離島というと、同じ日本国内にありながら、遠くに感じてしまう方も多いのではないでしょうか。
しかし離島には、離島にしかない魅力と学びがあるんです。
沖縄県にある離島、渡嘉敷島の「国立沖縄青少年交流の家」では、安全な環境で海の素晴らしさを体験するプログラムを提供しています。
家族、学校、研修旅行などで利用すれば、想像以上にたくさんの学びを得られるはず。
今回は「国立沖縄青少年交流の家」の主任企画指導専門職・中里昭夫さんに、離島の魅力や体験プログラムについてお話を伺いました。
自然や平和について学べる「国立沖縄青少年交流の家」
ー本日はよろしくお願いします。まずは「国立沖縄青少年交流の家」の概要を教えてください。
中里 昭夫さん(以下、中里):「国立沖縄青少年交流の家」は、団体宿泊訓練を通して、健全な青少年の育成を図ることを目的に設置された、団体宿泊研修施設です。
豊かな自然がある渡嘉敷島の素晴らしいロケーションや、約2.3万m²の広大なフィールドを活用して、マリンスポーツ体験やサンゴ礁を活用した環境学習、集団宿泊活動のプログラムを提供しています。
渡嘉敷島は、日本を代表するサンゴ礁やアオウミガメの産卵地として「ラムサール条約」(=水辺の自然生態系を保全することを目的とする国際条約)に登録されていますし、渡嘉敷島を含む慶良間諸島(けらましょとう)は国立公園に指定されているんですよ。
世界でも屈指の美しい自然、海がある、魅力的な場所なんです。
ですので、私たちのキャッチコピーも「船旅から始まる、地球の未来体験!マリンブルーとかしき」と、海を連想するものになっています。
離島という特徴を目玉に、学び、体験し、地球や社会について考えることを教育テーマにし、さまざまな体験プログラムを提供しています。
中里:それから渡嘉敷島は、自然が豊かなだけではなく、太平洋戦争の沖縄戦で集団自決という悲惨な歴史を経験している場所でもあるんです。
だからこそ、平和の発信拠点として、戦争の悲惨さや平和の大切さ、命の尊さなどを学ぶ平和学習を推進しています。
ー設立の経緯についてもお聞かせください。
中里:当交流の家は、昭和47年に沖縄祖国復帰を記念して、慶良間諸島最大の渡嘉敷島に当時の文部省直轄の「国立青年の家」として設立されました。
そして平成18年に、独立行政法人国立青少年教育振興機構が設置する、現在の「国立沖縄青少年交流の家」となりました。
カヤックやスノーケルなど海洋研修が体験できる
ー「国立沖縄青少年交流の家」にはどんなプログラムがありますか?
中里:当施設の一番の目玉はやはり、ケラマブルーという世界屈指の透明度と青さを誇る海での海洋研修です。
大型カヌーのプログラムでは、約21人がカヌーに乗り込み、力をあわせて渡嘉志久湾内を漕ぎます。
カヌーの真ん中が透明のガラスになっているので、サンゴや魚、海底を観察することができます。
海のコンディションがよいときは、7~8m先まで見えるんですよ。
それから、オープンカヤックのプログラムは、2人乗りのカヤックに乗って渡嘉敷のきれいな海を自由に漕ぎ回ります。
カヤック全体が浮力構造になっているので、初心者でも安全で気軽に体験できますよ。
渡嘉敷島に来られたら、ぜひスノーケリング体験をしてほしいですね。道具などはすべて無料で提供しています。
ー泳ぎが苦手でも大丈夫ですか?
中里:わたしたちの施設では、必ずライフジャケットを付けておこなっているので、泳げない方でも楽しめます。
小学生でも高学年以上なら、初心者の方でも大丈夫です。
指導員が引率して、丁寧に指導しますのでご安心ください。
中里:スノーケリングのように、自分で泳ぎながら、自分の目で海の中を観察するというのはすごい体験ですよ。
渡嘉敷島の海はサンゴ礁が発達していますので、サンゴ礁には色とりどりの熱帯魚が集まってきます。
その熱帯魚がたくさん泳いでいるのを間近で見ることができるんです。ウミガメに会えればラッキーです。
ーきれいな海を満喫できる体験ですね。ちなみにコロナ禍で活動に変化はありましたか?
