子どもたちに居場所を提供するNPO法人「フリースクール風の里」を取材!集団生活のなかで学べることとは

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世の中には、なんらかの理由で学校に通えなかったり、社会活動に参加できない子どもがたくさんいます。  

悩みを持つ子どもの気持ちを理解し、寄り添うことは、ご家庭でもなかなか難しいのではないでしょうか。  

そんな子どもたちに居場所を提供するのが、福岡県行橋市内にあるNPO法人「フリースクール風の里」です。  

風の里は、学年を問わない集団生活のなかで、さまざまな体験学習を通して感じたことなどを共有する学びの場。

今回は、NPO法人「フリースクール風の里」主宰の工藤 幸安さんに、具体的な活動内容や今後の展望について詳しくお話を伺いました。

お子さんの不登校に悩む保護者の方や学校の先生は、ぜひご覧ください!

  1. 学校の代わりとなる居場所づくりを目指して設立
  2. 学生の学習指導から社会人の就労支援まで手広くサポート
  3. 子どもたちの夢や目標に応じて適宜アドバイス
  4. 高齢者施設に大人気の「音楽訪問」
  5. いままでやってきたことを実践し続けていく

学校の代わりとなる居場所づくりを目指して設立

学習風景

―本日はよろしくお願いします。まず、「フリースクール風の里」はどのような活動をしている団体なのでしょうか?
 

工藤 幸安さん(以下、工藤):「フリースクール風の里」は、不登校やいじめなど、何らかの理由で学校に通うことが困難な子どもたちや、社会活動に参加したくてもできない18歳以上の方に向けて、一人ひとりの性格や学力に応じた学習と進路指導、体験活動などをおこなっているNPO法人です。

―「フリースクール風の里」設立に至るまでの経緯をお聞かせください。

工藤:私は過去に学習塾を経営していたのですが、塾に通っていた女子生徒のひとりが、学校でのいじめがきっかけで、自ら命を絶つ行為をしたんです。

警察から差し出された遺書を見たときに、「こんなひどい場所(学校)に無理やり行く必要はない」と憤り、「学校の代わりとなる子どもたちの居場所をつくろう!」と決意したのが、設立のきっかけです。  

ただ、風の里を開設してから現在に至るまで、迷走してしまった時期もありました。

子どもたちには、「よい学校に進学してほしい」と思って勉強を頑張らせてしまうなど、一時期は塾のような雰囲気になりかけたことがあったのです。

しかし、のちに「それは違うな」と気づきました。  

こちらで生徒の目標を設定するのではなく、生徒たちが自分で目標を見つけて、私たちスタッフはあくまでそのサポートをすべきだと考えるようになり、現在はそのことを意識して活動しています。  

学生の学習指導から社会人の就労支援まで手広くサポート

盲導犬

―活動内容について詳しく教えてください。

工藤:月曜日から金曜日までの午前中は、それぞれの学年に合わせた学習指導をおこなっています。  

午後からは、体験活動を実施します。  

たとえば「音楽訪問」では、みんなで歌や楽器を練習して、月に3回程度、高齢者施設を訪れて発表しているんですよ。

また、毎年月に3~4回、市内の小学4年生を対象におこなう「福祉事業」では、車いすの方の介助や盲導犬の誘導方法など、スクールの生徒たちが主導となって小学生に教えています。  

ただ、いまはコロナの影響で高齢者施設や学校への訪問ができないので、時間に余裕がある分、練習時間にあてています。

―学習面のサポートについて、学年別に教えてください。

工藤:先ほどもお伝えしたように、 小・中・高校生は、午前中は学習指導です。

風の里は、子どもたちが在籍する小・中学校と連携しており、スクールへの登校が、在籍学校での出席になります

在籍学校でテストがある時期は、スクールでテストを受けることができます。生徒が在籍している学校が、中間・期末テストを届けてくれるんですね。  

高校生には、高校卒業資格のサポートをおこないます。風の里は、高校卒業資格取得プログラムの提供をおこなう、アメリカンハイスクールアカデミー(AHA)の福岡サポート校に認定されているんですよ。

AHAとは、高等学校中退者、特別支援、社会人向けの教育サービスを提供する、アメリカ合衆国フロリダ州教育団体において許可された私立学校です。  

また、風の里とタイアップしている単位制高校に通う生徒もいます。
  

―スクールに通うことで、在籍学校に出席した扱いになるのですね。18歳以上の方にはどのようなサポートをおこなっているのでしょうか?

工藤:18歳以上の方に対しては、会社で働くことが困難な方を対象とした、“就労継続支援A型事業”をおこなっています。

就労継続支援とは、障害や難病のある方が、雇用契約を結んだ上で、一定の支援がある職場で働くことができる福祉サービスです。

就労継続支援には、A型事業とB型事業があるのですが、一般的な就労とあまり変わらないA型事業は、最低賃金以上のお給料をもらうことができるんですよ。

A型事業として2017年に始めた「風和里(ふわり)くらぶ」では、水産農業体験を行っています。

ビニールハウスでの栽培作業

野菜や果物をビニールハウスで栽培するなどして、働くことを学んでもらいます。
  

―「風和里くらぶ」を始めたきっかけを教えてください。

工藤:風の里を卒業した生徒の進路で一番多いのは、専門学校への進学です。4年制の大学に進学する生徒もいます。  

ただ、社会に出てもなかなかなじめなくて、またスクールに戻ってくる生徒も多いんですよ。

そこで、生徒の卒業でサポートを完結するのではなく、就職支援まで私たちが支援すべきだと強く実感して、「風和里くらぶ」を設立しました。  

子どもたちの夢や目標に応じて適宜アドバイス

体育館でクイズ

 ―生徒を指導する際にはどのような工夫をしていますか?

