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NPO法人「九州海外協力協会」の事務局長を取材!教育を通して世界の問題と向き合う

NPO法人「九州海外協力協会」の事務局長を取材!教育を通して世界の問題と向き合うの画像

海外に目を向けると、日本とは違った文化や環境を知ることができます。

そこから得た新たな発見は、子どもたちの視野を広げ、今後の成長にも繋がるでしょう。

「NPO法人 九州海外協力協会」は、日本の地域づくりや社会活動、そして開発途上国の国際協力に貢献する団体です。

今回は、NPO法人 九州海外協力協会の事務局長である丸田 隆弘さんにお話を伺いました。

具体的な活動内容と目的、そして今後の展望まで、たっぷりと語っていただきました。

国際協力の推進と子どもたちの健全育成を目指す

ー本日はよろしくお願いします。まず、NPO法人 九州海外協力協会はどのようなことを目的とした団体なのでしょうか。

丸田 隆弘さん(以下、丸田):私たちNPO法人 九州海外協力協会は、「ビジョンミッションバリュー」を一番の目的とした活動をおこなっています。

NPO法人 九州海外協力協会

私やスタッフ、会員の方の一部は、青年海外協力隊のOB/OGといった経験者です。

これらの活動で培われたさまざまな体験や精神を活かし、日本の地域づくりや社会活動、開発途上国への国際協力活動に還元しています。

かつては、隊員のみなさんが帰ってきてからの就職に関するお手伝いもしていました。

また、国際協力の推進とともに、次の時代を担う子どもたち、若い人たちといろいろなことを話して健全育成に貢献するということも大きな目的としていますね。

ーNPO法人 九州海外協力協会が設立されるまでの経緯をお聞かせください。

丸田様とカンボジアの方たちの画像

丸田: 1997年6月に、NPO法人 九州海外協力協会の前身である「社団法人 青年海外協力協会九州支部」が立ち上がりました。

発起人となったのは、長崎県・佐賀県・福岡県・大分県・熊本県・宮崎県・鹿児島県・沖縄の各県にいたメンバー。

そのOB会が、九州一丸となって青年海外協力隊の募集説明会や帰国隊員のフォロー、OB会活動の支援などをしようと提案したのが始まりですね。

それから少し経った2004年に、NPO法人 九州海外協力協会ができました。

当時は、学校の先生やホームステイを受け入れるホストファミリーのお父様やお母様、高校生なども会員に入っていたんです。

そこで、協力隊OB、OGだけでなく「地域社会、家族、子どもたち、先生たちを含めた大きな輪で参加しませんか」と呼びかけたところ、多くの方が参加してくださったので、NPOとして設立しました

設立スタートのときは、在京のマラウイ大使館の大使閣下に設立の挨拶をしていただいたり、当時の青年海外協力隊の局長、熊本県代表の方にも来ていただきましたね。

こうして、みんなでこの運動を盛り上げようと始まったのがNPO法人 九州海外協力協会です。

自らが気づき、考え、変えようとする力を引き出す取り組み

九州海外協力協会のワークショップの画像

ーありがとうございます。続いて、NPO法人 九州海外協力協会がおこなっている取り組みについて教えてください。

丸田:NPO 九州海外協力協会は、小学生から大学生まで、若い人たちにいろいろな方法で体験談を伝えることを大事にしています。

私たちは、JICA国際協力機構の九州センターから「開発教育」や「国際理解教育」といった部門を受託させて頂いています。

取り組みのメインは「開発教育」。開発教育はどういうことかというと、「自身で考えて行動できるようにする」ということですね。

開発教育といえば、「世界のことを知らないといけない」と世界の現状と自分たちを結びつける方もいますが、国内でできることや国内の問題はたくさんあります。

たとえば、学校で教員に向けた開発教育の講座をしたり、職員を講師として各団体に派遣したり。

改めて国内の問題について気づき、自分で考える力をつけられるような取り組みをおこなっていますね。

ー国内はもちろん、海外でも取り組みをおこなっているそうですね。

九州海外協力協会の取り組みの様子の画像

丸田:コロナの影響で現在はあまりできていませんが、カンボジアでも教員を対象にした開発教育として、能力を向上させるプロジェクトをおこなっています。

とはいえ、私たちが教えられることには限界がありますし、日本人の視点から「これがいいものだ」と押し付けて根付くものでもありません。

自分たちの現状に対して「教育を受けていない」「先進国とは違う」といった視点でなく、「なぜこういうことになったのか」という教育現場の問題に先生自らが気づき、変えていこうとする力を引き出すことをメインに取り組んでいます

