遊びを通じて、「子どもに何か学びにつながる体験をしてもらいたい」と考える保護者の方は多いのではないでしょうか。
そんな方には、学びにつながり、子どもの遊び場としても最適なプラネタリウムがおすすめです。
プラネタリウムは、星空を眺めて楽しむだけでなく、天文や宇宙を学んだり、普段できない体験ができたり、子どもたちにとって本物に触れる貴重な機会となるでしょう。
今回は、福岡県宗像市で「宗像ユリックスプラネタリウム」の運営をおこなう、特定非営利活動法人「エム・ワイ・ピー」学芸員・事務局長の角田 佳昭さんにインタビューしました。
子どもに学びにつながる体験をさせたい方、福岡にお住まいの方は、ぜひご一読ください。
宗像ユリックスプラネタリウムを軸に活動する「エム・ワイ・ピー」とは
ー本日はよろしくお願いします。まず、特定非営利活動法人「エム・ワイ・ピー」を設立された経緯を教えてください。
角田 佳昭さん(以下、角田):特定非営利活動法人「エム・ワイ・ピー」が設立されたきっかけは、今から30年ほど前にさかのぼります。
当時、宗像市の総合施設内にプラネタリウムがあり、公営で実施していたのですが、そのプラネタリウムは約20年前に民間委託することになったんですね。
しかし、民間運営だとあまり地域の特色を出せなかった。
そして、「市民の力も借りながら何かできないか?」と考えた結果、当法人が設立されたんです。
ー具体的にどのような活動をされているのですか?
角田:大きな活動としては、「プラネタリウムの番組制作」「プラネタリウムの運営」「天文普及活動」の3つです。
当法人は、福岡県宗像市にある「宗像ユリックスプラネタリウム」に特化した活動をおこなっています。
法人名の「エム・ワイ・ピー」も、宗像ユリックスプラネタリウム(Munakata YURIX Planetarium)の頭文字から名付けました。
プラネタリウムといえば、約1時間のコースのうち、前半20分くらいは解説員の星座の話、後半に映像番組という流れが定番ですよね。
以前の宗像ユリックスプラネタリウムでも、専門業者が制作した映像番組を流していたのですが、当時はどのプラネタリウムでも似たような番組が流されていました。
そんななか、「せっかくなら地域の特色や、宗像ユリックスならではの内容を取り入れた番組を流したい」という想いから、番組制作をおこなうようになったんです。
当法人の活動は、この番組制作が活動の大部分を占めていて、現在は「子ども向けプログラム」や「大人向けプログラム」、そして音楽と映像を楽しんでいただく「リラクセーションプログラム」といった3種類のプログラムをつくっています。
ーそれぞれのプログラムの内容について詳しく教えてください。
角田:大人向けのプログラムは、春・夏・秋・冬と季節ごとにテーマを変えて4種類を流しています。
一方、現在の子ども向けのプログラムは、「ほしぞらクレヨン」という番組です。
こちらは、未就学児から小学4年生以下を対象としています。
番組内容は、夜空にクレヨンくんが出てきて、星を結んでお絵描きをしていくストーリー。私たちがポインターを実際に操作し、まるでクレヨンを使っているかのように、いろいろなものを夜空に描いていくんです。
もともと星座は、昔の人が想像をふくらませ、星を結んでつくったもの。それを追体験してもらいたいと考えました。
また、私たちがずっと喋っているだけでは子どもたちが飽きてしまうので、番組の途中に5分から10分のショートストーリーを流します。
その物語も、私たちが脚本を書いて、地域の方や、プロにイラストをお願いして制作しているんですよ。
このショートストーリーも、年に4回から5回、新しい作品を制作しています。
リラクセーションプログラムは、星空の下でゆっくりと美しい音楽を楽しめる心安らぐ内容です。こちらは、年に1回だけ新しいプログラムに更新しています。
このような感じで、だいたい年間で平均8回から9回ほど、一般のお客様向けのプログラムを更新している状況です。
ーほかに一般のお客様向け以外のプログラムもあるのでしょうか?