工藤:生徒が学習に飽きてしまわないよう、“独自の授業”も実施しています。たとえば、中・高校生に対しては、週に2回、私がいろいろなクイズを出す時間を設けています。  

お昼近くからスタートして、一定の問題数を正解できた人から昼食を取ることができるんですよ。  

クイズの具体例としては、「世界で2番めに大きな湖は何か?」「日本で2番めに長い川は?」といったものが挙げられます。  

「1番め」を聞いてしまうと、ちょうど授業で習っている中学生は答えがわかってしまうので、あえて2番めを答えてもらうんですね。

それと、指導の工夫と言ってよいかはわかりませんが、前からスクールに住み着いている猫が1匹いるのですが、“にゃんこ先生”と名付けまして、いまではスタッフの一員になっています。  

生徒たちも、毎日エサをあげてかわいがってくれて、猫がいるからスクールに来るという子もいるんですよ。  

生徒たちにとっては癒しになりますし、動物のお世話をすることで、よい影響を受けられるのではないでしょうか。

―ほかに指導で意識していることはありますか?

工藤:スクールに来たばかりの生徒たちは、ほとんどの子が夢や目標を持っていません。
  
中学生くらいになってから、「こういう仕事がしたい」「こういう人間になりたい」などの言葉が出てくるんですね。  

生徒たちが目標を持ったあとは、その達成に向かって勉強できるよう、私たちスタッフは、「この目標だったら専門学校に行ったほうがいいよ」「この職業に就きたいなら大学で学んだほうがいいよ」など、適宜アドバイスできるようなサポート体制を取っています。  

目標を持った生徒は、勉強にも非常に意欲的で、真面目に取り組むので、進学先の先生方からも評判がいいんですよ。  

卒業した生徒たちの行動で「風の里」の名前が広まって、職業訓練校の事務長さんや、専門学校の学長さんがスクールを訪問してくださることもあります。

高齢者施設に大人気の「音楽訪問」

音楽訪問

―「フリースクール風の里」では、どのようなイベントがあるのか教えてください。

工藤:風の里は、「音楽訪問」が一番有名です。

これまでも、多くの高齢者施設や近くのお祭りなどで、音楽演奏を披露しています。  

テレビで取り上げられたこともあって、それを見て影響された子がスクールに来てくれることもあるんですよ。  

各地の高齢者施設からも、「ぜひ来てほしい」という要望がとても多くなっています。  

いまはコロナがあるのでお断りさせていただいているのですが、そういった問い合わせは毎日のように来ます。  

コロナが落ち着いたら、音楽訪問を再開する予定です。  

それ以外にも、普段はキャンプに行ったり、さまざまな野外活動をしているのですが、いまはなかなか実施できないので、ゲーム大会を開催するなど、室内での活動を積極的に行っています。    

いままでやってきたことを実践し続けていく

畳の上で授業

―今後はどのような活動をしていきたいと思いますか?

工藤:いま考えていることとしては、たとえばみんなで島に行って、生徒たちにいろいろな体験をしてもらいたいですね。  

私には、久留米市でフリースクールを運営する知り合いがいるのですが、そのスクールでは、大型車を借りて北海道を1周しながら、生徒にいろいろな体験をさせているらしいのです。  

風の里がある福岡県には、無人島に近いような島が結構あるんですよ。  

ですので、生徒たちには、島の方々と歌を歌ったり、一緒に過ごしたりしてコミュニケーションの仕方を学んでもらうなど、参加した全員が楽しめるような体験や活動をしていきたいです。  

また、音楽活動や福祉活動にも力を入れていきたいと思います。  

―ありがとうございます。最後に読者の方に向けてメッセージをお願いします。

工藤:スクールにやってくる子は、学校でいじめにあったり、社会に適応できないなど、何かしらの理由で自信をなくしてしまった子がほとんどです。

なかには学習障害の子もいます。  

そのような子たちが、目的を持って生きていけるように指導するのが、私たちの使命です。

ただ、押し付けるのではなく、生徒一人ひとりの目標に沿ったサポートを続けていくつもりです。  

スクールの最終的な着地点としては、生徒をまた学校に通えるようにしてあげることですが、どうしても戻ることができない子は、ずっとスクールにいてもらっています。  

これからも、子どもたちの居場所となれるよう、いままでやってきたことを実践し続けていきたいです。  

「学校にも社会にも居場所がない」と悩む方は、ひとりで抱え込まず、ぜひ一度遊びに来てください。  

―本日は貴重なお話をありがとうございました!

■取材協力:NPO法人 フリースクール風の里

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