福岡県の中南部に位置する小さな村「東峰村」は、2017年に起きた九州北部豪雨災害によって甚大な被害を受けました。
現在は、株式会社小石原ドットコムが復興活動をおこなっています。
その復興活動の一環として設立されたのが「アクアクレタ小石原」です。
「アクアクレタ小石原」は、旧小石原小学校をリノベーションした複合施設となっており、子どもたちの校外学習の場として提供しています。
今回は、「アクアクレタ小石原」の田代 裕子(たしろ ゆうこ)さんに施設概要や活動内容などについてお話を伺いました。
小学校をリノベーションした複合施設
ー本日はよろしくお願いします。まずは、「アクアクレタ小石原」を設立された経緯を教えていただけますでしょうか?
田代 裕子さん(以下、田代):旧小学校の再利用ということで、令和元年に運営事業者の公募があり、そこに小石原ドットコムが申し込みをおこないました。
事業計画などを見ていただいたうえで採択を受け、その後、計画が進行し、2020年にリノベーション工事をおこない2021年4月にオープンしました。
ー「アクアクレタ小石原」はどのような施設なのでしょうか?
田代:「アクアクレタ小石原」は、宿泊とレストランなどの複合施設です。
2階建ての小学校をリノベーションして、2階がすべて宿泊の部屋になっています。
シングルが9部屋・ツインが6部屋・和室2部屋・大部屋1部屋・スイートルームが1部屋、全部で19部屋の宿泊部屋を用意しています。
1階部分はレストランです。
ランチとディナーを営業し、宿泊者に向けた朝食の提供をおこなっています。
また、そのほかにも研修室として3つの教室をそのまま残した形で、レンタルスペースとしても提供しています。
こちらでは陶芸体験や子ども会の集まりなど、予約すればフリースペースとして自由に利用可能です。
さらに、コワーキングスペースとして、フリーWi-Fi完備でリモートワークをしていただけるようなスペースも用意していますね。
ー特別な部屋などはあったりするのでしょうか?
1階の一番奥の部屋が「囲炉裏かまどの部屋」になっていて、囲炉裏を囲んで食事することが可能です。
体験プログラムもこの部屋で実施できるようになっていて、子どもたちが火をおこして魚や野菜を焼いたりと、さまざまな活動ができるように準備しています。
施設にしている小学校は東峰村という場所にあるのですが、4年前に大規模な水害に襲われ、土砂崩れなどでインフラすべてがストップしてしまったという経験があるんです。
そこで、もしいつか災害で電気や水道が止まってしまったとしても、避難所として活用できるように、囲炉裏の部屋で火をおこし、そこで避難された方が食事をとれるような部屋になればいいなと考えて、囲炉裏を設置しています。
参加者と共にプランを作り上げていく
ーいちおしのプランなどはあるのでしょうか?
田代:4月にオープンしたばかりなので、さまざまなイベントを月にひとつずつ募集させていただいている現状です。
まずは、1年をかけて多くのイベントやプログラムを体験していただいて、そのうえでブラッシュアップして、参加者が本当に楽しめるようなイベントやワークショップを作り上げていきたいなと思っています。
そのため、まだこれがいちおしというプランはないですね。
今後は、大人向けのチーズづくりや子ども中心の農業体験なども実施していく予定です。
季節に合わせた体験プログラムを提供
ーイベントや体験プログラムでは、どのようなことをおこなっているのでしょうか?
田代:季節に合わせたイベントやワークショップを提供していきたいと考えていて、薪割体験やキャンプファイヤーなどもおこなっています。
しかし、体験はいつでもできるというわけではなく、こちらで時期をみながら日程を決めて、「問い合わせの多いものからイベントとして実施していけたらいいな」と考えていますね。
また、ドローン体験ができるのですが、来年からドローンが国家資格になる予定で、誰でもどこでも自由に飛ばせなくなってしまうかもしれません。
そこで、ドローンの養成講座を6月から開始しました。
今後のスケジュールについては、「アクアクレタ小石原」の公式サイトで季節ごとに実施しているプログラムを確認していただいて、応募するという流れになります。
パワースポットに触れる貴重な機会
ー体験プログラムを企画するときに、こだわっているポイントなどはあるのでしょうか?
