毎年、大学の入試問題でも出題される「フィボナッチ数列」。
「聞いたことはあるけど、よくわからない」「フィボナッチ数列を使って、どうやって問題を解くの?」という人も多いのではないでしょうか。
実は、フィボナッチ数列は受験において絶対に知っておくべき事柄ではありません。しかし、知っているだけでフィボナッチ数列の問題がサクッと解けるので、覚えておいて損はありません。
そこで今回は、フィボナッチ数列について一般項の求め方や特徴をわかりやすく解説します。
この記事を読み終えるころには、フィボナッチ数列の問題が解けるようになるはずです。
フィボナッチ数列とは?図形を使ってわかりやすく解説
「フィボナッチ数列」とは、
イタリアの数学者であるフィボナッチ(1170 - 1259年)が名付けた数列で、「1、1、2、3、5、8、13、21、34、55、89、144、233…」のように、前の数字を足した数が続く法則のことです。
3項目の「2」は、1項目の「1」と2項目の「1」を合わせた数。同様に4項目の「3」は2項目の「1」と3項目の「2」を合算した数です。
このように、前の2項を足してできあがる数列のことをフィボナッチ数列といいます。
ちなみに「2、3、5、8、13、21...」と続く数は「フィボナッチ数」と呼ばれているので、覚えておきましょう。
まずは、フィボナッチ数列の漸化式(ぜんかしき)から見ていきましょう。
フィボナッチ数列の漸化式
フィボナッチ数列の漸化式は以下のとおりです。
nに数を順番に入れていくと、3、5、8、13、21、34、55...と続くことがわかります。
「次の項は前二項を足し合わせたもの」と覚えておくと、この漸化式を暗記しやすいはずです。
フィボナッチ数列を図形で解説
フィボナッチ数列は、図形の観点からも理解できます。下の図を見てください。
上の図のように、「正方形を重ねて長方形を作る」という作業を繰り返して大きな長方形を作ります。
最初は1辺の長さが1だった正方形が、2、3、5、8、13、21...と大きくなっているのがわかるでしょう。
この1つ1つの正方形の長さが、「フィボナッチ数」です。
このように、実際に図形を作っていくことでもフィボナッチ数列を求めることができます。
中心角が90度のおうぎ形でも同じようにフィボナッチ数列になるので、興味のある人はノートに書いて試してみてください。
フィボナッチ数列の特徴とは?自然界の事象や黄金比を用いて紹介
フィボナッチ数列は、数学の世界でも非常に有名な数字です。
数学者のなかでも興味深い数字とされています。そんなフィボナッチ数列の特徴について解説します。
隣同士の項は互いに素
1つ目の特徴は、フィボナッチ数列の隣同士の項は「互いに素である」ことです。
互いに素とは、「2つの数において正の公約数が1以外に存在しない」こと。忘れているかもしれませんが、数学Aで習った内容ですね。
たとえば、14や28のような数字であれば、公約数が1以外にも7や14があるので互いに素とはいえませんね。
逆に、8と13のような正の公約数を1しか持たない場合は、互いに素といえます。ではフィボナッチ数列の隣同士の項が互いに素か確認してみましょう。
5と8、13と21、21と34など、どの隣同士の項を見ても1以外に公約数がなく、互いに素であることがわかります。
フィボナッチ数列は、隣同士の項が互いに素である不思議な数列なのです。
自然界でも見られるフィボナッチ数列
数学とは関係なさそうな自然界にも存在しているのが、フィボナッチ数列の2つ目の特徴です。
実は、自然界にもフィボナッチ数列を用いた例がいくつもあります。
たとえば、ヒマワリの種の配列、またアンモナイトやオウムガイ、巻貝の殻の巻き方です。
ヒマワリの種は円状に配置されてるように見えますが、よく目を凝らして見るとうずまき(螺旋)状に配置されていることがわかります。
実は、中心から外側に向かって時計回りや半時計回りに種が並んでいるのです。そのうずまきの数が「21、34、55、89」と見事にフィボナッチ数だけで構成されています。
これは1つのヒマワリに当てはまっているわけではなく、大きさの異なるすべてのヒマワリに当てはまります。
では、オウムガイのような巻貝とフィボナッチ数列がどう関係しているか見てみましょう。
これはフィボナッチ数列を図にしたものを見ると、わかりやすいです。以下の図をチェックしてください。
これはフィボナッチ数列を図にしたものですが、巻貝の形に似ていると思いませんか?