また、お金がなくて子どもを学校に通わせられない人が多い農村では、女性がつくっている籠を仲買業者に買い叩かれているという現状があります。

NPO法人 九州海外協力協会では、少しでも高く売れるようあらゆる工夫をし、日々の収入を向上させる「手仕事支援」も併せておこなっています。

現在カンボジアで主に取り組んでいるのは、開発教育と手仕事支援の2軸ですね。

ーJICA海外協力隊というと、若い世代が対象だという印象がありましたが、実際にはシニア世代も多く活躍しているのですね。

丸田:若者からシニアまで活躍されています。69歳までであれば、どなたでも参加していただけますね。

若い力でこそできる部分と、日本での社会人経験があるからこそできる部分は違うと思うんです。


たとえば、先生などのカウンターパート(国際協力の場において、現地で受け入れを担当する機関や人物)にアドバイスをする場では、日本で社会人経験がある人とない人ではやはり全然違います。

海外に行くと、文化の違いに悩む、日本人の勤勉さにかえって苦しむ、よかれと思ったことが仇になる、といった経験もたくさんあります。

ただ、できることを最大限やれば、海外の人からも日本人とかけがえのない思い出がつくれたと思ってもらえるんです。

世界の現状を知り、自分にできることを見つけられる

九州海外協力協会の取り組みの画像

ーNPO法人 九州海外協力協会で、子どもや学生が参加できる具体的な取り組み・活動はありますか?

丸田:NPO 九州海外協力協会では、「異文化理解講座」をしています。最初は、福岡県のボランティア育成の助成を受けて「一歩踏み出す異文化理解講座」という講座をおこないました。

きっかけは、ある職員の「困っている人に自然に手を差し伸べられる人と、ためらってしまう人の違いはなんだろう」という言葉です。

そこから、私たちが感じる日本人と外国人の壁は、お互いの知らないところから来ているのではないかと考え、異文化理解講座を実施しました。

それが好評だったため、コロナ前は会員向けに対面でいろいろなアクティビティをおこなっていました。今後オンラインでできたら、みなさんにも参加していただきたいですね。

また、講師の方を呼んでいただき、暮らした地域の違いや苦労した話など、興味深い体験談をいろいろとお話しています。

開発教育については、みなさんが世界の問題に気づけるようなワークショップを実施し、今後の課題について考えてもらうなどしていますね。

ーNPO法人 九州海外協力協会での取り組み・活動を通じてどのようなことを学べるのか、また、どのような成果を期待していますか?

丸田:取り組みに参加してもらうことで、世界の現状に少しだけ気づくことができます。

たとえば、ほかの地域で戦争が起こっていても、私たちは戦争を止めたり戦士になったり、直接的なアプローチができませんよね。

そこで、まずは「そのまま放っておいていいのか」「私たちには何ができるのか」という視点を持って問題提起をしてもらうんです。

すると、子どもたちは自ら調査をしたり何かを発信したりして、さまざまな提案をしてくれます。

大事なのは、「多くの人が知れば紛争を早く解決できるかもしれない」という視点を持つこと。

自分は何もできないとしか思っていない人に「無関心がこの世界をつくっているのではないか」と気づいてもらうことを重要視しています。

NPO法人「九州海外協力協会」は、福岡市地下鉄空港線 中洲川端駅から徒歩4分のところに事務所を構えています。取り組みに興味のある方は足を運んでみるとよいでしょう。

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オンラインでの講演やワークショップなど、できることから発信

オンラインでのワークショップの画像

ー現在コロナウイルスの影響で海外活動が制限されていますが、どのような活動をしていますか?工夫していることがあればお聞かせください。

丸田:カンボジアの人たちとは、メッセンジャーなどのSNSでやり取りをしています。

しかし、農村においては電気やネットが通っていないために読み書きができない人もいますが、ほかの先生たちとは定期的に連絡をとっていますね。

途上国は日本に比べて進化が早く、私たちが動けなかったこの2年間でニーズが少しずつ変わってきていると思うんです。

そのため、活動を再開するときは今のニーズをきちんと調査し直したいですね。

今はオンライン上での交流しかできないので、Zoomを使った講演やワークショップなどを試みているところです。

ーカンボジアとのやり取りのほか、日本国内でおこなっている海外に向けての活動はどうされていますか?