角田:はい。一般のお客様向け以外には、小学校の団体向けの学習プログラムを用意しています。
これは、小学校の学習指導要領の理科の分野に沿った内容です。
例えば、小学3年生で学習する「太陽の動き」や、小学4年生で学習する「星と月の動き」、小学6年生は「月の満ち欠け」などですね。
ほかには、中学3年生で習う「天体」に関わるプログラムもあります。
プラネタリウムの番組制作は、純粋なプログラム制作だけでなく、学習指導要領の変更や、季節によって移動する月の位置にあわせて、細かい修正も必要なんです。
そのため、活動のボリュームとしては、一番大きな部分を占めていますね。
ープラネタリウムの運営や、天文普及活動についても教えてください。
角田:活動の2つ目にあたる「プラネタリウムの運営」とは、お客様に向けておこなう投影業務のことです。
3つ目の「天文普及活動」は、ほかのプラネタリウムの取り組みとは少し違うのですが、望遠鏡を使って実際の空を観察する、観望会を主催しています。
私たちは「ほしぞらウォッチング」と呼んでいて、年に5回から6回、気候の暖かい4月から10月にかけてやっていますね。
あとは、小学生向けの講座もおこなっていて、小学4年生から6年生までを対象に、月1回集まって、さまざまな工作や観察、プラネタリウムの観覧をしています。
ボランティアの協力で地域に根ざした活動を
ー活動にあたり、地域の方々に協力していただいているとお聞きしました。
角田:はい。地域の方々による「ほしぞらスタッフ」というボランティア組織の力を借りていますね。
現在40名ほどの登録者がいて、プラネタリウム運営のお手伝いや、天文普及活動において、大きく活躍していただいています。
例えば、ほしぞらウォッチングでは、最初にプラネタリウムで当日の星空を解説するのですが、その部分を担当するのはほしぞらスタッフです。
実際に外に出て望遠鏡を見てもらう際の、望遠鏡の準備や操作も、ほしぞらスタッフにお願いしています。
ほしぞらウォッチングは、プラネタリウム観覧も含めて無料で開催しているので、ボランティアの活躍の場が多くあるんです。
俳句大会や、仮装イベントといった企画のアイデア出しも、ほしぞらスタッフに参加していただいています。
ーボランティアの方々の協力があってこそ、地域に根ざした活動ができるのですね。
角田:そうですね。ただ最近は、ボランティア組織内に市内の参加者が少なくなってきていて、3分の2は県内のほかの地域や、遠方の方なんです。
地域に根ざした活動を目指しているものの、地域の方の参加が少ない現状がありますね。
しかしながら、小学生向けの講座では、地元の小学生が中心となって参加してくれています。
番組制作においても、地域性の高いプログラムをつくり続ける難しさを感じたり、地域に根ざした活動をどうやって継続していくかを考えたり、今後の課題は大きいですね。
人気イベントは月1回開催の「ほしぞらウォッチング」
ー今後予定しているイベントや、活動があれば教えてください。
角田:ほしぞらウォッチングは、月1回のペースで開催しています。
直近は、9月18日(土)に実施予定です。
毎回100人程度の来場者が集まる人気のイベントで、地域の方の参加者が多いですね。
お近くにお住まいの方は、ぜひご来場ください!
ー来場者にプラネタリウムを楽しんでもらうため、工夫していることはありますか?
角田:子ども向けのプログラムは、月に何度も足を運んでくれる子どもたちがいるので、クイズの内容や、お絵描きする部分を変えるなど、飽きがこないように工夫をしています。
生のライブ解説だからこそ、毎回お客様の反応を見ながら進行できるのがポイントではないでしょうか。
そういった工夫がお客様に喜ばれて、リピーターが増えていると感じますね。
また、大人向けのプログラムは、解説員が5人いるので、スタッフによって話す内容が微妙に違うんです。
それぞれ重きをおくポイントや、星座を解説する順番に個性があるので、何度来ても楽しんでいただけますよ。
“本物の天文や宇宙に触れる”きっかけづくりを子どもたちに
ー今後の展望についてお聞かせください。
角田:今は、本や雑誌、インターネットなど、天文や宇宙について知ったり、触れたりする機会が多くありますが、やはり「本物に触れる機会を大事にしてほしい」と思っています。
そのきっかけとして、子どもたちには、プラネタリウムや、ほしぞらウォッチングを体験してもらいたいです。
今後も、プラネタリウムのプログラムや、ほしぞらウォッチングの企画、小学生向けの講座、ボランティアとの協力など、“本物に触れるきっかけ”につながる活動をしていきたいですね。
ー最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いいたします。
角田:宗像ユリックスプラネタリウムだけでなく、プラネタリウムや科学館、天文台といった施設は全国各地にあります。
そして、そういった施設には、本やインターネットでは知ることのできない、普段できないような体験があふれています。
プラネタリウムなら天文や宇宙のこと、科学館ならものごとの仕組みなどを学べるので、多くの方に足を運んでもらいたいですね。
宗像ユリックスプラネタリウムにも、ぜひ一度お越しいただけたらと思います。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:特定非営利活動法人エム・ワイ・ピー