すべてに当てはまるわけではありませんが、巻貝の形はフィボナッチ数列の図形に沿った形のものが多いという特徴があります。
植物の葉の付き方も同様に、フィボナッチ数列の規則にのっとった配置をしているといわれています。
数学と自然が密接につながっているなんて、不思議に思いますよね。
フィボナッチ数列と植物や生物が深く関係しているのは「生き残るため」といわれています。植物や生物は子孫を残して、繁栄させることが目的です。
生き残るために最善の選択をした結果、フィボナッチ数列と同じになったのではないかと推測されています。
フィボナッチ数列は黄金比と一致する
フィボナッチ数列の3つ目の特徴は、「黄金比と一致する」ことです。これがフィボナッチ数列が注目される最大の理由です。
「黄金比」とは1:1.618...の比率のこと。「人間が美しいと感じる神の比」ともいわれており、黄金比に当てはまるデザインや顔は美しく見えます。
世界的に有名な絵画「モナ・リザ」も黄金比に則って制作されました。
この絵を描いたレオナルド・ダ・ヴィンチは黄金比を知っていたため、顔の縦と横の長さを黄金比にしたといわれています。
フィボナッチ数列と黄金比の証明
では、黄金比がフィボナッチ数列とどう関係するか見てみましょう。
黄金比と一致することは、フィボナッチ数列の隣同士の項を割って比率を出すことで判明します。
1÷1=1
2÷1=2
3÷2=1.5
5÷3=1.6666...
8÷5=1.6
13÷8=1.625
21÷13=1.6153...
計算結果を見ると、黄金比である1.618...に近づいていっていることがわかります。
このように、神の比と呼ばれる黄金比とフィボナッチ数列が一致するのです。
計算を続けていくと黄金比にどんどん近づいていくので、気になる人はやってみてください。
フィボナッチ数列を使って問題を解いてみよう!
ここからは、フィボナッチ数列を用いて実際に問題を解いてみましょう。
階段の上り下り問題
フィボナッチ数列を知っていると、階段の上り下り問題が簡単に解けます。たとえば、以下のような問題です。
問題:1歩で1段上がる登り方と、1歩で2段上がる登り方があります。10段目までの登り方は何通りありますか?
後ほど解説しますが、ただ問題を眺めるのではなく実際に考えてみてくださいね。
【解説】階段の上り下り問題
通常なら、この問題を解くのには多くの時間がかかります。
1歩上がる登り方と2歩上がる登り方、それぞれを考えないといけないためです。
しかし、フィボナッチ数列を知っていると、「89通り」と答えがすぐ出せます。
これは、階段の登り方がフィボナッチ数と一致することを知っているからです。実際に一つずつ考えてみるとわかります。
1段目の登り方は1通りです。2段目は1段ずつと2段上がる登り方の2通り。3段目は1段ずつ・1段登って2段登る・2段登って1段登るの3通りです。
このように1つずつ考えると、以下のようになります。
- 1段目までの登り方:1通り
- 2段目までの登り方:2通り
- 3段目までの登り方:3通り
- 4段目までの登り方:5通り
- 5段目までの登り方:8通り
- 6段目までの登り方:13通り
- 7段目までの登り方:21通り
「1、2、3、5、8、13、21...」見たことのある数字の羅列ですよね?
そうです、フィボナッチ数列と同じ数になるのです。このように階段の登り方は、フィボナッチ数とピッタリあいます。
つまり、わざわざすべてのパターンを考えなくても、フィボナッチ数列を覚えていれば答えがすぐ出せるのです。
フィボナッチ数列の一般項の求め方
次に、フィボナッチ数列の一般項の求め方を解説します。
フィボナッチ数列の一般項を丸暗記するのではなく、どうやって導くかを知っておきましょう。
フィボナッチ数列の一般項は、漸化式である
を解くことで出せます。以下の流れで解くので、参考にしてください。
- 特性方程式を解く
- 与えられた式を等比数列の形にする
- 式を整理して一般項を求める
【解説】フィボナッチ数列の一般項の求め方
フィボナッチ数列の漸化式は、
これは項数が3つある三項間漸化式なので、漸化式を簡単に解くために必要な値を求める方程式「特性方程式」で解くのが一般的です。
特性方程式の解はα、βなので、以下のような表し方ができます。
初項と公比がわかったので、
これがフィボナッチ数列の一般項です。
特性方程式を解いて、等比数列の形にする。そして式を整理することで一般項を導き出すことができます。
まとめ
フィボナッチ数列は「前2つの項を足してできる数の並び」です。これだけでも覚えておけば、階段問題などフィボナッチ数列に関する問題は簡単に解けるようになるでしょう。
フィボナッチ数列は自然界とも関わりがあり、黄金比とも一致する魅力がある数列です。
フィボナッチ数列についてわからないことがあれば、この記事を見返してみてください。