが、高校受験でも頻出なので暗記しておいてくださいね。
次に一般的な化合物を見ていきましょう。
ここでいう一般的とは、「NaCl(塩化ナトリウム)」のように化学式の元素記号を後ろから前に向かって読む呼び方の物質を意味しています。
多くは金属と気体から成る物質ですが、「CO₂(二酸化炭素)」のように気体と気体から成る化合物もあります。
水中で電離する(=酸・塩基)分子
「電離」とは、物質が水に溶け、「陽イオン」と「陰イオン」に分かれることをいいます。
ここで、水溶液の化学変化について少し学習しておきましょう。
原子はもともと電気を帯びていませんが、電子を失ったり受け取ったりすることで電気を帯びるようになります。
このとき、原子が電子を失って+(プラス)の電気を帯びた粒子を「陽イオン」、原子が電子を受け取って-(マイナス)の電気を帯びた粒子を「陰イオン」といいます。
陽イオンになるか陰イオンになるか(=電子をあげるのか貰うのか)は、原子の種類で決まっています。
イオンを記号で表すときは、原子記号の右上に+か-のどちらかと、移動した電子の数を書きます。
また、水溶液に電流が流れる物質を「電解質」といい、電解質が水に溶けると結びついていた陰イオンと陽イオンが離れます。
化学式一覧
代表的な化学式を一覧にまとめました。
すべて覚える必要はありませんので、化学式の問題を解くときに見直すなどして活用してくださいね。
化学式 | 物質名 |
---|---|
H₂ | 水素 |
O₂ | 酸素 |
N₂ | 窒素 |
Cl₂ | 塩素 |
I₂ | ヨウ素 |
H₂O | 水 |
H₂O₂ | 過酸化水素 |
H₂S | 硫化水素 |
HF | フッ化水素 |
HCl | 塩化水素 |
HBr | 臭化水素 |
HI | ヨウ化水素 |
CH₃COOH | 酢酸 |
H₂CO₃ | 炭酸 |
HNO₃ | 硝酸 |
H₂SO₄ | 硫酸 |
H₃PO₄ | リン酸 |
CO₂ | 二酸化炭素 |
CO | 一酸化炭素 |
NO₂ | 二酸化窒素 |
NO | 一酸化窒素 |
SO₂ | 二酸化硫黄 |
O₃ | オゾン |
NH₃ | アンモニア |
CH₃COONa | 酢酸ナトリウム |
NaCl | 塩化ナトリウム |
KCl | 塩化カリウム |
MgCl₂ | 塩化マグネシウム |
CaCl₂ | 塩化カルシウム |
BaCl₂ | 塩化バリウム |
AlCl₃ | 塩化アルミニウム |
NH₄Cl | 塩化アンモニウム |
AgCl | 塩化銀 |
ZnCl₂ | 塩化亜鉛 |
CuCl₂ | 塩化銅(Ⅱ) |
CuS | 硫化銅(Ⅱ) |
FeS | 硫化鉄(Ⅱ) |
Na₂S | 硫化ナトリウム |
ZnS | 硫化亜鉛 |
CaS | 硫化カルシウム |
CuSO₄ | 硫酸銅(Ⅱ) |
FeSO₄ | 硫酸鉄(Ⅱ) |
Na₂SO₄ | 硫酸ナトリウム |
K₂SO₄ | 硫酸カリウム |
CaSO₄ | 硫酸カルシウム |
Cu(NO₃)₂ | 硝酸銅(Ⅱ) |
AgNO₃ | 硝酸銀 |
NaNO₃ | 硝酸ナトリウム |
KNO₃ | 硝酸カリウム |
Ca(NO₃)₂ | 硝酸カルシウム |
Na₂CO₃ | 炭酸ナトリウム |
MgCO₃ | 炭酸マグネシウム |
CaCO₃ | 炭酸カルシウム |
BaCO₃ | 炭酸バリウム |
(NH₄)₂CO₃ | 炭酸アンモニウム |
NaOH | 水酸化ナトリウム |
KOH | 水酸化カリウム |
Ca(OH)₂ | 水酸化カルシウム |
Al(OH)₃ | 水酸化アルミニウム |
Ba(OH)₂ | 水酸化バリウム |
MgO | 酸化マグネシウム |
CaO | 酸化カルシウム |
Al₂O₃ | 酸化アルミニウム |
Fe₂O₃ | 酸化鉄 |
ZnO | 酸化亜鉛 |
CH₄ | メタン |
C₂H₆ | エタン |
C₃H₈ | プロパン |
C₂H₄ | エチレン |
C₃H₆ | プロピレン |
実際に化学式の問題を解いてみよう!