丸田:私たちは、鹿児島の大隅半島にある「アジア太平洋農村研修センター」と、鹿児島市内にある「鹿児島県国際交流センター」という施設にも職員を配置しています。

県からの受託で、外国から研修員が来たり、学校が研究課題のためにセンターを利用してネパールやブラジルの話を聞いたりしています

話をする際は密にならないように配慮し、ときにはオンラインでおこなっています。

日本の若者に元気と自信を与えるために

修了証書を持つカンボジアの方たちの画像

ーNPO法人 九州海外協力協会の、今後の課題や展望についてお聞かせください。

丸田:私は2021年6月に事務局長に就任するまで、グアテマラでJICA海外協力隊員の調整員をしていたんですね。

事務局長になって1ヶ月経った今、日本の若者がもっと元気に、そして日本人として自信を持ってもらえるような学びや気づきにつながる活動をしたいと思うようになりました。

それができてはじめて世界の人々の元気や笑顔につながる活動ができるのかなと思っているんです。

まずは九州の学校の先生や子どもたちを中心に、手を変え品を変えやっていきたいです。ときには異国の文化などを通しながら、揺さぶりをかけていきたいですね。

また、「自分にはできない」「自分たちはこの問題に関係ない」と諦めている人が多いです。

そんなとき、立ち返って考えて「私たちが諦めていることでも、一歩踏み出せば世界が変わるかもしれない」と希望を持つことが、自分の意識を変えるきっかけになります。

環境面でいうと、たとえばあと5分で地球が破滅するとして、それを知ったとき「私には何もできない」ではなく「小さなことでもしないよりはしたほうがいい」という考え方をしてもらえたら嬉しいですね。

自分の行動1つで変わらなくても、行動をする人が増えればいいんです。そのためにまずは、周りの人にこういった現状を知ってもらうことが重要だと思います。

ーとにかくまずは、多くの人に世界のことを伝えるのが大事ということですね。

丸田:そうですね。地域の人にとって、日本に来た外国人は「よくわからない人」「私たちには関係のない人」にすぎないかもしれません。

我々の身近で、必要とされる業務を多くの外国人が担ってくれているという現実があります。それを知ってもらえないかぎり、彼らはいつまでもただの「外国人」のままですよね。

みんなが暮らしやすい世界や社会をつくっていくためにも、「外国人たちが日本の文化や我々自らの生き方に改めて気づかせてくれる社会の大切な一員になっている」ということを知ってもらわなければならないと思っています。

ーでは最後に、NPO法人 九州海外協力協会を応援したいと考えている読者に向けてメッセージをお願いします。

カンボジアの方たちと丸田様の画像

丸田:世界各国の人々は日本人を本当に必要としていますし、日本人に期待をしていると思います。

日本では、子どもたちが英語を学びますよね。しかし、AIが普及している世界で求めてられているのは「英語を喋れる日本人」ではありません。

世界が求めているのは“日本人”です。英語教育や日本の社会において、はっきりと意志を持った日本人が必要なんです。

私は、今の日本の英語教育は途上国教育のように感じています。

日本は立派な先進国、世界に伝えたい事があるからこそ外国語を楽しく学ぶのであって、外国語を学んで伝えたいことを探そうではないのです。

ネイティブはごまんといます、前述のとおり世界が求めているのは「日本人」であり、「英語が話せる日本人」ではありません。

大航海時代の世界と日本の歴史をひも解いて、日本人としてもっと外に目を向け、そして世界の課題を自分のこととして考えるような努力をして欲しいと思っています。

私たちNPO 九州海外協力協会では、いろいろなツール、考え方、体験を持つ人たちが働いています。

メールや電話でご相談していただければ、私たちが皆さんに 「世界は君を待っているんだ」と伝えたいですね

ーただ語学を学ぶのでなく、意見を持って世界に目を向けることが大事なのですね。

丸田:そう思います。以前、「進路相談で先生に言われたことが納得できない」と悩む子どもたちと話したことがあります。

私たちは先生ではないので、そのときは話を聞いて率直な意見を伝え、彼女たちのやりたい方向に背中を押すだけでしたが、それをとても感謝されたんですね。

海外に行くと、本当にみんなが助け合っているんです。そして、目と目が合ったら知らない人でも必ず声をかけて挨拶をします。これ、とても温かいなと思いますよね。

私が日本に帰ってきて一番寂しかったのは、最近の人は挨拶をしないこと。物質的には豊かなのに心は寂しい、そんな気がしています。

ただ、田舎に行けば行くほど昔の日本の文化が残っているので、挨拶もよく交わされるんです。

忘れてはいけない昔ながらのよいところは残しつつ、新たな社会に移行する、そのお手伝いがNPO 九州海外協力協会にできると考えています。

協力隊に参加したくて悩んでいる人はもちろん、「何かしたいけれどどうしたらいいかわからない」という人も、ぜひ気軽にご相談していただきたいですね。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

■取材協力:特定非営利活動法人 九州海外協力協会

坂本 菜緒
この記事を執筆した執筆者
坂本 菜緒

Ameba塾探し 執筆者

ピアノ、体操、フィギュアスケートなどの習い事を掛け持ちしつつ、小学3年生から進学塾に通う。高校受験で山手学院高等学校に進学。その後、大学受験で東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻に入学。同校の大学院美術研究科を修了し、美術と工芸の専修免許状を所持。2012年から東京都公立小学校にて勤務。2018年5月に株式会社サイバーエージェントグループ会社である株式会社CyberOwlへ中途入社。2021年3月から「Ameba塾探し」にてエディターとして従事し、保護者の方やお子様にとって、目的にあった最適な習い事に出会える記事作りを目指しています。