中里:入島制限などがあり、キャンセルが相次ぎましたね。離島ならではのよさもあるのですが、離島ならではの難しさもあると感じました。
みなさんをお迎えできるときは、大型のカヌーであれば人数制限をする、スノーケリングではスノーケルなどの使い回しをせず、消毒を徹底する、などの対策を徹底しています。
当初は慣れず、利用者にご不便をかけたところもあったかもしれませんが、現在ではわたしたちも慣れてきましたので、問題なく対応させていただいています。
しかし、まだまだ以前のように多くのみなさんに渡嘉敷島を楽しんでいただける状況ではありません。
アフターコロナでどう活動していくかが重要だと思っています。
子どもが大きく成長する「無人島アドベンチャーキャンプ」
ー開催されているプログラムについて詳しくお聞かせください。
中里:年間で当施設主催の事業を26回ほどおこなっています。
児童生徒、親子、幼児や不登校、障害児を持つご家族など、さまざまな方を対象に事業をおこなっています。
いろいろな方がここで自然体験活動をして、さまざまなことを学んでほしいと考えていますので、多種多様なプログラムを実施しています。
なかでも毎年開催している「無人島アドベンチャーキャンプ」は、全国から参加者が集まる一番人気のプログラムです。
このプログラムでは、渡嘉敷島の北にある儀志布島(ぎしっぷとう)という無人島で、約1週間生活をします。
一緒に生活する仲間は、全国から来た24名の参加者と、専門家の先生です。
無人島での集団生活は、さまざまな自然体験ができる反面、「不便・不足・不自由」な厳しい生活環境になります。
お風呂にも1週間入れません。でも人間とは不思議なもので、それもまた心地よくなってくるんですよ。
みなさん最初はとても楽しみにして来られるんですけど、実際に無人島生活が始まると、なかには「途中で帰りたい」といって泣いてしまう子もいます。
でもその辛さを乗り越えて、仲間と協力し挑戦することで、子どもたちはとても大きく成長します。
キャンプを終えたあとの子どもたちの顔は、本当に達成感に満ちているんですよ。
ちなみに今年は7月26日から実施します。対象は小学5年生~中学3年生です。
離島は世界の縮図!ここから学べる大切なこと
ー「国立沖縄青少年交流の家」の今後の展望を教えてください。
中里:アフターコロナを見据えた取り組みとしては、当交流の家の施設「海の資料展示室」をリニューアルしたいと考えています。
環境省や慶良間諸島国立公園の拠点「青のゆくる館」、阿嘉島(あかじま)にある「さんごゆんたく館」と連携しながら、慶良間諸島の自然や渡嘉敷島についての展示室をつくって、多くの方に楽しんでもらえたらと思っています。
さらに、さきほど紹介したスノーケリング体験ではより多くのサンゴや魚を観察できるように、安全面を考慮しながらエリアを少し広げるなどの工夫をしていきたいですね。
それから、渡嘉敷島の魅力がみなさんに伝わるよう、広報活動を積極的におこない、渡嘉敷島の素晴らしさをアピールしていきたいです。
離島って少し来にくいイメージだと思いますが、1度訪れてさまざまな体験をすると、次も来たいと思う吸引力があるんです。
だからこそ、ひとりでも多くの方に渡嘉敷島を知って欲しいですね。
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
中里:世界屈指の海である、この渡嘉敷島の海を体験して、海の素晴らしさ、面白さを知ってほしいですね。
ほかの施設になくて、わたしたちの施設にあるもの、それは「離島」という環境です。
離島には、コンパクトなフィールドに山や川、海があって、全体を見渡すことができます。つまり、渡嘉敷島は地球の縮図なんです。
地球の環境問題など、いろいろな課題がありますよね。渡嘉敷島でも、サンゴの減少や生態系の変化、人口の減少、過疎化などの問題があります。
島のよさと課題をあわせて、さまざまなことを学べるのが離島の特徴です。
そういったことを学ぶ場として「国立沖縄青少年交流の家」を利用していただきたいですね。
わたしたちは全国からみなさんが来るのを、いつでもお待ちしています。
ー本日は、貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:国立沖縄青少年交流の家