代表的な元素記号を暗記し、化学変化の意味が何となくわかってきたら、練習問題に挑戦してみましょう。
例題①鉄と硫黄が化合してできる物質を化学式で書きなさい。
よって答えは「FeS(硫化鉄)」となります。
中学の理科の授業で、硫黄と鉄粉を混ぜて試験管に入れ、加熱をすると硫化鉄が得られるという実験をおこなうことがあるので、身近に感じる方もいるのではないでしょうか。
実験をしていなくても、上記の解き方のポイントを参考に答えを導き出せるようにしましょう。
例題②マグネシウムを加熱したときにできる白い物質は何ですか?化学式で書きなさい。
よって答えは「MgO(酸化鉄)」となります。
定期テストや高校入試では、ただ単に化学式を書かせるのではなく、実験を交えた問題が出題されるケースが多いです。
実験の内容やそこから得られる物質を化学式で書けるようにしておきましょう。
化学式と化学反応式の違い
「化学式」は物質の成り立ちを原子の記号と数で表したものでしたね。
物質そのものの性質を表していた化学式に対し、「化学反応式」では他の物質との化学変化の様子を化学式で表します。
化学反応式の作り方
式は数学のように右辺と左辺があり、左辺に反応前の物質、右辺に反応後の物質を書くのがルールです。
ただし、右辺と左辺の間は「=」ではなく、右向きの矢印「→」となるので注意しましょう。
ここでは、化学反応式の作り方の手順を一つひとつ確認していきます。
①係数を気にせずに化学反応式を書いてみる
例題:銅(Cu)が酸素(O₂)と結合して酸化銅(CuO)になる化学変化を化学反応式で表してみましょう。
まずは係数を気にせず、化学変化で登場する物質をすべて右辺に、変化した後にできあがった物質を左辺に書きます。
②左右の原子の数をかぞえる
次に、変化する前と変化した後の原子の数をかぞえます。
CuとOの数を左右でそれぞれ比べると、Cuは左右で同じ個数ですが、Oは変化前が2個なのに変化後は1個しかないことがわかります。
③化合物の係数をいじる
Oの数のように変化前後で個数が違っているときは、化学式の係数をいじることで数を左右で合わせていきます。
ここでは、化合物は「CuO」ですね。
化学反応式を表すときは、元素記号の右下の数は変えてはいけないので覚えておきましょう。
④単体の係数をいじる
Oの数を左右ともに2個になるように化合物を2個にすると、今度はCuの数が左右で違ってしまいましたね。
最後に右辺のCuの数を調節して、左右で同じ数になるようにします。
これで左右ともCuとOの数が等しくなったので、化学反応式の完成です。
例題の答えは、以下になります。
2Cu+O₂→2CuO
化学反応式の問題を解いてみよう!
では、実際に化学変化を化学反応式で表す練習をしていきます。
問題①水素を燃焼させて水を生成するときの化学変化を化学反応式で表しなさい。
「水素を燃焼させる」というのが変化前にあたるので、変化前の物質はH₂(水素)とO₂(酸素)であることがわかります。
また、変化後に生成されるのは水なので、左辺はH₂Oになります。
右辺と左辺にくる物質がわかったら、次は数を調整していきましょう。
よって答えは、2H₂+O₂→2H₂Oとなります。
問題②水素と窒素を化合させてアンモニアを生成するときの化学反応式を書きなさい。
反応前の物質はH₂(水素)とN₂(窒素)、反応後の物質はNH₃(アンモニア)だということがわかります。
これを使って左辺と右辺を書き、数を調整していきましょう。
よって答えは、3H₂+N₂→2NH₃となります。
ちなみに、水素と窒素からアンモニアを生成する方法は「ハーバーボッシュ法」と呼ばれ、化学肥料の大量生産を可能にする革命的な発見となりました。
化学式のまとめ
基本となる元素記号の覚え方から、化学式・化学反応式の書き方まで、中学理科で習う内容をご紹介しました。
「やっぱり化学は苦手」と感じてしまった方は、一度にすべてを理解しようとせず、まずは元素記号を覚えるところからスタートしてみましょう。
元素記号さえ覚えておけば、化学式や化学反応式は繰り返し問題を解くことで扱い方に慣れてきます。
学習の途中でわからなくなったときは、この記事を最初から読み、少しずつ化学式をマスターしていきましょう。