日々勉強と向き合う学生のなかには、学業成就のお祈りをしに神社へお参りをしたい、パワースポットを巡って運気を上げたい、という方もいることでしょう。
茨城県東茨城郡大洗町にある「大洗磯前神社」をご存じですか?
海の岩礁に神々しい“神磯の鳥居”(かみいそのとりい)があり、有数の絶景スポットとして多くの参拝客が訪れています。
今回は、そんな大洗磯前神社の禰宜である飯塚 礼寿さんにお話を伺いました。
病気平癒から学業成就まで、ご利益をいただきたいという方はぜひご覧ください。
大己貴命の神様が祀られた長い歴史を持つ神社
ー本日はよろしくお願いします。まず、大洗磯前神社はどのような神社なのでしょうか。
飯塚 礼寿さん(以下、飯塚):大己貴命(おおなむちのみこと)、またの名を大国主命(おおくにぬしのみこと)の神様をお祀りしている神社です。
海岸が目前にある丘の上に建っていて眺めが大変よいということで、たくさんの方にお参りいただいています。
ー大洗磯前神社の歴史についてもお聞かせください。
飯塚:斉衡3年(856年)の頃、現在海辺に建っている鳥居の場所に大己貴命の神様がいらっしゃいました。
「日本の国をつくり終え東の海へ去ったが、人々を救うために再びここへ帰ってきた」と仰せられたそうです。
そのことが始まりで大洗磯前神社が建てられました。
今でいう神社名鑑のような「延喜式」という本がありまして、そちらにも載っている古い歴史を持つ神社です。
戦争などで建物が焼けてしまったこともありましたが、「水戸黄門」で有名な徳川光圀公に社殿などをお褒めいただき、現在の形になりました。
その後は、たくさんの信仰をいただきながら、こちらに長く鎮座しています。
うさぎモチーフが随所に!「因幡の白兎」の物語が由来
ーでは、大洗磯前神社ご利益に関して詳しくお聞かせください。
飯塚:大己貴命の神様は昔から医薬の神様として信仰があるので、病気平癒などでお越しになられる方がとても多いです。
大己貴命の神様にはさまざまな神話がありますが、それだけ力も多様であるということなんですね。
小さな子どもをお守りする神様であったりもしますし、そのほかいろいろなことにご利益があります。
ー絵馬や開運グッズなどを拝見すると「うさぎ」をモチーフにしているものが多いようですが、それはなぜでしょうか。
飯塚:古事記に記される日本神話のなかに「因幡の白兎」という物語があるのをご存じでしょうか。
隠岐の島に住む1匹のうさぎは、因幡の国までどうにか泳がずに渡れる方法を考えていました。
そこでワニ(サメ)に出会うと、うさぎはそのワニをだまし、簡単に因幡の国まで渡ることができます。
うさぎは嬉しさのあまり、だましていたことをワニに話すと、怒ったワニにうさぎの皮を剥がされてしまいました。
そこへ大己貴命の神様が通り、「真水で体を洗い蒲の穂で身を包めば、また綺麗に皮ができますよ」と伝えたというお話です。
こういった神話からうさぎと神様は縁があるとされているので、うさぎをモチーフとした絵馬などを扱っています。
また当社に限らず、大己貴命の神様・大国主命の神様をお祀りしている神社では、うさぎに関連するものが多少はあると思いますね。
お祭りごとで子どもの健やかな成長を願う
ーコロナウイルスの影響で御朱印の対応を中止する神社もあるようですが、大洗磯前神社ではどのように対応されていますか?
飯塚:元来神社とは、“清浄”であることを好みます。コロナウイルスに関わらず、入り口に置かれた手水舎で手を清めてきれいにしてからお入りいただくというしきたりがあるんですね。
ただこのような時期なので、参拝される方には柄杓を使わず水で手を洗っていただいています。また、門を入ったところには消毒液も用意していますのでご安心ください。
御朱印については、その場で帳面にお書きしています。ただ、都度消毒をしていますし、参拝の方にも消毒液で手を清めてからお持ち帰りいただくようお願いしています。
やはり、筆で直に書いて判子を押さないと、御朱印の意味も薄らいでしまうような気がしますので。
ー行事についてお聞かせください。大洗磯前神社では、学生や子どもに向けた行事はあるのでしょうか。
飯塚:まず、4月の第2日曜日に「太々神楽」というお祭りがあります。
これは、地元の小学生や中学生によって舞われる神楽を奉納し、人々はもちろん神様にも楽しんでいただきながらご神徳をいただくお祭りですね。
飯塚:また、夜泣き、癇癪などを起こさないよう、“虫切り”をおこなう「有賀祭」というお祭りも11月11日にあります。
「有賀神社」という神社があるのですが、そこからお越しいただいた神様が乗り移ったものに触れると、子どもの疳の虫がおさまるという言い伝えがあるんですね。
健やかな成長を願って、赤ちゃんや小さい子どもを連れた多くの方々が参道に並ばれます。
そのほか、もちろん七五三の行事もおこなっています。
お参りは気持ちを切り替える“きっかけ”づくり
ー最後に、大洗磯前神社の今後の展望についてのお話や、読者に向けてメッセージなどをお願いします。
飯塚:私たち神主の仕事は、今の神社をなるべくそのまま後世に伝えていくことです。
変えるところは変えて、変えないところは変えず、参拝者の方がたくさん来ていただけるように努力していきたいですね。
できるだけ昔ながらのよさを保ちながら、これから先も多くの方々に大切にされる神社でありたいと思います。
読者の方に申し上げたいのは、神社へのお参りやご祈願は、あくまで気持ちを入れ替えるひとつのきっかけです。
お宮参りや七五三などのお祭りごとであれば、ただお参りをするのでなく「これからしっかり子どもを育てます」と神様に誓い、また自分にも言い聞かせることが大事なんですね。
また、厄年の方であれば、「この1年も気をつけて過ごそう」と自分に言い聞かせて気持ちを整えられる場所が神社です。
ー気持ちを整えるといった面では、受験生にもぜひお参りをおすすめしたいですね。
飯塚:そうですね。また、お参りはしなくても、気持ちを切り替えるためのルーティンはつくっておくとよいと思いますね。
昔の方は、気持ちの切り替え方法として神社にお参りをしていました。お参りをすることで心を改め、1から頑張ろうと言い聞かせていたんですね。
受験生の方にお伝えしたいのは、周りに同じ立場の仲間がいるし、背中を押してくれるご家族がいらっしゃる。決して1人ではないということですね。
よく氏神様(自分の住む土地を守る神様)をお参りしてくださいと申し上げるのですが、その場所に長くお住まいの方は、ご先祖様もきっと同じ場所で同じ気持ちでお参りをされていると思うんです。
自分1人だけでなく、ご先祖様が同じ空間で同じようにお参りされているということを少し考えてみると、お参りの仕方や神社に来るときの気持ちも変わってくるのではないかと思いますね。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:大洗磯前神社