田代:「アクアクレタ小石原」は標高500ⅿという高い場所に位置していて、福岡市内からは離れた距離にあるんです。
自然に囲まれた村のなかにある施設なので、周辺にはもちろんコンビニなどもありません。
だからこそ、参加者が自然環境と触れ合えるようなことや東峰村でしかできないことを中心にプログラムを企画しています。
施設では、夜になると野生のシカがやってきてシカの鳴き声が聞こえたり、街灯があまりないので星がすごくきれいに見えたりするんです。
普段の生活から少し離れて、都会では見られないような景色を多く見ることができるのは一番のポイントだと思います。
そのため、宿泊施設にもあえてテレビを置いていません。
大自然のなかにきたからこそ、自然の動物の鳴き声を聞いたり、部屋を真っ暗にして星空を眺めてたりして、デジタルデトックスをする。
そういった体験を子どもから大人の方まで一緒に経験してもらえたら嬉しいです。
ー施設周辺には、パワースポットもあるのですね。
田代:東峰村は歴史のある場所が多いです。
「岩屋神社」はとても歴史のある神社で、パワースポットとして訪れるコアなファンの方もいらっしゃいます。
また、「行者杉」という杉の木が近くにあり、そこもパワースポットのひとつですね。
参加者の方には来ていただいた際に、パワースポットなども同時に案内しています。
「アクアクレタ小石原」を通して東峰村を復興
ー今後の展望や活動予定などはありますでしょうか?
田代:夏休みに向けて新しいプログラムを計画しています。
親子ワーケーションを目的にした、平日を挟んだ3泊4日のプログラムです。
たとえば、食育に特化したプログラムでは、平日の日中は子どもに農業体験をさせたり自然のなかで遊ばせたりして、その間、保護者の方には安心してリモートワークをしていただきます。
そして土曜と日曜は、親子で一緒に野菜を収穫し味噌汁やおにぎりを作って食べたり、親子でドローンを飛ばしたりと、親子で参加できる内容です。
子どもが、夏休みならではの体験ができるプログラムになっています。
また、夏休みに合わせたイベントは初めてなので、試験的に格安で作っています。
私たちがガッチリ企画したプログラムに参加するというよりも、参加者の方と3泊4日のうちに1回一緒に企画会議をしたいと思っているんです。
「こういうことがしてみたい」「こういうイベントを入れてほしい」などの要望を聞いて、一緒に親子ワーケーションを作り上げていきたいと考えていますね。
そして、参加者の方と作り上げたイベントを参考にして、来年の春休みに正式プログラムを導入することが目標です。
あとは、インバウンドを強化するために、外国人と交流ができる場を整えていきたいと思っています。
現在、外国人スタッフの採用も進めているので、将来的には国際的な施設にしていきたいです。
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
田代:東峰村が災害に襲われてから、現在もまだ復興途中です。
手つかずの場所や川が崩れたままの場所、4年経ってもまだ工事中という場所もあります。
私たちは、“東峰村を元気にしたい”という気持ちがまず一番根底にあり、施設に来ていただけるだけでも東峰村が活気を取り戻せると思っています。
「一緒にイベントを作り上げていく」+「東峰村に元気を与える」といった気持ちで来ていただけるととても嬉しいです。
まだまだ発展途上の施設ですが、その分多くの要望を取り入れやすい状況でもあります。
過去には「こういうイベントがあったら泊りにいくよ」という声から、薪割りのイベントが生まれました。
みなさんの声が実際に繋がり、形になります。
私たちも、みなさんの要望の力になりたいです。
「アクアクレタ小石原」はまだオープンしたばかりの施設なので、参加者のみなさんと一緒に作り上げていけたらいいなと思います。
ー本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました!
■取材協力:アクアクレタ小石原