身近な自然環境の減少やオンラインでのコミュニケーションが増えて、子どもが自然や集団生活に触れる機会が減ってきていると感じている方もいるのではないでしょうか。
「滋賀県希望が丘⽂化公園」は、滋賀県の貴重な⾃然を楽しみながら体験して学べる場所として、“三上・田上・信楽県立自然公園”の指定地域。
子どもたちが自然環境に触れるための場所の提供や優れた⾃然環境の保護、⻘少年の学習活動など、地域に貢献する活動をおこなっています。
今回は、「滋賀県希望が丘文化公園 野外活動センター」の豊田 博(とよだ ひろし)さんに、施設概要や活動内容などについてお話を伺いました。
広大な敷地と豊かな自然が魅力の複合施設
ー本日はよろしくお願いします。まず「滋賀県希望が丘文化公園」はどのような公園なのか教えてください。
豊田 博さん(以下、豊田):「滋賀県希望が丘文化公園」は、滋賀県野洲市・湖南市・竜王町にまたがる、東西約4km、南北約1kmの広さを誇る公園です。
公園内は大きく3つのゾーンに分かれています。
1つ目は、広大な芝生ランドをはじめ、陸上競技場やテニスコートなどの各種スポーツ施設が充実している「スポーツゾーン」、2つ目は、“⻘年の城”という青少年宿泊研修施設のほか、クラフト体験など各種体験プログラムをおこなう「文化ゾーン」、3つ目は“野外活動センター”を拠点として、キャンプ場やハイキングコースの利⽤ができる「野外活動ゾーン」です。
当園は、「人と人、人と自然の関わりを深め、心の豊かさを育む公園」を基本理念としており、
以上の3つを実現するための複合施設となっています。
キャンプやイベントが楽しめる「野外活動センター」
ー「野外活動センター」の設備や活動などについて、詳しく教えていただけますでしょうか?
豊田:「野外活動センター」は、第1キャンプ場から第6キャンプ場まである、大人数でも利用可能な広々とした「キャンプ場」がメインです。
雨天時でも活動できる屋根付きの広場や炊事場、食卓スペースも完備しています。
そのほかにも、子どもたちに人気の「キャンプファイヤー場」や、ものづくり体験ができる「クラフト室」も施設内にはありますね。
活動内容としては、「⾃然を体験し楽しみながら学ぶ場の提供」、「⾃然を活かすプログラムへの重点化」や「⼤学や野外活動
団体等との連携強化やプログラム開発」、「希望が丘キャンプリーダーの指導・育成」などをおこなっています。
広大な自然を活かした豊富な自然体験と環境学習
ーキャンプ場ではどのようなイベントをおこなっているのでしょうか?
豊田:小学生低学年を対象とした「希望が丘ちびっこキャンプ」や家族対象の「秋、冬、春のプチキャンプ」などを実施しています。
「希望が丘ちびっこキャンプ」では、初めてキャンプをする小学校低学年(1年生~3年生)の児童を対象に、野外活動や共同生活を通して自主性や協調性を身につけることができます。
「秋、冬、春のプチキャンプ」では、季節ごとに変化する公園内の自然散策や、アウトドアクッキングなどを家族で楽しむことが可能です。
ーそのほかにも、施設内でおこなっている野外活動や自然体験などはあるのでしょうか?
豊田:野外活動では、2種類の自然学習事業をそれぞれ年4回実施しています。
小学生以上を対象とした「希望が丘 自然観察会」では、専門の講師を招き、「春の鳥たち」「梅雨時のキノコたち」「秋の⼭野草と樹⽊たち」「早春の⽔辺の⽣物たち」などの4つのテーマに分けて観察会を開催しています。
テーマは毎年変更しており、次回の観察会は10月16日(土)を予定していますね。
3歳から小学校3年生までを対象とした、「ちびっこファミリー 自然とあそぼう!」では、公園職員が講師を務め、“希望が丘 自然観察会”と同様に4つのテーマに分けて開催しており、次回の開催は9月20日(月)を予定しています。
また、自然体験では、「火起こし体験」をおこなっています。
火起こし体験は、木材とひもを組み合わせる「まいぎり式火起こし器」を使用しており、火が起こる仕組みを通して、火の大切さや生活の知恵を学ぶことができます。
そのほかにも、薪割り体験、ナイトハイク、星空観察、テント設営、ネイチャークラフトなど、さまざまな体験プログラムを用意しています。
ー体験中の子どもたちはどのような様子ですか?
豊田:講師の話をしっかりと聞き、観察や採取などの体験では、目が輝いています。
好きなことに対する興味や好奇心などの感覚は、教えられたものではなく、⼈が本来持っている「⽣きていくための本能」なのでしょうね。
自然体験によって「生きる力」を身につけてほしい
ー活動を通して、子どもたちにどのようなことを学んでほしいですか?
豊田:自然体験や野外活動は、その場所に応じたフィールドワークによってさまざまなことを学ぶことができます。
活動を通して、周りをよく見て、話をよく聞き、そして五感で感じて考えることができる「生きる力」を身につけてほしいです。
また、キャンプ活動では“集団・グループ”での行動が基本なので、周りの仲間と相談・議論し、そして協力しながら活動することの大切さや楽しさを学んでほしいですね。
参加することによって、コミュニケーション能力が高まり、周りを見る力も養っていけると思います。
ー今後の展望や活動予定などはありますでしょうか?
豊田:「滋賀県希望が丘文化公園」は、今年で開園50周年という記念すべき節目を迎えることができました。
地域の都市化や社会生活の変化により、自然との触れ合いや集団活動の機会が減少していくなかで、貴重な自然を保護し、多くの人が自然の大切や共生について学べる場として、今後も活動していきたいですね。
また、滋賀県では琵琶湖版の「SDGs」(持続可能な開発目標)として、「MLGs」(Mother Lake Goals)を提唱しています。
「MLGs」では、2030年の自然環境と経済・社会活動をつなぐ健全な循環の構築に向けて13の目標を設定しており、「滋賀県希望が丘文化公園」でも実現に向けて取り組んでいます。
ー最後に、読者へ向けてメッセージをお願いします。
豊田:いまは、新型コロナウイルスの影響で利用者が少なくなっています。
「滋賀県希望が丘文化公園 野外活動センター」は“次代を担う青少年の健全な育成を図る”というコンセプトに基づき、大規模な集団宿泊体験が可能なキャンプ場などを運営しています。
新型コロナウイルスが収束した際には、集団活動を通じて子どもたちを育成するという、重要な役割を今後も果たしていきますので、ぜひご利用ください。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:滋賀県希望が丘文化公園